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【最初の魔法使い】  作者: コトワリ
第3章 最悪の魔法使い
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第七十話 不幸中の幸い

 現状を整理しよう。隊長の保険、『リセット&セーブ』を試した。そして心配性の隊長による更なる保険、何でも屋を依頼で呼んだという話を聞いて…で今その何でも屋がいる。いるのだが…


ミリニアム「おっほー、あんたが魔警備隊の隊長さん。女性と聞いてましたが普通の男子高校生みたいな感じじゃん。」


隊長室にずかずかと入ってきて、俺の目の前に立ちそういう。どうやら俺の事を隊長と勘違いしているようだった。ムリもない、こんな小さなのが隊長とは初見じゃ信じられないよな。

俺が哀れみの目を隊長に向けると隊長は俺が何を言いたいかわかった様子でほっぺを膨らませて、溜息を吐いた。


ウルウ「はぁ…あー、その。わしが隊長のウルウじゃ。それで…ミリニアムさんの足にくっついてるのはうちの隊員じゃ…。」


ミリニアム「え?…あ。ごめん気づかなかった…。」


ギャラル「…止めはしましたよ…。」


ウルウ「それがお前の仕事じゃ。よくやった。えらい。間違ってないぞ。ユラ、回復させてやってくれ。」


涙目のギャラルさんを隊長は懸命に慰めた。ギャラルさんは何も間違ったことしてないのだ。第一いきなり隊長の部屋に向かって無断で進んでいく人を止めるのは当たり前の事なのだが…。何分今のこの状況と不法侵入者の立場的に何も言えない…。やっぱ魔警一の苦労人はあんただよ、ギャラルさん…。

とりあえず俺はギャラルさんを回復させ、隊長は不法侵入者ことミリニアムさんを椅子に座らせた。


ウルウ「ミリニアムさんは何か飲むかの?」


ニア「ニアでいいよ。長いでしょ。みりにあむだと。ニアって呼んで。…コーヒーがあればコーヒーで。」


ウルウ「うむ、了解じゃ。ニアさん。」


魔警備隊の隊長をこんな足蹴に使うなんて…しかもため口。初対面で。相当なやつだな…。隊長の態度もどこか腰が低い。さっきの話を聞いた感じ魔警は何でも屋に助けられつつも迷惑もかけられているようだった。それに暗殺や強盗までやるなんて言ったら逮捕案件だ。それなのにも関わらずこうして隊長が客と認めているという事は単にニアさんは良い何でも屋なのか、それとも手が付けられないほどの強者なのか…。


ギャラル「ユラ、ありがとう。もう大丈夫だ。…それにしてもあの女性は何者なんだ?隊長があんな態度をとるなんて珍しい。かなり若そうだが…。」


ユラ「ドゥタラ家ってとこの人だと…。」


ギャラル「…隊長は何を考えてるんだ…。この場のことは任せたぞ、ユラ」


ユラ「え、ちょっ…」


ギャラルさんはそう言い残し足早に去っていった。なんなんだ一体。そんなにやばいのか。ドゥタラ家ってのは。


ニア「それで…あんたが隊長さんなのはわかった。君は?」


ユラ「俺はユラ。メクルチーム所属、魔警備員だ。」


ニア「ふつーの?」


ユラ「まぁ…そうだな。普通の魔警備員だ。」


ニア「へぇ…隊長の秘書とかじゃないんだ。」


ウルウ「どこが普通じゃどこが。あー…それでじゃが…まず一つ確認したいんじゃが…。」


ニア「お金でしょ?いいよ、ジルの料金、三億で。そういう話だったって聞いてる。」


ウルウ「そ、そうか?それは助かる…。わしには百億も払えんからの。にしても驚いた。まさかドゥタラ家の長女が来るとは…。」


ニア「うん。でもまぁまだ正式な契約はしてないんでしょ?だったらあと二、三か月待ってくれたらジルが来るけど。」


ウルウ「いや、それじゃ間に合わぬ。半年後の強敵の襲来。それに備えてお主らを呼んだのじゃ。」


そうだ、もうあと半年。一億の化け物とエル、ヒマル、そして未知数のゼンツが魔警もろともこの国を滅ぼす。時間はない。ここで三女のジルファルクが来るよりWAPの二位とも言われるミリニアムさんが来てくれた方が心強い。不幸中の幸いとはまさにこのことだ。


