第四十一話 魔王対悪魔
帰り道、まさかこんな場所で出会うとは思わなかった。ユラさん達が極秘に探している国一つ消した二人組の一人、ヒマルに。
遊佐「ヒマル…!」
ヒマル「俺の名前を知ってる…?あぁ、ユラ達の仲間か。」
どうしよう…。逃げるべき?でもこんなチャンスももうない…。どうしたら…。
魔王「遊佐、俺を出せ」
遊佐「魔王さん!?だ…だめだよ、ここは逃げたほうがいい。早くユラさん達を呼んでこなきゃ…」
魔王「俺が足止めをしておく。その間にユラ達を呼んでくればいいだろう?」
遊佐「でも…」
私が召喚する生物たちは私から離れるにつれて弱体化していくのだ。『空想召喚』のデメリットの一つ。
強すぎる能力ゆえにデメリットがある。たとえ魔王さんでもヒマル相手に弱体化した状態じゃ…。
ヒマル「一人で何をぶつぶつと…用が何ないなら帰るぞ。俺の能力はあまり見せないように言われてるんだ。…まぁもうユラは勘づいてるだろうけどな。」
まずい、このままじゃ逃げられてしまう…。
遊佐「…召喚!魔王さん!」
魔王さんを封じ込めてから今日まで、使わなかったその力を使った。今は私自身の心配よりも魔王さんを心配しているあたり結構仲良くなってしまったんだなぁと自覚する。
魔王「がはははは!俺!誕生!」
もう私の姿は使わないらしく、堂々と魔王姿で現れる。時間も時間なので人の目は気にしなくていいだろう。
ヒマル「なんだ…?召喚系の能力?珍しいな。」
遊佐「魔王さん!頼んだよ!」
魔王「おう!」
早くユラさんを…!魔王さんがやられちゃう前に…!!
ーーーーーーーーーー
そうして我が主は魔警本部へと走っていった。正直ユラを呼んできてくれなきゃ困る。俺じゃ勝てない。
ヒマル「あんた…意思があるんだな。ますます珍しい。」
魔王「俺は例外だ。さぁ!始めよう…と行きたいのだが。一つ聞いてもいいか?」
ヒマル「奇遇だな、俺も聞きたいことがあったんだ。」
コイツから感じる力…俺と同じ系統だ。
魔王「能力はなんだ?」
ヒマル「…『悪魔』だ。」
やはり。悪魔は俺たちの種族の名称。その名を能力として体に刻んでいるという事は俺は自分を名指す概念そのものと戦うということか…。
魔王「面白い!!!」
全く持って面白いじゃないか!ユラと戦った時、いやそれ以降の胸の高鳴りを感じるっ!
ヒマル「あんたはなんなんだ?俺より悪魔らしい恰好してやがる。」
魔王「俺は魔王さ!」
そういうとこいつは目を見開き、そして笑った。
ヒマル「はっ、魔王か。それは確かに面白いな。」
魔王「そうだろう?じゃあやろうか!」
そうして悪魔対魔王の戦いが始まった。
魔王「ふんっ!!」
俺は一気にヒマルに近づき攻撃を開始する。
ヒマル「《ベルゼブブ》!」
だがその攻撃は空を切った。ヒマルはとてつもない速度で避け、俺の背後に回った。
ヒマル「《アバドン》」
その声が聞こえた刹那、俺を背後から恐ろしい気が襲った。
魔王「ぐあぁぁああ!!!」
とんでもない魔の力だ…。だが、まだユラの方が強かった。
魔王「魔式光線破!」
球体を出しそのすべてからエネルギーを放つ。
ヒマル「うおっ?!」
その隙の無い攻撃はそいつを襲った。
ヒマル「ぐうっ…魔王というだけあるな…」
魔王「そうだろう?さぁ!まだまだ行くぞ!」
ユラと戦い俺も学んだのだ。さらに上の強さへと。
魔王「『神化』!!!」
己そのものを神の領域へとグレードアップさせる。そうして魔神は現れた。
ヒマル「俺の相手はどうしてこう…」
魔王「ウォーミングアップはおしまいさ!」
俺はさっきのヒマルほどの速度を出して一気に叩き込む。
魔王「うおおおおおおおお!!!」
ヒマル「くっ…」
最初の方はさばいていたがだんだん俺の速度も速まっていく。そうして…
魔王「おらぁ!」
ヒマル「がはっ!!」
ヒマルを遠くまで殴り飛ばした。
魔王「はぁ…はぁ…」
俺は神化を解いた。この力を使うと一気に疲れる…。しかも今は遊佐とかなり離れている。長持ちもしないな…
ヒマル「つぇえな…魔王さんよ」
魔王「そりゃ…魔王…だからな…」
さ、さすがに飛ばしすぎたか…
ヒマル「だが、息切れてるんじゃないのか?」
魔王「そ、そんなこと!」
まずい、まだこいつ…
ヒマル「《アザゼル》」
その瞬間、ヒマルの手に禍々しい剣が現れる。
ヒマル「第二ラウンドと行こうか」
魔王「がはははっ…やってやろうではないか!」
俺も剣を創造し、ヒマルと切りあった。
そのお互い禍々しいその剣はどちらも完璧な太刀筋で交じり合う。俺もかなり剣の達人だと思っていたがまだこれほどのものが…!
