第十三話 肩書
気づくと俺は暗闇の中にいた。あたり一面何も見えない。だが不思議なことに光を出している物体はないのに地面はしっかりと見える。今自分が足をつけている場所はよくわかる。
ユラ「俺は今まで何をしていたんだっけか…?」
考えても思い出せない。えーと…
その時、暗闇の前方に見覚えのある奴らが見えた。
??「我らがやられていた時あなたは何をしていたんです?眠りこけて、そのせいで我は殺されたんですよ」
??「もっと…早く来てれば…よかったのに…最初から…僕を…使わなきゃ…」
??「相棒に刺された腹、まだ空いてるんだ。時々痛むのさ。わかるか?この痛み」
否定している思考がある一方、自分のせいでみんなが殺された、殺したことの事実が体中を這いまわる。
ユラ「俺は…!」
これは夢なんだ、そう、夢だ。あいつらがこんなことを言うはずがないだろ…!?
後ろに気配を感じて、振り返る。
??「ユラくんのせいだよ。なんであなたが生き残っているの?ねぇ、教えてよ。私…死にたくなかったよ…。ねぇ!!??」
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俺は勢いよく目覚めた。
ユラ「はぁ…はぁ…はぁ…!!」
最近こんな夢をたまに見る。見るたびにみんなはこんなことを言わないとわかっているが何度もこの夢を見てしまう。きっと罪悪感がたまっているのだろう。山にいたころもとてつもない罪悪感に襲われていたがあの頃はがむしゃらに体を動かして能力を極めるのに精いっぱいだったから疲れ果てて夢すら見なかった。それにその強くなることがみんなへの贖罪と考え込んでいたんだろう。じゃなきゃやっていけてない。
ユラ「もう…振り切っただろう。あのことは」
俺は手のひらを見つめ、立ち上がる。今日からまた学校だ。本格的にエルと男を探さなきゃいけない。最近は目立った行動をしていないらしいがいつあいつらがまた暴れだすかわからない。
そうして着替えているとドアが叩く音がした。
聖花「ユラくーん。どしたのー?いこーよー」
時計を見てみると聖花と約束していた時間から20分ほど遅れていた。今日から一緒に登校したいんだと。
正直聖花と登校するのは目立つから困るのだが最近、目立ってでも見つけてやろうとなんかヤケクソ気味になってきている。これでほんとに見つけられるのだろうか…
俺はささっと準備をして部屋を出る
ユラ「おう、悪いな。寝過ごした」
聖花「珍しいね。基本なんでも時間ぴったりなのに。この服で魔警の前で待ってたから目立っちゃったよ。」
聖花はきっちりと制服を着ている。確かにこの服で魔警にいたら目立つだろう
ユラ「聖花は立っているだけで目立つだろ」
聖花「それどうゆーこと?」
ユラ「美人ってことだよ」
聖花「褒めればいいと思っているでしょ」
ユラ「うん」
聖花「素直だな…」
そうして俺たちは魔警の寮から出ると…
榎島「おはようございます!ユラさん!」
そこには大きなリムジンのような車に昨日知り合った榎島さんと赤紫さんがいた。
榎島「魔法学校まで向かう用に車を用意させていただきました!ぜひ、こちらで」
…えぇ…
何?協力ってこうゆーこと?正直な話いらないお世話だと思った。いやだって…徒歩10分くらいだぜ?
