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【最初の魔法使い】  作者: コトワリ
第3章 最悪の魔法使い
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第六十話 魔警最強決定戦、決着

 聖花「ユラ…!」


私たち、久慈さんと神崎さんと私は医務室で決勝戦の様子を見ていた。さっきまで押されていたユラの試合を手に汗握る思いで見ていた矢先、リングすべてが溶岩で埋め尽くされたのだ。


久慈「ははっ…メクルのやつ、思い切ったことをやるなぁ」


神崎「あぁ…それにちゃんと周りの観客に危害が及ばないように範囲を絞っている…。粗々しいが器用な攻撃だな。」


久慈「神崎さん子供から戻ってる!」


神崎「今気づいたのか…ほら、そんなことより試合を見ろよ。聖花なんて…いや待て聖花近い近い。テレビは離れてみてください。」


そう言われて私は食い下がる女じゃない!

そんな意思を持ちながらも体を軽く持ち上げられテレビから離れさせられる。だがそれまでに今この状況が気になるのだ。メクルめ…ユラが死んだら容赦しないぞ…


久慈「そんなメクルを睨んでも届かないよ…」


神崎「聖花は変わったな、ほんとに」


次の瞬間、包み込んでいた溶岩が消え去った。そこには…


ウルウ「立っているのは…メクル!メクルだけじゃ!ユラは燃え消えたのかの!?クロン!?」


クロン「ユラがそんな簡単に負けるとは思いませんが…でも…」


クロンも歯切れが悪いようだ。観客もこの異常な結末に盛り上がることはできず、ただただ時が過ぎ去るのを傍観しているだけだった。


神崎「…まさか」


聖花「…いや、いる。上だ!!」


別に視界に入ったわけじゃない。確信しただけだった。」


久慈「上…?テレビじゃ見え…あ」


誰もが見逃す速度で、彼は降り立った。


ーーーーーーーーーーー

数秒前…


ユラ「さて…どうするかな」


現在、ドーム遥か上空。そこで俺は絶賛自由落下中だった。なぜこんな状況で落ち着いてられているのか。それは自分でここまで来たからである。瞬間移動で一気に上まで飛んだのだ。真上以外はランダムに設定したので高さがでたらめである。


ユラ「まさか…あんな手を使うとはなぁ…メクルも強くなったもんだ。」


メクルが能力でリング上を溶岩で埋め尽くしたことにより、咄嗟に避けることになった。きっとあれはメクルのフィールド能力によるものだろう。フィールド能力は様々な能力の妨害が通じないがその分範囲が決まっている。上に逃げてしまえば問題ない。もちろん、リング外に出れば負けなのだがつかなければいい。


ユラ「…厄介だが、攻略法は一つだな。」


考えが固まった俺は落下速度を一気に上げ、ドームへと戻る。


ユラ「ステージ…5!!」


正直制御できてない速度で一気に、音を置き去りに、少し残念なポーズになりながらもその魔獣の剣はブラさず、技を使う。


ユラ「メぇクぅールぅ!!!!」


俺はそう叫びながら真っ逆さまにリングへと向かう。


メクル「上か…!!?」


ウルウ「よがった!死んだがと!!!」


なんかうろたえた上司の声が聞こえてくるが俺は気にせず、一つの策を試す。


ユラ「終わりだ!炎流三閃・極!天樹禍乱の舞!」


レイさんと戦った時と同じ、リングすべてを埋め尽くす攻撃。リネがメクルと戦った時にもやった方法だ。どこにいようとも、必ず当たる。必ずこのリング状のどこかにはいるのだから。それにリネより密度ははるかに上だ!!


