第五十三話 自己犠牲
その後、俺は隊長の拷問から目を覚ました。さすがにやりすぎたとは思うが何もあそこまでやらなくていいだろうに…。いや悪いのは俺だから何も弁明の余地はないのだが。
ユラ「にしても、タルタは強かったなぁ…」
俺は寝かされていたベットから起き上がった。誰かが運んできてくれたのだろう。もどったら試合終わってたりして。…いやそれは冗談にならないな。
俺は歩きつつ次の対戦相手について予想していると前にマゴが歩いてきていた。
ユラ「よ、マゴ」
マゴ「あ、ユラ先輩。やっと起きましたね。」
ユラ「もしかして運んでくれたのって…。」
マゴ「運んだのは聖花さんですよ。私は隊長に様子を見てこいと言われたのです。丁度二試合目が終わりましたので。」
ユラ「二試合目…っていうとメクル対ソウシさんか。まぁ結果はわかりきってるけど…」
メクルには申し訳ないがソウシさんには勝てないだろう。今回の大会ではハンデとして『光』の能力以外は使わないらしいがそれでも十分脅威だ。『光』の力は個人的に使いたくなかっただけで実際は『闇』や『重力』並みに強い。ソウシさんは能力のエキスパートだ。簡単に使いこなせるだろう。
だが、試合の結果は予想外のものだった。
マゴ「…勝ったのはメクルリーダーですよ。」
ユラ「え?」
マゴ「私も…何が何だか…。もちろんメクルリーダーが強いことはわかってますよ。ただ勝てるとは思っていませんでした。なんせ相手はソウシさんですから。ですが…」
ユラ「メクルが…勝ったか。」
確かにあいつは本を手に入れたし封印していたという『溶岩』の能力も解放していた。だからと言ってソウシさんに勝てるものなのか?
ユラ「てか、次リネの試合じゃないか」
マゴ「そうですよ。多分試合開始5分後くらいには間にあ…」
俺は瞬間移動でマゴと一緒に会場まで飛んだ。
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ウルウ「さぁ!気をと、取り直すのじゃ!み、みみ、皆の者!」
クロン「隊長が落ち着いてください。とにかく、第三試合を開始します。聖花リーダー、睦月隊長はリングへどうぞ。」
両者がリングに上る。その光景よりも観客の意識はほかのところへ向かっているようだが…
ユラ「聖花のファンたちはその視線をまっすぐ、ただ彼女から跳ね返る光にを目に焼き付けることだけに集中した。それはもちろん、この俺も例外ではない。そうだろう!お前たち!」
俺は颯爽とウルウ隊長のマイクを奪い、ドーム中に声を響かせた。
ウルウ「おわぁあ!?ゆ、ユラ!?いつの間に…」
俺のその一声に、ドーム(一部)は大きく盛り上がった。
クロン「さすが恋人だな。さて、じゃあそのまま選手紹介も頼もうか。」
ユラ「さぁ!皆さんから右手に見えますは魔警随一の美!もはや魔警の『美』最強決定戦は決まっているようなもの!聖花チームリーダー!聖花リネ!」
完璧すぎる。
マゴ「…ユラ先輩ってたまに気持ち悪いというか…すごい失礼というか…。テンション上がると嫌な奴になりますよね。」
ウルウ「わかるぞ。さっき痛めつけてやったが全然こりておらん。あとでまた絞めておく。」
マゴ「任せました。」
最悪すぎる。
俺は気にせずすかさずマイクをクロンさんに渡す。お約束だ。
クロン「………対するは西最強の能力者!能力の基礎という基礎を極め切った不死身の美人!睦月紫陽花!」
俺とクロンさんの選手紹介にドームは沸いた。主に男が。
ユラ「さて、あとはゆっくり鑑賞を…」
ウルウ「ユラ、座れ。」
ユラ「…」
忘れてた。
司会は代わりにマゴがやることになったとさ。
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聖花「…恥ずかしい。」
睦月「ほんと、あの人にあってから感情をよう表に出すようになったことで。」
相変わらず保護者目線で話してくるその人に、私は目を向ける。これは親子対決みたいになるのだろうか。アジさんは私が両親を亡くした後、いろいろと世話をしてくれた人だ。私は精神面だけ生意気に育った代わりに生活云々が全くできなかった。その時、アジさんが私を拾ってくれたのだ。私が若くして魔警に所属したのもアジさんのおかげだ。感謝している。
クロン「それでは、第三試合!はじめ!」
その声で、私は気を引き締めた。
睦月「第二試合の後だとあまり面白い試合にはならなそうでござんすね。」
聖花「確かにね。」
第二試合はそれはすごかった。あれは能力者同士の戦いを一つも二つも超えた戦いだった。あんな戦いに追いつきたいとは思わない。というか追いつける気がしない。
聖花「面白くても面白くなくても、勝者は変わらないよ。」
そう言って私はアジさんに攻撃を仕掛ける。
聖花「リフレクター砲」
私は遠距離から攻撃を仕掛ける。近接戦闘はアジさんには不利すぎる。
睦月「今まで、私に勝ったことありましたっけ?聖花ちゃん」