ヒマル「やるなぁ!あんた!」
一気にヒマルの攻撃の威力が変わる。こいつまだ力を…
魔王「お前もなぁ!」
互角のようだがどうも少し認めたくはないがほんの少し負けている…!
魔王「ぐうぅ…!がぁ!」
ヒマル「なっ!?」
一旦ヒマルを剣ごと大きく弾き、大技を決めに行く。
魔王「魔式斬月下!!」
大きく、さらに大きく剣を伸ばし、一気に断ち切る。
ヒマル「こっちだって…《奥義・ジビラティ》!!」
俺の大技に対しヒマルの剣技はまっすぐ一点集中で俺の剣迎え撃とうとしてくる。
二つは重なり、力のぶつけ合いとなる。
魔王「おおおおおおおおおお!!!」
ヒマル「ぐっ…がぁぁあああぁぁああ!」
ダメだ…もう力がでん!遊佐が離れすぎだ!あいつ遅すぎる!
少し押され出してきたじゃん!
ヒマル「終わりっ…だぁぁあああ!」
魔王「嫌だあああ!!」
魔王のプライドとして負けたくなかった。負けてたまるか!!
頑張れ俺!
魔王「ぐぅううう…う?」
なんだ?なんか力が…
遊佐「魔王さん!ユラさんもう少しで来るから頑張って!」
ナイス!我が主!
ヒマル「なんだ…!?どんどん押され…」
魔王「本日二度目の《神化》!」
ヒマル「はぁあ?!」
正直遊佐が戻ってきたからって体力は戻らないのでほんとに一瞬だけの神化である。
だが今は十分だ!
魔王「終わりだぁぁぁああ!」
ヒマル「ぐっ…だぁあ!!」
ついに俺の剣はヒマルの剣を真正面から崩し、俺の剣はヒマルを断ち切っ…
エル「《サリエル》」
が、突然横から現れた大きな盾がそれを防ぐ。だが、今さらそんな盾にやられるはずが…
ガシャーン!!
盾を壊しはしたが同時に俺の剣も崩れてしまった。
魔王「なにぃいいっ!?」
エル「うそ、サリエルの盾が…」
俺の剣が…俺の…
ユラ「大丈夫か!!」
…大丈夫じゃないです…
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部屋で優雅に炭酸水を飲んでいると遊佐が突然俺の部屋に来た。
なんでもヒマルが現れて魔王が足止めしていると。
俺はリネに連絡し駆け付けた。
ユラ「なんじゃありゃ…」
大きな剣がすさまじいオーラを出している剣にやらせそうになっているこの世のものとは思えない光景が広がっていた。
だが先に行った遊佐がついたあたりで一気に形成逆転し、大きな剣が一気に崩したのだが…
ユラ「大丈夫か!!」
俺がちょうどつくと見覚えのある盾がヒマルを防いでいた。
魔王「ユラ!遅い!」
遊佐「魔王さん!ユラさんこれでも全力で来たんだよ!」
瞬間移動使おうと思ったのだがどうも魔王がいる場所はつかめなかった。人限定なんだろう。
ヒマル「引くぞ、エル」
エル「ヒマルは大変だね…」
ヒマル「他人事だな!?」
ヒマルとエルが逃げようとしていた。こんな場面何回も見た。もう逃がさない。
ユラ「はっ!」
俺はヒマルたちが逃げようとした方向に炎の壁を作り出した。
エル「む」
ヒマル「さすがにそうやすやすとは逃がしてくれなくなったな…」
逃げるのを諦めたようでこちらに向き合ってきた。
魔王「ユラ!よくやった!」
ユラ「お前もな」
魔王がいるのはありがたい。俺一人じゃこの二人に勝てる気はしない。
魔王「じゃ!後は頼んだぞ!」
ユラ「え、いや…俺一人じゃ無理だぞ」
魔王「俺疲れたぞもう…」
…確かにスゲェ汗かいてんな…。なんかかわいそうになってきた。
ユラ「わかった、頑張るわ」
そして俺は主犯格に向き合う。
ユラ「二人同時にやるのは初めてだな」
ヒマル「俺はもう無…」
エル「やるの」
ヒマル「…はい」
ユラ「スパルタだな」
俺は炎の剣を作り出し、エル達へと向けた。ここからはリネ達を待つ。もしくは倒してしまう。
そのどちらかが勝利条件だ。