クロン「リング上のすべてに炎の斬撃が…!」


ウルウ「対レイの時にも使った技じゃのう…。確かにこれなら勝てるかもしれんが…この技の後、ユラ、動けるのかの?」


およそ16秒間。斬撃は空間を占めていた。

攻撃をやめ、若干落ちそうな意識を前へと向ける。メクルがそこにいるか、だ。

前を見るとそこには…


メクル「ごほっ…溶岩の壁にかまくらまで作って…防げないのか。」


メクルはぼろぼろになった雪で作られたかまくらの中にいた。攻撃は当たっていたようだが…


ユラ「致命傷ではない…か。」


まずいな…ステージ5を使ってしまった。もう少しで意識が落ちる…。


メクル「耐えた…ユラの…全力…」


メクル自身が一番驚いているようだった。俺もだ…。


メクル「まだまだ欠点の多い能力だけど…強いだろ?この力…」


ユラ「あぁ…メクルがリーダーで…よかっ………た…ぜ?」


俺の意識はそこで…


聖花「負けないで!!!!」


…そろそろ観客も飽きてくる演出だよ、これ。

でも、折れるわけにはいかないんだよなぁ…


ウルウ「何度めじゃ!これ!ずるい!」


クロン「人間の意思って怖いですね…」


本当にな。好きな人に応援されるだけで今にも倒れそうだったこの体が、もう負けを認めていた心が、最高の医師に1年間体調管理されたような気分になるんだ。人って怖い。


ユラ「さて…第二ラウ…ンド行こう、か…」


メクル「まったく…君達カップルはトラウマだよ。でももうふらふらじゃないか?」


ユラ「そう…だな」


とはいえもう限界なのだ。まだステージ5の力は制御できていない。体力がえげつなく消費される。


ユラ「はぁ…はぁ…最後の…抵抗だ…」


俺は手のひらをメクルに…ではなく


ユラ「くっ…どうせなら勝ちに行くぞ!」


地面につけ、必殺技を必殺なものに近づける準備をする。


メクル「ぐっ…!?体が…重い…!?」


リングの上だけ重力を数倍に変えた。これならどこに行かれようが必ず地面にはいるはず。


ユラ「炎流四閃・亜炎鬼華!!」


地べたすべてに炎の花のような斬撃を咲きほこらせた。二つの能力の同時使用。特典で使用負荷なしじゃなかったらヤバかったな。


ユラ「終わり…は?」


メクル「…負けないよ。諦めるかどうか考える頃の僕とは違うんだ。」


次の瞬間、メクルはかかっている重力なんてまるで気にしていないように、地面を這う無数の炎をまるでそこにもとからあったものかのように避けて俺の目の前まで来ていた。


メクル「僕は…勝つんだよ。」


俺はメクルに…場外へと弾き飛ばされていた。

俺はこの時初めて、山から降りてきてから初めて、「こいつが仲間でよかった」と安堵と同時に危機感を感じることになった…。


ウルウ「しょ…勝者!メクル!雪川メクルじゃ!!!」


場内は今日一番の大きな大きな…大きな声で囲まれた。

魔警最強、少なくともこの一年の最強が決まった瞬間だった…


ーーーーーーーーーーー


聖花「あ…」


私は医務室から無我夢中に走り、ユラへと大声をあげてから結果を見守っていたが…。


レイパー「…ユラが、負けたか…」


私は本当に落ち込んでいたのだろう。レイが声を出すまで、そこにいたことに気付かなかった。


聖花「レイ…」


レイパー「ふふっ…なんて顔ですか。ユラは本気でやっていたでしょうがまだすべてを出してはいませんでしたよ。」


聖花「そう…だね」


四つん這いになっていると神崎さんが声を上げて近づいてきていた。


神崎「おい!聖花!お前まだ動いちゃ…」


レイがそこで神崎さんを止めた。


レイパー「神崎さん。今聖花、体より心のダメージの方が大きいですよ。」


神崎「はっ、それもそうか…」


聖花「うるさい…もう帰る…」


レイパー「ユラに会わなくていいんですか?」


聖花「…やっぱ会う」


私は回れ右をしてユラの方へと向かった。


神崎「にしても聖花がこんな表情するなんて、一年前の私に言っても信じないぞ。」


レイパー「ほんとですよ。表情筋ないと思ってました。」


聖花「聞こえてるから!」


こうして、魔警最強決定戦・個人は幕を閉じた。

最強決定戦、これでおしまいです。正直いらない部分かと思うが、メクルの能力をいかに紹介せず戦闘させられるか試したかった。

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