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【最初の魔法使い】  作者: コトワリ
第3章 最悪の魔法使い
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第六十一話 大会後日談

魔警最強決定戦が終わり、世間はその結果に驚きを隠せなかった。今まで優勝経験のあるライが予選落ち、もう一人の経験者、リネも準決勝で敗退。だがそのことにはあまり驚く人は多くなかった。ほかの国の任務に行っていたアルパチームの火力、久慈さんにジゲルさんも参加。そしてあの能力者ランキング一位、ソウシさんまで特別参加だったのだ。そりゃリネもライも負けるかもしれないと思っただろう。優勝者も前年度にはいなかったその有力候補だと皆確信していた。だがまさか…


マゴ「まさかうちのリーダーが勝つなんて、いまだに信じられないですよ。」


現在、俺はメクルチームでお仕事をしていた。俺が暇な日なんてないんだ。大会翌日にこれは少しひどい気もするが俺以外にも真面目に働いている人が大勢いる。そういうことは言わず、黙々と仕事をするのがかっこいい男というものだろう。


メクル「…もう仕事やめたい。」


おい、優勝者。かっこ悪いぞ。


マゴ「本当にソウシさんにもユラ先輩にも勝った人なんですか…」


メクルチームの部屋には今俺とマゴ、そしてメクルだけだった。

ライはリネが借りて行っていない。ケルトもアルパさんの任務の補助へと出かけて行った。

メクルチームにはあまりそういう任務が来ないので基本事務仕事なのだ。上級チームがやるような難しい任務は大体三大チームがやるし簡単すぎるものは下の者がやる。中途半端なところにいるので来る任務も中途半端なものしか来ないのだ。そしてそんな任務はそうそうない。


メクル「そうは言わないでくれ…僕だって疲れたんだ…」


メクルの元にはあの後多くの人が集まってきたのだ。ほとんどが今回の大会について詳しく聞きたい記者たちだったのだが。


マゴ「メクルリーダーというか…そもそも私たちのチーム自体そんなことほとんどなかったですもんね。」


慣れていないことを一気に一瞬で体験すればそりゃ疲れるか。

俺は心の中でメクルに同情しながら仕事に取り組む。これくらいしかできない、許せ。


マゴ「ところで…リーダー」


メクル「なんだい?」


マゴ「あの能力、なんです?」


ユラ「あ、それは俺も気になる。」


あの能力、というのは大会で使って見せたフィールド能力の事だろう。


メクル「あれね…そうだね。ちゃんと話さなきゃね。」


マゴ「はい。ユラ先輩ですら勝てない能力なんて…」


ユラ「どんな能力かわかったら勝てますから!!!」


マゴ「負けたのは事実ですよ」


ユラ「うぐ…うん…」


くっ…少しでも尊敬してくれていたマゴにそう言われると来るものがある。


メクル「まず…僕はあの戦い…大きな岩山の中から出てきた機械と戦った後ね。」


マゴ「あぁ…久慈さん達が帰ってきたころですね。」


なんだかもう懐かしく感じた。


メクル「あの後、僕は封印していた『溶岩』の能力を開放しに行ったんだよ。」


マゴ「封印…あのおばあさんのとこですか?」


メクル「うん、コルおばさんね。」


ユラ「コルおばさん?」


マゴ「はい、能力『札』を使うおばあさんです。おばあさんの札はいろんなことに使えるんですよ!この前なんてお目当てのスイーツが買えなかったライ先輩のイライラを鎮めたんですから!」


ライは魔獣かなんかなのか。


ユラ「『札』ねぇ…それでメクルの能力を?」


メクル「そうだよ。来る時まで封印しといてほしいってね。」


ユラ「来る時が来たわけだ。」


メクル「うん…もう、今の僕じゃみんなを支えてあげられないと思ったからね。」


メクルはリーダー故なのか人一倍責任感が強いと思う。それゆえの行動なのだろう。


マゴ「それで、どうしたんです?」


メクル「それで封印を開放してもらって…帰ろうとしたときだった。コルおばさんに呼び止められてね。「さらに強い力はいらないか?」って提案されてね。」


詐欺もびっくりのワードだな。


マゴ「怪しすぎません?」


メクル「ははっ、まぁ確かに思ったよ。でもコルおばさんを信用していたし、あの人は冗談も嘘もつかないから。」


ユラ「それで?」


メクル「正直僕は『溶岩』と雪の力があってもこの先不安だったんだよ。だから藁にも縋る気持ちでほしい、と言ったさ。そこでコルおばさんはある提案をしてきたんだ。「新しく最強に近い能力を手にいられる札を作ってみたんだがどうにも下手したら死ぬっぽくてね。それでもどうだい、やってみるかい?」って。」


マゴ「…は」


ユラ「それを…受けたのか?」


メクル「もちろん。それで手に入った能力がこの『快…


マゴ「ちょっと待った待った!?し、し…しっ…げほっげほっ」


マゴが死ぬ!


