第十話 隊長
あの後、俺らは魔警の寮へと帰った。あの場でできる事はないし、あの2人の足取りはなかった。
俺は住む場所がないので寮に住んでいる。とは言え本部の寮にはほとんど人はいなかった。
アルパさん曰く「家があるから」。まぁ当たり前だな。80年経った俺に当時の人との関わりはない。だから家がある事が少し羨ましかった
メクル達から過去の事を聞こうとしたのだが、みんなバレルから思ったよりダメージを食らっていたらしく、一旦帰る事になった。俺が山にいた間、何があったんだろう…
そんな事を考えながらベッドでだらだらしていると…部屋の扉が開いた。
アルパ「よぉ、ユラ」
ユラ「アルパさん、どもっす。相変わらずの筋肉で。」
アルパ「おうよ!」
そう言って腕を見せつけてくる。近い。
ユラ「で、何の用ですか?」
アルパ「知りたがってる過去の話と、合わせたい人がいるんだ」
ユラ「…ありがたい話ですが過去の話はメクルの口から聞きたいです。…仲間なので」
アルパ「そうか…!ならそれがいいだろう。正直俺が間に入る話じゃないとは思ってたんだ」
にっかりと眩しい笑顔の内側には、何か過去を思い出したくないような感情が滲む
ユラ「合わせたい人がいるのも気になりますが…なんでアルパさんが昔話が知りたいって知ってるんです?」
アルパ「メクルが言ってきたんだ。俺の口から話して欲しいってな。今頃仕事部屋かトレーニングルームにでもいるんじゃねぇか?いるとは思わなかったとは言え、バレルに負けちまったんだ、そりゃ落ち込む」
バレルと昔何かあった…それしか俺にはわからないが、チームとして後で行ってやるか
ユラ「その合わせたい人ってのは?」
アルパ「魔警備隊隊長、ウルウ隊長だ」
名前だけは聞いたことがある。確か女性だったような…
アルパ「そんでもってな、俺が連れて行きたいのは山々なんだが何分忙しいもんでなぁ。夜は問題も多いんだ。」
そう言った瞬間、アルパさんのポケットが鳴った。
アルパ「ほら、すぐ連絡が入っちまう。スマホってのは不便だねぇ…てことで本部のエントランスに付き添いがいるから。じゃ」
アルパさんはそう言っていなくなった。
誰かわからないと困るんだが。
兎にも角にも俺はエントランスに向かう。
その途中、マゴに会った。
マゴ「あ、先輩…」
なんだか元気がない
ユラ「どーした?プリンなかったのか?」
マゴ「バカにしてます?」
そう言って少し微笑むマゴ。
マゴ「実はメクル先輩のとこ行ったら「今は誰とも会いたくない」って拒絶されちゃって」
ユラ「なるほど…メクルはどこにいたんだ?」
マゴ「屋上です。メクル先輩は落ち着きたい時は屋上に行くんです」
ユラ「わかった、ありがとな。…聞きたいんだがマゴは過去の事を知ってるのか?」
マゴ「詳しくは知らないです…。私も入ってまだ浅いので…すみません」
そう言ってしょんぼりしてしまった。
ユラ「そうか、うん。ありがとな。じゃまた明日。あ、後」
行こうと思ったが俺は振り返り
マゴ「はい?」
ユラ「マゴは笑ってた方が可愛いぞ」
そう言って頭をぽんぽんしてから、俺は行った
マゴ「…たらしっスね、あの人」
顔が赤くなっていくのを感じるマゴだった
ーーーーー
エントランスに着くと、夜にしてはそこそこに人がいた。誰か教えてもらってないからわかんねぇな…
レイパー「あ、いたいた。ユラくん。」
ユラ「レイさんだったんですね、付き人」
レイパー「あぁ、私は丁度暇だったものでね」
そうして、俺は隊長のとこへと向かった。
ユラ「レイさん、今回隊長に会うのって俺が呼ばれたからですか?」
レイパー「そうらしい。珍しい事だぞ?あの気難しい隊長が呼び出すなんて…」
ユラ「レイさん会った事あるんですか?」
レイパー「まぁ一応な。私が聖花チームってのは知っているな?」
ユラ「ギャラルさんから聞きました。確か三大チームのひとつでしたよね」
レイパー「そうだ。三大チームのリーダーは隊長と事前に言っておかなくても会えるからな。付き添いで会った事があるんだ」
ユラ「へぇ…どんな人なんですか?」
レイパー「一言で言えば…わがままだな」
笑いながらそう言うレイさん。
ユラ「わがまま?」
レイパー「あぁ、そうだ。まぁもう着く。その目で見れば良いさ。」
気づけば何やら重厚感漂う場所に着いた。
レイパー「この先は一本道だ。私はここまで。それじゃあな」
ユラ「あ、レイさん。ちょっと良いですか」
レイパー「ん?」
ーーーーー
レイさんと話終わった俺は、隊長の部屋の扉へと進み、ノックをした。
ウルウ「どーぞ」
中から女性…というよりかは幼い声が聞こえてきた。どう言う事だ?
その先には…
ウルウ「ようこそ、英雄」
そこには…思ったより背が低い隊長さんがいた




