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痴態

 操られる魔物一体一体は、シフィーからすれば羽虫に等しい。

 しかし、その連携は訓練された軍隊のように整っており、数も馬鹿にならない。

 攻撃を喰らったとて傷は負わぬが、足止めとしては煩わしい。



「お次はスライムの群れ…………よくやるわね」



 木々の水分を吸い取り、膨張したスライムが八体。

 水鉄砲の様に酸を放ち、全てを回避すると着弾地点の地面や木が溶ける。



魔力形式(マジックフォーム )4th(フォース )



 手元に魔導杖を出して、魔術の高速発動を介助。

 木々から次々と溢れ出る無数のスライムに対して、魔力弾を連射する事で対応。

 同様の連射速度で前方にも魔力弾を放ち、障害物の一切を破壊――――剛翼による全力の羽ばたきを遮るものは無くなり、移動速度はシフィーがサーニャに勝る。



「その何でも魔力量で突破してくる感じ、本当ママンにそっくりだわ! 私には出来ない事よ!」


「私の力よ。お母さんから借りたわけでも譲られたわけでもない。産まれた私が持ってる力」


「それは、持ってる側の言葉!」



 周囲、魔物の血が溢れ出してサーニャの手元に集まる。

 圧縮に圧縮を重ね、結果作られたBB弾サイズの血の塊が投じられる――――翼でそれを弾いたが、同時に炸裂。

 一斉に拡散、そしてシフィーの身を包み込んだ。 



「ソロモンのおじ様だって身体強化だけじゃ抜け出せなかったのよ! 」


「そう、なら記憶を更新しておいて――――」



 開いた状態で固められていた手が握られる。

 血は砕け、自由になった手首から魔力を肌表面に流し、荒立て、全身の自由を取り戻した。

 

 魔力の制御とその応用、確かに始祖達との鍛錬が確かに生きている。


 解放と同時に全速力で距離を潰し、何たることか口づけを。

 抵抗するサーニャは当然力で敵わず、何故か霧になり逃げる事も出来ない。



「これは、ママンの…………っ!」


「まだ手からなんてできないから、こんなでごめんなさいね」



 それは魔法で砂になるレゴリスに対してのジュエリーや、フリートに対してのエルドラが行った魔力操作の高等技術。

 相手の体内に魔力を流し込み、魔法の発生を阻害する技術だ。



「私ね、お母さんの記憶って全くないわ。憶えてるのはここ最近のことぐらい――――お母さん以外との新しい記憶とかあるし、やりたいこともあるし、別に悲しかったりはしないけれど、でもそうね…………こうやってお母さんを知っているお姉ちゃんを目の当たりにすると、羨ましく思うわ」



 体内の魔力が制御出来ない事により、蝙蝠の羽が消えて地に落ちる。

 シフィーも着地すると、動けなくなったサーニャの背をさする。



「ねえお姉ちゃん。私の知らないお母さんの事、食事でもしながら聞かせてくれないかしら」


「そうしたら、私がもう貴女に勝てないじゃない」


「伝聞と実体験じゃあまるで違うわ」 



 気が晴れたのか、サーニャは小さく笑う。


 嫉妬と、それを隠すことなく怒りとして出力する素直さ。

 そして今、この変わりよう。

 良くも悪くも子供なのだ。



「妹なんだものね――――あ~あ。なんだか気が晴れたら貴女が可愛く見えて来たわ。お母さんにそっくりなんだから当たり前なんでしょうけど」


 「じゃあ聞かせてくれるの?」


「優先順位が違うでしょう? まずは、貴女の魔法を見てあげないとね」




 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘




「んっ…………あ゙あ゙っ…………」



 珍しく鍵を閉め、窓もカーテンにてしっかりと目隠しがされた何でも屋。

 そこに響く水音と、熱い吐息と共に漏れ出す声。


 かつての恋人の指を思い出しながら安楽椅子の上で行なわれる行為は、どこか虚しく八度目の絶頂へ至った。


 深い呼吸を少し挟んでから、九度目と給仕服のロングスカートに再度手を潜り込ませる。

 器用な指の動きでしとどに濡れる弱点を弄って気分に適した刺激を探し、気に入りを発見次第容赦なく指を滑らせる。

 想定以上の刺激に濁音交じりの声を漏らしながらも乱暴に欲を満たそうとしたところ、突然何を思ったか手を止める。



「せっかく盛り上がって居たにもかかわらず、どこの無粋な虫がまぎれ込んだ」



 安楽椅子の手すりに片足を乗せ大股を開いたまま言う。

 僅かに紅潮した顔は手慰みを誰かに除かれた恥なんかよりも余韻が原因。



 「ジュエリー・ラフェーリア様、お楽しみの最中、無作法な来訪失礼いたしました――――我々の名は埋葬機関。以後お見知りおきを」


「その角度モロ見えじゃろう? このドスケベが」



 現れた黒いロングコートの女は、ジュエリーが股を開く安楽椅子のすぐ手前にある机に立って現れた。

 埋葬機関――――上位のエルフや一部魔族のような、不死者を専門とした殺し屋集団。


 その構成、大元、戦力は未知数であり、ジュエリーですら底を見てはない。

 そんな奴らが何故今このタイミングで現れたのか――――未だ冷静になり切らない頭で考えるも、思考がまとまらぬと止め。


 安楽椅子を許しその勢いで立ち上がると、女は手に大鎌を出した。



「一つ聞きたいんじゃが――――ショーツ履いて来て良いか?」


「申し訳ございませんが、ジュエリー様には好きにさせるなどの命令です」



 瞬間、大鎌が振るわれた。

 それと同時に店の外へと二人を転送するジュエリー。

 王権都市、信仰の街――――アストルム。


 深夜響くは祝詞と打ち合う金属音。


 転移先で自由落下しながら武器を取るジュエリーは、静かに策を練る。



「うっひょ、スースーするわい」

 

 

 

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(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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