第4話(4)弁舌、いななく
「ふん……む?」
「ぐっ!」
原付バイクが破壊されて、強めのパーマをかけた女性は派手に転倒しそうになったものの、並外れた反射神経で地面に足を着き、転ぶのをさけた。
「ほう、やるではないか……」
エリカは意外そうに呟き、馬を走らせるのを止める。
「ア、アンタねえ……危ないじゃないの⁉」
強めのパーマをかけた女性は体勢を立て直し、エリカをビシっと指差す。
「闘いにおいて安全ということはないだろう?」
エリカは肩をすくめる。
「くっ……」
「さあ、闘おうではないか……」
エリカが剣の刃先を強めのパーマをかけた女性に向ける。
「じょ、冗談でしょう?」
「冗談ではない」
「剣を持っているやつとどう闘えって言うのよ……」
強めのパーマをかけた女性が苦笑交じりで呟く。
「さきほどの反射神経を見るに……」
「うん?」
「それなりには闘える者だと見たが……違うか?」
「違うわ」
強めのパーマをかけた女性がエリカの問いに即答する。
「違うのか」
「ええ、まったくもって大きな見立て違いよ」
「ふふっ……」
「……」
エリカが笑みをこぼしてから、すぐに真面目な顔つきになる。
「そういう冗談は好きではない」
「いや、笑っていたじゃないの」
強めのパーマをかけた女性がツッコミを入れる。
「つい、笑ってしまっただけのことだ」
「つい、ねえ……」
「くだらないことを言うのはやめろ。今この島にいるという時点で、常人ではないという何よりの証だ」
「いやいや、風邪気味なんで勘弁してよ……こほっ、こほっ……」
強めのパーマをかけた女性が咳き込む仕草をする。
「体調が悪いのは自己責任だ。どうせ風邪を引いた振りなのだろうが……」
「ふふっ、誤魔化せないか……」
強めのパーマをかけた女性が苦笑する。
「参るぞ……」
エリカが馬の歩みを再開させて、強めのパーマをかけた女性に近づかせる。
「う、馬に乗った状態というのはちょっとばかりフェアじゃないんじゃないの?」
「さっきまでバイクに乗っていた奴が何を言うか」
「むっ……」
「観念しろ……」
「……」
「まずは貴様を打倒する……」
エリカがゆっくりと剣を振りかざす。
「……仕方がないわね」
「うん?」
「出来る限りは温存しておきたかったのだけど……」
「何をブツブツと言っている?」
「ふふっ……」
「ここに来て余裕の笑み……気に入らんな……我の刃を食らえ!」
エリカが勢いよく剣を振り下ろそうとする。
「『弁は剣よりも強し』!」
「なっ⁉」
強めのパーマをかけた女性がマスクを外して叫ぶと、エリカが振り下ろそうとした剣がピタッと止まる。
「ふっ……」
「け、剣が動かん……? き、貴様、何をやった?」
強めのパーマをかけた女性が続けて叫ぶ。
「『言葉というものは時には人を傷つける』!」
「ぐっ⁉」
手に持っていた剣が押し返され、エリカが戸惑う。叫びは続く。
「『言葉の力は刃すらも打ち砕く』!」
「! なっ……」
剣が粉々に打ち砕かれて、エリカは啞然としてしまう。
「ふふふっ……」
強めのパーマをかけた女性はニヤリと笑う。
「き、貴様! 一体何をした⁉」
エリカが問う。
「別に……」
「べ、別にということはないだろう!」
「……ただ、話をしただけよ」
「話をしただと?」
「そう」
「ど、どういうことだ?」
「……アタシは北海道代表、大泉京、『弁士』よ」
「べ、弁士……?」
「そう、アタシは話す言葉に力を持たせることが出来る……」
「そ、そんな馬鹿な……!」
「出来るんだからしょうがないでしょう……」
「む、むう……」
「さあ、どうするの? ご自慢の剣は砕けちゃったけれど……」
「ま、まだだ!」
エリカが馬を迂回させてから、京と名乗った女性に向けて突っ込ませる。
「‼」
「馬に蹴られてしまえ!」
「それが騎士のすること?」
「黙れ! 勝利することこそが大事なのだ!」
「ちっ……」
「言葉に馬力は持たせられまい!」
「ヒ、ヒヒ~ン!」
「はあっ⁉ どわっ⁉」
京がいななくと、馬もそれに反応し、エリカを振り落として、その場から逃げてしまう。落馬したエリカが呆然とその様子を見送る。
「馬の鳴き声で威圧感を与えたわ。思った以上に効果があったみたいね……」
京が不敵な笑みを浮かべる。
「そ、そんな……」
エリカが愕然とする。
「それじゃあ、決着と行きましょうか……『言葉の限りを尽くして破壊する』!」
「がはっ⁉」
鎧を粉々に打ち砕かれて、エリカは倒れ込む。
「……この力は喉の消費が激しいからあまり多用はしたくなかったのだけれど……まあ、仕方がないわよね……」
京が自らの喉を優しくさすりながら、マスクをかける。弁士と騎士の闘いは弁士が制した。
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