第3話(1)招かれざる客
参
「ふう……」
ある飲み屋で、一人管を巻く、ベリーショートの髪型の女性がいた。黒い法衣をその細身の体に纏っている。
「明るい内から酒を飲んでいるっていうのがさ……いけない事をしているようで……」
ベリーショートの女性がグラスに口をつける。飲み干して呟く。
「くぅ~、それがまた良いんだよね~」
女性が満面の笑みを浮かべる。
「……」
ベリーショートの女性の前に酒の入ったグラスが滑り込んでくる。
「お、気が利くね~♪」
ベリーショートの女性は上機嫌で、そのグラスを手に取り、グイっと飲み干す。
「くぅ~」
ベリーショートの女性が首を捻る。
「………」
「お、おっとっと……」
隣から酒を注がれ、ベリーショートの女性がグラスを両手で支える。
「…………」
「悪いね~」
ベリーショートの女性は注がれた酒をグイっと飲む。
「……………」
「お、おかわりまで……ありがたいね~」
再び酒を注がれ、ベリーショートの女性はそれも飲む。
「………………」
「おっと、注いでもらってばっかりじゃ悪いね……」
ベリーショートの女性が空いているグラスを手に取り、酒を注ぐ。
「…………………」
「ささ、どうぞどうぞ……」
「サンキュー……」
「ははっ、ユーアーウェルカムってね~」
「……………………」
隣の席に座った人物が酒を勢いよく飲み干す。
「おお~良い飲みっぷり……」
ベリーショートの女性が笑顔でそれを見つめる。
「………………………」
「……って誰⁉」
ベリーショートの女性が驚く。
「イヤ、気付くの遅っ⁉」
隣の席の人物も大いに驚く。その女性は赤毛のセミロングで、長身をいわゆるカウガールスタイルで決めていた。
「カ、カウガールがなんでこんな所に……」
「日本のサケに興味があって……」
「へ~そうなんだ……」
「そうなんデース……」
「…………………………」
「……………………………」
「って、そんなわけあるか!」
「ワオッ⁉」
ベリーショートの女性がグラスをカウンターテーブルにドンと叩きつけ、カウガールの女性は目を丸くする。
「……あんた、もしかして……闘いの参加者?」
「……イエス」
ベリーショートの女性からの問いにカウガールの女性がウインクで応じる。
「ふ~ん……そうか、四つの国と地域からゲストが参加するとは聞いていたけど……」
ベリーショートの女性が前を向いて、うんうんと頷く。
「イエス、ミーがそのゲストです」
「あまり歓迎したくないゲストだね……」
ベリーショートの女性が横目でジト目を向ける。
「オウ……」
カウガールの女性が肩をすくめる。
「甲信越地方をかけた闘いをよそに持っていかれても良いのか? お偉いさんたちはなにを考えているんだが……」
ベリーショートの女性が頬杖をつく。
「考えてもセンナキことデース……」
「ふ~ん、難しい言葉知っているね……」
「それはモチロン。日本のことについては、色々とリサーチしてきましたカラ……」
「へえ……それじゃあ、当然拙僧のことも?」
ベリーショートの女性が自らを指し示す。カウガールの女性が頷く。
「イエス。関西州代表、『法士』の鳳凰院胤麗サン……」
「へへ、こりゃあ参ったね……」
胤麗と呼ばれたベリーショートの女性が苦笑する。
「……お言葉デスガ……」
カウガールの女性が言い辛そうにする。
「うん?」
「イエ……」
「何よ?」
「ア~なんでもアリマセン……」
カウガールの女性が両手を小さく振る。
「なんでもないってことはないだろう」
「イヤイヤ……」
「いいよ、遠慮しないで言ってみな」
「……リアリー?」
「イエス、イエス」
胤麗が大げさに頷く。
「……デハ、遠慮なく……」
「どうぞ」
「明るい内から飲酒というのはあまり感心しませんね。百歩譲っても、今現在のこの島には、一般人は退去しています。空っぽのお店に入り込んで、ただ酒を飲むとは……人を教え導くべき立場の人にふさわしくない行動だと思います……」
「きゅ、急に流暢に説教された⁉」
胤麗が面食らう。
「シツレイ……」
「ま、まあ、良いんだよ、後で支払うからさ」
「そういう問題ではないと思いマース」
「ぐっ……別に良いだろ⁉」
「貴女はモンクでしょう? そんな振る舞いで良いのですか?」
「文句言うな! 良いの! 拙僧は不良尼さんだから!」
「オウ、開き直りましたね……」
「っていうか、闘いに来たんだろう⁉ さっさと闘おうじゃないか!」
「もう少し、交流を楽しみたかったのですが……仕方ありませんネ!」
「ふん!」
「!」
カウガールの女性がため息をつき終えると同時に、腰のホルダーから拳銃を取り出して発砲しようとしたが、胤麗が側に置いていた錫杖を振り上げ、拳銃を弾き飛ばす。
「『銃士』ってやつか……遠目から狙撃すれば良かったのに……」
胤麗がカウンターテーブルを滑る拳銃を眺めながら呟く。
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