第四十四話 うん、頼まれた
前クラリタと出会ったとき、あいつは自分が行動することを嫌っていた。だから今回もまず自分の味方に戦わせて俺たちの体力を減らしてから攻撃に移ってくると思った。だが俺たちはバラバラに行動し、一人でも体力が万全な状態で行く作戦だったので一応作戦通りか。
俺一人でクラリタのいる最上階まで来たわけだが…
ユラ「どうしよう…」
窓を突き破りその先の部屋にたぶんあいつはいるんだろうが窓が割れないのだ。耐熱性の高いガラスなのか熱しても歪まない。バーストで力を挙げて叩き割るか…
ユラ「《バースト》・ギガ」
そうして窓を割った俺はその先の扉を開けた。
クラリタ「おぉ…早かったね…あれ?ほかの仲間たちはどうしたんだい?」
ユラ「あんたの仲間たちと戦っているよ。」
クラリタ「なるほど、まず君だけでも私のところにたどり着こうという作戦か。」
ユラ「来れるなら、だれでもよかった。」
クラリタ「ふむ…まぁなんでもいい。さぁやろうじゃないか。こっちも化け物を放つ手段がなくなって困っていたところだ。だが炎の能力さえ手に入ればそんなことどうでもいい…」
ユラ「化け物を出す能力者はどこ行ったんだ?」
クラリタ「突然辞表を出してきたよ。あなたが勝つ未来が見えません、ってね。燃やしてやろうかと思ったが長く一緒に行動してきたもんだから見なかったことにしてやった。…そんなことはどうでもいいだろう?はやくその能力を手に入れたいんだ」
…確かにここまで来たら化け物が出ようが出まいが関係ないか。
ユラ「よし、じゃあその能力、奪わせてもらう。」
そう言って黒い炎をまとった。もう十分操れる。必要なのは黒い力を押さえつける精神力だった。
力で押さえつけては逆効果なのだ。
クラリタ「それはこちらのセリフだ。」
そう言ってクラリタも黒い炎を出してきた。
そして戦いは始まった。
ユラ「《ブラスト》・テラ」
クラリタ「そんなもの、炎同士には関係ないだろう?」
そう言ってクラリタはその炎をよけた。…それもそうか。
クラリタ「では次は私から行こう。」
そう言って一瞬にして近づき、黒い炎を拳にまとわせ殴りかかってきた。
スピードが段違い過ぎる…!よけきれずその拳を喰らってしまった。
熱い…?何故だ…炎同士には関係ないはず…だがそれを考える時間をクラリタはくれない。
連続で俺のブラストのようなものを放ってきた。…おかしい、そう思い俺はその攻撃を飛んでよけた。
クラリタ「気づいたのかな…?」
そう、あいつは炎同士には関係ない、と言ってさっきの俺のブラストをよけた。関係ないのによけたのだ。つまり…
ユラ「お互い、炎のダメージを喰らうんだな?」
クラリタ「その通りだ。同じ火のように見えて厳密には違う。水と油みたいなものなのさ。」
なるほど、ひとつわかっただけでも十分だ。
ユラ「どんどん行くぞ。」
クラリタ「ご自由に」
その後もあらゆる攻撃をしたがすべて躱され、いなされた。
黒の力で十分だと思ったんだがな…
あいつの攻撃は俺を追い詰めていく。
そして…
クラリタ「こんなものなのか…能力がかわいそうだ。私ならもっとうまく使える自信があるんだがな。」
もう息も切れてきた。次撃てるのが最高の一撃だ
ユラ「《ブラスト》・ブレイジング!」
高火力、超スピード。ひとつの街なら吹き飛ばせるほどの威力。
クラリタ「くだらない…」
そんなおれの全力をいともたやすく消すクラリタ
計算違いだった。同じ火の色でもここまで差があるとは…
クラリタ「終わりだ、少しは楽しめたよ。」
目の前に黒い炎が広がった。逃げる力もない。終わったか。
ユラ「後は頼んだ…」
死を覚悟した…その時。
シロ「うん、頼まれた。」
シロがその炎を風で舞い上がらせ
シロ「お返ししまーす」
クラリタに返した。
クラリタ「なっ!?」
ユラ「シロ…お前…アムはどうした?」
シロ「鳥人間と…戦ってるよ…」
セシルってやつか。まぁ大丈夫だろう。アムなら勝てる。
シロ「仲間の心配をしている場合か?…ってアムが言えって。
…全部読まれているんだな。アムは俺にとって最高の相棒…なのかもな
シロ「でもねでもね、おれ、あの人に…勝ったことないん…だ」
ユラ「俺と一緒ならどうだ?」
さっきまで動けなかったのに仲間が来たら心に火が付いたように体力が戻った。これも本の力なんだろうか?
