第二十三話 ドッジボール大会最終日
私は今、魔学校に向かって歩いている。今日はドッジボール大会最終日。今日が終われば普通に学校だ。今まで私はこんな行事ただのイベントの一環だとしか思っていなかった。というか今でも本質的にはそう思っている。ただ…緊張はしていた。ユラ君と約束したのだ。勝った方が負けたほうになんでも願いを言うって。
聖花「…絶対勝つ」
ポーカーフェイスを崩さず、私は心を燃やした…
昨日の出来事があった以上、負けてはいけないのだ。
昨日、ユラ君とクロンチームがさらわれたという男子生徒を探すということになって私も探そうと思っていたら散々さぼった仕事がたまりにたまっていたのでレイとその仕事をする羽目になってしまっていた。もちろん私が悪い。こんな自分の事をほったらかしてほかの任務に移るなど一つのチームのリーダーとしてあってはいけないことだ。私は一応最年少であるからか、事務的な仕事はレイが基本的にやってくれている。ただそれでもレイにも限界はある。だから私はもっと複数の事に目を向けなければいけない…
学校の校門をくぐり、先生たちに挨拶する。
昨日の夜、疲れ果てて寝ているところ、クロンにいきなり起こされた。深夜はとっくに始まっていた。
クロン「聖花、起きろ」
聖花「…むぅ、何…?私寝てたんだけど…」
クロン「…」
そのやけに失望しきった目と、珍しく焦っているそのクロンの様子に違和感を感じ、私は何かあったんだと理解した。
聖花「何があったの?」
クロン「うちの間木がケガ、相手の能力かわからないか回復しないケガを負わされた。その原因を除くためにユラが一人で敵の元へ…」
聖花「…なんだって?」
言ったじゃないか、何かあったら呼べと。私たちは一応同じ任務を受けていると。仲間だと…。
そんなに…そんなに私は頼りないのか?
ユラ君を最初見たとき、わからされた。この人は強い。感じたのだ。だからこそ、ついていきたかった。急に現れたその強大な力についていきたくなったのだ。
でも…私は力不足だったようだ。でも…たとえそうだったとしても全部お任せにはできない。ついていくんだ。まだ結果は決まっていない。
そして私が適当に準備してから行こうとすると、クロンに呼び止められた
クロン「…聖花」
聖花「何?私早くいかなきゃ…」
クロン「私たちじゃもう…力不足なのかもしれない」
聖花「…!……馬鹿言わないでよ。三大チームのリーダーとして、折れないで。」
クロン「…すまない、呼び止めて。」
聖花「…じゃあね。」
私はそれからユラ君を探したが結局見つけたときはもうすべて終わっていた。
…情けなかった。ユラ君がエル達を見つけて…そして追い返した…?
国一つ消すような奴らを?
シャンがいたからってできるとは私だったら思えない。
さっきクロンが言ったことが頭を反芻する。確かにもう…だめなのかもしれない。
私たちはもうついていけないのかも…
聖花「…だめ、こんなんじゃ。ユラ君に勝てない。しっかりしなきゃ」
そのために勝負を挑んだんだ。ちゃんと勝っていることを自分に自覚させるために…
アナウンスが聞こえてくる。
「一組の皆さん、10分後試合です。グラウンドに集まってください」
タク「おっ!よし、行こうぜ!」
タクの一声でクラスにまだ残っていたみんなが移動を始める。私もそれに続く。
テンス「メクルチーム…勝てんのかね?」
タク「やってやるよ!」
フミ「勝てるビジョンが見えない…」
タカナ「ダイジョブだろ!聖花さんいるし!」
聖花「私頼りになりすぎないでくださいね。メクルチームは個々が強いですから」
タカナ「それもそうか…よし!まぁ全力でがんばろう!」
移動中、みんなは一種のエキシビションだと思っているからだろうが笑顔が絶えない。…私は違った
素直に笑えない。クロンの言葉がトラウマになっている…現実に引き戻されている。
