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【最初の魔法使い】  作者: コトワリ
第3章 最悪の魔法使い
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第三十六話 全力だ

ユラ「ここか?」


ライが言っていた場所はこの部屋のようだ。俺は念のためノックをした。

二回程。


ソウシ「どうぞ」


言葉に招かれ中に入るとそこには魔法ランキング一位のソウシさんであろう人がいた。初対面で顔も知らなかった。白く長い髪はとても綺麗で、一瞬女性かと思うほど小柄だ。顔もよく整っている。


ソウシ「君がユラ君だね。初めまして。僕は御手洗ソウシ。能力者ランキング一位だ。」


女性のような見た目とは裏腹に声はしっかりと男性特有の低い渋い声だった。年齢は60ぐらいなんだっけ。そうには見えない若さだが。隊長が時間を渡しているのは真にだけのはずだから確かに60歳なのだろう。


ユラ「はい、はじめまして。」


ソウシ「ライ君から連絡はもらったよ。私と戦って勝たなきゃ実技試験は0点…だっけ」


ユラ「あれほんとだったんだ…」


冗談じゃない。いやほんとに。


ソウシ「はっはっは。随分と先生と仲がいいんだね。いや、チームとしての絆が深いと言った方が正しいのかな?」


ユラ「事情は知っての通りで…」


ソウシ「うん、聞いているよ。エルとヒマル、そしてゼンツの捕獲だよね。戦うのは良いんだけどその前に一つ聞いておきたい。」


ユラ「なんでしょう」


ソウシ「あー、そうだ。敬語も外してくれていいよ。話しにくいしね」


ユラ「…わかった。それで?聞きたいことってなんだ?」


ソウシ「まず、エルとヒマルには正直勝てる。そうだね?」


ユラ「…!」


…間違ったことは言っていない。確かに俺はエルとヒマルになら十分な差をもって勝てると言えるだろう。もちろんあの二人は強い。だがまだまだ荒いのだ。とてもじゃないが国一つ滅ぼしたとは思えない。


ソウシ「エルの方とは一回戦ってね。噂通りの最初の魔法使いなら勝てる。そう思ってね。そこで聞くが…エル、ヒマルの能力に検討はついていないかい?」


ユラ「エルとヒマルの能力…」


それは…。というか、もう我慢できない。


ユラ「教えてもいいぜ。それにゼンツについても。俺が言える事なら大体の事教えてやる。ただし…」


ソウシ「ユラ君に勝ったら、かな?」


ユラ「話が早くて助かるよ」


ソウシ「真が言ってた通り子供心はしっかり残っているんだね。これは侮辱とかではないよ。僕だったら80年も一人で生きていたらおかしくなると思ってね。」


ユラ「…悪いかよ」


ソウシ「いや、それは君の魅力だよ。聖花君もそこに惚れたんだろうね」


ユラ「なんで知って…」


ソウシ「真が騒いでたよ?「ユラに彼女が!!」ってね。騒がしいったらありゃしない。」


確かに真なら知っててもおかしくないか…。隊長経由で情報が入るだろう。


ソウシ「とにかくまぁ、そういうことならやろうか。李地さんのところに行こう。あそこならいくらでも戦っても壊れない部屋があるはずだ。それに一目にもつかないし。何より広い。」


