第三十三話 世間一般ではこれがのろけ
エルと戦っていたところ、突然ゼンツの能力によって作られた化け物。『ピース』というらしい生き物が俺を襲った…が、そのエルを俺の彼女が襲った…
エル「だから…もう帰るって…」
腰をさすりながらエルがとぼとぼと帰ってきた。エルも大変だな…。たまにはヒマルがくればいいのに。いや来てほしくはないんだけど。
聖花「あれ、そうだったの。ごめん」
リネはそう言って俺の腕にしがみついている。ステージ5の反動で体が痛いが俺はもちろん文句は言わない。幸せだからな!
エル「付き合ったんだね…おめでと…じゃ、またね…いたた…」
本気で効いたのか今日は余り追及せず帰っていくようだ。ピースにおんぶされて帰っていった。なんか緊張感薄くなったな…。とはいえ捕まえようにもあのピースっての。俺のステージ5を防ぎやがった。もう夜だ、これ以上ことを荒立てるわけにもいかない。
そうだ、花形さん!
花形「ユラさん、そっちは終わりましたか?」
とっくに戦いを終わらせていたらしい花形さんが帰ってきた。見た感じ傷一つない。老体に見えてめちゃくちゃ強いんだろう。花形さんが戦っていたあのビショップってやつ。あれはあれで強い。メクルやマゴレベルはありそうだ。
ユラ「逃げられました。そっちは…大丈夫そうですね」
花形「中々手ごわい相手でしたよ?…おや、そこにいるのは聖花?」
聖花「……」
ユラ「リネ?呼ばれてるぞ」
聖花「…え?…あ、あぁ、ごめん。ユラの事考えてた。で?なんだっけ」
可愛い
聖花「って、師匠じゃん。お久しぶりです。」
花形「聖花、あなた恋人なんて作れるような人だったんですね。」
師匠?二人とも知り合いだったのか?
聖花「あ、ユラは知らないか。花形さんは私の師匠。主に戦闘面のね。私の能力ってあれ意外と筋力とか体力とか使うんだよ。鍛えるために昔習ってたの。」
花形「実はそうなんです。こんな小さい少女。どう強くしてやろうかと思いましたが意外と無難な形に収まりました。」
聖花「何が無難ですか…。頑張って自己流にしたんです。師匠はでたらめなんですよ。全く…」
ユラ「へぇ…一体何歳ごろの話なんだ」
聖花「んー…10歳?」
ユラ「若」
聖花「私の売りだからね」
若さを売りにしたらそれ別のものに誤解されるぞ
花形「まぁ…とにかくいろいろありましたが。今回の事は魔警に任してもいいですね?」
聖花「うん。師匠に出てもらうまでじゃないよ。私ももう強いし。守ってくれる人ができたしね」
花形「はっはっは。それにしても羨ましいほどの人ですね。誰も勝てませんよ。」
聖花「でしょ。じゃ、いこっか」
ユラ「あぁ」
そうして俺は魔法書館を後にした。情報は手に入ったし、また知りたくなったら行くこともできるようになった。十分な成果はあっただろう。
魔警に帰ってリネと離れた。本の事を聞こうとしたら
聖花「つかれ…部屋泊まっていいならいいよ」
と言ってきたのでさすがに断らせていただいた。あんな可愛いのと寝れるかよ。死ぬわ。俺の80年に幕が下りちゃうわ。
ユラ「寝る前にチームに寄って行くか。」
最近学校が忙しかったりいろいろあったので顔を出せていなかった。久しぶりに会いに行こうかな。
そうして俺はチームの部屋まで歩いて行った。寮と少し離れているのは少しめんどくさい。そのせいで行くのを怠るんだよなぁ…
ユラ「ん?」
扉の前に立つと何やら声が聞こえてきた。結構大声だ。
ライ「メクル!ユラ来たらどうしよう!」
メクル「さっきから何回目だよそれ…。別にどうもしなくていいだろう?」
ライ「でもでも!聖花さんとつ、つ、つつつ…」
マゴ「…なんだかんだ言って恋愛事弱いんですよねぇ。ライ先輩。」
ケルト「彼氏どころか気になる人すらできずに29年…もうライもいい歳なんだよなぁ…」
ライ「何よ…」
マゴ「ばばぁ…」
ライ「いま小声でババァって言った人だれ!?」
相変わらず騒がしいな…。しかも全員集合してるからなお一層うるせぇ。何かあったのか?
