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●第2話

朝日で目が覚めるとアリアはまだ隣で寝ていて、僕の手はその胸の上に乗っていた。

暫くその弾力を楽しんだ後、そっと手を外す。

「やっと起きた。ふふっ私が起きているの気づかなかった?」

薄目を開けてアリアが呟く。

「ずっと前に起きちゃって、どんな反応するか見てたのっ。

慌てて手を放すかと思ってたけど、随分とお楽しみでしたねっ。」

「そんなっ少しだけだよ……。」

見抜かれて焦った僕に動じずアリアは笑う。

「ふふっ。そう、ボニの今日の衣装を窓際に用意しておいたから着替えて。」

振り返るとミニスカートにフリルリボン付きブラウスともふもふなブルゾン。

パンティとブラとパッドも用意されている。

「どうかな?似合うと思うんだ。」

「可愛いし動きやすそう。」

そう、僕が着るのでなければ……。

「気に入ってくれたら嬉しい。朝食も持ってるわけないね。

ロビーでパンが売ってるから着替えて買いに行こう。」

ベッドの上で身を起こすと、迷う間もなくパンティを差し出され、仕方なく自分のと履き替える。

ピタッとしているが圧迫はされてない小さめの布切れ。

「次はミニスカート。立ち上がって裾を捲って履くの。」

直接見ていないからか、変わっていく自分に気づかない振りをして履いてみる。

風もないのにスースーして軽くて履いていないようで落ち着かない。

胸の鼓動が大音量で聞こえてきそうなほど高鳴っている。

「はーい、ではワンピ脱いでね。」

背を向けるとワンピ部屋着が脱がされ、パッド入りのブラを手際よく付けられる。

「ねぇ、目の前に姿見鏡があるの気づいた?」

いたずらっぽく笑うアリアの声にふと前を見ると、全身を映し出すそれには可愛い女の子になってしまった僕がいた。

うっとりと自惚れてしまっている僕にブラウスを着せ、ブルゾンを羽織らせる。

「はにょ~~ん……夜には気づかなかったけど、ミニスカートはダメそう。

脱毛剤を錬金術師さんの所で買わないと。

とりま、最近流行のロングスカート履いてみよっか。」

渡された裾にフリルがあしらわれたスカートに履き替える。

「秋のお買い物コーデ完成!バッチリ似合ってるっ。」

ぱちぱちぱちっ手を叩いて喜ぶアリアに釣られ僕も手を叩く。

「可愛くされちゃいました。」

「可愛いっ。いいねっいいねっ。私もサクッと着替えちゃお。」

衣装掛けの向こうに消えると、手際よく着替えて戻ってくる。

緩めのフード付きパーカーにロングスカート。今の自分との格差が大きい。

「僕もそっちのが気軽に着れそう。」

「ふひひっ。今日はボニが主役だから、私は地味でいいのっ。

それに女子だから、『僕』は禁止。『わたし』にしよっ。

ほらっスカートは色違いで姉妹みたいでしょ?」

「わたしが妹かな?」

「そうだねっ。いっぱい可愛がってあげるからねっ。」

ギュッと抱きしめられると、本当に妹になってしまった様に感じる。


アリアの部屋を出ると朝霧は消えていたが風が冷たくなる季節を実感する。

ブルゾンがあって良かった。それでも女装には慣れることが出来ず足が覚束ない。

今日一日中、いや、これからずっとこの姿を晒し続けることになのだ。

アリアの前だけではなく、大勢の前で。


ロビーに降りてアリアが宿舎の管理人から軽食を買うと、外が見えるテーブル席にミチェがパンを齧っていた。

「おはようアリア、ボニ。やはり似合うじゃないか。」

「おはようミチェ。ムダ毛処理してないから、ミニスカは諦めたの。」

「おはようミチェ。僕……わたしの体毛は薄いから気にならないと思うんだけど。」

「そんな事ないし女子の嗜みなんだからっ。今日は錬金術師さんの所にいくのっ」

「嗜みは必要だぞ。私も用事があるから一緒に行こう。」

ミチェが言うと同じ言葉のはずなのに説得力がある。逃れることは出来ないのだろう。

「ボニ、一応言っておくと、依頼の無いオフの時は各自自由行動だからな。」

「私、手伝ってあげてるだけだもんっ。」

ミチェの言葉にハッとするが、アリアの言葉も最もだった。

「アリアありがとう。街のこと全然分からないし、わたしも連れて行ってほしい。」


「ところでボニはどんな魔法が使えるの?」

テーブルに着いたところでアリアが聞く。

僕は手荷物から出したコップに手をかざし手首を捻り、詠唱『クリエイトウォーター』。

水を注いで見せる。

「これがわたしの魔法『クリエイトウォーター』。一日10回ほど使えます。」

「他には?」

「他のは知らない。」

アリアとミチェは顔を見合わせて頷く。

「美味しい水なんですっ。」

不穏な空気を察知して、ごくごくと飲み干して見せ、もう一杯つぎ足す。

「アリアとミチェも飲んでみてくださいっ。」

「美味しいねっ。」

「ああ、美味しい。しかし、街で魔法教えてくれる人を見つけなければならないな。」

ミチュは真剣に悩んでくれているようだ。

「わたし色々魔法を学びたいです。この街に魔法を教えてくれるお店は無いの?」

「この街にも他の街にも無いな。

魔法使い自体が少なく、教えることを商売をしているのは聞いたこともない。」

ミチュの話から昔、学校にはいる時に将来の職業を選択するときに神父様から聞いた話を思い出す。

魔法の素質がある者の職業は研究職、神父、治癒師。どれも重要な職業で安定した高給取り。

特に研究職は王国や貴族の研究機関に入った者を指し、高い素質と実績を兼ね備えた人物が招待される狭き門。

通常は神父か治癒師を選択するのだと。

冒険者になる者は、高死亡率、低賃金など複数の理由から極稀だとも。

「そうだ、錬金術師は調合の仕上げに魔法を使うと聞く。学べるものがあれば良いな。」

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