僕と前田と時々スライム
思ったよりゲームの様な仕様になってしまった……。
春休みが始まって2週間が経った。その間何をやっていたかと言うと探索者免許の教習に行っていたのであるが、先日筆記試験が終わり、今日は、実技試験の日。と言う事で迷管省に来ている。実技試験は、指導員とで行われる。個人情報保護の観念からステータス獲得時の指導員、僕で言うと前田さんが今回、迷宮に同行してくれる。
地下一階の3号室にノックをする。
「おぉ!はいってくれ!」
とすぐに前田さんの声が返って来る。
「坊主か!久しぶりだな!」
「はい!お久しぶりです」
「確認だが、坊主の職業は、サモナーと陰陽五行使いで合ってるよな?」
「はい、あっています。」
「よし、だったらサモナー用の武具はないから護符と呪符を持ってくれば……」
前田さんが奥に引っ込み、古ぼけ何やら文字の書かれた長方形の紙の束、呪符と護符を待って来る。写真では見たことはあったが、実物を見るのは、初めてである。ましてやそれを触れるとなるとテンションが上がると言うものである。
「これを持って迷宮に入るが、迷宮では、何が起こるか分からないくれぐれも油断するなよ」
「はい!勿論ですよ!」
「それだったら早速行くぞ」
このテンションでは、何か間違いを起こしてしまいそうなので、深呼吸して気分を落ちすかす。やってきたのは、ステータス獲得時にも使用した洞窟型の迷宮である。獲得の時は、興奮で見れていなかったが迷宮入口の横にはその迷宮の基本的な事、出現モンスターや何階層あるかも書かれている。だいたいのダンジョンは、階層が深くなればなるほど階級が上がっていく、階級は、八級〜一級と、特級というのがある。この迷宮は、一階層しか無く出現モンスターは、九級のスライムと八級のビックバッドが出現し、階級は、八級である。
早速鉄扉を開け中に、入っていく。初めて入った時の感覚、暖かいものが腹に溜まる感覚は、無くその代わりに、洞窟だからだろうか奥から冷たく淀んだ空気が流れ込んで来る。本来嫌な感覚であるが、不思議と嫌な感じは、しなかった。
周りを見てみると前田さんがいないさっきまでは、居たのに何処に行ったのだろうか?
「さっきからキョロキョロしてどうしたんだ?」
「うわっ!」
後ろの何もない空間から前田さんの声が聞こえる。
「そんなにびっくりしてどうしたんだ?
……あ〜、そうか見えてないんだったな」
「何で透明になってるんですか?」
「魔物に見つからない為に姿くらましのポーションを飲んでるんだ」
「そうなんですね」
姿くらましのポーションは、その名の通り魔物などに見つかりにくくなるポーションである
「俺に気にせずやってくれていいからな!」
「はい、分かりました。」
実技試験の時間は、2時間以上である。3時間でもいいが、2時間以内に外に出ていいのは、緊急時だけである。
さて、内容はというと基本的には、自由であるもっとも、入口近くで立ち止まっていては、失格である。
迷宮内を少し進むと5メートル先にスライムがいる。スライムの体当たりの攻撃力は、たかが尻餅を作る程度であるが念の為、護符に魔力を流し簡易的な結界を作る。本来の結界よりも脆くはなるが、スライムだったらこれで大丈夫だろう。結界を張っている間にスライムが五十センチまで近づき動きを止まらせたかと思うと体当たりを仕掛けてきた。避けようとしたが初動が遅く、結界にかすってしまった。幸い割れなかったのでこのまま懐にあった呪符に魔力を流し、術を発動させる。
突然だか、スライムに効果的にダメージを与える方法は、2つある。まずは、魔法系統の攻撃であるこれが最も一般的で効果的である。しかし、物理系統の攻撃でも効果的なものがある。それは、叩き潰す攻撃である。有志の検証で大体1.5倍のダメージになることが分かっている。
僕の術だけでは、一撃でスライムを葬りさることは、出来ない。では、どうするか、そう!2つ合わせればいいだけである。ということで土の術を発動させ、スライムの頭上にスライムが潰れる程の大きさの石を降らせる。スライムは、ぺっちゃんこになり、やられる。計画通り ニチャァ
スライムの遺体が煙に包まれると魔結晶がドロップする。原理は、不明だがスライムが消え失せていた。
