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【最初の魔法使い】  作者: コトワリ
第3章 最悪の魔法使い
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第四十三話 見えない未来

命からがら化け物から逃げてきて、俺が瞬間移動した場所は…


ウルウ「…ゆ、ユラ!?どうしたんじゃ…?!」


真「え、あ、ほんふぉは、ゆらふぁ」


ソウシ「真、ちゃんと飲み込んでから話せ。」


一般的な家庭の食事中…とは言えないか。ヒマルとエルの事を知っていて一番安全な場所と言ったらここしか思いつかなかったのだ。まぁソウシさんも真もいるとは思わなかったのだが。どうやら魔警の隊長の部屋で夜ご飯を食べていたらしい。本当にご迷惑をおかけします。


ウルウ「ケガがひどいの…神崎を呼ぶ、少し待っとれ」


ソウシ「いや、僕の能力で治そう。」


そう言ってソウシさんはフィールド能力を使い俺と遊佐の体力と体を回復してくれた。ほんとに便利だな。範囲まで決められるのか。


真「私まだ食べたい」


ウルウ「母上は食べてておくれ。わしと父上で話を聞く」


あきれ顔で真にそう言い、隊長室へと移った。隊長とソウシさんはもう食べ終わっていたらしい。


ウルウ「それで…どうしたんじゃ?」


ユラ「結論から言おう。エルとヒマルは国を滅ぼしていない。」


ウルウ「なんじゃと?」


あの二人の意思が関わっていないと言い切れないが、確かにあれは別の人格だ。『意思』の能力で探ったがアレはヒマルともエルとも読み取れない第三の人格だった。


ソウシ「…順を追って話してもらいたいが、その前にそこの女の子は?」


遊佐「あ、遊佐と申します。エル、ヒマルに関しての手伝いをしています。」


ソウシ「僕はソウシだ。よろしく。遊佐さんはもう帰った方がいいんじゃないか?親御さんが心配しているだろう。」


確かにもう結構夜中だ。帰らせたいが…。


ユラ「悪いが遊佐、もう少しいいか?俺がいない間の話もしてもらいたい。」


遊佐「いいですよ。親に連絡してきます。」


そう言って遊佐は隊長から電話を借りて連絡し始めた。


ウルウ「さて…じゃあ聞こうかの」


ユラ「はい、実は…」


俺はさっきあった長いようで短い出来事を話した。遊佐がヒマルに出くわしたことから遊佐の能力で召喚された魔王がヒマルを倒しかけたこと。エルがそれを助け俺もその場にちょうど来た事。

そしてエルとヒマルが合体した姿の事。その姿に関する俺の見解まですべてを話した。


ユラ「ここからは俺の予想ですがエルの能力は『天使』、ヒマルは『悪魔』だと思います。能力を使う時物語に出てくる天使、または悪魔の名前を言っていました。多分技の名前だと思います。」


ソウシ「なるほど。妥当な考えだ。それで…そのユラ君が最大攻撃を使ってまで逃げようとした相手というのは…?」


ユラ「一瞬見ただけではっきりとしたことはわかりませんが…『天使』と『悪魔』。何かしら関係のある能力でもおかしくありません。その二つの能力を持つ者同士がいると発動できる何かがあるんだと思います。それが…」


