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【最初の魔法使い】  作者: コトワリ
第3章 最悪の魔法使い
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第五十話 ヒルベルト・ガフル

俺達Aグループの予選が終わったのは結構早く、まだやっているグループはいくつかあった。


ユラ「さすがにレベルが違うぜ…」


俺は暇になったので他のグループの予選を見ていた。どのグループも魔警本部の強者たちにほぼ成すすべなく負けて行った選手が多くいたらしい。だがそれでも苦戦はしたようだ。さすがに全すべての魔警から集まってきた腕に自信のある者たちには三大チームのリーダーたちやメクルたちも手を抜けない場面があったようだ。


ウルウ「お、今Eグループの戦いが終わったようじゃな。勝者は…メクルか!」


李地「メクルリーダーは短期間で一気に強くなりました。近頃見せなかった『溶岩』の能力。そして今まで使っていた『雪生成』の力は相反するものがありますがかみ合っているのがよくわかります。」


ウルウ「これは能力というよりかはメクル本人がうまいのう。バレルがうまく動けてなかったからの」


Eグループの決勝はメクル対バレルだったのか。見たかった…。

リネでも見に行くかな。応援しに。


そうして歩いていると誰かに後ろから服を引っ張られた。


ユラ「ん?」


振り返ると俺より一回り小さい女の子が経っていた。見た感じ俺より年下って感じだな…。遊佐と同じくらいだろうか?いやもう少し…


???「君、この中で一番強い。違う?」


突然そんなことを言われたので俺は少しひるんだ。しかも年下から『君』呼びだ。

いやまだ年下とは決まってないか。


ユラ「…この中ってのはこの大会の中でってことかな?」


一応優しく答えよう。たとえ何十歳か年上でも。


???「そう。違う?」


ユラ「…ここには能力者ランキング一位がいるよ。だから俺じゃなくて…」


???「その人よりも強い。あなたは御手洗ソウシに勝てる。違う?」


いちいち確認取ってくるそこいつ…。俺がソウシさんに勝ったのは俺とソウシさん、あとは李地さんだけのはず。だからこの子は憶測で俺が勝てると判断したんだろうか。


ユラ「なんでそう思うのかな?」


???「ガフは子供じゃない。そんな対応はしなくていい。」


子供じゃなかったのか。ガフ…ってのはこの子…じゃなくて彼女の名前なのか?


