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【最初の魔法使い】  作者: コトワリ
第3章 最悪の魔法使い
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第六十八話 半平行世界観測

 夏休みも終わり、また学校の毎日が始まる。今日は夏休み明け初日の学校だ。


築地「やーうちのクラス諸君。日焼け具合からも夏休みの満喫差がよくわかるが…果たして宿題はやったのかな?」


クラスから事件性の感じる悲鳴が聞こえる。今日は初日の為、一度クラスで集まり提出物などを出した後に全校生徒で集まり校長…いや隊長の話を聞いておしまいである。


聖花「クロ君は大丈夫ですよね。」


クロ「もちろん、聖花さんのおかげで。」


昨日は24時間机とにらめっこだった。比喩ではない。マジである。


テンス「なんとか終わらせたけどタクは…その…」


フミ「タク終わってないの?」


タク「俺にしては半分も終わらせた。奇跡だ。」


タカナ「どや顔するレベルじゃないな。」


そのドヤ顔でさっき叫んでたのかよ。


築地「まぁ夏休みは楽しむことが一番の宿題だ。楽しめていたなら十分さ。タク、あとで終わったら来い。」


タク「言ってることが矛盾してませんか!?」


築地「はっはっは」


そう笑う先生の目が死んでいることに気付いた。


ケイキ「せんせーの夏休みはぁ~?」


築地「…」


察してあげてくれ。確か先生は魔警にも所属していたんだっけな。俺たちが夏休み期間いない分、魔警でしこたま働いていたんだろう。俺達メクルチームは特殊でほとんど事務仕事だが他のチームではその事務仕事と問題の起きている現地での仕事の二つを両立しているらしい。そりゃあんな目にもなる。


