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【最初の魔法使い】  作者: コトワリ
第3章 最悪の魔法使い
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第六十三話 花火よりも釘付けに

8月14日


今日は夜に夏祭りがあるらしい。夏休みが始まる前にガザルから聞いていたのだ。魔警最強決定戦も終わり仕事尽くしだったので久しぶりに休みらしい休みだ。メクルチームはイベント好きなので全員参加。よって今日の仕事は後日に後回し。困ったらギャラルさんを頼ろうという事になった。勝手に。


クロ「ここら辺に…あ」


祭りの場へと向かっているとガザルやタク。テンスたちを見つけた。


ガザル「おぉ!クロ、久しぶり。」


クロ「おう。元気だったか?」


ガザル「あぁ、もちろんだ。クロも元気そうで何より。」


タク「クロ、遅いぞ!」


クロ「悪い悪い。」


フミ「私たちだってさっき来たばっかりでしょ。」


ケイキ「そうだよぉ。タクくん待ちきれないんでしょぉ?」


テンス「足が止まってないもんな。」


タク「うぐ…」


タカナ「待ちきれないぞ!それでも!おなかすいた…」


ドラ「そうだそうだ!」


タク「だよなぁ!」


結構大勢来ているようだ。


タク「あとは…木京と聖花さんか?」


フミ「そうだね。まぁ女の子は忙しいもん。準備。」


ケイキ「だよねぇ~。これおいし…」


タク「何もう食ってんだよ!?俺にもくれ!」


ケイキ「やだ~」


そう言ってケイキがタクから逃げた先に、恐ろしいものがいた。


聖花「ちょっと、甘味さん…危ないですよ」


息をのんだ、いや、息さえ飲む暇もなく、俺たちはその声の主に釘付けになった。

浴衣姿のリネが、そこにいたのだ。

藤色の花びらの模様が綺麗なその布に、負けじと綺麗な人がそこにいた。


聖花「…あ、あの…」


その声でみんな我に返る。


フミ「かっわいい!!!流石だね!聖花さん!」


ケイキ「うんうん~!食べちゃいたい!」


タカナ「ケイキ、お前が言うと冗談に聞こえないぞ…」


聖花「あ、ありがとうございます…」


女子メンバーはとにかくリネを褒めたたえている。全くお世辞じゃないあたり、本気でリネが可愛いと心から思っているのだろう。

ちなみに男子メンバーは…


タク「おい…俺の目はどこに…」


テンス「俺もだ…聖花さん…いや聖花様を見てから目がなくなったように感じる。」


ドラ「ない…ないぞ!」


ガザル「おーいお前らー。帰ってこーい」


本当だぜ…少しオーバーが過ぎるってもんだ…全く。

…あれ、俺の目がない。


ガザル「クロ…お前もか」




その後、リネを褒めたたえる会も終わり無事目を見つけることに四人とも成功した。


タク「それじゃあ行く…」


フミ「まだ!ツルちゃんが来て…


若干タクの首を絞めてフミが止めたとき、木京さんがきた。


ツル「お待たせっ!ごめん…準備が…」


木京さんは浴衣姿での登場だった。リネと木京さんは浴衣だったから遅れたんだな。

木京の浴衣は深緑の派手さはないがとてもきれいな浴衣だった。


フミ「ツルちゃん!綺麗!」


ケイキ「わー抹茶ー!」


タカナ「もうケイキ限界だな。」


タク「よし!それじゃあさっそく行くぞ!」


テンス「おう。」


そうして俺たちの夏祭りが始まった。

魔警のあるこの町はかなり大きくその分祭りの規模も大きい。多くの人がこの祭りを楽しみに来ていた。


タク「たこやきウマ!」


ケイキ「わたあめおいしぃ…」


フミ「食べすぎ…」


あの二人は常に食ってるな…


タカナ「テンス、射的勝負しよう」


テンス「いいぜ。勝った方がラムネおごりな。」


タカナ「望むところ!」


様々な出店が出ており、少し懐かしさを感じる。最後にお祭りに来たのは何十年前かな。

俺もみんなとはぐれないよう適度に歩いているとガザルに呼ばれた。


ガザル「クロ、くじ引きやらないか」


ドラ「三人でやろう!三回だと通常よりちょっと安いんだ!」


クロ「いいよ、やろうか」


こうしてお金を出し合うのも楽しかったりする。


「あいよ、三回ね。このくじをめくって数字が小さければ小さいほどあたりだよ。」


店主さんの説明が終わり、俺たちはくじを引いた。正直当たるとは思っていない。だってこういう店ってそういうものだろう。

俺は手を伸ばし箱の中からくじを引いた。そこに手が届かん。どんだけ入ってんだこの箱。

結果は…


ドラ「382…」


クロ「642…」


ガザル「2!」


ドラ・クロ「に!?!?」


なんだ「に」って。すげぇな。


「おぉ!?に!?」


店主さんの顔が青ざめてんぞ。


クロ「すごいな…」


ガザル「俺運はいいからなぁ~」


うちのクラスの環にも負けない豪運だな…


「ほら、これが景品だよ。」


そう言って渡されたのは結構いいゲーム機。最近リネが俺の部屋に来るたびにやっていたな。


ドラ「おおぉ!!これすごいやつだぞ!」


ガザル「そうなのか…?俺はあまりゲームはやらないから…弟に渡すか…」


幸せな弟だな。

そんな感じで祭りは歩きを進めていった。


ケイキ「おいしぃ~」


フミ「あんた両手常に何かで埋まってるね…」


内臓が全部胃袋なんじゃないか?