ニア「そ、じゃあ依頼の話を詳しくしたいけど…その前に。あんたはここにいていいの?」


ニアさんは首を傾けながら俺の方を見る。俺の事を言っているらしい。確かに普通の魔警備員がいてはいけない場ではあるか。


ウルウ「うむ。ふつーのとか言って居るが現状の魔警最強じゃ。」


隊長…褒めてもなんも出ないですよ。


ニア「え、嘘。あんなのが?魔警の隊長さんも面白い冗談言うんだね。」


ミリニアムさん、手が出るぞ。


ウルウ「本当じゃ。父上…御手洗ソウシは知っておるかの?父上はユラに負けたからの。」


ニア「五位が負けたの?それこそ嘘でしょ。」


五位?もしかしてWAPだとソウシさん五位なのか?魔警一位が全世界だと五位…。

世界は広いな。

俺はニアさんの前に出て、言った。


ユラ「勝ったよ。全力でやって。もちろんハンデなし。正々堂々、持てる限りのすべてをぶつけて勝った。嘘じゃない。」


ニア「…そう。」


ニアさんはゆっくりと立ち上がり、俺の前に立つ。

その時だった。

ニアさんは何もしてないはずなのに、俺はとてつもない圧を全身に受けた。能力によるものでもない、単純なる人としての強さ、実力、信念の圧が、俺を襲う。

この感じ…シアと同じだ。あいつを初めて見たときの、あの恐怖。絶対に勝てないというイメージを脳裏に無理矢理焼き付けさせられているかのような、あの感じ。


ユラ「…!!」


ニア「……あんたやるね。でも私ほどじゃない。三位にギリ、四位と互角かな。確かに五位を倒したかもね。嘘じゃなさそう。でも普通の魔警備員ってのは嘘なんじゃない?」


俺の前に立つだけで俺の実力がわかるのか?そういう能力…?WAPの二位の能力なんて、想像もつかない。


ウルウ「そいつは最初の魔法使い。聞いたことないかの?『初期』の生き残りじゃ。」


ニア「…マジ?そりゃ大物だ。じゃああんたはFWのリーダー?」


久しぶりにその名前を聞いた。FW。昔、仲間たちと一緒に作ったチーム。俺が作り、俺が…壊した。


ユラ「その名前をよく知ってるな。」


ニア「ジルが『初期』の事好きなの。よく調べててね。FWのリーダーには特に気に入っちゃってて。今度会ってよ。きっとよろこぶ。」


ユラ「あぁ、わかった。」


ニア「でも…意外とそんなもんなんだね。伝説も。」


…少し気にはなるが、確かにその通りだと思った。俺がニアさんに勝負を挑んでも勝てないだろう。


ニア「それじゃあまぁ依頼の話を聞こうかな。」


ウルウ「うむ。少し長くなるのじゃが、聞いてもらいたい。」


それから隊長は近くの国が滅ぼされたところから、『半平行世界観測』の能力によってその滅ぼしたやつらが次はこの国を魔警ごと滅ぼそうとしていることを話した。途中少し質問を挟みつつ、ニアさんは話を聞いた。礼儀正しい、とは言いにくいがそれでも落ち着いた淑女、という感じがする人だ。


ニア「なる、大体はわかった。天使ちゃんと悪魔ちゃん。それに大元の親分さんを止めるのが最終目標。で、私はその全体的な助力ね。」


ウルウ「そうじゃな。頼めるかの?」


ニア「うん。やる。魔警も大変だね。ドゥタラ家みたいな何でも屋にすら手を求めるなんて。相当切羽詰まってるの?魔警は集団としては世界の中でもトップクラスだと思ってるけど。」