聖花「…先生、目が死んでますよ。」


築地「うっ…聖花さんはいいですよね。仕事のほとんどを一人でこなしちゃうレイパーさんがいて…。」


聖花「何を、私だって頑張ってますよ。」


築地「海、花火、ショッピングにプール、あと…」


聖花「先生お疲れ様です。さすがだと思います!!」


築地「これが聖花さんだ諸君目を覚ませ。」


そんなこんなで他愛のない雑談が続いていき、やっと全員分の提出物があつまった。このクラス大丈夫なのか。


築地「よし、それじゃあ校長先生のありがたい話でも聞きに行きますかね。全員すぐ移動。」


先生の声でみんな立ち上がり、体育館に向かう。


ツル「クロ君!」


クロ「おぉ、木京さん。お祭りで会ったけどやっぱり久しぶりな感じがするね。」


ツル「そうだね。クロ君は夏休み何してたの?」


朝起きてチームの部屋に行き、事務仕事からの帰って睡眠、繰り返し

とはさすがに言いにくいので…


クロ「ゲームかな。ほとんどゲーム。あとはみんなで海に行ったり…そういえば木京さんは海にはこなかったね。」


ツル「私も海行きたかったんだけどほかの用事と重なっちゃってね…」


クロ「そうなんだ。」


こんな他愛のない会話は久しぶりだ。いや、会話自体久しぶりに感じる。メクルチームの皆様方のあの殺気だった雰囲気と言ったら…


聖花「ルカさんをナンパしたり?」


クロ「そうそ…してねぇよ!?してないよ?!」


ツル「な、なんぱ…?!」


クロ「してないから!」


聖花「ふふ…楽しい。」


素出てんぞ…こいつ…。俺は一度木京さんから離れ、リネに耳打ちした。


クロ「あんまり広めるなよ…ルカが可哀想だろ。」


聖花「私の名前を呼び捨てしてくれたのは付き合った後なのにルカさんはもう…」


クロ「だぁああ!」


ガザル「おぉ!?どうしたクロ…」


タク「バカ言っちゃいけねぇ。聖花さんと秘密の会話。理性だって保たねぇさ。なぁ?」


テンス「全くだ、異論の余地もない。」


お前らは何の話なんだ。

そうして体育館に付き、隊長の話を聞こうと待っていると…隊長は出てこなかった。


李地「あー。テステス…。今日は隊長の体調が優れないので私、副隊長の李地がお話をさせていただきます。」


クロ「体調の隊長が…?」


聖花「クロさん、何がかは分かりませんが多分逆ですよ。」


あのいつも元気な隊長が風邪なんかを引いたりするのは想像がつかないが…。少し嫌な予感もしたがあの人だって人間なのだ。風邪の一つや二つかかるだろう。


李地さんの話は思ったより面白く、なんなら隊長より校長先生している気がした。

話も終わり、俺たちは解放された。ほかのクラスからは「遊びに行こうぜ」なんて心地のいい言葉があふれているが俺はかえって仕事である。俺は何をしているんだ…。


ニャム「じゃーなークロー」


クロ「おう、またな。」


ニャムとゲームの話を少ししてから帰路に着いた。すると後ろからリネが小走りでよってきて、俺の横へ立つ。


聖花「お待たせ」


クロ「ごめん、待ってない。優しさからの全然待ってないじゃなくてほんとに待ってない。」


聖花「私もこのまま仕事なの。一緒にいこ。」


クロ「ほいよ。」


余り会話もせず黙々とリネの歩くスピードに合わせて進む。この空間に味気なさを感じたのかリネが話し出す。


リネ「隊長大丈夫かな。」


クロ「あの人はそんな玉じゃないと思うがな。」


リネ「それは同感だけど。」


クロ「一緒の部屋だろ?隊長見てないのか?」


リネ「今日は朝からいなかった。神崎さんのところにいると思ってたんだけど…」


李地さんのあの様子的には多分なんかあったわけではないんだろうけど。それでも少し気になる。


リネ「ねぇ、ユラに戻ってよ。」


もう魔警の前まで来た。クロになっておく必要はないだろう。


ユラ「はい。」


するとリネは俺に抱き着いてきた。結構骨を折る勢いで。


ユラ「おぉ、どした。」


リネ「…最近ユラと過ごしてない気がして。」


ユラ「昨日散々俺を縛り付けて宿題やらせたのは誰だ。」


ずっと俺の足の中で座ってるもんだから終わったころには足が壊死したんじゃないかってくらい痺れていた。


リネ「やらせた?」


ユラ「…やっていただけて感謝しかありません。」


リネ「よかろう。じゃまた、ユラの部屋で。」


ユラ「わかった。」


俺はリネと一度別れ、メクルチームへと向かった。そこには…


ウルウ「おぉ、遅かったの。ユラ。」


ユラ「あれ、隊長?」


体調を崩したのでは?


マゴ「あ、ユラ先輩。お疲れ様です。」


ユラ「おう、お疲れ。なんで隊長いるの?」


マゴ「先輩を待ってたらしいですよ。」


ウルウ「そうなのじゃよ。ちょっとユラに用事があっての。ここで待たせてもらった。」


ケルト「隊長がいると緊張してあまり仕事がはかどらなかった。」


ユラ「まぁこんなのでも隊長だしな。」


ウルウ「こ、こんな…ま、まぁよい。それよりメクル。ユラを借りていくぞい。」


メクル「ご勝手にどーぞ。今は僕たちあんまり忙しくないですし。」


ユラ「俺の価値軽くない?」


メクル「潜入捜査でナンパしたって聞いたけどほんと?」


ユラ「俺の情報早くない?あとそれ荒唐無稽ですから。」


ウルウ「そうじゃぞ、メクル。ユラはそんな男じゃなかろう。」


ユラ「た、たいちょおぉ…!!」


ウルウ「ユラ、あとでちゃんと話を聞こう。」


ユラ「た、隊長…」


俺のナンパの話をするのか、それとも俺を待っていたもう一つの別件について話すのかはわからないが俺は隊長の部屋へと連れてこられていた。


ユラ「それで何か俺に用事ですか?」


ウルウ「うむ。話しておきたいことが二つあっての。一つがゼンツについてじゃ。もうあの話はメクルから聞いたかの?」


ユラ「あぁ、あの…一億の化け物の話ですか?」


少し前にメクルから聞いていた。ウルウ隊長の予想では今後一億の化け物…つまりはゼンツが作った軍団が魔警を滅ぼすと。それも俺たちの魔警本部だけではない。西も東も、さらには魔監獄まで崩壊するというのだ。


