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【最初の魔法使い】  作者: コトワリ
第3章 最悪の魔法使い
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第三十一話 裏の仲間

あれからすぐに、俺は魔法書館に来ていた。水森さんという人から借りためちゃくちゃ高級そうなカードを入口の機械に通したらすんなり入れた。建物は想像よりは大きくなかった。…と、思ったが


ユラ「地下…ひっっっろ」


建物に入ってすぐのところには何もなく、ただ地下へと続く階段があり、そこを降りると魔学校がそのまま入ってしまうんじゃないかと思うほどの広い空間がそこに広がっていた。


ユラ「…誰もいないんだな」


時間が時間ということもあるが人はいなかった。かなり限られた人しか入れないんだろう。水森さん、何者なんだ。

文献が年月ごとに並んでいる場所を見つけ、そこから俺がいなくなった頃の棚に向かった。

怖いほど静か、だがどこか落ち着く場所だった


ユラ「…これか」


そこには当時の事が書いてある新聞の記事、出来事をまとめられたスクラップ記事などがあった。当時のものをただ集めただけじゃない。まるで誰かが見やすくするように加工したような状態だった。一体だれが…


ユラ「…『突然消えた能力者たち、非難殺到』…」


そんな見出しの記事を見る。世間からしたら俺たちの評価は半々だった。能力者は能力者でしか止められない。だから俺たちは存在を認められていた。だが決してその戦いが一般の人に広がらなかったわけでもない。一般の人からしたら「勝手にやっておいてくれ」という思考の人もいたんだろう。


パラパラとみていると一人の政治家の話が載っていた。名前は…「国田彰浩(くにだあきひろ)」。


「能力者というのは私たち市民に多くの被害を与えているわけではない。だがいつ我らに広がるかわからない。この現状に納得してない人たちがいることは深く痛感している。しかし、私たちが手を広げられる話でもない。ここはFWという善良な能力者グループに任せるしか…」


汗をぬぐっている写真からどうしようもない様子が目にとれる。俺たちの行動に他の勢力が関与してこなかったのは実はある一人の能力者のおかげだった。


「私は裏に回る。君達の力は全てを止められる。」


茶髪の落ち着きのある人だった。当時俺たちが拠点にしていたところにいきなり来てそれだけ言って去っていったのを覚えている。名前も、何をしていたかも知らないが確かにほかの力が邪魔に入らなかったのだからあの人は手をまわしていてくれていたのだろう。そういう裏の力もあってこその俺たちの活動だったのだと、今さらながら思い出す


ユラ「…残念ながらその人っぽい情報はないか」


俺が昔の情報を知りたかった理由は二つ。一つはその裏で手をまわしていてくれた女性のその後。もう一つはあの後生き残っていた能力者がいたかということだ。俺とクラリタの秘書、ゼンツ…。ほかに生き残っていないかと思ったが…どうやらいないようだった。


ユラ「…俺一人じゃ、きっとゼンツには勝てない…」


当時の能力者、というのは想像よりも脅威だ。俺とは違う力をつけている可能性がある。少しでも味方が欲しかったのだが…


???「おや、人がいるとは珍しい」


ユラ「!?」


???「そんな驚かないでくださ…ん?あなたは…」


なんだこの老人!?気配がなかった…。風の能力に引っかからなかった…。意思も読めない。


???「これはこれは…ユラ様ですね」


ユラ「そ、そうですが…」


花形「申し遅れました。私は花形ダルシ。能力は『ナンセンス』。ここの館長をやらせていただいております。ユラ様の事はラビから聞いておりますよ」


ユラ「…!水森さんを知っているんですか?」


花形「はい。ラビは私の孫でしてね。ラビにはここの館長を引き継いでもらうつもりです。なので誰でも入れるマスターキーを渡したのですが…最近人に渡したといって…。一瞬なにやってんだコイツは、と思いましたが如何せん頑固ものなので。とはいえ渡した相手がユラ様だったとは。それならば納得です。」


