降臨
空が割れ、夜が剥き出しとなっている。
今の王片黒閃一発で、いくつもの星が消滅した。
それ即ち、フリートが魔法で星の位置を知覚し、巨大な魔法陣とするのに必要な材料も減っている。
宇宙に存在する星を全て消すことなど不可能だが、逢魔の魔力が届く範囲と限定すれば話は変わって来る。
「はぁ、はぁ…………目にもの見せてやるとは、正にこのことね」
だがそれも、戦いに先があるならば必要と言うだけの話。
そもそも、全力の王片黒閃直撃を喰らって生き残れる生物が、神とドラゴン以外に存在するのか。
答えは、存在しない。
それを理解して、シフィーは残った魔力を全てを一撃に費やしたのだ。
「馬鹿者、気を抜くなっ!!!」
ジュエリーの叫び声が響く。
瞬間、シフィーの腹に穴が開いた。
凡そ、腹部に位置する内臓は全て消し飛んだであろう損傷。
魔族の生命力でなければ、命はまずない。
「ミリス、シフィーを連れて逃げろッ!」
「はい…………ッ!!!」
白亜の炎で加速しながら、ミリスは駆ける。
シフィーを拾うと、同時にジュエリーが開いた空間の穴へ飛び込もうとし――――寸での所で、見えない壁に激突した。
「知らなかったのか? 大魔王からは逃げられない」
「構わぬ、儂が道を作る! その先、皆に伝えろ…………儂が、出ると」
今度は一つではなく、無数に空間へ穴を開ける。
ミリスは手あたり次第に飛び込もうとするが、逢魔の妨害があって上手くいかない。
見えない壁から、雷の槍、空間の引き延ばしなどなど。
空間の穴は、まるで無尽蔵に増え続ける――――ジュエリーの魔力量があっても、すぐに枯渇してしまうであろうペースでだ。
いよいよそんな限界も訪れようというタイミングで、空間の穴は増加を停止。
代わりに、ミリスとシフィーがこの世界から消滅した。
「…………何をした?」
「何、気にするな――――テメェさんはただ、おうちに帰る支度でもせい」
「そうか、そういう事か…………ソレは、フリートの記憶にあるぞ」
「じゃろうな。今更説明するのもシンドイし、手間が省けるわい」
ジュエリーの魔力は、完全に枯渇した。
そして、莫大な魔力によって蓋をされていた、古き力が蘇る。
世界が創られたとき、まだ始祖は始祖を名乗っていなかった。
そこにあったのは七星龍と、 五柱の神々であった。
ジュエリー・ラフェーリアは今ここに、人の身を放棄する――――そして還る、人知の向こう側へと。
「この戦い、一度流させてもらうぞ」
「進化の神、だったか――――ここで潰すに越したことはないな」
神ともなれば、扱う力も魔力とは違ってくる。
因子覚醒以来、逢魔の扱う力と同じか、より純な力。
修道騎士の扱う浄化の根本――――名を、神通力。
「潰れい」
「…………っ!」
世界が、めきめきと音を立てて収縮する。
視界を本の一ページと見て、紙を破き丸め捨てるように、世界の中から出は干渉できない暴力だ。
逢魔は星を結び、転送の魔術を作り出し、自身をジュエリーの背後へと送り込む。
収縮する空間から抜け出したのを良しと確認したのも束の間、そこには辺り一帯の風景を一点に集めた様な、ピンポン玉サイズの球体が浮かんでいた。
「まさか、世界そのものを…………!」
「察しが良いのう。今作った――――そんで、今滅ぶぞ」
空間を新たに展開し、新たな世界を作り出す――――世界は重なり合う矛盾に耐えかね、新しく弱い方から自壊する。
その際周囲に及ぼす影響は、たかだか星が滅び生まれる、ブラックホールを遥かに凌ぎ。
ジュエリーもろとも、炸裂した。
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