ユラ「わかった。」


そうして俺たちは李地さんの研究室へと向かった。

その道中…


ソウシ「真がユラ君の事をよく話しているよ」


ユラ「なんて言ってるんだ?」


ソウシ「そうだね…。最近は「久しぶりに会ったけど相変わらず生意気だった」って言ってたかな」


ユラ「あのやろ…」


ソウシ「泣きながら、ね」


ユラ「え?」


ソウシ「真はユラ君が死んでたとおもってたんだよ。それに何やらいつか守るみたいな約束もしたらしいじゃないか。それなのに80年もほったらかして…。」


ユラ「ぐっ…」


確かに真には心配をかけた


ソウシ「これは夫としてこらしめてやらなきゃな」


ユラ「…こっちも彼女に失望されないよう頑張るかな」


そうして俺たちは李地さんの研究所についた


李地「ソウシさんとユラさん?不思議な二人ですね…。何か御用でも?」


ソウシ「戦闘ルームを貸してくれ」


李地「あ、はいはいなるほどなるほど。戦闘データはもらいますから」


ソウシ「変わらないな、その収集癖」


李地「あなたも強い人と戦いたい癖、治りませんね」


この二人は確か魔警設立メンバーだったはず。仲がいいんだな。…まて李地さん何歳だよ。


ソウシ「それじゃあやろうか」


ソウシさんに手招きされるがまま、戦闘ルームと呼ばれる場所に入った。そこは…


ユラ「ひっっっろ!!!?」


めちゃくちゃ広い何もない空間がただただ広がっていた。


ユラ「これは…」


ソウシ「李地さんが作った戦闘ルームさ。架空空間だよ」


ユラ「李地さんってなんでも作れるよな…」


ソウシ「本当にね。僕も思うよ。あの人は魔警に欠かせない人だ。」


昔の李地さんはどんな人だったのだろうか。


ユラ「それじゃあまぁ…やりますか」


ソウシ「そうだね。やろうか。…そうだ。先に言っておくよ」


そう前置きを置いて、ソウシさんは本を取り出した。そりゃ持ってるに決まってるよな…。

俺も本を取り出す。


ソウシ「最悪、ユラ君は僕に傷一つつけられないよ?」


ユラ「言ってくれるじゃねぇか…。降参って先に言った方が負けでいいか?」


ソウシ「あぁ、構わない。」


ついに、その戦いは始まった。初期最強VS次期最強の戦いが…!!


ユラ「じゃ、こっちから行くぜ!」


俺は挨拶代わりに炎の弾をソウシさんに向けて放った。


ソウシ「炎…最強の属性能力だね」


次の瞬間、俺の炎の弾はソウシさんに当たった…が


ソウシ「熱い、だけだな」


すぐに消えてしまった。


ユラ「なんだ…?」


今のははじいたり消したというよりかはかき消えたようだった。炎を無力化…?


ソウシ「にしても、こんな火力じゃないだろう?本気を見せてくれよ」


ユラ「…わかった。」


情報が足りなすぎる。炎以外で攻めてみるか…


ユラ「『ステージ3』!」


俺はステージ3に入る。


ソウシ「来るか!」


ユラ「グラン・ゼロ」


超巨大な重力弾を撃ち込む。この大きさなら軽くは消せないはずだが…!?


ソウシ「さすが、もろにくらったらケガじゃすまないね。」


俺の重力弾はソウシさんに当たる…が、またさっき見たような光景が俺の目に入った。


ユラ「なんでだよ…。なんで攻撃が入らないんだ!?」


重力弾は当たった瞬間に消えた。当たってはいるはずなのに…!


ソウシ「はっはっは。効かないよ。さて、次はこっちの番かな。」


するとソウシさんはゆっくりと歩いてきた…ように見えたが次の瞬間には俺の目の前まで移動してきていた。おかしいだろ、一歩ほどだったぞ!?


