第二十話 第三位
俺はさっそく聖花、隊長、他にも協力してくれる人たちに今日手に入れた情報を伝えた。人一人行方不明になっているのだ。隊長が魔警からクロンチームを動かしてくれた。相手は一応エル達の可能性もあるからだ。三大チームの一つを動かすのは当たり前だろう。
『二日目・夜』
安曇「一応ドッジは三日目まで行われるらしいっすよ。」
ユラ「そうなのか?てっきり中止になるものかと」
安曇「んやぁまだその隊長が言う犯人のせいだとは確定じゃないっすからねぇ。というかそんなに強いんっすか?その二人組は」
ユラ「あぁ、俺も勝てる気がしない」
安曇「ひぇー、怖いっすねぇ」
現在俺と安曇は学校付近を巡回している。行方不明になった「カン」という学生。その痕跡が何かないか探しつつ不審な人物を探している。ほかにもクロンさん、間木ちゃんも調査をしてくれている。
今動けるのが俺含め四人ということなので二人に分かれて探索しているところだ。ちなみに聖花はお仕事。最近なんだかんださぼっていたらしい。何やってるんだか…
安曇「もし何かあったら聖花さん呼びましょうね」
ユラ「すぐ来るらしいがどうだか…」
聖花も一応調査しなきゃいけない立場なので何かあった場合すぐに駆け付けるということだ。
やるときはやる奴だから信用してはいるが正直期待はしていない。
だって仕事中に酒で酔いつぶれるやつだ。…待って聖花って酒飲んでいいのか…?
気づいてしまったが女性の年齢は気にしてはいけないと無理矢理納得して歩く。
たまに会話して、会話が途切れたら無言で歩く。そんなことの繰り返しをしていた。
安曇「そういや魔学校のドッジ、三組が優勝したらしいっすよ」
ユラ「三組といわれてもな」
安雲には俺が魔学校に潜入捜査をしていることは言っていない。というかエル達二人組に関しても隊長がほんのりぼやかして伝えていたから多分本当に他言してはいけないような話なのだろう。クロンさんは知っていた。きっとアルパさんも知っているのだろう。
俺はそんな話題にどう会話しようかと悩みつつその先にある違和感に気付く。
ユラ「あれは…?」
安曇「どうしたんすか?…え…」
そこには異形な形をした化け物がいた。体は溶けかかり、あらゆる部分から無数の手が生えている。どう考えてもこの世のものではないだろう。顔がどこかすらわからない。
何か呻くようにしてその場にとどまっている。
俺は…動けなかった。
安曇「な…なんすかあれ!?どんな形して…あれ、ユ、ユラさん?」
恐怖で動けなかったのではない。
どう対処してはいいか悩んだわけでもない。
確認のために、思い出すために動いていないのだ。
すると化け物はこっちに気付いたのか図体に見合わず素早い動きで近づいてきた。
安曇「や、ヤバいっすよ!ユラさん!」
ユラ「あ…あぁすまん」
化け物は手を振り上げ、たたきつけてくる。
ユラ「よっ…!!?…これは…!?」
想像より重たいその一撃を防いだがその重さゆえか動けない。振りほどけない。
こんな住宅街の近くでステージ3を使うのは…
安曇「ユラさん!」
その声が聞こえてきた瞬間、ふいに重みがなくなる。
化け物がうめき声を出しながら倒れて行った。
なんだ?何もしてないぞ?
???「やぁ!危なかった…のかな?まぁ無事でよかったね!」
そこにはジャージ姿のどこか見たことのある女性がいた。この人がやったのか?