ツル「聖花さん?大丈夫?」
聖花「え?」
ツル「なんか…顔が暗いよ?」
聖花「大丈夫ですよ。気のせいじゃないですか?」
ツル「それならいいけど…何かあったら相談乗りますからね」
聖花「そう…それはありがとう」
顔に少し出てしまっていたか…だめだな。切り替えなきゃ。
そうして私はこの先の勝負に目をやり、気持ちを切り替えた。
ルカ「聖花さん、先生が呼んでたよ」
その時、ルカさんが私を呼び止めた。
聖花「ん、わかった。」
ツル「なんだろうね…?」
聖花「わからないですが…まぁ試合には間に合いますよ。先に行ってみんなに伝えといてください」
ツル「わかった。またね」
聖花「はい」
そして私はルカさんの元へといった。
聖花「それで?先生は…」
ルカ「こっち」
私はルカさんに付いていった。
次の瞬間、頭に衝撃。
…それから私が目を覚ますのは少し先の事になった…
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司会「さぁさぁ!始まりました!魔法ドッジボール大会最終日!最後ももちろん!このわたくし、道寺路照が司会を務めさせていただきます!」
最終日がついに始まる。俺はまさか参加することになるとは思わなかった。こっち側で。
ライ「いやぁ!ユラくんが代わりに入るとは!楽しみが二倍になったよ!」
ユラ「ライ一人で勝てるだろ」
マゴ「何言ってるんですか!協力してがんばりましょうよ!」
ユラ「オーバーキルだろ」
あれから三時間後。俺たちはグラウンドに立っていた。周りには多くのギャラリー。
一日目、二日目とは比べ物にならない人の量だった。
「きゃー!ライ様ぁ!!!」 「あれ、メクルさんはいないのか」
「マゴちゃんだ!!」 「誰だ?あれ。あんなやつメクルチームにいたか?」
俺がメクルチームとして公の場に出るのは初めてかもしれない。
司会「皆様!ここで情報が入ってきました!今回出場予定のケルトさんがまさかの任務で参加できないらしく、急遽メクルチームの新生!ユラさんが入ることになりました!果たしてどんな戦いを見せてくれるのか!?見ものです!」
ライ「だってさ、新生!」
笑いながら俺を肘で小突いてきた。
ユラ「んだよ…やるからには本気でやるからな」
マゴ「え、マジですか?」
ユラ「マジ」
聖花と約束したからな
司会「さぁさぁ!そろそろ大会優勝チームの一組が集まってきました…が?」
一組がなぜかおろおろと心ここにあらずみたいな感じだ。何かあったのか?
すると人混みの中から聖花が現れた。
聖花「いやー遅れちゃいました。すいません」
タク「おぉ!やっと来た!助かったぜ!」
テンス「さっき聖花さんが頼りにするなって言ってただろうが」
フミ「慌てすぎよ…聖花さんいなくても頑張るの!!」
タク「そうだけどよぉ…」
どうやら聖花が遅れてきたようだ。どうりでそわそわしているなぁと思ったがそういうことだったのか
司会「ここで三大チームのリーダーが来たぁ!さぁ!皆様!ついに始まります!一組対魔警のメクルチームによる戦い!今日もウルウ隊長が来てくれています!隊長、どちらが勝つでしょうか?」
ウルウ「まぁ…普通に考えたらメクルチームじゃが…勝って盛り上がるのは一組じゃろう」
司会「まさにその通り!あの最強と言われているメクルチームに勝てばそれは盛り上がるでしょう!では皆様!準備が整いましたので並んでください!」
ハンデとして10対3ではあるが能力という概念の前ではあまり関係ない。
俺はライに無理矢理先頭に立たされた。前には聖花がいる。
ユラ「聖花、本気でやるんだよな?」
聖花「…?まぁ、ほどほどに頑張るよ」
ん?なんだ、違和感が…
司会「さぁ!最終日、最後の試合!始まりです!」
聖花「ユラ、お互い頑張ろうね」
ユラ「お、おう?
…聖花……だよな?