ケイキを信じられないような目で眺めていると、木京さんが少し落ち込んでいる様子なのに気づいた。


クロ「どうしたの?」


ツル「クロ君…。なんでもないよ!」


作ったような笑顔を見せてくる。誤魔化すのが苦手だなぁ…

そのまま俺は木京さんの作られた顔をじーっと眺めた。少し木京さんの顔に汗が伝ったあたりで、あきらめたようにため息をついた。


ツル「はぁ…クロ君には敵わないや。さっき、私遅れてきちゃったじゃん?」


クロ「そうだな。」


ツル「聖花さんが先に来ていたでしょ?それで…その…せっかくの浴衣をあんまり見てもらえなかったなぁって…」


なるほど。言いたいことはわかった。だから、俺が言わなければいけないこともわかっている。


クロ「俺は…似合ってると思ってたよ?その浴衣。とってもきれいだ。」


本音をぶつければ、そこには嘘ではない本当の笑顔が帰ってきた。


ツル「え、えへへ…ありがと…」


お世辞ではない。それだけは心に誓う。


タク「熱々ですなぁ…」


ケイキ「ですなぁ…」


ツル「ちょっと!タク君!ケイキちゃん!」


タク「逃げろっ」


ケイキ「逃げろぉ~」


仲がいいことで。

そうして手にちゃっかり食べ物を持つ二人を木京さんが追いかけた。

その時、腰のあたりを少しつねられた。


クロ「あて」


聖花「むぅ…」


そこにはふくれっ面のリネさん


クロ「…ごめんって」


聖花「むぅぅう…」


これは何か買えのサインだな。

俺はそれを察し、いろいろな屋台を指さしていく。


クロ「やきそば」


聖花「…」


クロ「りんごあめ」


聖花「…」


クロ「…かき氷」


聖花「…いちご」


クロ「はいよ」


俺はリネにかき氷を買ってやり、一緒にみんなと歩き出した。


クロ「リネは浴衣だと可愛いというより綺麗だな。」


聖花「…ども」


そういうリネの顔を見るとかき氷のいちごのシロップに負けないくらい、赤くなっていた。

なんだこいつ可愛いな。


フミ「そろそろ花火上がるってさー!」


ガザル「おぉ!」


ドラ「飛んでみてくるか!」


タカナ「ドラ!燃えるぞ!?」


みんなで食べ歩き、そして遊びながら打ち上げられ始めた花火をみる。

楽しい、純粋に心から思った。


クロ「綺麗だな。」


聖花「…そだね」


リネは素を出していることがばれないように小声で話す。

いつもの口調で話したほうが楽だろうに、俺と素で話してくれようとしているその姿に俺は心動いた。


ドォーーーン…


その日一番であろう大きな花火。それよりも綺麗なものに、俺は…


聖花「わ、きれ…………え」


誰しもが花火に釘付けになるその瞬間、その一瞬、俺はクロからユラへと戻り…


ユラ「好きだよ、今日も、明日も。」


リネにキスをした。


聖花「…ふぁ」


花火が散り、俺もクロへと戻る。例え俺が作った俺の仮の姿でもリネを奪われたくない。


ドラ「すごかったなぁ!!」


フミ「うん!!!もう目が…なんか一周回った」


タク「どういうことだそれ…ん?聖花さん?」


リネは完璧固まっていた。石像に化している。


ケイキ「あれぇ~?固まっちゃってるよぉ?」


タカナ「大きな音で驚いたのかな?」


テンス「聖花さんにも弱点があるんだな。」


そうしてお祭りも楽しく終わり、リネは大きな音が苦手だという噂が流行った。


あの後めちゃくちゃリネに怒られた。

祭り会場から離れたある場所…


エル「わ…綺麗」


ヒマル「だな…お祭り、行きたかったか?」


エル「まぁ…うん。でもお祭りは魔警備員も警備で多くいるから…」


ヒマル「そうだな…仕方ない。」


バンッ!と扉が強く開く。


ゼンツ「わたあめにやきそば、りんごあめ。フランクフルトにポップコーンとたこやきお好み焼き…あとスーパーボールとヨーヨーに金魚すくいの金魚、持ってきました。」


エル「え、ずるいありがとうおいしい。」


ヒマル「感情追いついてないぞ、おい!ゆっくり食え!…ゼンツ、行って大丈夫だったのか?」


ゼンツ「私は行ってませんよ。闇の取引です。」


ヒマル「なんとまぁ平和な闇取引だことで…」

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