第三十四話 その後のマゴ
あの戦いの後ユラ先輩と一緒に瞬間移動で帰って、私はケルト先輩を医療チームの医務室へと運んでいた。
マゴ「なんだかんだ私が一番五体満足で終わったなぁ…」
先輩方はみんな何かしら攻撃を食らったり壁を壊した代償があったりしたけど私だけいいところ持って行って終わってしまった。
マゴ「結局最後まで守ってもらっちゃったかな…」
いや、そんなことはないか。最後はどれだけお膳立てされたとしても私にしかできなかったはずだ。リーダーはそう言ってくれた。だがこのまま一度の勝利にとらわれてはいけない。次使ったときは反動があるかもしれないし、もしかしたらもっとこの力をうまく使うことができるかもしれない。伸びしろはたっぷりあるんだ。がんばってライ先輩やケルト先輩のように人を守れるようにならなければ…
そんなことを考えていると医務室についていた。
私はドアをノックして中に人がいるか確認した。医務室はあんまり来ないし来たとしてもチームの誰かとしかきたことがないから少し緊張する。
マゴ「す、すいませーん。メクルチーム所属のマ…
言いかけたところでドアがバンッ!と開いて
???「うわっ…驚いた。…マゴっちじゃん」
この男性は堺田さん。魔警の医療チームの副隊長さんだ。
そもそも魔警のチームには私たち魔警の本業、戦闘・調査のチーム。補助役の医療・偵察などなどのチームに大きく分けられる。例えばクロンさんのとこは主に偵察や事務仕事などの補助チームだ。
逆に聖花さんのチームはバリバリ戦闘系のチーム。
マゴ「堺田さん!ケルト先輩診てもらえませんか。詳しい話はあとでするので」
堺田「ン…?…なるほどこれはひどい…何にやられたかわからないが…まぁとにかく中へ。」
そのまま医務室の中に招かれると中には一人しかいなかった。
カーテンがかけられており誰かはわからなかったが。
魔警の医療チームはあまり忙しくない。回復魔法の技術が大きく発達したからだ。
さすがに骨折などの大きい負傷や回復魔法で治せない病気はここに来ることになるが
基本的には人は来ない。大体のチーム回復役が一人はいるというのも大きいだろう。
ちなみにうちの回復担当は私と隊長だ。リーダーはライ先輩やケルト先輩のように身体能力が高かったり私のように補助に特化しているわけではなく大体何でもできるオールマイティ的存在なのだ。
とりあえず私はケルト先輩をベッドに寝かせた。
堺田「マゴっちが治せないんじゃ相当だなこれは…。まぁちょっと待っててくれ。ご存じの通り俺は回復特化というわけではないんでね。今ほかの隊員を呼んでくる。」
そういって堺田さんは応急処置だけして外に出て行った。
…ケルト先輩は今回一番苦労をしたかもしれない…
私がもっと強ければ、とは思う。だが悔やんでいても意味はないとケルト先輩にはよく言われているからか落ち込みはしなかった。むしろ次は守ってみせると意気込みまでしてしまった。
自分のポジティブさに少し罪悪感を感じつつ苦笑するとカーテンのかかったほうから声がした。
???「なーに笑ってるのよ」
聞き覚えのある透き通った声。この子は聖花チームの…
マゴ「コン!なんで?」
カーテンが開いたそこには赤髪ロングの女の子、木崎コンがいた
コンは私の同期だ。同じ魔法学校の同級生でもある。
私はメクルチームに入ったがコンは聖花チームに入った。同じとこに行こうよといったが断わられてしまった。なんでもライ先輩に憧れたんだと。じゃあなおさらうちにくればいいのに。同じ道を歩きたいらしい。まぁ憧れの意思で魔警の三大チームに入っちゃうのだから実力はすごい。
コン「ちょーっと任務しくじっちゃってね。んまぁもうほとんど治りかけでもう動けるんだけどギャラルのおっさんが許してくれなくて…。完治してからじゃないとだめだーってさ」
笑いながら言うが多分かなりのケガだったのではないのだろうか。ギャラルさんが心配性ってのもあるかもしれないが。
