第十一話 80年ぶりの友
覚えてるかな
もうだいぶ夜のふけた魔警の運動場で鳴り響くはずのない轟音が響き渡る。魔王と伝説の英雄同士の戦いをそう簡単に止められるものはいない
遊佐「ど…どうしよう…」
一人見守るものはいたが止められる力などない。見ていることが精一杯だった。
二人の大きな力は拮抗し続けたまま動かない。もう少しもすればこの轟音に気付き見に来る人間もいるだろう。そんなもうユラが怒られるのも時間の問題の中、一人の女性がその場に現れる
???「せっかく久しぶりに会ったのに…すごいことになってるね…」
そう言ってその女性は手を合わせ、能力を発動させる
???「結界展開・不可視層」
次の瞬間、運動場を大きな緑のオーラが包み込む。結界外の人からは見えなくなっていた
遊佐「な…なにこれ…」
???「ん?君は?…あぁ…祇而下遊佐か。逃げ出しちゃったんだね。」
遊佐「わ、私の事わかるんですか?」
???「もちろん。おねーさんは何でもわかるんだよ。…さて。落ち着いて話したいけどまずあの二人を止めなきゃ…。」
そうしてまたその女性は手をあわせる。
???「多重結界・異能停止+睡眠の波」
元からあった緑のオーラに被るように二つのオーラが運動場を包む。するとさっきまでの轟音は止まっており、ユラと魔王は眠っていた
遊佐「す…すごい。あの二人を止めるなんて…。あなたは一体?」
???「んー保護者?」
遊佐「だ、だれのですか?」
???「ここの隊長の」
ーーーーーーーーーー
ユラ「うっ…?」
目が覚めると光が一斉に目に入り込んでくる。俺は確か…
遊佐「ユラさん…?起きたんですか?」
ユラ「ゆ…さ…?」
体を起こし見渡すと隊長の部屋だった。なんか久しぶりに感じる。そうして寝る前の自分を思い起こす。確か俺は魔王に戦いを申し込まれて…それで…
ユラ「だめだ。思い出せない。というか遊佐。今何時だ」
あれから1時間くらいしかたってないと思うのだが…。
最新の記憶で18時だったはずだか今は19時か?
???「5時だよ。朝の。」
10倍の時間過ぎてた。
ユラ「じゅ…10時間…そんなに寝てたのか。今日は学校は…ん?てか今答えた人は…」
色々考えることが多すぎて頭が混乱してきたところにそっと横からコーヒーが視界に入ってきた
マゴ「まったく…はい。コーヒー。ユラ先輩かっこいい時はかっこいいですけどたまに人様に迷惑平気でかけますよね…。わざわざ任務終わって休む瞬間に呼び出されたこっちの身にもなってくださいよ…。ちなみに学校は今日休日なんでないですよ。私は仕事まみれですがね!!」
ユラ「はい…すみません」
なんで俺怒られてるんだ
マゴ「よし、じゃあ私もう行きますからね。もう…メクルチーム私以外忙しすぎるんだよなぁ…私は保護者じゃないんだよ…はぁ」
ぶつぶつ言いながらマゴは出て行った。いまいち状況が理解できない。
???「遊佐の能力によって生まれた魔王と戦ってやりすぎてたから私が止めたの。簡単に言うとこんな感じ」
ユラ「お、おう?…あぁ、少しずつ思いだしてきたぞ」
あの接戦の時いきなり能力が使えなくなってさらに急激に眠気が襲ってきて…。それをこの人が助けてくれたのか。確かにあれはやりすぎたなぁ…思ったより魔王が強かった…
ユラ「んやぁありがとう。知らない人。」
???「知らない人ねぇ…」
遊佐「あれ、ユラさん知らないんですか?」
???「いーんだよ遊佐ちゃん。このばかが思い出すまで言わないでいいよ」
遊佐「ば…ばか…」
ユラ「誰がバカだ」
とは言ったがほんとに俺はこの人と出会っているようだ。だとしたら失礼なのはこっちのほうだからあまり強く言えない。ただ…懐かしい感じはする。誰だったかな…
すると部屋のドアが開いて隊長が入ってきた
ウルウ「はぁ…疲れた。ん?おぉ。ユラ。起きたか。すまんかったの。戦わせたのは結局わしじゃったからな」
といって俺をねぎらってから隣にいた知らない女性を隊長は見た。三回。
ウルウ「ん?…ん!?…あ?」
???「親に向かって「あ?」とは何よ」
ウルウ「いや…来てるとは知らんくて…」
???「久しぶりに会いに行くからって一昨日メールしたよね!?全く…誰に似たんだか」
ウルウ「…母上」
???「あ?」
ウルウ「すみません…」
