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【最初の魔法使い】  作者: コトワリ
第3章 最悪の魔法使い
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第五十六話 身に覚えのない約束

「第四試合!久慈カタミの勝利!」


アルパさんの大きな声で第四試合は幕を閉じた。最初の予想とは違う結果となり少し驚いたがあの大きさの力を見せつけられた後では納得しきってしまっていた。だってアレめちゃくちゃ高威力だったもん…。


聖花「ほら、久慈さんの勝ちだったでしょ?」


ユラ「まさかあそこまでとは思わなかったな。」


聖花「私でも勝てないかも」


ユラ「おいおい…次久慈さんとやるの俺なんだぞ…。」


聖花「ユラなら…まぁギリギリ勝てるでしょ、多分、きっと」


ユラ「不安しかない」


とにかく、これで本選の半分が終わったのだ。ここからは準決勝戦。気合入れていこう。いや最初から東最強の能力者とやってるのだからこれ以上気合の入る隙間はないのだが。


アルパ「いやぁ…素晴らしい戦いだったな!」


クロン「まぁ…贔屓目に見なくてもさっきの久慈は中々強かったな。海外に行ったときに何かあったんじゃないか?あの大きな剣は初めて見たぞ。」


アルパ「え?あ、確かに…知らなかったな…」


クロン「お前のとこの隊員だろう…しっかり情報は交換しておけ」


アルパさんはいい加減なとこあるんだよな…。ちゃんとそれを補うくらいほかの事が秀でているから問題ないんだろうけど。

準決勝はそんなに時間は空かないはずだ。準備の放送が入るまでここで待ってるかな。


聖花「…んあ…何」


ユラ「いやちょっと気合を入れようかと。」


聖花「だからってほっぺ無言で触らないでよ…」


久慈「こんなところまでイチャイチャするなよ…」


俺が聖花と遊んでるとさっき戦っていた二人が向かってきた。


聖花「久慈さんと副隊長。お疲れ様。」


李地「はい、ありがとうございます。」


李地さんは若干ご機嫌斜めのようだ。この人プライドあったんだな。


李地「なんだか今失礼なことを考えませんでしたか?」


ユラ「いや別に」


エスパーなのかこの人。だが残念。俺は格闘タイプでは…!


久慈「くわぁあああ!疲れた!!!」


俺のくだらない思考が久慈さんの大声で吹き飛ばされた。


ユラ「久慈さんの能力って体力使うんですっけ?」


久慈「そうなんだよね。ほんと、不思議なもんだよ。自分で言うのも何なんだけどさ。」


久慈さんはニカっと笑顔で話す。呑気すぎる。


李地「体力がなくなったところを狙おうとしてたんですけどね。まさか五回も連続で。しかも最後にあんな大技が出るとは…」


久慈「私の能力は一緒に戦ってくれている…気になってるって言ったら悪いかもだけど。とにかく私の見方が多ければ多いほど減少する体力も抑えられるらしいんだよね。最近気づいたんだ。」


ますます不思議な能力だな…。他人の意思が作用するなんて…。」


李地「久慈さんのような能力は、まだ見つかっていませんからね。ですがいつかほかに似たような能力者が現れたら系統化するのも考えていいかもしれませんね。」


久慈「え、じゃあ私がその系統の能力の一人目になるってこと?」


李地「…かもですけどね」


久慈「それめちゃくちゃかっこよくない?」


ユラ「んなことふられても。」


「五分後に第五試合 聖花リネ対雪川メクルの試合を始めます。両者準備室へとお願いします。」


アナウンスが流れてきた。次はリネとメクルか。昨日の俺ならリネが勝つと言い切れるがメクルが何やら新しい力を手に入れているようだった。ソウシさんすら倒してしまっているのだからリネが勝てるんだろうか…。