ユラ「わかった。ところでガフって名前なのか?」


そういうと彼女は目を少し見開いた。


ガフ「申し訳ない、申し遅れた。ガフの名はヒルベルト・ガフル。ガフと呼んで。」


ユラ「了解、ガフ。俺の名前は…」


ガフ「斎月ユラ、でしょ」


ユラ「お、おう。そうだ。なんで知ってるんだ?」


ガフ「ガフにわからないことはない。話を戻す。ガフは斎月ユラが御手洗ソウシに勝てるという結論に至った。この結論に間違いはない。違う?」


ユラ「…確かに、互角くらいかもしれないな。でも最強は名乗れないよ。だって俺はソウシさんに」


ガフ「『光』の能力を渡した。違う?」


ユラ「…なんで知っているんだ?」


ガフ「ガフにわからないことはない。さっきもそう言った。」


ガフ…目的は何なんだ?なんで俺がソウシさんに能力を渡したことを知っているんだ…。


ユラ「ガフの目的は…」


その時、すぐ近くのグループから大きな歓声がとどろいた。そのせいで俺の声は搔き消えてしまった。


「久慈さん強すぎるだろ!!」「優勝候補があっさりと…」


野次馬でよく見えないがどうやらライ対久慈さんでライが負けてしまったようだ。今まで久慈さんがいなかったらライは連続優勝とかできなかったんだろう。

俺がステージ上で握手しあっている二人を眺めているとまた後ろから誰かに引っ張られた。


ガフ「肩車してくれ。見えない。」


ユラ「俺がいつお前の保護者になったんだ…」


ガフ「お前じゃないガフだ。ほら、早く。」


俺は仕方なくガフを肩車してやった。なんも乗ってないんじゃないかってくらい軽かった。

確かにガフの身長じゃ何も見えないか。


ガフ「ライが負けたか。」


ユラ「予想通りってか?」


ガフ「違うと思う?」


ユラ「いや、多分そうなんだろうな。」


後からなら何とでもいえるが今のガフの言葉は信憑性が高かった。さっきの話も、こいつはなぜ…。


ユラ「そういえばガフはどこに住んでいるんだ?」


ガフ「ガフはどこかに住んでいたりはしない。毎日移動し、ふらふらとさまよう日々だ。今日この大会にいるのも出場しているからではなく観戦だ。」


ユラ「…ちなみにガフが参戦していたらこの大会で一番強いのは誰だ?」


ガフ「ガフだ。違うか?」


…荒唐無稽なその発言。なぜかホラだと断言できない自分がいた。いま俺の肩にいるコイツは俺より…はるかに強い。そう感じる。


ユラ「さぁな」


ガフ「そうだな。もういい。おろしてくれ」


そう言われたので俺はガフを下ろした。


ガフ「ガフはもう移動する。もう一つ次の町に行きたい。」


ユラ「もう行くのか?明日は本選だぞ」


ガフ「結果のわかっている戦いを見る気はない。ガフも忙しくはないのでな。」


ユラ「そうか…それじゃあな。」


ガフ「うむ。…肩車の礼をしてやらんとな。」


そう言ってガフは俺に一枚の折り畳まれた紙を渡してきた。

開くとそこには電話番号らしきものが書かれていた。


ユラ「これは?」


ガフ「ガフの連絡先だ。困ったら呼ぶと良い。久しぶりに強者に出会えた。少しうれしく思うぞ。」


ユラ「そうかい。じゃ、またな」


ガフ「達者でな。」


そう言ってガフは人混みの中に消えていった。ヒルベルト・ガフル…なんだったんだ?

俺はもらった紙をしまい、リネを見に行った。


ーーーーーーーーーー

某所、地下。


明るいか暗いかで言ったら暗い部屋に一枚のスクリーンに映し出されたほのかに光る映像が流れている。魔警の大会のライブ映像。それが映し出されていた。


エル「あ、ユラ勝った」


ヒマル「そりゃそうだろ。ユラが優勝に決まってる。」


私たちは拠点をいくつか移し、今は隠れた生活をしている。一週間に一回私が買い出しに行く時しか、扉は開かない。


ヒマル「くぁー…俺も大会に出たかったぜ…」


ゼンツ「我慢してください。今は私たちは手を抑えるターンです。準備に忙しいので。」


どうやらゼンツはまた何かやるようだった。いまいち私たちでも何が目的なのかわからない。いや、魔警の破壊という大きな目標があることはわかっている。それでもその破壊に何の目的があるのか、私たちは教えられていないのだ。ただの愉快犯ではないんだと思っている。


ゼンツ「暇なら訓練をすることですね。もうあの姿にはならず、お互いの力も借りず一人でユラを倒してほしいものです。」


ゼンツはシアをあまり出したくないらしい。あの姿ならユラどころか魔警まで吹き飛ばせると思うんだけどな…。それでは目的達成にはならないのだろうか。


ヒマル「しゃあねぇなぁ…エル。やろうぜ。」


エル「うん」


私は抱いていたウサギのぬいぐるみを置き、ゼンツが作ってくれた戦闘ルームへと向かった。なんでそんなお金あるんだろ。


ゼンツの横を通りすぎるとき、ふと何か持っているのが見えた。


エル「それ…」


ゼンツ「…?あぁ、エルさんは知らないんでしたっけ。栞の事。」


エル「しおり?」


ヒマル「エルには教えてなかったのか?」


ゼンツ「単純に忘れていただけです。せっかくなんで教えましょう。これは私が長い期間探して見つけたもので、この栞を魔本に挟むことである力が手に入るのです。」


エル「ある…力?」


ゼンツ「はい。それは他を暴走させる力。」


ぼう…そう…?

そんな…そんなものがあるのなら魔警…いやそれどころか世界の破滅まで…


ゼンツ「ただしデメリットは一人しか暴走させれない点です。複数人を一気に、とはいきません。時間もかかりますしね。…まぁ人によればメリット、ともいえるんでしょうが。」


これで少し前聖花リーダーを暴走させていたのか。

私は栞について説明しているゼンツよりも、その栞に視線が釘付けになっていた。


ゼンツ「それで…ん?エルさん?」


エル「え、あ、…ごめん」


ヒマル「疲れてんのか?訓練はやめてもいいが…」


エル「いや大丈夫。ほら、やろ。」


ヒマル「お、おう…」


あんなものがもし複数枚あれば、この世の中は終わりだと。そんな世界を破壊させるカギに。私は少し怖気づいていた。




ユラのその後


聖花「ゆらぁー…勝ったよぉ…」


ユラ「こ、コイツ!優等生清楚キャラを崩さないよう小声でかつ真顔で言ってる!?」


アルパ「聖花は表情不器用に加えて自分でキャラつけたからな!今まで隠し通してるつもりなのがバカらしいぜ!がっはっは!」


聖花「うっさい、敗者」


アルパ「あぁーん?やんのか?おい」


聖花「いいよ、やっても」


ユラ「あ、久慈さんとレイさん」


アルパ「聖花!仲よくしような!」


聖花「もちよもち。」


ユラ「冷や汗かいてんぞ…」


強者でも強者にとって怖い人はいるもんだな…

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