第十四話 能力ドッジ、一日目
【次の日・クラス対抗ドッジボール大会一日目】
「楽しみだな!」 「なぁなぁ!今日の…」
「とにかく明日には行きたいよね!」 「怖いなぁ…」
4年生が始まってから最初の一大イベントにクラスは浮き立ち、騒がしく言葉が飛び交っていた
ツル「いやぁ…私たちは今年からだから緊張するなぁ」
クロ「今年から?去年はなかったのか?」
魔法学校は6年制で3年間は普通の高校のような学校生活を送り、残りの3年間は魔警などの魔法関連の仕事に各々選んで学ぶ。
ツル「うん!魔法ドッジは4年生からなんだよ。…って知らないの?」
クロ「…俺は去年まで普通の学校だったからな」
ということになってるらしい。隊長がそうゆう人生を送ってきたということにしてくれた。ほんとに隊長には助けられてばかりだ。顔が上がらない
ツル「三日間行われて初戦に勝たないと一日で終わっちゃうから頑張ろうね!」
クロ「やけに乗り気だな…何か優勝したらもらえるのか?」
ちなみに今の時間は朝のHRが始まるまでの暇な時間である。
ツル「もちろん!すごい景品や権限がもらえるんだよ」
と意気揚々とツルさんが話始めようとすると邪魔が入った。
タク「おうおう!聞いて驚け!今回の優勝景品にとんでもないのがあるんだぜ!」
タクか。そういえばさっきから教室を駆け回ってクラスのやつらになんか言ってたな…
タク「なんと『初期』のころの魔法道具が出るらしい!」
クロ「『初期』の…?」
タク「あぁ!具体的にはなんだかわからないんだがな。」
『初期』の頃の魔法道具…?なんだろう。本とか?確かに本だったらだいぶ欲しいやつもいるだろう。
でもあの時代の本は全部消えたはずだ…。所有者がいなくなれば本もなくなる。
ツル「私が言いたかったのにぃ…」
タク「はっはっは!言わせてもらったぜ…
ガンッ!と、いい音がしてタクの頭に衝撃が走った
テンス「すいませんうちのが…」
ツル「あ、いえいえ…」
クロ「保護者か」
そうして時間は過ぎ、ドッジ大会一回戦が始まるまであと一時間となった。
準備時間らしい。生徒は自由に歩き回り友達と話したり体を動かしていたり各々好きなことをしていた。
体を動かしてるやつがいるあたり本気でやる奴もいるだろう。もしかしたらエル達も見つかるかもしれない。
学年は全部で4クラス。1組対2組、3組対4組が一回戦、そのあと勝ち残ったクラスで二回戦。
二回戦で勝ったクラスが優勝だ。そして三日目は優勝クラス対魔警のエリートチーム。…うちのメクルチームと戦うことになる。そこで勝っても負けても特にメリットデメリットがあるわけではないが将来自分たちが行くことになるかもしれない職場で上手く自分の能力をお偉いさん方がいる中で魅せることができるかもしれない大きいチャンス。過半数の生徒がこのチャンスをつかもうとしている。
別に話す相手もいない中、ただただ考え事をしながら時間を待っていた。むなしい。
正直な話ろくに高校生活も送らなかったから青春というものを味わえてない。だからこそこの時間、きつい。かと言って自分から話しかけに言ってもなぁ…。どうせ一年だけだ。仲良くなっても意味はない
そう自分に言い聞かせていると意外な奴が俺の視界に入った。
遊佐「…ん。ユラさん?」
近づいてきて俺に小声で話しかけてきた。
クロ「遊佐…お前なんでいんの」
遊佐「私ここの学生ですもん。いますよ」
そうだったのか。世界は狭いな。
クロ「よくわかったな」
遊佐「ウルウ隊長が教えてくれました」
クロ「いつの間に仲良くなってるんだそこ」
遊佐「えへへ」
くっ…かわいい!
クロ「見た目的に1年生か?」
遊佐「失礼な、2年生ですよ」
クロ「そりゃ失礼した」
まさか後輩ができたとは…。というかエル達がいるのが俺らの学年って限るんだろうか?
6学年全部を確認は無理があるな…
遊佐「ちなみに今ユラさんがやろうとしてること、手伝えって隊長に言われたんで困ったら言ってください。できる限りてつだいますよ。」
クロ「そうか、ありがとう。」
味方は何人いても良いからな。それに遊佐は結構強い。能力が強すぎるからな。
そういえば…
クロ「能力、もう扱いきれてるのか?」
遊佐「はい、副隊長さんがこれを作ってくれたので」
そう言って遊佐は服の袖をめくり腕に貼ってある紙を見せてくれた。
遊佐「この紙、本と同じような材質でできているらしくて。これがあると魔王さんですら私に逆らえないんですよ」
クロ「へぇ…すごいもん作ったな」
それも早すぎる。どんだけ天才なんだあの人。
???「遊佐~?どこ行ったの~?」
遠くから遊佐を呼ぶ声が聞こえてくる。
クロ「友達か」
遊佐「あ、はい!そうです。あの友達ができたのもユラさんのおかげですから。では、また」
そう言って遊佐は友達のほうへと駆けて行った。
聖花「ふぅん…あの子が…」
クロ「うおっ…びっくりした、いきなり現れんなよ…。フードしてるから一瞬誰かわからなかったぞ。」
聖花「しょうがないじゃん…こうでもしないと人が集まってきちゃうんだから」
クロ「有名人は大変だな」
聖花「ほんとだよ」
よくよく聖花の服を見ると運動するような恰好ではない。今日はほぼ全員が運動服なのだが。
クロ「聖花、その服…」
聖花「え、何?似合ってる?」
クロ「んや、なんか運動できるような服じゃないんだが」
聖花「はぁ…そういうとこだよ。……まぁ今日は私出ないしね」
ドッジは各クラス10人ずつで行われる。一回戦で出た10人は二回戦で出ることは基本できない。きっこ聖花は二日目に最終兵器として出されるんだろうな。ちなみに俺は一回戦だ。
クロ「そういえばそうだったな」
聖花「さっきの子の話、隊長から聞いてる。手伝ってくれるんだよね。」
クロ「らしいな。めちゃくちゃ強いから何かあった時きっと助けになるぞ」
聖花「ま…頼りにはしてるんだけどさ…」
クロ「けど?なんだよ…
俺が何やら煮え切らない聖花に疑問をぶつけようとするとアナウンスがスピーカーから響き渡る。
「1組対2組の皆さん、10分後試合です。グラウンドに集まってください」
もうそんなころか
聖花「ほら、行ってきな。頑張ってね」
クロ「お、おう?」
聖花に背中を押され俺はグラウンドに向かう。結局さっきの態度は何だったんだ…
クロ「ま…行くか」
そこまで大きく動く気はないが足を引っ張る気もない。全力でやってやろう。
優勝景品も気になるしな
そうして俺は80年たってやっと学生らしいことへと向かった
あと三話くらい。




