第十一話 知る者
ウルウ「ようこそ、英雄」
想像より幼く、背の低い女の子がいた。
…この子が隊長?そう考えるにはかなり無理がある風貌だった。女性ってだけでも驚いたがこんな女の子だったとは…
…どっかでみたような
ユラ「…背低いですね」
ウルウ「開始早々失礼なやつじゃな」
少し笑って座っていた椅子から立ち上がる。
ウルウ「今回呼んだのは単純に話してみたかったのと、頼みとお願いがあるんだ」
ユラ「最後二つ同じじゃないですか」
不思議な人だな…でもやっぱわがままの様な気もする。…にしても見た事ある顔してんだよな
ウルウ「なんじゃ?わしの顔に何が着いてるかの?」
そう言って顔を触る隊長。そのうちほっぺをむにむにしだし、最終的に変顔しだした。
ユラ「…子供じゃねぇか。」
ウルウ「む…今ので笑わないとは。やるな?さすが英雄様だ」
よくわかんねぇ人だなぁ
…俺はさっきから考えていた事を聞いた
ユラ「名字なんですか?」
ウルウ「む?御手洗だが…」
…マジか。子供か?こんなとこで会えるとは…
まだ俺が知っていた事も残っているんだな
ユラ「そっすか、ありがとございます。で、本題にそろそろ行きません?」
ウルウ「そうだな。まぁ少し話そうか。」
ユラ「はい」
ウルウ「驚いたじゃろ。こんな姿で。」
ユラ「そりゃまぁ。もっと筋骨隆々の大男かと思いましたよ」
ウルウ「わしは…実年齢22ぐらいなんじゃが10歳で成長が止まっての。そのかわり成長の分が力や魔力に移ったと考えとる。病気か、もしくはわしの持つ能力のせいかも知れんのう」
隊長は本をさすりながら話す。
ユラ「本は思ったより沢山あるんですね」
ウルウ「そうじゃな。『初期』のものからすればそう言う感覚かも知れん。あの頃より本は増えたからの。…まぁ能力者の数にはついていけてないようじゃが」
本は誰が作り出したのか、それは80年経った今でもよくわかっていないらしかった
ユラ「なるほど…隊長の能力は何ですか?」
ウルウ「わしの能力を知るものは少ないからのう。そんな簡単に教える気はないぞ」
そりゃそうか。弱点晒す可能性もあるからな
ユラ「それで、頼みって言うのは?」
ウルウ「この話は極秘なんじゃが…近頃能力そのものをなくそうとしている連中がいるらしくてな。」
ユラ「能力そのもの?」
ウルウ「昔、神様が能力者が増え過ぎて世の中がおかしくなる事を防ぐ為にそういった機械やらなんやらがあったらしくてな」
ユラ「昔…か」
最初の能力者も知らない話。一旦いつの「昔」なんだ?時空的な何かがズレているような…
ウルウ「それでだ、わしらはそれを止めたい」
ユラ「…手伝えって話ですか」
ウルウ「そうじゃ。魔警に力を貸してくれんか。英雄」
ユラ「魔警に入っている時点で手伝わなきゃいけないんじゃないですか?」
ウルウ「中々やってくれる人が少なくての。今のところレイとクロンだけしかOKしてくれてないんじゃ。アルパも多分やってくれるじゃろうが聖花は無理じゃろうな…」
ユラ「クロン?」
ウルウ「三大チームの1人じゃ」
アルパさん、聖花さん、クロンさんが三大チームのリーダーって訳か。まだ会ったことないから会ってみたいもんだな
ウルウ「で、手伝ってくれるかの?」
ユラ「もちろん。暇ですから」
ウルウ「うむ、ありがとう」
満面の笑みを浮かべ、隊長は頷いた
ユラ「それで、もうひとつはなんですか?」
ウルウ「わしのチームに入らんか?」
ユラ「…へ?」
チーム?隊長もチーム入ってるの?
ウルウ「昔は三大チームのリーダーとわしと李地の5人だったんじゃが、3人は自分のチームを作ってしまって2人しかいないのじゃ。チームは3人からなんじゃがのう」
ユラ「…隊長にチームって入ります?」
ウルウ「そりゃもちろん。魔警としてな」
なるほどな…にしても昔のチームは化け物だったんだな…
ユラ「ありがたいですが断らせていただきます」
ウルウ「メクルに気をかけるか…ま、そうじゃと思ったよ。」
口では堂々としてしているがしょんぼりしまくっている。マゴ以上に。女の子を落ち込ませるとは俺はクズなのか。
ウルウ「気に止む必要はない。またいずれ天才に頼む」
ユラ「すみません」
入ってみたかったがメクル達の方が気になる
ウルウ「話は終わりじゃ。」
ユラ「じゃあ次はこっちが頼みたいんですが」
ウルウ「よいぞ、なんじゃ?」
ユラ「ウルウ隊長は隊で1番強いんですよね?」
ウルウ「まぁな。過信ではないが、最強だと思うな」
ユラ「じゃあ俺がもし、敵対関係になったら殺してください」
ウルウ「…本気か?」
一瞬にして気配が変わる。背筋が無意識に伸びてしまう。
ユラ「…マジです」
その後、30秒ほど睨み合った後…
ウルウ「わかった、じゃが止められる気はせんがの。」
ユラ「無茶な頼み、すいません」
ウルウ「良いぞ、別に。…不安になる気持ちもわしはわかるからの。あの時はよかったの。良い相棒を持って」
ユラ「知っているんですか?」
少し驚いた
ウルウ「…『時間の傍観』それがわしの能力のひとつじゃ、まぁ他にもあるがの」
ユラ「中々不思議な能力を持ってますね…」
ウルウ「じゃろ?」
そう言って笑う隊長。こうして見ると普通の小学生だが、腹には堂々としたものがある。
ユラ「じゃあ帰りますね」
ウルウ「あ、わしもついてく」
とてとてと近づいてきた
ユラ「…いや、そんな自由に動いて良いんですか?隊長。」
ウルウ「お主、寮じゃろ。なら一目も少ないじゃろうし、何より興味があるからのう」
そう言って隊長は俺の部屋まで着いてきた。
途中で会ったケルトが口を開けたままこっちを見てたが気持ちがよくわかる。
ウルウ「あの者なんなんじゃ?」
ユラ「さぁ、魔警のトップでも見たんじゃないですか」
きょとんとした顔で隊長がこっちを見てきた。
その後、部屋で大量に質問攻めした挙句、勝手に俺の布団で寝やがった。
ユラ「…んだこいつ、まんまじゃねぇか」
でも俺は、隊長が堅苦しいやつじゃなくむしろ真逆な感じなのが嬉しかった。