魔警と魔学校はかなり連携した機関なのでその場所も近いのだ。
だから本当に車で行く距離ではないのでが…
横で聖花がうんざりしている。こんなにも相手の気持ちが伝わってくることも中々ないな…
聖花「はぁ…」
重たい溜息をつきつつ聖花は携帯を取り出し、どこかに一本電話を掛けた・。すると1分もたたずに
ウルウ「はぁ…!はぁ…!最近わし呼ばれるな…。」
隊長がすっ飛んできた。ほんとに最近「隊長」という肩書が軽くなってる気がする。呼んだらすぐ来るもん。暇ではないはずなんだがな
ウルウ「ハルキ!お前またか!?」
榎島「はい!ウルウさんのためになると思い…
ウルウ「やかましい!聞き飽きたわ!ほら、ついてくるんじゃ!ここまで来たんだから書類関連手伝ってもらうぞ!」
榎島「はい!ぜひ!」
そう言って隊長は榎島さんを引っ張っていった。
台風みたいなものが去っていくと…
赤紫「ごめんね…。榎島さんほんとにウルウさん大好きだからたまにこうやって過度な援助しようとするの。私も困っているんだけど…」
聖花「いや、きしろんは悪くないから。あのロリコンが悪いんだから」
クロ「ロリっ…!?」
聖花の口からそんな言葉が…と思ったが聖花地味に口悪かったなぁと思いだす
聖花「あの人ロリコンだから。うん。私がもうちょっと子供のころめんどくさかったなぁ」
赤紫「いや…ほんとごめんね」
聖花「きしろんには助けてもらったなぁ」
クロ「ん?きしろん?」
聖花「あぁ、そっか。言ってなかったね。私と黄白は幼馴染なの」
赤紫「何歳からだっけ?」
聖花「6」
赤紫「10年以上かー、結構長いね」
通りで聖花の赤紫さんへの接し方がフレンドリーな訳だ。幼馴染ならあだ名で呼んだりもするだろう
聖花「ま、ロリコンのせいで時間結構ギリだからそろそろ行こうか。…あ、車はいらないから」
赤紫「ほいほい」
そうして俺たちは学校へと向かった。
聖花「最近会えてなくてごめんねー」
赤紫「いーよ全然。リネ忙しいもんね」
リネ…って聖花の名前か。基本「聖花」と呼んでるからわからなくなる。
赤紫「にしても聖花が珍しく人になついてるなーて思ったらクロ君、伝説の魔法使いさんだったんだね」
ユラ「榎島のやつ言ったのか?」
聖花「いや、私が言った。昨日きしろんからメールで聞かれたから」
ユラ「おい」
聖花「別にいいでしょ。仲間はもう少し欲しかったし。」
まぁ…多いに越したことはないが…。こうなれば赤紫さんはエルじゃないと断定できるし、いいのか。
赤紫「んじゃま、よろしくね。ユラ君?」
クロ「基本クロって呼んでくれ。よろしく。」
赤紫「あぁ、ごめんごめん。私は黄白でいいから。呼び方」
クロ「おう」
こうして思いがけず仲間が一人できた。
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学校に着き、席に座って待っていると先生が入ってきた。
築地「おはよ、はい。じゃ授業始める前に一個連絡だ。明日クラス対抗でドッジボールがあるから。そのつもりで。」
そういえばそんな話があったような。もっとクラス仲良くなろーみたいなイベントだったはず。能力ありだったからここでもしかしたらエルたちを見つけられるかもしれない。他クラスのやつらも見ることができるしこれは大きなチャンスだ
ツル「ん?クロくんやる気だね」
クロ「え?あ、あぁ。楽しみだからね!」
ツル「そうなんだ!じゃ一緒に楽しも!」
そうして木京さんと話していると前から関連のプリントが配られてきた。
紙をさらさらーとみていくと一つ驚くものがあった
『魔警のエリートたちとのドッジボール!未来の自分たちに挑戦しろ!』
な、なにぃ!?しかも参加魔警チーム欄、よくよく見るとメクルチームがあるんだが…
聖花「…メクル今いないのに。」
クロ「だよな…」
どうやってやるんだろう。…あれ俺出なきゃじゃね?
クロとユラの両立に悩まされてその後の小テストがボロボロだった。せっかくさっき仲間になった黄白に哀れみの目を向けられた。くっ…何が伝説の魔法使いだよ…!肩書は嫌いだ…