シロ「…勝てそう」
ニッコリ笑顔でそう返してきた。
クラリタ「誰かと思えば捨てた犬ではないか。飼い主にかみつくつもりか?」
シロ「お前なんか・・・!飼い主じゃない!それに…犬じゃない!シロって名前…ある!」
クラリタ「それも十分犬らしい名前な気もするが…」
俺もそう思う。
ユラ「うっし、まぁとにかく反撃開始と行きますか」
シロ「いきますか!」
クラリタ「めんどくさいが…まぁいいだろう」
そうしてまた戦いは始まった。
シロは空をけり、風を操り、一気に近づき…
シロ「てい」
クラリタに腹パンした。
クラリタ「ごほっ…これは…一筋縄じゃ…いかなそうだ」
ユラ「おら、シロみたいな話し方になってるぞ。」
そして後ろに回り込んだ俺はクラリタを殴った。さらに…
ユラ「シロ!あれやるぞ!」
シロ「あれ?…あ、あれか」
俺は黒い炎をシロに放った。そしてその炎に風を乗せ…
ユラ「台風…完成だぜ」
シロ「だぜ」
黒いトルネードの完成だ。炎が利かないんならこの技は使えないと思っていたが使えるのなら話は別だ。
クラリタ「くっ…!?こんなもの…!」
そしてクラリタはその炎を無理やり抑え込み…黒い炎でできた球体状のものにに変えた。
クラリタ「ふはははは!返してやるよ!」
なんて奴だ・・・!
クラリタはそれを放ってきた。
シロ「えー…ちょっとちゃんとやろうかな…」
シロはそう言って自分の力を無限に上げ…
シロ「てい」
その放ってきたものを上に打ち上げた。見事にクロニクルタワーの屋根がなくなった。
クラリタ「は、はぁ?」
そうだった。この子化け物だった。
シロ「けが…ない?」
ユラ「おかげさまでな。」
頼りがいがありすぎる。
そして、さらに頼りがいのあるやつらが来た。
アム「うらぁ!大丈夫か!相棒!」
ユラ「アム!倒せたのか!」
アム「おう!なんなら能力奪ってきてやったぜ!」
そう言ってアムは翼をはやした。
クラリタ「セシルの奴…!!」
まぁそうだろう。だってアム、クラリタより強いもん。
ユラ「ん、お疲れ様。」
アム「おう!で、どいつがクラリタってやつだ!」
シロ「あれ」
アム「あいつかぁ!…ん?どこかで見たような・・・?」
この二人がそろえば負ける気がしない。
グラ「あれぇ!屋根壊れちゃってるじゃん!」
空からグラの声が聞こえてきた。何やらオーラのようなものをまとっているが…
グラ「おー!見事にボロボロだねぇ!クラリタさん!」
今までにない笑顔で言ってる。鬼だな。
アム「おい!そのふわふわしてるやつなんだ!」
グラ「ステージ3」
アム「なんだよそれ!かっこいい!」
完全にクラリタが怒っている。
ユラ「おい、クラリタ。残念ながらお前の仲間は全滅したらしいぞ」
クラリタ「くっ…」
もはや負けの未来なんて見えない。俺らの勝ちだ