ソウシ「ふん!!」


その拳は重く、俺は後ずさりをしてしまった。


ユラ「ぐっ…!肉弾戦もできるか…」


だがどこか違和感だ…。ソウシさんの攻撃は見た目はまるで素人のような形なのにその威力はエルをも超えている。


ソウシ「すごいな…」


ユラ「何がだよ…。そっちの方が圧倒してるじゃないか。」


ソウシ「そうだよね。うん。教えてあげよう。僕の能力を。それを聞けばきっとわかるさ」


ユラ「なんだ…?」


ソウシ「僕の能力の一つ、『黒曜の月』。まだ僕しか持っていない。『フィールド能力』と呼ばれる新たな能力さ。」


ユラ「フィールド…能力」


ソウシ「あぁ。戦いが始まってすぐに僕はこの能力を展開していた。効果は一定範囲内の対象を『真逆』にとらえること。」


ユラ「真逆…。そうか、だから俺の攻撃は効かず、そのかわり防御力の硬い俺の方がダメージを受けたのか…!?」


ソウシ「そういうことさ。僕自身にはその『真逆』は外せるしつけることもできる。かなり自由のできる能力さ。しかも欠点という欠点はないからね。」


フィールド能力か…。確かに初期の頃にはなかったものだな。


ユラ「それでも、突破口はあるはずだ」


ソウシ「果たしてあるかな?」


ユラ「なきゃ困る」


ソウシ「そうか、頑張ってくれ」


俺が攻撃をしてもすべて無意味なものになってしまう。最悪、回復される場合だってある。

…とにかく、攻撃するしかないか。一方的に攻撃を受けたくはない。まだ能力を持っているはずだ。


ユラ「炎流一閃 炎斬波!」


ソウシ「無駄だよ」


俺の炎の飛ぶ斬撃は無残にもかき消えてしまった。強すぎる…。能力の特性は対象者の保持能力数によって無効化できるはずだが…フィールド能力は例外らしい…。さてどうするか。


ソウシ「もう終わりかい?ヤケクソのステージ5を打ってみるかい?」


ユラ「まだ…だ!」


俺は炎の剣でソウシさんに切りかかる。


ソウシ「効かないよ。案外頭が悪いね」


切っても切っても、その攻撃がソウシさんに入ることはなかった。いや、攻撃自体は入っている。ただなかったことのようになっていくのだ。


ユラ「くっそ…!」


…突破する方法はわかっている。だがそれは危険すぎる。

答えは、圧倒的な力だ。結局力でねじ伏せてしまえばいいはず。フィールド能力ですら対応しきれないほどの高火力を…!


ユラ「こんなに全力が出せる相手は久しぶりだよ!」


ソウシ「そうか!僕もだよ!」


ソウシさんは近づき、攻撃してくる。


ソウシ「僕のもう一つの能力『無限守』は『黒曜の月』と相性がいいのさ!無限に上げた守りは全て攻撃へとなる!」


なんだって…!?まさか無限の能力まで…。しかも完璧にかみ合っている。だからこんなにも攻撃の威力がおかしいのか…。


ユラ「ぐっぅ…ぐはっ!」


ついにさばききれなくなり、俺は吹き飛んでしまった。…いや、吹き飛んでいない?


ソウシ「飛ばしたはずが戻ってきた…『真逆』の事が起きたね。さぁ!もう一度だ!」


ユラ「嘘だろ…」


強すぎる。能力の使い方、能力の合わせ方。すべてが完璧だ。これが…これこそが一位の所以…!これは…


ユラ「グラフォルス・魔双鏡波!」


ソウシ「何っ!?」


まず起こりえないその速度の攻撃はソウシさんを少しかすった。


ユラ「一位、ちゃんと一位じゃねぇかよ…!わかった!ちゃんとやってやる!久しぶりの本気だぜ!」


そうして俺はステージ4へと上げていく。一気にだ。


俺の後ろには『炎』の魔獣、龍。『重力』の魔獣、死神が現れる。


ソウシ「はは…なんてことだ…」


ユラ「発動、『黒炎』!」


山から降りてきて使うのは初めてか?黒い炎は…。昔は体力を吸っていたが今じゃそんなのミリ単位だ。


ユラ「『インフィニティソード』!」


きらめく聖剣、まとわれる黒き炎。そして二つの巨大な力…


ソウシ「それが…それこそが『初期』だよ…!やろうじゃないか!」


ユラ「あぁ、頼むからすぐには終わるなよ?」


ソウシ「もちろんだ」

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