第二十七話 たまには少し話そうぜ
この世界は酒にフリーです。
司会「いろいろありましたが!ドッジボール大会表彰式を始めます!」
あれから二日後。ちゃんと表彰式はするらしく私たち一組は集まっていた。ほかの学年、クラスの人たちも野次馬として集まっている。
帆宮「勝ちたかったなぁ…」
神山「仕方ないさ!聖花さんがいたらね!」
帆宮「能力は同じくらいだと思うんだけどなぁ…
ユイ「経験の差だねー」
メクルチームももちろん来ている。
ライ「ケルトなんでこなかったの?」
ケルト「いやその…追っていた容疑者が逃げに特化した能力者で…」
マゴ「あぁ、だからジゲルさんに頼ってたんですね」
ライ「結局自分で解決できなかったんじゃん」
ケルト「おいマゴ…」
相変わらずにぎやかな人たちだ。だがその中にあの人の姿はない。
ツル「クロくん来てないね」
聖花「…クロ君は風邪らしいです」
タク「なんて日に風邪ひきやがるんだよ」
テンス「三日目もいなかったよな?」
タカナ「そうだっけ?」
フミ「うん、いなかったよ」
タク「まぁあの日は別にいなくてもよかったからなぁ…それでもなぁ…」
テンス「それでも同じクラスの応援くらいは来て良いと思うがな」
ジョウ「まぁ…そうだな。普通来るよな。」
少し悪い印象がユラ君についている。困ったな…
その時、意外な人がフォローしてくれた。
ダン「そういうな。あいつだって来たくなくて来なかったわけじゃないはずだ。それにルカもいない」
フミ「…そ、そうだよね。ってかルカちゃんもいないじゃん!」
タク「ほんとだ。気づかなかった」
甘味「風邪でも長引いたんじゃない?」
テンス「ケイキは考えが浅すぎだ…」
まさか草薙ダンが言ってくれると思わなかった。ユラ君と仲良かったっけ?
ルカちゃんもよく見たらいない。どうかしたんだろうか?
もしかしたらエルの可能性も…。一応調べておこうかな
司会「それでは一位のクラスの代表者は前へ出てください!校長直々に表彰していただきます!」
うちのクラスの代表は…
タク「聖花さん!頼んだぜ!」
フミ「堂々とトロフィーもらってきてよ!」
まぁそうだよね
聖花「行ってきます」
そうして私は隊長兼校長の元へ向かう。
ウルウ「一組のみんな!よく頑張ったの。わしからのせめてもの贈り物をぜひもらってほしい。じゃが今回の大会の経験の方を大切にしてほしい。その経験は人によっては一番の成果になることじゃろうよ。
ほい、トロフィーと昔の魔道具。」
私は隊長からその二つをもらった。トロフィーはきんきらきんに光っているが実は安物である。まぁそんなもんだろう。で、この魔道具は…?
そして表彰式は終わり、教室に戻った。
築地「まぁ聖花がいるんだから優勝するだろうよ。最後はまぁ…事故だ。魔警が処理してくれるよ。」
タク「そうだよ!結局聖花さんがやったのか?あれ」
フミ「でもあの後全然違う人に変わったじゃん」
ニャム「…気になる」
日が開いたから忘れてくれるかなと思ったがそんな簡単にはいかないらしい。みんなは私の方を見て説明を求めてきた。
私は説明しようか迷って担任に視線を送る。
築地「あー…実は聖花に化けた犯罪者が学校をめちゃくちゃにしようとして潜入してきたんだ。聖花を睡眠薬で寝かしてすり替わったんだ。」
テンス「あの巨大なやつはなんなんですか?」
築地「あれは…その…」
がんばれ
口パクで担任にそう伝えたがもう無理、と顔に書いてある。仕方ないな…。ロムは昔から肝心なところがだめだ。ロムが魔警にいた時代に指導してやったのはいい思い出だ。
聖花「あの化け物は副隊長が作ったもので、それを盗まれたらしいんです。悪用されて副隊長がかんかんでしたよ」
タク「なんだ!副隊長か!」
ラタン「納得」
アオサ「まぁ副隊長なら…」
ガザル「なら納得だな」
みんな副隊長のイメージが膨らみすぎて基本なにか魔警がやらかしたときは李地のせいにしとけばなんとかなる。本人は気にしていないのでウルウ隊長が言い訳するときの材料にもよく使われている。
築地「あー…そういえばお前ら隊長から魔道具もらってたな。あれなんなんだ?」
フミ「杖みたいなやつだよね?」
聖花「はい。何に使うかわかりませんが…」
きっとユラ君なら知っているんだろう。
築地「聖花も知らないんじゃわからないな。仕方ない。今度隊長に聞いてみるか」
テンス「え、隊長と話せるんですか!?」
築地「無理に決まってるだろ。聖花に聞いてもらうんだよ」
聖花「勝手に使わないでください」
築地「ごめん…」
