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(30/47)今夜も闘牛ゲームできるかな

 や、やばい。やばくない?これって、いい意味でやばくない?

 これ公にえっちなことできちゃう感じじゃない?

 いや、いいの?まじでいいの?

「ねぇ、ぽんこつ君、早くぅ」

 デトさんが濡らした唇を尖らせた。

「ほら、早くぅ、(あたし)を透視してみてぇ」

 本当に良いんですか!?

 よし、やってやる!

 俺はやると決めたら、やる場合もある男。

 今回はやる場合だ!

「よし!『トーシ・トーシ』!」

 叫んで目に力を入れる。

 猛スピードで視界が突き進む。

 赤いチャイナドレスが目の前に迫る。

「いけっ!」

 視界のスピードがあがった。

 ……いつもの木目が見えた。

「くっ……見えない……だめだぁ」

「あら、残念。ふふふ」

「けど、答えはわかっいるぜ!」

 俺はやると決めたら、やる場合もある男。

 今回はやると決めた上にやる場合だ!

「答えは!」

 両手の人差し指を頭にあて闘牛のように進み始める。

「答えは……ち……ち……ち」

 が、なかなか足も口も思ったように動かない。

「答えは!ち!ち!ちーっ!ちーっ!」

 叫ぼうとしたその瞬間。

「残念。そこじゃないわよ」

「え?」

「『ち』なんてつかないわ。透視ができない上にヒントからも外れちゃうなんてね。残念でした」

「え?え?え?」

「でも、まあ、そんな悪くはないわ。どっちかっていうと安心物件ね。ぽんこつ君はそのままかわいいぽんこつ君でいてね」

 デトさんが近寄て来てくれて、俺の顎をふわりと触った。

 当然舞い上がってしまうわけで。

「はい……。こんな色っぽくてゴージャスで素敵な……」

「ありがとう、ぽんこつ君」

「お金のお支払いが必要なお店の人に……」

「違うわよ!」

 ぼぬっ。

 デトさんの膝が俺の腹を直撃した。





 

 翌日。

 俺は二日酔いの頭と膝蹴りを喰らった腹に鈍痛を抱えていた。

「じゃあ、いってらっしゃい」

 シャーロットが宿屋の扉まで見送ってくれる。

「気をつけてくださいね」

「一緒に行ってくるから大丈夫」

 俺の横に立つチィが告げる。

「そうそう、ボクたちついてるから大丈夫。きちんと報酬もらってくるよ」

 と、リタがウインクをする。

「って、お前らは。どうせ俺の報酬が目当てなんだろ!」

「「いや?全然?」」

「言葉が揃っているところがますます怪しいっ!」

「二人ともカイさんに迷惑かけないようにね」

「迷惑っていうか、チィは手伝ってあげるのよ?」

「ボクの証言がないと、昨晩のように疑われるかもしれないし」

「おい!疑っていたのはお前ら二人だろうが!」

 そう、俺はギルドに依頼完了の報告をしにいこうとしているのだ。

「……まあ、いいや。じゃあ行ってくるよ」

「はい。いってらっしゃい」

 そういうシャーロットの笑顔にはやっぱりなんか陰があるようで。

 俺は進もうとした足を踏みとどめた。

「なあシャーロット。なんか悩みでもあるのか?」

「え?」

「いや、なんかちょっと、その、表情がさ」

「え?え?そんな顔してます?えっと……疲れているのかもしれないですね。きっと」

 と、シャーロットは両頬をさすった。

「そうだよ、昨日だって夜遅くまで宴会だったんだよ?」

「大したことない依頼の達成で浮かれたコトンボのような男がいたからな」

「っていうか、お前らもはしゃいでたよね?」

「カイほどじゃないでしょ。ボクはチャイナドレスで胸が大きな美人さんにときめいたりしてないんだよ?」

「俺だってしてねーよっ!」

「チィにはのりのりのように見えたけど?真剣な顔で鼻の下だけ伸ばして闘牛の格好してたのはなに?」

「う、うるさいっ!行くぞ!行くぞ!」

 そう言うと俺は宿屋の扉に背を向け歩き出す。

「じゃあ、ボクたち行ってくるね、シャーロット」

 俺を追いかけながらリタとチィがシャーロットに手を振った。

「でも、あのお姉さんは確かに綺麗だったんだよ?」

 横に並んだリタが言う。

「まあ、まずまず綺麗な部類だったわね」

 上から目線でチィも応えた。

「どこの人なんだろう?」

「ほら、カイ、やっぱり気になるんじゃないの?」

 リタが横目で俺を見る。

「男はやっぱりああいうタイプに弱いんだな。やっぱりゆさゆさな胸がポイントか?」

 見た目とは似合わない言葉をチィが出した。

「いやいやいや。そういうことじゃなく!……まあ、確かにゆさゆさな胸は確かに魅力的ではあるけど」

「カイ?ボクへのあてつけ?」

「そうじゃなくて。単純にチャイナドレスとかあまり見たことないから。デズリー(ここ)の人じゃないのかなと思って」

「まあ、確かにチャイナドレスは珍しいんだよ?」

「そうかしら?メイドが趣味でああいいう格好を……」

「え?チィの家ってメイドいるの?」

 リタがチィの言葉にくいついた。

「いや、それは」

「いやいやいや。こんなすれた、そうそう、こんなにすれた奴がメイドさんのいるようなお屋敷育ちなわけないだろ?」

 ……貸しだぞ、チィ。

 しかし、確かにエアコならああいう格好もしそうだな。

「まあ、世の中にはチャイナドレス好きのメイドもいるって話だろ」

「そう!そういうことよ、カイ」

「なあるほどなんだよ。確かに衣装好きみたいな人たちもいるからね。でもデズリー(ここ)では見ない顔だったんだよ」

「そうかあ。で?デトさんは何号室に泊まっているのかな?」

「じと」

「チィ。俺は擬音は自分の口で言うものじゃないと思うんだ」

「言わせたのはカイ(あなた)でしょ」

「いや、やましい気持ちで訊いたんじゃなく。ほら、その、今夜も逢えるかなとか、今夜も闘牛ゲームできるかなとか」

「十分やましいわよ。闘牛ゲームって……。そんな名前のゲーム初めて聞いたわ」

 チィが大きく息を吐いた。

「でも泊まってはいないんだよ?カイが膝蹴りをごちそうになって眠っところで宴会もお開きになって。そしたらあのお姉さんは帰っていったんだよ」

「ごちそうってなんなんだよ。確かに膝蹴りは一発でおなかいっぱいだったしもうたくだんだけど。って、え?帰っていった?」

「そうなんだよ」

「どこに?」

「チィも知らないわ」

「ふーん。宿屋で飯食ってたのか?宿泊客でもなくデズリー(ここ)に住んでいるわけでもないのに?」

「シャーロットのご飯は美味しいからいいんだよ?」

 シャーロットの料理の腕前のことなのに、なぜかリタはこれみよがしに胸をはっている。

 うーん、普通は宿泊している宿屋でご飯食べるんじゃないかな?

「まあ……、小さいか、な。まあ気にするほどでもないか」

 不思議な感じはするけど。

 ん?

 リタから痛い視線が送られている。

「ボクの胸が小さいとか言っておいてすぐに、気にするほどではないとか勝手に慰めるな!」

 と、すぐに平手打の痛さが頬を伝わった。

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