第二十九話 なんだこいつ
決して二つ返事で返したわけじゃないからね?いや、本当に好きではあったから。
よくわからない言い訳を心の中でする。隣で顔を俺の腕にくっつけてあほ面で寝ている自分の彼女を見つつ俺はそんなこと思う。こいつよく寝てんな…。てかよく見たらよだれついてんじゃねぇかおい。
ユラ「はぁ…」
聖花「むぅ…たい…やき…」
夢の中まで食い意地はってるなぁ…
あれから二日後。今日は休日だ。あれから学校では特に何もなかった。最近ドッジボール大会が終わったのだから当分はイベントも問題も起きてほしくないものだ。
聖花に告白するつもりが逆に告白されてから魔警ではその話題がちょっとしたブームになっていた。
聖花を尊敬していたもの。聖花を昔から知っていたもの。
聖花を好きだったもの、聖花をねたんでいたもの。
魔警のほぼすべての人間がその事実に各々感情を抱いていた…というのは少し大げさな表現かもしれないと思うだろう。
いや、ほんとにそうなのだ。
あの後…
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ユラ「俺でよければ、喜んで」
そう言った瞬間、周りの集まっていた人たちが様々な声を上げた。そのことにびっくりしていたら聖花がいきなり俺の方に倒れこんできた
ユラ「おっと!ど、どうした!?」
聖花「いや…さっきの反射するのに全力使っちゃった…」
基本、能力で体力がなくなることはない。だが結局頭から指示を出して使っているものだ。
気力を入れて使えばそれは精神的に疲れる。
ユラ「全力出しすぎだよ…」
聖花「だって……もん」
ユラ「なんだって?」
聖花「…好きって…言いたかったんだもん…」
その言葉で周りにいた人たちが一斉に倒れて行ったのはまた別の話。ちなみに倒れた人々の中に俺は例外ではない。
その後、その事実は隊長に伝わり…
ウルウ「…は?」
そのことが伝わった時の隊長の顔はとっても面白かったらしい。レイさんが大笑いしたぐらいだ。
レイさんは「リーダーは学生らしいことをしてなかったからちょうどいい」と言っていた。
隊長は俺に何度も確認してきた。
ウルウ「ほんっとうに好きなんじゃな!?わしの聖花を取る気なんじゃな!?」
ユラ「そうだって…何回言わせるんですか」
正直、聖花の見た目から入った、と言ってしまってもいいのだが決定打はギャップだった。
あの普段は優等生なのに普段はふにゃりとしたあの性格が好きになってしまった。
頼りになるときはなる、目上、後輩の事をしっかり思いやる聖花が好き…だったと思ってはいたのだがどうしても、昔の仲間たちが頭から離れなかった。
聖花「何回でも言っていいよ」
ユラ「あのなぁ…」
聖花「あと私、隊長のものじゃないんで」
ウルウ「うぅ…」
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でも、聖花はまっすぐ気持ちを伝えてきてくれた。俺を最初の魔法使いと特別視せず、一人の女の子として。そんなもの、男としてまっすぐ受け取らずどうするんだって話だ。
この先は不安だが聖花なら一緒に背負って行ってくれるだろうと、そう思ったのだ。
ユラ「…俺実年齢96だけどいいのかな」
…まぁ見た目同い年だしいいか。というかまてよ、この先聖花だけ年取っていくのか!?
悲しませることになる…かもしれない
聖花「…む」
その時、聖花が目を覚ました
ユラ「おはよ」
聖花「…?」
まだ、目が覚めていないようだ。部屋でだらだらしているところにいきなり聖花が来ていきなり寝だしたからなんだこいつと思ったが、多分疲れていたんだろう
聖花「ユラ…くん」
ユラ「なんだよ」
聖花「…ねむい」
ユラ「今寝てたよな!?」
その時、聖花のスマホが鳴った
聖花「うー…」
ユラ「聖花、鳴ってるぞ」
聖花「…むぅ」
そう言って聖花は俺のベットによじ登り寝だしてしまった。
こいつただでさえぐうたらなのに俺がいるとなお一層だめだ…
仕方なく俺は聖花に来た電話を代わりに取った。一応この人三大チームのリーダーだ。
緊急の仕事だったら出なきゃいけない
ユラ「はい、ユラです」
レイパー「ユラ?…あぁ、早いな、君たち」
ユラ「何もしてませんからね?…それで、なんですか?聖花もうゾンビみたいになって寝たんで俺が電話とったんですけど…」
レイパー「ダメ人間が好きな人の前だと最悪人間になってしまうのか」
なんだ、最悪人間って
レイパー「まぁ緊急の話ではないからリーダーが起きたらチームの部屋に来るよう言っておいてくれ」
ユラ「聖花が起きたら…起きるかなこれ」
そう言いながらベットの上の聖花を見る。おなか出して気持ちよさそうに寝てる。風邪ひくぞ
俺は服をちゃんと直しながらレイさんの話を聞いた
レイパー「まぁ、これからよろしく頼んだぞ。彼氏さん」
ユラ「そりゃまぁ…」
レイパー「あと、名前で呼んでやってあげてみてくれ。喜んでくれると思うぞ。じゃあまた」
そう言ってレイさんは電話を切った。
ユラ「名前…か」
相変わらずぽけーっとした顔で寝ている聖花を見ながらつぶやいた。
学校では一応魔警の任務中ということできっちりしているがやけに距離が近くなった。
タクやテンスたちに不審な目で見られると思ったがなにやらへこんでいる様子だった。
聞いてみたら聖花に恋人ができたことがショックだったらしい。
当の本人は上の空だが…
何をしようかと悩んでいると今度は俺のスマホが鳴った。
ユラ「ん…?これは…李地副隊長か」
電話を取って、スマホを耳につけた
李地「ドッジボール大会で現れた化け物の解析が終わりました。詳しいことを話したいので聖花さんと来てください。」
それだけ言って切ってしまった。相変わらずせっかちな人だ。
だが内容はかなり気になるものだった。すぐに行こう。
ユラ「聖花、起きろ」
聖花「…」
全く動こうとしない。こりゃダメかもな…俺だけで行くしか…
その時、レイさんが名前で呼んでみろと言ったことを思いだした。
…確か名前は…
ユラ「…リネ、起きろ」
そう言った瞬間、聖花が飛び起きた
聖花「!?」
ユラ「おぉ…副隊長のとこいくから準備しろ」
聖花「わかった」
そう言って聖花は黙々と身なりを整えだした。
ユラ「起きてたのかよ…」
聖花「えへ。…ユラくん」
ユラ「なんだ?」
聖花「私もユラ、って呼び捨て手もいい?」
ユラ「好きに呼んでくれ」
聖花「…ユラ」
そう言いながら俺に顔を近づけてくる。聖…リネは俺を恥ずかしがらそうと俺によくちょっかいかけてくるが結局一番恥ずかしがっているのは自分なのだ
ユラ「リネ」
聖花「ユラく…ユラは全然崩さないよね…」
ユラ「その点じゃ聖花の方が優秀だと思うけど」
聖花「好きな人の前で演技する気はないよ」
そうして準備を終えたらしい聖花と俺は副隊長の研究所へと向かった。
その後
聖花「寒い」
ユラ「夏になるぞもう」
聖花「手が冷たい」
ユラ「春終わったぞ」
聖花「手空いてない?」
ユラ「さてな」
聖花「…手つなぎたい」
ユラ「最初からそう言えばいいのに…」




