Misswild
敵陣ど真ん中を駆け抜けるシフィーと他一行。
足止めに入る魔物は全て骨になり瓦解する。
サレンの生命魔法、不可逆の深老い人。
対象から寿命を奪い、肉体を果てさせる力業だ。
中には長命種も混じるが、一秒に付き五千年分の寿命を奪っているので十分しか生きない魔物であろうが千年生きる魔物だろうが総じて小粒扱い。
死骸で囲われた道の先、辿り着いた魔王城正門には、見覚えのある顔があった。
「魔王軍幹部、ドリアード、アンジェリカ――――フリート様から敵を通すなとのご命令だ。今すぐ帰るならば見逃すが、そうもいかないのだろうな」
「随分お優しく、ハッピーな事言うなぁ――――――――」
そう言うと、ヘルムが一歩前に。
腰のバレルショットガン型魔導銃を取り外し肩にかけると、楽し気に牙を剥きだし笑う。
「シフィーちゃん、初対面の相手ってのは中々信頼出来ないだろう? だから見てな。今からコイツを私一人で片付け、進むべき道を開こう」
「冠級冒険者なんだかもうけっこう信頼してるわよ?」
「まあまあ、よりいっそをね」
「ならまあ…………任せたわ」
「任された!」
赤い弾丸を込めると歩を進め、アンジェリカと互いが手を伸ばせば届く距離まで。
次の瞬間アンジェリカは自身が死にかけている事に気づいた。
ヘルムにはカイエンの様な圧倒的暴力、ジュエリーの様な技、アドミニストレータの様な破壊力、ブルーノの様な技術力と並ぶ特化した強みがある。
それは魔導銃使いに於いて欠かせない技能である速さ――――ヘルムと手合わせをした冒険者達は皆、一方的に蹂躙されるジュエリーやカイエン以上に為にならないと語った。
なんせ見えないのだから、学び様がない。
身の丈三メートル程あるアンジェリカの喉目掛け銃口を向け引き金を引き、魔力の炸裂音が響く。
放たれた弾丸は防御へ回されたツタに防がれるも、着弾と同時に発火。
着弾箇所を瞬く間に焼き尽くし、その脅威を晒した。
間髪入れずに放たれた二射目は回避され、即リロード。
今度込めた弾丸は水晶の様に青を孕んだ白と、黄色。
今度は一射目から回避するも、回避先既に放たれていた二射目が胴に直撃。
すると脅威的な胸囲とそこから下全てが凍漬けに。
砕いて脱出するのは一瞬だが、その一瞬がヘルムの前では眠りこけるのと同等の隙となる。
黄色い弾丸の着弾時発生する効果は、電撃。
氷漬けになり濡れた体は通電性抜群――――アンジェリカは身を焦がされ、絶叫を放った後膝から崩れ落ちた。
「痺れるだろう? 私の攻撃はさ――――さて、さっきは帰れば見逃すだなんて言ったね」
単純な魔力弾をリロードしてから、煙草を咥え魔術で着火。
一度煙を吐いてから、うつ伏せに倒れるアンジェリカへと銃口を向けた。
「アンタのボスの元まで案内しな――――そしたらハッピーをやろう」
「魔王様を裏切れと言うのか…………?」
「私達の戦力を削るためアンタを捨て駒にするクソッタレだ。そんな奴より自分を可愛がってやんな」
「私の忠誠を舐めるなよ…………! 因子、覚醒ッ!」
埋葬機関が使うソレは、未だ原理解明が済んでいない。
だが今分かった、埋葬機関だけの力ではないという事実。
それだけで、ここから先に待つ戦いの過酷さは跳ね上がった。
「私の因子継承率は八十九パーセント! 未だに埋葬機関なんかで燻っている奴らとは格が違う!」
「知らない概念の知らない数値を聞いてもビビり難いね――――しっかしなんだ、性長期か」
因子覚醒と同時、これまでに負った傷は完治して体が変化。
身長は更に五メートル程まで延び、見た目も人に近かったものから魔物らしく。
複眼、ツタを編み込んだ四肢と花のドレス。
ダンジョンボスが宝を護るが如く、魔王城寸前に立ち塞がる。
熱が治らないー
(更新状況とか)
@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)