ウルウ「一億じゃからの…。それに魔警本部がなくなれば世界中の悪人の野放しにしてしまう。これは全世界に関わる話じゃ。ここまで用意周到にしない理由はない。」


ニア「なるほど…。まぁドゥタラ家を呼んだからには絶対に負けることはないから安心してよ。それじゃあ…半年後まではとりあえず隊長さんの秘書としていさせてもらう。あんまり私の正式な立場をひろめたくないからね。」


ウルウ「了解じゃ。住み込むのなら寮がいくつか余っておる。好きに使ってもらって構わぬ。」


ニア「ん。…あんたも寮?」


ユラ「そうだが。」


ニア「じゃああんたの部屋の隣で。」


ユラ「確か空いていたはずだ。」


ニア「よし、じゃあ隊長。この契約書目通して署名お願いね。こういうとこはしっかりやるから。最初言った通りお金はジルの分でいいよ。そんじゃ私は…荷物寮に入れよかな。手伝って。」


ユラ「なんで俺が…。」


ニア「お隣さんでしょ。」


ユラ「…」


ウルウ「ユラ、任せたぞ。」


細い腕をとんとんと叩き弱いアピールをしているニアさんを俺は寮まで案内した。荷物をもって。多分この人の方が力つよい気がする…いや確実に。

寮に向かうまでに、ニアさんが質問してきた。


ニア「ところで…その…天使ちゃんと悪魔ちゃんが合体したやつ。」


ユラ「シアの事か。」


ニア「うん。どれくらい強い?私よりも強い?」


ユラ「正直…同じくらいだと思ってる。さっき俺の前に立った時と同じ気配を感じた。」


ニア「そ、わかった。」


ニアさんはさっきの話を聞いてもまるで他人事の様だった。確かにニアさんからしたら他人事ではあるのだが…。


ユラ「ちゃんとやってくれるのか?」


ニア「お金貰った以上はね。それに私より強いって…相当だよ。もしそれが本当だったら私はここ長年の悩みを解決できちゃう。」


ユラ「悩みって?」


ニア「私、もう何年も能力使ってないの。素で十分でさ。」


ユラ「…は?」


ニア「だからそのシアってのが本当に私くらいだったらいいなって。もはや願っちゃうよ。」


口角をほんの少しだけ上げてニアさんはそう言った。能力を使っていない…ということはさっき感じた圧も、俺の実力を見極めたのも、すべてポテンシャル…?

俺は上には上がいることはわかっていたが、その上にも上がいることに目を向けることになってしまった。


それから歩き、俺の寮の部屋に着いた。


ユラ「ニアさんの部屋は…右左どっちがいい?」


ニア「右。あとニアでいいから。私、あんたの年下なんだから。『初期』の人でしょ。同年代みたいに接してくれて構わないから。」


ユラ「わかった、ニア。荷物ここでいいか?」


ニア「うん。…えーと、あんた名前なんだっけ。」


ユラ「ユラだっての…。」


ニア「そうだった。じゃ、ユー君。なんかあったら呼ぶから。これから半月よろしく。」


そういってニアは荷物を小指一本で持ち上げ部屋に入っていった。実力があるとコミュ力もつくのか?会話の主導権常にあっちだったな。

にしてもユー君…。リネが聞いたら俺の命ないな。


そして俺も自分の部屋に入った。メクルチームの仕事を忘れたことにして。

その時、ピロンッ、とスマホにメールが届く。

リネからだった。なんだろう、さっきの会話を聞かれていたとしたら殺人予告だけど…


『来週の修学旅行。班考えといてね。私と二人きりでも可。』




今日の予定

ニア関連5割、修学旅行5割

実際

ニア9割、修学旅行1割。

なぜ…

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