タカナ「どっちが上なんだか」
そうしてその日は授業をして普通に終わった。
一人帰宅する。ユラ君はいない…
これは…
聖花「これは…恋愛相談するしかない!」
私は一度走ったら止まらない。そんなタイプだ。
あの夜のあと。ユラ君が私を助けに来てくれたあとの話だ。
あの後私はすぐに意識が落ちた。それにつづいてユラ君も死んだように寝たらしい。
メクルが愚痴っていた。重いって。きっとユラ君が、だろう。
そして起きたらユラ君はいなかった。私が起きたのはあれから一日後。暴走の反動だと神崎が言っていたのを覚えている。記憶が正しければユラ君も暴走していた気がするが…。
聖花「あれ?そういえばなんでユラ君は暴走したんだろ」
一般魔法で豪速で飛んで帰っていたがふと気になって空中で動きを止めた。
…いつか教えてくれるだろうか。
そして私はまた動き出し、恋愛マスターっぽいやつのところへと向かった。
ーーーーーーーーーー
半日前…
エル「あれが…まどうぐ」
私は魔学校の上から表彰式を見ていた。ゼンツから魔道具が使えそうだったらとってこいと言われたが見た感じそんな強そうではなかった。でも一応伝えとこう。
私はゼンツに電話をかけようとして、やめた。見覚えのある顔が近づいてきたからだ。
ユラ「よう。今日はヒマルはいないのか?」
エル「…なんのよう?」
ユラ…。初期を生き抜いた最初の、最強の能力者。私の能力でも勝てない。ここはいったん様子を見よう
ユラ「いや、別に。俺もその古の魔道具とやらを見に来たらちょうどお前がいたんだ。偶然だよ。」
…気配は完全に消していたしユラが探せるわけないか。
ユラ「争う気は今日はない。たまには少し話そうぜ」
エル「目的…」
ユラ「…話してみたいってのもあるが、単純に能力が使えないだけ」
エル「…!今つかえないの?」
ユラ「あぁ。暴走後は三日くらい使えないんだ」
そんな情報…。私に言っていいんだろうか。意図が見えない。だが本当に戦う気はないようだ。
…今攻撃を仕掛けたら…
ユラ「ちなみに今戦ってもいいがこんなとこでやったらすぐにばれるぞ」
…それもそうか。
エル「そう…。じゃあ話そうか」
ユラ「乗り気だな。うれしいよ」
そう言ってユラは私の隣に座った。
ユラ「それで…魔道具は…お!あれかぁ!懐かしいな」
エル「知ってるの?」
ユラ「あぁ。あれは確か無限に雲が出せんだよ。まぁ使い道はないな」
なるほど。よくよく考えたらこっちが情報を引き出せばいいのか。
エル「…そう」
ユラ「…なぁ、エル」
エル「なに?」
ユラはそのあとの言葉をつなげようとしない。何を言いたいんだ?」
エル「…?」
ユラ「いやその…告白されたらなんて返したらいいんだろうな」
エル「…は?」
何言ってるんだこの人は。
エル「…80年生きてるんだったらわかるんじゃないの」
ユラ「いやそれがずっと山にいたもんでなぁ…」
本当に雑談しに来ているだけのようだ…
そんなユラをみて私は少し拍子抜けてしまった。
エル「ふふっ」
ユラ「お、初めて見たな。笑うとこ」
とっさに私は顔をそむいた。…敵なんだからちゃんとしなきゃ
エル「…笑ってない」
ユラ「そうかよ」
笑いながらユラは立ち上がった。もう行くようだ。
ユラ「それじゃな。…俺としては今ここでお前を捕まえていきたいんだが…」
エル「能力使えないのに?」
ユラ「ま、そうだよな。ほんとこんな時に限って能力が使えないなんて…」
そう言ってユラは屋上の出口へと向かっていった。
結構多くの情報が引き出せた。…ちゃんと私も情報を返すか。
エル「ユラ」
ユラ「ん?」
エル「告白の話。受けたんだったら返すの。自分の気持ちを。」
昔ヒマルにもらった恋愛小説にそんなことが書いてあった気がする。最も、あまり面白い話ではなかったのだが。
そういうとユラは真剣な顔で
ユラ「なるほど…ありがとう。」
と、手を顎につけて帰っていった。
私はもう一回笑いそうになった。
あの後の聖花
聖花「クロン!どうしたらいい!」
クロン「お前が人を好きになるとは思わなくて困惑だよ。」
聖花「どういうこと?」
クロン「いや…それは…。というか話聞いたがそんな告白じゃダメだぞ」
聖花「えー」
クロン「…どうしたいんだお前は…」
聖花「ユラ君と付き合いたい」
クロン「もうそういってこい。お前の顔なら大体のやつ落とせるだろう」
聖花「えーかおぉ?」
クロン「(…聖花って酒飲んだりするとこうなるよな…。もしかして酔ってる?)」
よく見たら手に酒瓶が。