ユラ「正直、信じてはいませんが…。」


ウルウ「まぁそうじゃろうな。魔警のものもあまり本気で受け取ってはおらぬ。エルやヒマルについての話も魔警に全体公開させ、より捜索網を広げたがあまり変わっておらぬしの…」


ユラ「その話は本当なんですか?」


ウルウ「本当じゃ、と言っても信じにくいじゃろうからわしがこの結論に至った理由を話そう。緑光魔警。紫陽花隊長のとこじゃな。そこの副隊長の能力がまた複雑での。『半平行世界観測』という能力なんじゃ。」


ユラ「平行世界…ですか。」


ウルウ「そうじゃ。わしの過去を見る力と似てはいるがわしのものよりずっと強力なのじゃがその分やっかいでの。生木(なまぎ) 蒼管(そうかん)というものが所持しておる。この能力は存在する平行世界の起承転結を見ることができるのじゃ。」


さらりと言ったがするりと頭には入ってこなかった。平行世界の…起承転結?


ウルウ「例えば今わしがここのあるペンを落とすとした時、平行して落とさなかった世界があるわけじゃ。さらに言えばペンを落としたとして更にこのペンの蓋が開いた世界と開かなかった世界に分岐する。この事実とは異なるあったかもしれない世界。その平行世界の起承転結を見ることができるのじゃ。」


ユラ「起承転結っていうのはどういうことです?」


ウルウ「それがこの能力の複雑なとこでのぉ…。半、とついておるじゃろ?この意味として、自由に見たい世界が見れない、そして三十分に一度しか使えない、最後に断片的にしか見えないというデメリットがあるのじゃよ。起承転結と言ったが遠い世界を見ようとすれば起と結しか見えないことだって珍しくないのじゃ。」


つまりは…制限付きの未来予知、ってことか。


ユラ「今の話的に未来の平行世界では魔警が一億の化け物に滅ぼされるという事ですが…平行世界ならまだ確定ではないんじゃないんですか?」


ウルウ「まぁそうなのじゃが…ほぼ確定と言っていいとわしは思っている。蒼管になんどもなんども平行世界の断片的情報を調べてもらったが魔警が一億の化け物によって滅ぼされなかったことは指で数えるほどしかなかった。さらにはその滅ぼされなかったケースも地震や火山の噴火など別の災害によるケースだったのじゃ。」


ユラ「なるほど」


一度に多くの情報が入ってきて混乱はしているが隊長の言いたいことはわかった。確かに言った通りならゼンツが一億の化け物を作り出し魔警を滅ぼそうとして、実際に魔警が滅ぶのだろう。


ユラ「ちなみにいつかはわかるんですか?」


ウルウ「細かい日はわからぬがおおよそ次の春じゃと思っておる。半年じゃな。」


ユラ「半年…対策は何かもう考えているんですか?」


ウルウ「もちろんじゃ。魔警の強化はもちろん他国への要請もしておる。が、何分憶測としか思われておらぬ。蒼管の能力はあまり他言無用じゃからの。あんな能力、悪用でもすれば大変じゃからの。知っておるのはワシやほかの隊長だけじゃ。」


ユラ「とりあえずはわかりました。俺もできる限りのことをしましょう。あとはエルとヒマルを戦闘不能にできれば一番大きいんですけどね…」


ウルウ「そうじゃな。当分のお主の課題は自己強化とその二人の身柄拘束、もしくは能力剥奪じゃ。頼んだぞ。」


ユラ「了解です。それじゃあこれで」


ウルウ「待つんじゃ。今日の一番の目的がまだある。」


ユラ「一番の目的?」


ウルウ「うむ、万が一の保険づくりじゃ」



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