入ったらめんどくさそうと思って帰ろうとしたら丁度アルパさんが来た。久しぶりな感じだな。
アルパ「おう!ユラ!久しぶりだなぁ!」
ユラ「アルパさん!声大きいって…」
ときすでにおすし、いや遅し。
声は響き渡っていた。
ライ「ユラ!?いたの!?」
ドアが勢いよく開かれ勢いよく中に連れ去られてしまった。
ライ「盗み聞きは良くないんじゃないかなぁ…?」
ユラ「アルパさん…」
アルパ「なんだ?俺なにか悪かったのか?またなんかやっちゃったのか?」
異世界物の主人公みたいなセリフを筋骨隆々な人が言ったら説得力が違いすぎる。
俺が一通りライの愚痴のような己への意思表示のようなものを五分ほど聞いてようやく収まった。
ユラ「もう盗み聞きはしないから…」
ライ「わかればいい」
マゴ「ライ先輩、かわいかったですよ」
ライ「なんで今過去形で行ったの…?」
第二ラウンドはそっちでやってくれ
アルパ「相変わらず騒がしいチームだな!はっはっは!」
メクル「アルパさんには敵いませんよ」
ユラ「あんたらがアルパチームにいたときが一番騒がしそうだよ」
マゴ「確かに」
ユラ「そういえばメクル」
メクル「ん?」
アルパ「俺は帰るぞ!」
マゴ「あ、お疲れ様でーす。暇なんでついてきますよ」
アルパ「お!かわいげのある後輩だ!うちに来ないか?」
ライ「あげません。ほら、私も行きますから」
アルパ「両手になんとかだな!じゃあすまないがこの荷物とこれ持ってくれ」
そうして騒がしい二人とうちのツッコミ役がいなくなった。
ユラ「今日全員いるけどなんかあるのか?」
メクル「いや?何もないよ。ただみんな都合があったらしく集まったみたいだ。何かあったらユラも呼んでるよ」
ちゃんとチームの一員として扱われて嬉しかった。そりゃそうなのだが。
ユラ「あともう一つ。メクルどこ行ってたんだ?」
メクル「修行。あと溶岩の能力を使えるようにしに行ってた」
ユラ「溶岩?」
メクル「あぁ。使ってなかったでしょ?あれ『封印』の能力でやってもらってたんだ」
封印…。そんな能力者までいるのか
ケルト「うちのリーダーは強くなりたかったんだと。いきなりいなくなるもんだからなぁ…」
ユラ「困るよな」
ケルト「ほんとだよ」
メクル「なんかすいません…」
リーダーの顔が上がらないというおかしい状況になった
ユラ「でもこれで雪と溶岩を操れるようになったのか」
メクル「それにこれも」
そう言ってメクルは俺に本を見せてきた。
ユラ「それ…」
メクル「溶岩は属性能力だからな。もらえた。」
ケルト「これで本持ちはうちのチームじゃ三人目か。結構増えたな」
ユラ「いつか誰しもが本を持てるかもな」
ケルト「なら、欲しいもんだ」
昔は本の存在がとても貴重なものだったのにもしかしたら携帯電話のように誰もが使えるものになるのかもしれない。リスクもあるがメリットもあるから何ともいえないな
メクル「ところでユラって本いつもどう持ち歩いてるんだ?結構邪魔で…」
ユラ「あぁ、俺は最近隊長にもってもらってるから今もってないけど、普段は浮かせてるよ」
メクル「う、浮かせてる…!?」
ユラ「おう。見えないには『煙』の能力で撒いてるんだ。本は自然なものにしておきたかったからな。頑張ったんだぞ?」
メクル「そうだったのか…。俺にはできなさそうだな」
ユラ「あ、そうだな。考えてなかった。今度本用のホルダー作ってみるよ。」
メクル「それと、ステージ上げるコツを教えてくれないか?悪いな。だが、早く強くなりたいんだ」
ユラ「いいぜ。あんまり急いでもだめだが最速でステージ3まで行かせてやるよ。」
メクルは新しい力に嬉しそうだったし、俺は頼られて嬉しかった。英雄、というのは頼られたいものなのかもしれない
さっそく色々教えようとしたら電話がかかってきた。
ユラ「すまん。えーと…」
出るとさっき聞いた声が。
聖花「ゆらぁ~…いっしょにねよぉ~」
ゼッタイ人には言わないであろう声でそう聞こえてきた
…これ断れるか?
ケルト「女か…」
メクル「女なら行きな」
ユラ「いや、でも…」
メクル「強くなる理由は守るためだろ?行かなくてどうする」
か、かっけぇ…
ユラ「じゃ、じゃあ行ってくる」
メクル「ちなみに聖花さんなんて?」
ユラ「一緒にねよって」
ケルト「…リーダー。これを世間一般ではのろけられた、というらしいぞ」
メクル「…また一つ、学んだな」
なんか見てられなかったので俺はすぐ部屋を出て聖花の元に向かった。
着いたら寝てた。人の気も知らずに…
聖花「あ、ゆらー…」
…寝ぼけてるのか本気なのかどっちかにしてほしい。
結局一緒に寝た。
その後
聖花「ゆらぁ…」
ユラ「寝れん!!」
聖花「むぅ…」
ユラ「くっつかれたら瞬きもできん!!」




