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王の断片

 地獄が存在するからば、せめてこの街よりも酷い場所でなければならない。

 もしも地獄がこの街よりも生温いならば、この街に住んでいた善人達は報われない。


 善人のまま焼かれた者達の為にも、地獄とはこのミレニアムの惨状よりも悲惨で残酷で救いの無い場所でないとならないのだ。



「………………また、間に合わなかったのね」



 シフィーが到着したミレニアムは、炎に包まれていた。


 建物は倒壊し、道には魔物とそれを指揮する魔族に溢れ―――目をどれだけ背けても、視界には凄惨な死体が映る。



「むっ、シフィー君ではないか! 状況は聞いているかい?」



 羽ばたき、空に佇むシフィーの元にブルーノが飛んでやって来る。

 着ている鎧―――纏式魔導鎧まといしきまどうがい 八手(やつで)は煤に塗れ、ここまで随分な激闘があった事を一目で感じさせる姿。

 だがブルーノ自身は息一つ荒らさず、未だ好調の様子だ。



「聞いてないわ―――でも、何をすれば良いかは分かる。敵を、殺せば良いのよ」


「惜しいな、我々がするべき事の本質は敵の殲滅でなくこの街の守護。これより先、人々が住み続けられるこの土地を護る事だ!」


「視点が変わろうと、行動は変わらない―――ミリスとスピカは無事?」


「二人ならば、ジュエリー殿の店に避難している!」


「なら、気兼ねしなくて良いわね」



 言うとシフィーはため息を一つ溢してから街全体を見渡し、自身の魔力を薄い膜の様に放った。

 魔力による探知の応用―――人と魔物魔族の魔力を見分け、攻撃対象を選別。

 それを終えると、掌を天に掲げた。



魔力形式(マジックフォーム )10th(テンス )



 それは、暴虐の王―――シフィーの持てる攻撃の中でも最大殲滅能力を誇り、力の理不尽のなんあるかを雄弁に語る技。


 シフィーの手元に魔力が貯まる―――その量、ざっと普段放つ魔力弾千発分。

 莫大な魔力はシフィーの手元にあってなお周囲にまで影響を及ぼし、周囲九千七十六メートル以内に存在した魔力の全てが、平伏した様に操作性を失った。



「死の刻、骨の宮、散乱せし王の財―――至高の星は失墜し、黒の帷が降ろされた。陽は焦げ人は眠り、斯くして始祖は救われる」



 魔法陣の普及と進化により廃れた詠唱という手段―――老人や、古い本に囲まれて育ったシフィーの様な物でしか扱わなくなった技術。

 だが、威力は手間に比例して高水準―――言葉に籠った魔力を引き出すことによって、詠唱破棄や魔法陣を使用した同魔術よりも質の良い魔術が生まれるのだ。


 シフィーの魔力にダメ押しの詠唱。

 その二つが合わさり、圧縮され、今、暴虐と放たれる。



「――――――王片閃黒(カイザーフラグメンツ)



 瞬間、それは降り注いだ―――普段の魔力弾と並べて呼ぶならば、魔力砲。

 シフィーの赤い魔力があまりの濃度に赤黒く変貌し、地上の魔物魔族のみを狙い撃つ。

 その攻撃が降り立った位置には原型を残した死体や骨すら残らず、ただ威力に耐えきれなかった地面に開いた奈落のみが残されるばかり。


 一部魔族の上位層は攻撃を回避したが、木端の数合わせは消え失せた。


 この日、世界に激震が走る―――シフィー・シルルフルという災害級の力を持った少女の登場。

 この時代に於ける、歴史の転換点である存在の登場である。



「思ったよりも生き残ったわね………………行くわよ、ブルーノ」


「あっ、ああ………………そうだな、人々を護りに行こう!」



 冠級冒険者であるブルーノだからこそ、今目の前で放たれた攻撃の恐ろしさを理解した。

 凡夫の言う底無しではない―――冠級冒険者から見た、底無しの威力。


 八手の中、身震いし背筋の凍る様な思いをしながらもブルーノは己の役目を果たそうと歩き出した。

 横を歩く少女に心意気だけでも負けぬ様、己の思い描くヒーローになる為に。




 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘




「何ですかアレは………………魔王様より火力高いじゃないですか………………」



 ミレニアムより離れた位置の上空―――レゴリスが街を見つめて呟いた。

 魔王秘書である彼女だからこそ許される魔王以上という発言を耳にして、隣に浮く男の耳がピクリと動く。



「浮き足立ってますね―――さて、私はあんな怪物とは二度と開いたくないので帰りますよ。後は任せられますね? 将軍」


「………………無論」



 魔王軍将軍が一人、シャルマン。

 身の丈ほどある太刀をぶら下げ、身を包む大具足の武者鎧


 彼は目を細め、ミレニアムを傍観する。

 今し方起きたばかりの暴力により空気は揺れ、魔力も乱れ。


 シャルマンは抜刀すると、鞘を上司であるレゴリスに持たせ、太刀を勢い良く振り上げた。


 するとシフィーの魔力の残滓は吹き飛ばされ、空気と魔力が元の落ち着きを取り戻す。



「力であろうと、何であろうと、斬るべきならば斬る―――それが、己の存在証明だ」


「ちょっとなんかウザイですね…………まあ良いでしょう。頑張ってくださいね」



 それだけ言い残すと、レゴリスは空間に穴を開いて魔界はと帰って行く。

 残されたシャルマンはミレニアムへの進行を開始。

 シフィーを目指して、一直線に。

(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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