ウルウ「国を滅ぼした別の人物、と。なるほどのぉ…。確かにエルとヒマルたちの能力の情報じゃ国なんか滅ぼせないと思っていたんじゃ。そういう話なら別じゃの。」


ひと段落話がついたところで遊佐が帰ってきた。


遊佐「もう全部話しちゃいました?」


ユラ「あぁ。遊佐、俺が来るまで何かあったか?」


遊佐「私じゃなく魔王さんの方が多分細かくわかると思うんですが…さっきから呼んでも応答ないんですよね…」


ソウシ「そういえば魔王ってなんなんだい?そういう能力?」


遊佐「私の『空想召喚』の能力で召喚した魔王さんの事です。例えば…召喚 ピクシー」


遊佐がそういうと手のひらから小さな妖精のようなものが現れた。


遊佐「こんな感じです。このこと離れすぎるとこの子の力は弱まっちゃうんですが消えることはありません。とてつもない攻撃でも受けない限り…」


ウルウ「魔王が時間を稼いでその間にユラを呼んだんじゃな。弱体化された状態でヒマルを足止めするとは…魔王とやらは強いの。」


ユラ「俺と同格だったからな。」


ウルウ「そうじゃったな、一度ユラは戦ったんじゃった。」


真「私が止めたやつね」


いつの間にかご飯を食べ終わった真が話し合いに参加していた。しっかり手にアイスを持っている。どんだけ食うんだ。ソウシさんが若干引いてるぞ。


ユラ「その件は助かりました。」


真「…お菓子で許してやろう」


ユラ「まだ食うのかよ!?」


隊長がドン引きしてるぞ。


ウルウ「ごほん…えーそれで…どうしようかの…」


ソウシ「ユラ君、その合体した人。僕とどっちが強そうだった?」


ユラ「…正直に言いますが、完全にあっちです。あれはもう一人の能力者が手に負える存在じゃありません。俺も…俺も勝てる未来が見えない。」


真「そんなになんだ…。そういえばゼンツって人は?」


ユラ「そういえばいなかったな。遊佐、見たか?」


遊佐「いや、私もみませんでした」


ゼンツの情報はもう関係者には伝えた。いつどこにいるかわからないから常に探しておいた方がいい。


ウルウ「なるほど…わかった。とにかく生きて帰ってきて何よりじゃ。これからの事はわしが考えておく。今日のところは解散としよう。」


ユラ「わかりました。遊佐は俺が送っていきます。」


真「ちゃんと守れよ~」


ユラ「わかってら」


そうして俺が遊佐と部屋から出ようとすると


ウルウ「そうじゃ、ユラ。」


ユラ「はい?」


ウルウ「魔学校の放送委員のカンという生徒。聖花が治していったぞ。」


ユラ「そうですか!それは良かった。今はもう普通に?」


ウルウ「うむ。記憶はないようじゃが…しっかり元通りじゃ。どうなってたかは伝えてないがの」


ユラ「その方がいいです。思い出したくもないでしょうから。」


気づいたら誰かを傷つけてたなんて、思い出したくない。


ウルウ「それじゃあの。ちゃんと遊佐ちゃん送ってくるんじゃぞ」


ユラ「了解です」


こうして俺の夏休みは、外の風景と同じように、真っ暗な始まりだった。


ーーーーーーーーーー

某所


シア「ゼンツさーん」


ゼンツ「…その姿。エルさんとヒマルさんしくじりましたね…」


シア「仕方ないって。僕レベルじゃなきゃ無傷で防げないほどの攻撃だったらしいからさ。とにかくほら、戻してあげてよ。」


ゼンツ「そのつもりです。あなたが暴走したらこの世の終わりです。」


ゼンツはシアに手を乗せ、能力を発動する。『物体変幻自体』の能力は生命活動をしているものにしか使えない。が、一つ例外がある。「生命体が全く別の生命体へと変貌した時」にも、その能力は発動するのだ。


一つだったものが、二つへと戻っていく。


ヒマル「…ゼンツ、すまん」


エル「ごめん…」


ゼンツ「いいでしょう。一番つらいのはお二方ですからね…。誰かにシアを見られましたか?」


エル「多分、ユラが…」


ゼンツ「なるほど。ユラさんならよくわかるでしょう。」


ゼンツも『初期』の能力者としてわかるのだ。戦わなくても、あの存在がどんなものかと。


ゼンツ「引き分け、と言ったところですかね。まぁ当分は表に出る気はありませんから。」


ヒマル「…」


エル「わかった…」


ヒマルとエルは意識的にやったわけではない。あのユラの攻撃を防げないと本能的に察知し、反射的に使ったのだ。その事実に二人は己の心の弱さを悔やんでいた。

ユラと遊佐、その後


ユラ「いやぁ…疲れた」


遊佐「ほんとですね。ユラさんおなか貫かれてましたけど」


ユラ「いやびっくりしたわ。おなかドーンって」


遊佐「笑い事じゃないですよ…全く」


ユラ「はっはっは!この後完全に無視してた恋人に比べれば全然怖くないやつだったぜ!」


遊佐「ユラさんは敵が多いですねぇ…」

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