ユラ「お茶飲め!落ち着け…」


マゴ「ありがどうございまず…はぁ…お茶おいし」


メクル「そんなに驚くことかな…」


マゴ「そりゃ驚きますよ…死ぬなんて…チームに相談もしないで…」


メクル「その時僕が死ぬのと、将来みんなを守れず死ぬのと比べたら、その時死ぬことを選ぶに決まってる。僕はみんなに死んでほしくない。」


マゴ「…はぁ」


マゴはメクルを呆れた目で眺める。そのマゴの様子にメクルは不思議そうに眺め返す。」


ユラ「マゴだってメクルが死んでほしくない思ってるんだよ。」


俺が代弁するとメクルは申し訳なさそうに気づいたような顔をした。


メクル「あ…」


マゴ「今の今まで気づかなかったんですか…もう…ばか…」


マゴは若干泣きそうだった。


メクル「すまない…僕はまた…」


マゴ「いいんです。リーダーが私たちの事をどれだけ思ってくれているかわかっただけ、十分です。ただその話、ライ先輩とケルト先輩にもちゃんとしてくださいね。」


メクル「うん…ごめ


マゴ「いいですって!!」


メクルは簡単に言っていたが相当の意思がなければできないことだ。俺が勝てない理由もうなずける。


ユラ「それで、なんて能力なんだ?」


メクル「あぁ、そうだね。ちゃんと伝えとかなきゃ…。フィールド能力『快晴(かいせい)白秋(はくしゅう)』って言うんだ。」


フィールド能力はなんで全部そういうかっこいい名前なんだ。恥ずかしくなるだろ。


ユラ「効果は?」


メクル「『空間』を自分に付与するんだ。フィールド内のすべての空間が僕そのもとになる。」


ユラ「ちょっと何言ってるかわからない」


メクル「要するに僕、または僕の能力によって生まれたものはフィールド内のすべての空間に存在して、存在しないんだよ。」


ほんとに何言ってるかわかんないんだけど…そんな複雑な能力をメクルは使いこなしてるのか?すごいな…。


マゴ「まぁなんか強そうな能力ってことはわかりましたよ。」


メクル「まだ怒ってる…?」


マゴ「別に?」


明らかに顔を合わせようとしないその行動が、マゴの思考を表していた。


俺がメクルに勝つのも、メクルがマゴと仲直りするのも、まだ先の話になりそうだ…


ーーーーーーーーーー

魔警、隊長室


いつもはまったりとした空間の場所が、今、空気の張りつめた場所となっていた。それもそのはず、その場にいるのは…


睦月「こうして三人で話し合うのもひさしゅうですなぁ。」


タルタ「あぁ、最近は問題らしい問題もなかったからな。」


ウルウ「そうじゃな。それだけ、重大なことが起きようとしているのじゃ。」


西、東、本部の魔警の隊長がそろっていた。大会の翌日、三人はウルウによって集められていた。


睦月「重大なこと?」


ウルウ「うむ。うちのアルパチームの久慈が何者かに襲われたか…それは教えた通りじゃ。」


タルタ「エルとヒマル…だな。隣国を滅ぼしたっていう。」


ウルウ「そうじゃ。偶然その場に『四格者』の一人が助けに来てくれたらしくての。おかげで久慈も命拾いしたようじゃ。」


タルタ「『四格者』が?そりゃとんでもないな。もう10年は姿を見せなかったのに。」


睦月「えーと…『独尊』と『偽善』、それと『没頭』と『命逆』と呼ばれている人達でござんしたっけ?」


タルタ「あぁ、ランキングにすら入ることなない圧倒的実力者。『四格者』だ。運よくその力を見たものがそう名付けたんだよ。紫陽花は詳しくは知らないのか。」


ウルウ「比較的紫陽花に西を任せたのも最近じゃからの。」


睦月「まぁその話はわかったよ。それで、その起こるかもしれない重大なことってのはうちの副隊長が関わってるのかな?」


ウルウ「その通りじゃ。生木副隊長の元に最近行ったといったじゃろ。その時に聞いたのじゃが…」


ウルウは一拍おいて、告げる。近い未来を。


ウルウ「西、東、含め本部もろとも、魔警は落ちる。エルとヒマル、そして裏の陰謀者の手によっての。そう、わしは予想した。」


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