コン「で…なにがあったのよ。ケルトさんがそんなになるなんて…どんなやつにやられたの?」
あまり言ってはいけない話かもしれないがコンは聖花チームだから多分いずれ情報が入るだろうから
一部始終を話した。
マゴ「ってことがあって…」
コン「へぇ…ライ様でも満身創痍だったんだ…。すごい機械だったんだね」
うんうんとうなずきナチュラルに様付けするコン。ほんとにライ先輩好きだな…
だがうなずきをやめ目を細めいぶかしむようにコンは言った
コン「ほんとーにそのあとの二体マゴが倒したの?信じられない。そりゃマゴの強さはわかってるけど…」
マゴ「ほんとだって!ユラ先輩の助言が役に立ったんだよ…」
ほんとにあれがなければ全滅していた。とっさにあれを思い出してくれたリーダーにも感謝だ
コン「ユラ…ねぇ…。伝説だがなんだか知らないけどあったことない側からすると怪しいのよねぇ…。だって突然出てきて本持ってて…。何しでかすかわからないわよ?」
マゴ「うぅーん…。全然そんな人じゃないよ?面白い人だし…実際強いし」
でも知らない人からしたら胡散臭いのかもしれない。
そんなことを話していると堺田さんが帰ってきた。
堺田「すまない。遅くなったな。…おや?コンちゃんと話してたのか…。あぁそういえば同期だったっけか。」
コン「ちゃんつけないで」
堺田「ごめんごめん」
すると堺田さんの後ろからとげとげしい声がした
???「おい!早くけが人のとこに連れてけ。お前背が高いから邪魔だ」
堺田「これは失礼、リーダー」
後ろからでてきたのは医療チームカンザキのリーダー神崎ソウさんだ
彼女は魔警でもかなりの古参の女性でウルウ隊長と一緒に魔警を作った一人らしい。
確か年齢が50以上だったはずだが…正直見た目は私より若々しい。ちなみに私は23だ。
神崎「おや…これはまたこっぴどくやられたね」
そういって手のひらをケルト先輩に置き、能力を使った。
神崎さんの能力は『瞬間治癒』。この能力の一番強いところはデメリットがない。というところ
回復能力ならこの人の右にでる者はいないだろう。ただまぁ一つ…デメリットといえるものではないが
使った後本人が子供になる。
マゴ「…相変わらずかわいらしいようで。」
かんざき「ずっとこのままがいいんだがな」
子供になったからって能力が使えないわけではない。ただ子供になるだけなのだ。すこしたてば元に戻る。魔警一の不思議能力者だ。
かんざき「まぁこうなった理由は聞かん。興味もないしどうせウルウのバカが話してくるだろうからな。ただあと一週間は安静に頼む。傷口から病原菌が入っていないとは言い切れないからな。まぁ運動くらいはいいぞ」
安静にしなきゃなのに運動はいいんだ…
コン「それで、マゴはこれからどうするの?」
マゴ「リーダーに会いにいくよ。アルパチームと調査してるだろうから手伝ってくる」
コン「私も行こうかな…」
かんざき「まぁコンももういいだろう。…無茶はするなよ」
コン「大丈夫ですよ。何かあったらマゴが守ってくれますから」
信頼されてるなぁ
マゴ「はいはい、わかったよ。じゃあまず聖花さんに許可取ってこなきゃ。コン借りますって」
コン「私は物か!?」
そういって私たちは医務室から出た
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かんざき「仲がいいことだな…」
堺田「ほんとですね…」
静寂が医務室を支配する。安堵が過ぎ去り場には緊張と不安が漂っているようだった
かんざき「…コンのことだが」
堺田「わかってますよ…。それに何かあったら伝説に助けてもらいましょう。アレは俺たちじゃ無理です。それに…」
かんざき「…そうだな。可能性は少ないものな」
堺田「…はい。」
静かな医務室にはただならない雰囲気が流れていた…