思ったよりユニークな人だな、花形さん。


ユラ「花形さんはなぜ俺に渡してもいいと?」


花形「あなたは過去を知るにふさわしい人物ですから。それに…救っていただきましたしね。白い髪の女性とね。」


そうか…80年たった今でも生きている人はそりゃいるか。どこで救ったかは覚えていないが、花形さんはきっとずっと覚えていてくれていたのだろう。あの行動をしてよかったと少しでも思えてうれしかった。


ユラ「そうでしたか…」


花形「それで…今日は何をしに?」


ユラ「当時裏で俺たちの行動を補助してくれていた女性と、まだこの日まで生きている『初期』の生き残りがいないかと…」


花形「生き残りの能力者の方はわかりませんが…女性の方なら少し力になれるかもしれません」


ユラ「ほんとですか!それじゃあ…」


花形「ですが、それではナンセンスです。私、この年で少し強欲になりましてな。ここはひとつ情報交換と行きましょう」


ユラ「情報交換?」


花形「はい。私、どうしても知りたいことが一つありまして…。知識欲、というやつです。もし、教えていただけてもらえるのならば、ご説明いたしましょう」


ユラ「…内容によりますけど、俺が答えられる範囲であれば」


花形「私が聞きたいことは二つです。いいですか?」


ユラ「まぁ…いいですよ。」


正直何をしてでもその女性については知りたかった。同じ場所にいなくとも、一緒に戦った仲間なのだから。名前だけでも知りたい。


花形「一つは…あなた方が、FWがいなくなった日の事です。あの日見つかったのは闇の能力者様の遺体だけ。反FWの方々もリーダーをなくし困惑していた…。あの日何があったのですか?」


ユラ「それは…」


…あの夜の、事。

なんていえばいい?突然ある男に全滅させられて、そのあと俺が暴走してすべてを消したことを言うのか?…だが、言わない理由もないだろう。それで責められても何も言えないことを俺はしたんだ。


俺は最後の夜について花形さんに話した。


花形「なんと…そんなことが…」


花形さんは突然、俺の肩を掴んできた。責められるのかと一瞬思ったが…


花形「よくぞ…よくぞ折れずにこの場に生きてくれました…!!」


涙ぐみながらそう花形さんは言った


ユラ「それは…どういう?」


花形「そんな辛いことがあったにもかかわらず、80年もの間生き、今も魔法警察として人々を守ってくれる。本当にありがたい…!!」


花形さんは興奮気味でそう言った。少し拍子抜けてしまった。まさか俺のあの80年を肯定してくれる人がいるとは思わなかったからだ。


ユラ「俺は…相棒を…すべてを…」


花形「そんな昔の事をとやかく言う権利は私たち『次期』の者たちにはありませんよ。ユラ様本人が振り切っていれば、それはもう過去です」


その言葉は、俺が欲しかったものだった。


ユラ「…そう、ですね。ありがとうございます。」


何かに解放されたような気分だった。どこか、俺はまだあのことに縛られていたのかもしれない。


ユラ「それで、もう一つは」


花形「あぁ、すいません。年を取ると涙腺が脆くなるもので…。それで、もう一つというのは究極の能力のことなのですが…」


ユラ「究極の…能力?」


花形「はい。本を持つものの情報から究極の能力の存在があることだけはわかっているのですが…何か知っていませんか?」


そんなものは聞いたことが…いや待てよ…。そういえば…


ユラ「…消滅と創造、それと最初の能力を合わせたとき…」


花形「合わせたとき?」


ユラ「…だめだ、思い出せない」


花形「そうですか…。まぁ80年も前ですもんね…。私もよくは覚えていませんし…」


なんかそういう情報があったように思うんだが…。


ユラ「すいません。あまりいい情報を渡せず・・」


花形「いえ、だいぶ有意義な話でした。消滅と創造…そんな能力があればきっと伝説級でしょうね」


ユラ「そうですね…。それで、俺が聞きたかったことは?」


花形「あぁ、すいません。物覚えが悪くなっていましてね。ユラ様が知りたがっている女性についてはほとんど情報が残っていませんでしたが名前と能力らしき情報はあります。」


ユラ「ほんとですか!それで…!?」


花形「名前は『由井月(ゆいつき)サラ』様。能力はどうやら氷を操る能力者だったようです」


そのころ


聖花「ない…私の…本…私の…不老不死…」

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