第三十六話 じゃあまたね
あれから数日。能力消滅装置に関しては完全にひと段落ついた。この装置に関しては最重要機密として取り扱われることになった。三大チーム、メクルチームとその他何人かしか知らない状況になっている。
悪用されたりバレルやデルマのように私情に使われることがあったりしないようにもそのあたりは厳重にしていくらしい。また、能力消滅装置以外にもいろいろ見つかったらしく李地さんがすごく忙しそうにしていた。一回見たとき何やらたくさんの紙や書物をもって走っていたが目がキラキラとしていたので多分楽しいんだろう。そして間木ちゃんがその手伝いに駆り出されていた。クロンさんから聞いたが李地さんと間木ちゃんはかなり仲がいいらしく兄妹のような関係らしい。お互いどこか馬が合ったんだろうとクロンさんは言っていたが多分似た者同士だったからだと俺は思う。何がかはうまく言えないが李地さんと間木ちゃんは似ているような気がする。
あれからメクルチームは休暇をもらって各々休んでいる。休暇の一日目はみんなお疲れ様、ということでぱーっと遊んだ。疲れているんだから休ませろとメクル、ケルトからすこし反対意見が出たが一緒に遊びたい隊長命令には逆らえなかったらしい。あの人の権限の使い道は残念過ぎる。
遊んでから2、3日後、ずっと一緒にいるわけでもないので各々自由に休んでいた。マゴとライはショッピングを楽しんだりおいしいものを食べるとか言っていた。メクルは何かすることがあるらしくどこかに行っている。ケルトはチームの休暇が終わるまで気楽に聖花さんやアルパさんの手伝いをしているらしい。まぁ手伝いといっても基本仕事終わりに愚痴を聞くだけらしいが。特にアルパさんはお酒に強いからついていくのが大変らしい。ケルトに「それパワハラじゃん」って言ったら「今度久慈さん連れてくから大丈夫」とのこと。まだ俺は久慈さん、ジゲルさんとはしっかり挨拶してないから今度ちゃんとあいさつしにいかきゃな。
それで、俺は何をしているかというと…
ユラ「…よう、久しぶりだな。」
そう言って俺はそこに座る。昔の仲間の墓だ。あの最後の場所ではなく、修行していた山に作った。
俺があの後一番最初にしたことだ。アレから立ち直るのに俺はまず5年かかった。そのあとに作ったもんだからなかなかきつかったっけな…
ユラ「山に下りてから来るのは初めてか?じゃあ結構感覚空けてたか。悪いな」
…何千、何万回考えたかはわからない。あの夜に戻ってみんなを救う方法を。でもこんなにたくさんの能力があっても考えつかなかった。時間関係の能力は持っていなく、どうにかできないか何年も考えたが無理だった。それでもそれしか考えることがなかった。この先本によって不老不死になり何をしていくか…たった一人でどうするか。そんなことは考えたくなかった。考えようともしなかった。怖かったから。でも、もう大丈夫
ユラ「さんざん迷惑かけて悪かったな。もう俺は大丈夫だ。…なんってったって仲間ができたからな」
それから俺は山から下りてからあったことを話した。
ユラ「で、今に至るなー。…結構いろいろあったもんだな。まだ一年もたってないのに」
80年のほうが短く感じるくらいだ
ユラ「…来るのはこれで最後にしようと思う。これ以上過去にとらわれちゃいけないと思ってな」
このまま昔に囚われたままじゃ俺はまた暴走するだろう。あれは二度とあってはならない。それに俺を止めてくれる奴はもういない。だからまずはトラウマからの克服を目指そうと思った。その第一歩が
これだ。
ユラ「…よし…。じゃあな。みんな。」