アジさんは。私の攻撃を軽く避ける。さすがに軌道はバレバレか。
でも、持久戦にする気はないよ
聖花「『空間反射』」
私はよけられたリフレクター砲を空間で反射し、背後からアジさんを狙う。
睦月「あら、成長したのね。でも…」
アジさんは手のひらを攻撃が来る方に向けた。
睦月「サンダー・レベル6」
私の攻撃はすさまじい威力の稲妻で相殺された。
聖花「…十八番だね、アジさんの」
睦月「これ一つでやらせてもらってますんで。」
聖花「二つでしょ」
そう言って私はもう一度リフレクター砲を放つ。
睦月「アイシクル・レベル6」
だが、次は氷のとげで相殺されてしまう。厄介すぎる…。
クロン「睦月隊長はこの世で唯一、氷と雷の一般魔法を使用することができる存在。皆知っての通り一般魔法は五種類、炎、水、草、闇、風です。一人が使える一般魔法はその中から一つだけ。ですが睦月隊長だけはその五つの枠に当てはまらなかった。そこで副隊長が試しに色々やってみた結果。」
マゴ「通常では使えない氷と雷の一般魔法が使えた…。私の『五属性を操る』能力には含まれていないので羨ましいです…。」
これがアジさんの力だ。生まれつきの能力がなくても十分に強い…。
睦月「観客の皆さんも説明で飽き飽きしたでござんしょ。さっさと終わらせて次につなげましょうか。」
そう言って今度はアジさんの方が攻撃を仕掛けてきた。
睦月「サンダー・レベル7」
私はその攻撃を反射する。
睦月「サンダー・レベル7」
同系統の同レベルの魔法同士がぶつかり大きな煙が出た。身を隠して死角からやる気だろう。
聖花「全身に反射の能力を付与すれば問題ない。」
睦月「ぺネット+サンダーレベル9」
確かに私は反射の能力を使用していた。それなのに…
聖花「がっ…!?」
痺れる痛みが私を襲った。
聖花「くっ…な、なんで…?」
睦月「《貫通》の一般魔法でありますよ。」
なんじゃそれ…痺れて立てない…。
クロン「睦月隊長と李地副隊長仲良いから基本的に公表されてない一般魔法を睦月隊長持ってるのか…あの魔法は聖花にはきついな。」
私の敗因が仲が良かったからなんて嫌なんだが
睦月「ふふふ…子は親には勝てないのですよ。」
…
聖花「知らない。そんなこと。私は私だもん。」
ユラが見てるんだ。いつまでも倒れている場合じゃない。
睦月「おや…立ちますか。レベル9はかなり痺れるはずなんでござんすが…」
聖花「《空間反射》!」
こうなったら無理矢理だ!アジさんの体をその場から吹き飛ばして場外に飛ばすしか…
睦月「おや、もう手が尽きたんですか?…フライ・レベル9」
私の無茶苦茶な抵抗も、アジさんの一般魔法に勝てなかった。レベル9…私の反射能力から逃れ切れるほどの浮遊力…。レベル10を使わないところがムカつく。
睦月「アイシクル・レベル10+サンダー・レベル10」
来た…アジさんの最大技。もう終わらせる気だ。
睦月「これで終わりですよ。」
そうしてその攻撃を放ってくる。
聖花「反射!」
ユラのでっかいエネルギー球だって跳ね返したんだ、このくらい跳ね返せる!
私は反射のエネルギーを前方に集めて、アジさんの最大技を受け止める。
聖花「ふー…はぁあ!」
さすがの高威力…跳ね返すのに私はかなり時間をかける…でも!
気を込めて、一気に!アジさんに向けて!返す!
睦月「成長したんですね。昔は返せなかったのに。」
その声は、「後ろ」から聞こえてきた。
睦月「残念でした。これで本当の、おしまい。」
聖花「…シールド・レベル10!」
睦月「今さら壁を作ったところで…え?」
アジさんが後ろに回ってくることなんて読んでた。だからわざと時間をかけたんだ。
私はシールドをアジさんに向けてではなく…その真反対。跳ね返したアジさんの最大技に向けていた。
睦月「なんで…そっちに?」
聖花「《空間反射》!」
最大技は跳ね返され、私に向けて戻ってくる。さっき展開した、シールドに向けて。
そして私はその高威力の技の圧を抵抗せず押し出される。もちろんこれじゃあ場外へ一直線。
負けだ。でもそれは…先に相手が落ちていたら関係ない。
睦月「そんな…!?」
アジさんの最大技によって吹き飛ばされ、とんでもない速度で後ろにいるアジさんにぶつかった。
聖花「で…反射!」
ぶつかった部分に反射を付与。そうすると…
睦月「嘘…」
アジさんは自分に何が起こったかもわからぬまま、場外に出ていた。
聖花「よし!勝っ…」
が、もちろんアジさんの最大技を一枚の壁で防げるわけもなく…
聖花「ぐぇえ…」
しっかり喰らった。
クロン「しょ…勝者!聖花リネ!」
ユラ「…ふぁ…ふぁふがリネだへ…」
マゴ「ユラさんがボッコボコにされてる…」
一瞬、会場は何が起こったかわからず静まり返ったがリネが勝ったとわかると多くの歓声がドームを飽和した。もちろん、主に男が。
場外・睦月・聖花・聖花のシールド・睦月の最大技・空間反射板
外側からこうです。とってもわかりにくい試合になりました。
自分で見てもわかんない。わぁ…