魔結晶を懐に入れて洞窟を進んでいく。ほぼ直進のみちを6分程進むと天井に張り付く80センチ位の黒い塊…ビッグバッドが4匹見える、改めて護符に魔力を込めたあと、敵は、まだこちらに気付いていないので、先手とばかりに呪符を発動させ5個の金属片を飛ばす。
前方の2匹は、上手く羽に刺さり飛び立てていなかったが、後方の2匹は、前の奴らが盾になり無傷だった様で、すぐに飛び突進して来る。余裕を持って避けていた筈だったが、動きが想像以上に速く2匹目の体当たりが胸の辺りにある結界に勢いよく当たり地に落ちたが結界が弾けてしまった。余りの威力におどろいている間に後ろに居たもう1匹の爪が背中に迫られ、前にジャンプして何とか避ける、避けられると思っていなかったのか、体勢が崩れた、奴の足を掴み地面に叩きつける。これで、4匹とも動けなくなったのでトドメを刺していく煙に包まれスライムの一回り大きい親指大の魔結晶も懐に入れ探索を続ける。
先程の戦闘は、とても危なかった。彼奴の爪が当たっていれば、試験が中止になる程の怪我を負っていただろうもう少し慎重に行かないと、下手すると死んでしまう。
慎重に行くと心に決めて更に進むと水色では無く灰色のスライムが現れる、土に潜んでいた様で目の前に突然飛び出て来たので驚いたがすぐに後ろに飛び距離を取る。
この灰色のスライムは、レアモンスターだ。
レアモンスター、略してレモン。とは100匹に1匹程の割合で生まれるとされている変異種で、大抵の場合通常種より1.3倍程強く、通常種にはないスキルがあるが経験値やドロップ品が通常種と比べて豪華なのだ。
この灰色のスライムは、通常種の物理軽減80パーに加え魔法軽減80パーが追加されるのだ。
ぜひ欲しい
ということでサモンモンスターのスキルを乗せた魔力をスライムに飛ばす。この魔力は、不可視で速度も速い為ほぼ避けられることは、ない 案の定スライムに当たる。これで倒せば一定確率で仲間になる筈である。
そうこうしている間にスライムが体当たりを仕掛けて来るこれは、余裕を持って避けて、スライムの上に岩を落とす。当たったと思ったが地面に潜られ逃げられる予想外の避け方をされ固まっている間に、後ろに移動したスライムが体当たりを仕掛けて来る。反応が遅れたがスレスレで避ける。
さて、一体どう攻撃をしようか?この様子だと大体の攻撃が避けられてしまうだろう、何かいい方法が無いだろうか………
そうだ!地面に戻れなくする様に地面から出て来る攻撃をすればいいんだ。
早速、術を発動させてスライムの足元の地面から針の様な一本の土の塊が結構な速さで出て来る。地面に潜れないまま針に貫かれたスライムに火の玉を投げる…ヒット!やっとスライムに攻撃が当たった。後はこれを繰り返していくだけだ。
〜30分後〜
「はぁ、はぁ、やっと倒れた。」
攻略法が確立出来たとこまでは良かったが、いかんせん魔法軽減が乗っているせいでまったく威力が出ず、時間が掛かってしまった。これだけ頑張ったのでどうにか仲間になって欲しいものである。そんな事を考えていると声が聞こえてくる。
『スライム(変異種)が仲間になりました。
獲得したモンスターは、念じると出るモンスボードに表示されます』
こいつ直接脳内に…!!
という茶番は置いておいて早速念じてモンスボードを出す
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サモン可能モンスター
スライム(変異種) 1匹
消費MP5
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MPはまだ残っているので試しに召喚してみる。
地面が光に包まれて敵だった頃より二回り小さい灰色のスライムが現れた。
桜「何か言う事あるよね?」
筆者「な、何もないよ?」
桜「へ〜しらばっくれるんだ」
筆者「だから、何もしてないよ?!」
桜「誰が丁寧じゃないって?」
筆者「そ、それは、桜の事言ったわけじゃ無くte…!」
桜「問答無用!●ね」
筆者「ぎゃー!」
筆者「気に入っていただけましたらいいね、ブックマーク登録、ポイントよろしくお願いします」
「「それではここまで読んで下さりありがとうございました」」