そして俺は立ち上がった。昔はここから立ち上がるのに何時間もかかったのに、今じゃ簡単に立ち上がれる。なんか感慨深い。空を飛んで帰ってもいいが…まぁ今日は歩いて帰るか…。そろそろ冬だな…
寒くなる。俺は仲間に背を向け歩いた
??「相棒!俺はまた来てほしいぞ!」
??「??さん…。ここは引き止めちゃダメでしょう…送り出してあげなきゃ…」
??「風邪…ひかない…ように…ね」
??「良かった…。やっと立ち直ってくれた。僕もまた来て欲しいな…今度来てね。約束だよ!」
…何か聞こえたような気もするが。まぁ気のせいだろう。…やっぱまた来るか。…涙はもう出す気ないんだがなぁ…
ユラ「はぁ…またな、みんな」
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それから俺は町に来ていた。今日の夕飯がないから。
正直食べなくてもいいのだが前聖花に見つかった時、「食え」ってうるさかったからなぁ…
にしても何にしようかな…どうせ食うならおいしいものがいいな
と歩きながら考えていると
「ぐー」っとなんだか情けない音が聞こえてきた。周りにあまり人はいないから誰のものかはなんとなくわかる。…というか
ユラ「お前何してんだ?」
安曇「…い、いまのうちのじゃないっすよ?」
ユラ「無理があるだろう」
クロンチームの安曇だっだか。久しぶりだな
安雲「いやぁー。ひさしぶりっすねぇ。てかユラさん何しにきたんっすか?」
ユラ「俺は夕飯の買いものだよ。何作ろうか考えてたところだ」
安雲「え、ユラさん飯作れるんっすか」
ユラ「まぁ…それなりに?」
そういうと安雲は目を光らせた
安雲「ま、まじっすか!神っすね、ユラさん。料理、教えてくれちゃったりしません?うちへたへたで」
ユラ「別にわざわざ作る必要ないんじゃないか?」
安雲「クロン隊長が健康にいいもの食えって…」
ユラ「家族は?」
安雲「あれ?言ってなかったっすか?うち孤児なんすよ。こじ」
ユラ「さらっというな…。なんかすまん」
安雲「あーあーいいんっすよ。そういう対応きらいっす!で!料理教えてくれるんですか!」
ユラ「なんで俺が脅迫されてるみたいなんだよ…。別にいいけど」
安雲「マジっすか!じゃあヨロです!」
てことでなんか安雲と夕飯作ることになった。なぜ…
ユラ「ほら…てかお前来るの二回目だったか」
安雲「そうっすね。じゃお邪魔するっす」
ユラ「狭いところですが」
安雲「似合わないっすねwwww」
めちゃくちゃ笑われた。
俺たちは買ってたものを冷蔵庫に入れたりしていったん一息ついた。まだ夕飯までは時間がある
安雲「うちも寮なんすけどひろいっすよね」
ユラ「ほんとにな。贅沢なもんだよ」
安雲「ほんとっすよ。こんなん維持してる隊長はどんなひとなんっすかねぇ」
ユラ「あったことないのか?」
安雲「無礼だからお前は会うなってレイ先輩が。」
…隊長と安雲は大丈夫な気がする
ユラ「今度会わせてやりたいな」
安雲「マジっっっすか!?」
ユラ「そんなすごくないぞあの人」
安雲「いやぁ…それでも隊長憧れなんでちょっと楽しみっすねぇ」
あんなんでも一応隊長。感覚がバグっていたがすごい人なんだもんな。まぁ再自覚しても子供のようにはどうしても見えるが。
そういえば隊長の能力って時間系の能力だったな…。今度詳しく聞いてみるか。
そのあと俺たちは夕食を作った。安雲は呑み込みが早く最初こそぼろぼろだったが後半は俺と同じくらいにはなっていた。
こいつ天才か?と思いほめてやったら
安雲「こりゃあユラさんを追い抜くのもすぐっすね!」
と調子のいいことを言っていたのでめちゃくちゃ苦いコーヒー飲ませてやった。
苦いっス!?と言いながらもなんだかんだ最後まで飲むからえらい。