俺が悩んだ顔をしていると…


聖花「ユラ」


ユラ「え?」


俺がリネの方を向くとリネは拳を俺に向けていた。どうやらグータッチしたいらしい。

俺はそれに戸惑いつつも返すと


聖花「応援、しててね。ずっと。」


そう言ってリネは歩いて行った。

俺の悩み事を本人はとっくに解決しているようだった。

…リネには勝てる気しないな


久慈「…幸せを眼前で見るとイライラしない?」


李地「いえ別に」


久慈「あっそ…」


スピーカーから隊長の声が聞こえてきた。どうやら次の試合の準備が終わったようだ。


ウルウ「あーテステス。やぁ諸君!帰ってきたぞ!このわしが!」


クロン「仕事放棄してただけでしょう。」


ウルウ「クロン!せめてマイク外して言っとくれよ!」


外したらいいんだ。


クロン「はぁ…えー皆さん、お待たせいたしました。ここから。準決勝を開始します。ルールに変更はありません。それでは、両者。準備ができ次第リングの上へとお願いします。」


リングに向かって二人が歩いていく。ほぼ同時に。

まだ向かい合っていないというのに二人の気迫で観客は静まり返っていた。


ウルウ「…なんか暗くない?」


クロン「毎年準決勝は騒がしくなるかこうなるかですから。それにリーダー対決ですし。」


ウルウ「まぁ…そうじゃの。とにかく、選手紹介と行こうかの!まずは…!」


隊長がしゃべろうとしたとき、クロンさんが一瞬にしてマイクを奪った。


クロン「まずは三大チームのリーダー。可憐な見た目からは想像もできない才能を積み上げている天才能力者。聖花リネ!」


俺のデレデレな紹介とは違ってしっかりとしたクロンさんの言葉は今のこの雰囲気によく合っていた。

…この場で俺があのセリフ言ってたらどうなってたんだろ。

クロンさんはそのあとすぐに隊長にマイクを渡した。隊長は戸惑っていた。クロンさん、締めを飾るのが嫌だったのかな…


ウルウ「え、あ、…対するは魔警の中でも比較的最近できたエリートチーム!雷使い、魔警№2の剣豪、五属性使い、さらには最初の魔法使いまでもがいるメクルチームリーダー!雪川メクル!」


隊長の声には今まで観客は大声で答えていたが今回ばかりは違った。全員静まり返り、この試合の結果を目に焼き付けようと必死なようだった。


クロン「両者準備ができたようなので…第五試合、開始!」


静まり返った第五試合が始まった。一見重たい空気に見えるこの場は期待と興奮すら邪魔になるようなこの試合が生み出した状況だった。まだ戦ってもいない。それなのにこの異質。


ユラ「メクルの能力を見たから…なんだろうか。」


誰も何が起きているかわからなかったらしいが…」


メクル「…なんでこんなにみんなテンション低いんでしょうかね」


聖花「なんでだろね…。まぁいいや。やろうよ。」


メクル「はい。やりましょうか」


聖花はやりたくてうずうずしている…のか?なんか…。


聖花「…あーもう!やりずらい!」


聖花はメクルの事なんて気にせずリングの中心へとずかずかと歩き


聖花「絶対決勝行ってやるから!!!みんな応援頼んだ!!ぜ!」


アルパさんよりも大きいんじゃないかってくらいの大声で、けれども顔は崩さずに。俺への宣戦布告ともいえるその宣言は俺の気持ちを通り越して観客にまで熱が通ったようだった。


「うぉおおおお!」

「最初っから応援してますよ!!!聖花様ーーーー!!!」

「メクルなんてやっちまえ!!!」


メクルが何を。


静まり切った場は一変、ライブハウスの盛り上がりをこのドーム中に広げたようだった。


ウルウ「聖花ありがとじゃーー!この雰囲気耐えられん!」


クロン「…確かに。」


こうして聖花はかなりの人数の味方をつけた。


メクル「…聖花さん。これで負けたら…。」


聖花「勝てばユラと決勝で会える。負けたらユラに1…週間慰めてもらえる。win-winだよ!」


メクル「その言葉自己解決する人初めて見ましたよ!?」


聖花「ふへへ。…それじゃあさっさと終わらせよう!」


メクル「まったく…そうですね、やりましょう!」


身に覚えのない約束を前に、今、本当の第五試合が始まった。


引っ張りすぎた…

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