第三十話 番人
な、なんて人だ…
私達はユラくんの凄まじい力を見て
口を開けていた。
確かに信じていなかったわけではなかった。
ユラくんだったら壊せると、思っていた。
だがその気持ちの中、心のどこかで無理だと
思っていたのだろう…
そんな事が私の頭を埋め尽くしているところ
大きな声が私の耳に入った
マゴ「ちょ…先輩!?大丈夫ですか!?」
マゴちゃんがユラくんに駆け寄っていた
それもそうか、あんな力を出せば流石に最初の魔法使いと言えど倒れてしまうか
そう言って私はユラくんに近づいた
「……動…アガ‥」
ん?なんの…
次の瞬間、私の視界の端にいたメクルが
いなくなった…いや
ケルト「…!?メクル!?」
突然ケルトの隣にいたメクルがいなくなり
そこには…
???「ピッ…ピーガガガ…制御機能…解除まで…残り…ガッ…」
そこには機械めいた、人のような…いやこれはもうほとんど人と同じだ。よくよく見ると限りなく人間に近い、だがそれでもひとつ。
私達とはかけ離れたものがあった
ライ「な、なにこれ…お腹ないじゃん」
お腹がすかすかだった
これで動いているんだから多分人じゃない
…なんて考えてる場合じゃない!
こいつがどこから現れたとか何者なのか考えてる場合じゃない、うちの隊長を吹き飛ばした。
なら…!
ライ「ケルト、マゴちゃん!敵だ、やるよ!
マゴちゃんは隊長とユラくんお願い!ケルト!2人でやるよ」
マゴ「わ、わかりました!気をつけて!」
そう言ってマゴちゃんはユラくんを運び、メクルが吹き飛んだ方向へといなくなった。
???「ピ…チャージ…68%…」
チャージ?何を言っているか、どういった意味なのかイマイチわからないが、こいつが機械だと言う事はなんとなくわかる
ケルト「ライ!動いてない今を狙うぞ!補助を頼む!」
ライ「わかった!」
そうしてケルトは剣を握り、その機械に立ち向かった。
???「危険ヲ察知。迎撃。」
機械はまるで人間のように動きだし、ケルトの斬撃をよけ、受け流す。
ケルト「くっ…体の硬度が鉄以上だ!」
ケルトの剣が全く入らない
ライ「ケルト!ちょい避けて」
私はその機械に手を向け、雷を放つ
だが…
???「ギギギ…損傷1%未満。チャージ、継続」
傷ひとつつかなかった。なんなんだこの化け物
ケルト「ライでもダメか…ならば!」
ケルトは近づき、ケルトが出せる最大限を一気にぶつけようとしている。もちろん私も隙を見つけ攻撃するが…何か嫌な予感がする
???「チャージ完了」
ケルト「うおおお!」
素早く近づき、懐に潜り込み、放つ
ケルト「無流・鬼時雨荒咲!」
連続で目にも見えない速さでその機械を叩っ切る。だが…
ライ「ダメだ…!ケルト逃げ…」
???「起動:ポッカケルト」
瞬間、機械の手から光が集まり出し光線が放たれる。
ライ「ケルト!!」
私はその光線に横入りしようとしたが
遅かった…
…いや…?
ケルト「はあっ…はあっ…危なかった…」
咄嗟に避けていた?いや…光線を切っていた
でもどうやって…
ケルト「ぐっ…がはっ…まだあまり使ったことがないから体が慣れないな…斬撃の一般魔法。
副隊長から貰っていて良かった…」
なるほど、李地さんの!
そんなもの作っていたのか
とにかく助かった…が
根本的な解決にはなっていない
ライ「ケルト、下がって。疲れたでしょ。
私がやるよ」
ケルト「気を…つけろよ」
信用しているのか、はたまた疲れ切っているのかわからないがケルトはその場を一時離れてくれた。
ライ「さて、やるか。ちなみに君名前とかないのかな?」
???「名前…主カラハNトヨベト」
N…ねぇ。何かの頭文字?イニシャル?
思い当たる節はない
ライ「ん!案外話せるもんだね。じゃあもう一個聞くね。何が目的?」
N「ワタシハ、アノナカノ物ヲ守レトイウ命令ニ沿ッテイルマデデス」
ライ「なるほど!お話してくれてありがと!
おかげで…準備万端だよ」
さっきから身体の中で雷を駆け巡らせていた
よし、行ける!
ライ「【雷帝】インドラ」
雷が私の周りを纏う
ライ「さ、行くよ!」
音速に近い速度でNに攻撃をしかけるが
やっぱ硬い。雷も上手く通らない
ライ「【雷撃】イカヅチ」
ユラくんのステージ4には及ばないがかなりの高出力のはずだ
…だがそれでもNは立つ
N「次ハ…コチラカライキマス」
刹那、そいつは動いた。速く力強く。
ライ「ごはっ…!」
一撃の威力がおかしい!殴る力が人のそれじゃない。
ライ「しかも…インドラの速さについてきてる…!」
速く強く硬い…こんなんどうしろと。
その時、Nは離れた。
N「チャージ完了。起動:アガルパム」
これは…
キュイーンと音を出して拳をこちらに突き出してる…なんだ?
次の瞬間、とてつもなく速度でNは攻撃を放ってきていた。
ライ「こ、これか!最初にメクルを吹き飛ばしたのは!」
咄嗟にステージ3になり速度を上げたがそれでも掠った。
ライ「こりゃ…本気を出さなきゃかな」
N「懸命ナ判断デス。ワタシハ昔ノ能力者達ヲ元ニ作ラレテイマスカラ」
そりゃ強い筈だ。実質ユラくんみたいなもんじゃないか?
ライ「ご丁寧に説明ありがとう。でもね。昔の人達は強かったのかもしれない。私たちは遠く及ばないかもしれない。でも、それでも私達は私達を強くし続けている。大切な人を守ろうとしてる。それは昔も今も変わらない強さなんだよ?」
N「?」
ライ「そこは機械らしいんだね…」
そうだ。ユラくんは圧倒的だったかもしれない。それでも同じ人間なんだ。
ライ「【雷神】ゼウス」
私の最大の強化形態…これで決める!




