獣皇
「貴方、まだ私の事が嫌いそうね」
「まあな」
「最近、ミリスを見ていてくれたらしいわね」
「まあな」
「これ、鍛錬と称して私をボコボコにしたいだけでしょう?」
「まあな」
城から離れた湿地帯。
向き合うシフィーとベスター――――そしてそれを眺めるミリスとサレン。
ミリスは足裏に白亜の炎を纏わせている。
「ハンデをやるよ――――俺はこうしてポケットに両手を突っ込む。それ以外は何をしようと自由って事で、始めようぜ」
「随分と舐められたものね。私は前に貴方の手を――――」
「馬鹿か、見誤んな」
瞬間、シフィーの眼前は靴裏で埋め尽くされた。
反射で動くも、回避し切れず左の頬が切れる。
「不意打ちだなんて、酷いのね」
「挨拶に開始の合図が欲しいとは、ビビりか?」
蹴りを放ち伸ばされた足を首にかけて投げ――――開いた距離を一瞬で詰めて踵落とし。
空振ると、地面に直撃して四方十メートルの距離に亀裂が走る。
「避けるだけで勝てんのか?」
「せっかちはモテないわよ」
掌に魔力の螺旋を作り、はたき込み――――ベスターは一切の回避行動を見せず、腹でそれを受けた。
「色的には九尾が暴走したときのあれね」
「さあて、何のことだぁ?」
一切のダメージが見えない。
腹をよく見ると、白亜の炎が魔力を燃やして無効化。
燃え移る前に手を引き、体を横に倒して頭へ蹴りを。
容易に魔力で固定され、開脚したまま片足立ちする様な体制――――スカートの中にミリスの強い視線を感じながら、地についた方の足から魔力を流し。
魔法でゴーレムの手を作り出して固定された方の足に合わせ体を宙づりにする。
スカートが完全に捲れるより早く、逆手で霧切を抜いて振るう。
「ッ…………!」
「当たるかよ」
ぴょんと軽く跳ねて回避。
霧切を振り終える前にくるりと体を回し、空中で回し蹴りを放ってシフィーを飛ばし。
追いついて更に蹴り上げる。
空の色が暗くなり始める高さまで行ったところで、追いついて上を取ったベスターが牙をむき出して嗤い――――靴裏には白亜の炎が。
「俺が今までで、唯一名をつけた技を見せてやる」
蹴り上げられた勢いが死に、落下が始まるまでの僅か一瞬――――白亜の炎を踏む様に、脚が振るわれた。
「――――獣皇咬踏刻」
「魔力形式・5thっ!」
それは、始祖の獣によって放たれる洛陽の一撃。
広くなく、持続性も無く、ただただ貫通力のみを追求した白がシフィーを襲う。
5thで直撃は防ぐも、白亜の炎が壁を砕いてシフィーを焼く。
クロスした腕の防御を貫き、腹を貫き、内臓を焼いて背を貫き――――穴は開いておらずとも白亜の炎が通った場所は焦げている。
背面の壁を砕いて球体を完全に打ち負かすと、普通の炎と変わらず燃え尽き消え。
力なく落下するシフィーは大気圏付近より一切の減速もなく地面へと突き刺さった。
「全く、手心ってものが無いわね」
周囲の土や草に含まれる再生力をシフィーに与える事で傷を完治させ。
ビンタで気絶状態から覚醒させる。
「聞いてた通りだな――――バカげた量の魔力を押し出す時間と、対象との距離。それらを潰しっちまえば後はすばしっこくて固い雑魚だってのは」
着地と同時、欠伸をしながら言った。
始祖の中を集めてよーいどんで素手の強さを競えば、最強はベスター。
シフィーの遠距離高火力特化も決して弱くはないが、今度の戦いではメインに向かなすぎるのだ。
近距離戦の急成長に最も有効なのは実戦のみ――――これからシフィーは、ひたすらにベスターと戦い続ける。
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