ユラ「すまない…助けてもって」
???「いいのいいの!私はこうゆう時のために力をつけているんだから」
いい人だなと思っていると安曇があわあわしている。
ユラ「どうしたんだ?安曇」
安曇「ゆ、ユラさん知らないんっすか!?その人はランキング三位の美方シャンさんですよ!」
シャン「あら、私の事知っているの?嬉しいわ」
ユラ「美方…シャン…って」
確か魔学校の図書館の本で調べた…最初に確認された能力者?。俺が消えたあの後の初めての能力者。
確か40年は前だったきがするが…
ユラ「わ…若!?」
安曇「ちょ、ユラさん?」
ユラ「いや…もっとおばさんかと」
シャン「あっはっは!そうだよね、若いでしょ」
満更ではない顔で元気よく笑うその姿はどう見ても40歳には見えなかった。
ユラ「…まさか能力『永久機関』で…」
シャン「…すごいね。それに気づく人中々いないんだけど。いや、気づくというかそういう考えに陥る人がまずいないと思うんだけど…近しい人に私のような人がいるとか?」
突然のシャンの考察に図星を突かれ、俺は一瞬戸惑った。
ユラ「いや、いない…が」
咄嗟の嘘。その言葉は少し嘘にしては力が弱かったが…
シャン「そう…。まぁ若い理由に関しては内緒にしておこうかな。…じゃ、私ランニング中だったから、もう行くね。このよくわからない化け物、任せたよ、魔警さん。」
そう言ってシャンはものすごい速度で走り去っていってしまった。
勘の鋭い人と同時によく周りを見ているやつだ…安曇のぽっけから少し飛び出しているメンバーカードから俺たちを魔警と判断していた。侮れない…
安曇「シャンさん…サインもらえばよかった…」
ユラ「落ち込みすぎだろ…」
安曇は三角座りでいじけていた。
ユラ「ほら、立て。地面に座ると汚れるぞ。それに…こいつもなんとかしなきゃ出しな。」
安曇「…そっすね…」
まだ諦められていない様子でしぶしぶ立ち上がった。
その後、副隊長呼んで化け物のことは任せた。副隊長はなんども目をこすっていたがそれは眠いからなのかもしくはその化け物が信じられていないからだろうか。正直前者な気がする。
俺たちはいったん魔警に帰ることになった。クロンさんたちはもう帰ってきていた。が、どうやら何もなく帰ってきたわけではないようだ。
間木ちゃんが結構大きなケガを負ってしまっていた。
間木「このくらい…大丈夫ですよ」
そう言いつつも痛そうな顔をしている。
安曇「間木っちぃ…」
間木「そんな顔しないでくださいよ。ちょっと腕がえぐれただけです。」
安曇「表現こわ…」
元気そうではある
ユラ「俺が治そう」
クロン「すまない…私のせいだ」
間木「クロンさん…そんな言わないでくださいよ」
俺は間木ちゃんの手を治そうとして違和感に気付く。
ユラ「なんだ…これ」
間木「え…?」
治せない…なぜ…?」
クロン「治せないのか?」
ユラ「…はい、すいません」
『植物』の回復能力はステージ3に行ってないためこれ以上の回復は無理だ。
なにか能力の妨害を感じるような傷だ。これは回復ができていないというよりか能力が防がれているという感じだ。
ユラ「クロンさん…何があったんですか?」
クロン「それが…よくわからない化け物に襲われたのだ。突然現れて間木を…。私が攻撃をしたが逃げて行った。…私の責任だ…。あの時化け物を追っていれば…」
間木「クロンリーダー…私のケガを優先してしまっただけじゃないですか。うれしかったですよ」
苦しそうな間木ちゃんが言う。すこし…限界のようだ
安曇「あーもう!ごめん!間木っち!」
そう言って安曇は間木に能力を使った。さっきまであった傷はなくなった。
安曇「ごめん…見てられなくて」
間木「いいよ。楽になった。ありがとう」
安曇の『一日前に戻す』能力、問題を先延ばししているだけで明日にはまたケガが現れる。その場しのぎにはいいと思うが結局苦しみは明日また来るので意味はあんまりない。だが一日、その猶予は俺にとってはだいぶありがたい。
ユラ「うっし…一日で治せるようにすればいいんだな」
クロン「そんなの…どうする気だ。原因もわからず」
ユラ「実は…その化け物を生み出す能力者に心当たりがあります。多分間木ちゃんを襲ったその化け物を倒せば回復できると思います。」
クロン「どこに行ったかもわからないのにか」
ユラ「えぇ、大丈夫だと思います。『瞬間移動』の能力が使えるかもしれません。」
間木ちゃんの傷に残った「意思」をたどって瞬間移動すれば行けるかもしれない。
クロン「そうか…じゃあすまないが頼む。私たちは間木を神崎のところへと向かわせる。もしかしたら治るかもしれない。」
安曇「そうだ、神崎さんがいたっすね!」
能力自体をはじくから希望は薄いが…もしかしたら治るかもしれない
ユラ「じゃあ…俺は行きますね、時間もないので」
クロン「あぁ、頼んだ」
俺はそう言って魔警から夜に出る。…あの化け物の能力…あれは…
シャン「やぁ」
瞬間移動でさっそく行こうとするとさっき助けてくれたシャンがいた
ユラ「シャンさん?」
シャン「気になってね。さっきの化け物。それでついてきたら大変そうじゃん」
ユラ「あぁ…最悪、俺は死ぬ」
冗談で言っているわけではない。化け物を作る能力者…俺の記憶が正しければそいつは「初期」の能力者だ。正直勝てる気はしない。
ユラ「じゃあ…俺は行くから。」
シャン「まぁまぁ…ちょっと待ちなよ」
ユラ「?」
シャン「一人で行くの?」
ユラ「そのつもりだけど…?」
シャン「ここに暇そうで強そうな人がいるのに?」
そう言ってシャンは自分の事を指さした
そのころの聖花
聖花「…もう無理」
レイパー「はい、次」
聖花「…やめる」
レイパー「はい、次」
聖花「寝る」
レイパー「はい、次」
聖花「…ケチ」
レイパー「二か月」
聖花「え?」
レイパー「リーダーが仕事をしなかった期間」
聖花「…次、早く」
レイパー「はい、次」