ど、どうゆうことだ…?隊長の…お母さん?いたのか…そりゃいるか。
…ちょっとまて。隊長のお母さんだって?…それって…。確か隊長の苗字って…御手洗…だよな・・・
ユラ「ま…真?」
真「お、まさか思い出すとは。このままいじってやろうと思ってたのに。残念」
御手洗 真。俺が能力を手に入れる前の友達。すっかり忘れていた。というより出会うはずがないと思っていた
そういってにっこりと表情を変え、俺に歩み寄る
真「久しぶり。大変だったね」
ユラ「あ、あぁ。」
約百年ぶりの友。どう接したらいいかわからない。というか…
ユラ「…お前見た目30代前半くらいだが。普通に考えて80歳超えてるはずだよな?」
真「女性に年齢の話しちゃだめだよ。…まぁ特別に教えてあげるけど」
そう言って真は隊長の頭をなでながら
真「言ってい?」
ウルウ「好きにせい。」
真「わかった。ユラ。これ、私の子。中々親孝行な能力もっててねぇ。『時空操作』って言って時間を好きに操れるんだよ。すごいでしょ」
ユラ「じ、時空操作!?」
時間系能力だとは知っていたがまさかのカミングアウトだった。…そうかだから俺の過去もしっていて
真「で、私はたびたび時間巻き戻して若くしてもらってまーす」
ユラ「それどうなの!?」
ウルウ「ユラ、勘違いせんでほしいんじゃが決して母上はわしを道具扱いしたりとかはしておらぬ。むしろわしのために体を張っておるんじゃ。」
ユラ「体を?」
ウルウ「うむ。わしの『時空操作』ははっきり言って最強じゃ。自分で言うのもあれじゃがの。時の進めたり戻したり止めたりなんでもできてしまう。じゃがデメリットがあっての。それはわしの時だけ戻り続けてしまうんじゃ。まぁ簡単に言えば使用者は若返り続けてるってことじゃの」
ユラ「つまり…放っておいたらいずれ隊長は…」
ウルウ「消えるな」
真「そこで私がその分の若返りエネルギーをもらってるの。いやぁ仕方なく若返るって幸せだなぁ」
にやにやというあたりあんまり昔から変わっていない気がする。気がするだけだ。
ユラ「なるほど…だからまだ生きてるのか」
真「そゆこと」
一通り話の区切りができたところで隊長が話し出す
ウルウ「そうじゃ。ユラ。暴走、能力安定の件じゃが。李地に話してみたところ「本そのものの複製は時間がかかるが本の安定化させる機能くらいは今すぐにでも量産できるかもしれない」と言っていた」
ユラ「じゃあ…」
ウルウ「まぁ現状維持は続くが…すぐに能力に悩まされてる人達の問題は解決できるじゃろう」
ユラ「よ…よかった。遊佐!お前たすか…る…ぞ?」
遊佐のほうを見るとなぜか枕で顔を挟むように耳を塞いでいた
ユラ「なにしてんだ…」
遊佐「ぷっふぅ…お話終わりました?なんか大切そうな話だったんで耳閉じてました」
ユラ「あぁ。確かに」
さっきの隊長の話はあんまり他言してはいけないだろうからいい判断だったと言えるか
ユラ「そうだ。遊佐。お前の暴走の件。助かるぞ」
遊佐「え?」
そうしてさっきの内容を遊佐に伝えた。これでもう少し魔王を操りやすくなるし人格も奪い返せるだろう。…でもよくよく考えたらあの魔王使いこなすってやばいな
遊佐「それじゃあ…私もう監獄行かなくていいんですか?」
ウルウ「バルにはもう言っておる。親御さんのとこにあとで送ろう」
真「私が送るよ。ウルウ。説明しなきゃだからついてきてね」
ウルウ「はいはい…。さてもうお開きでいいかの?何かユラ聞いときたいことはあるか?」
ユラ「真に少し…というか話したいんだがいいか?」
真「ま、それもそうか。80年ぶりだもんね。私も話したいかな」
ウルウ「じゃ遊佐ちゃんはわし一人で送ろう。…聖花に車出させるか」
ユラ「飛んでいけばいいじゃないですか?」
ウルウ「誰もが魔法使い放題だと思うんじゃない。結局車が最強なのじゃ。最近は燃費もよくなったしのう」
そうして隊長と遊佐は部屋を出て行った。俺たちも話しやすいようにと魔警の屋上に向かった。まだ早朝。人は一人もいない。
ユラ「俺は80年修行し続けたが…真は何してたんだ?」
真「ユラたちがいなくなってから少し経って能力者が増えてねぇ…全員善人だったら話は早かったんだけどそんなわけないからさ。悪用する人達がいたわけ。そうゆうのを抑えたり警察みたいなのを作るようがんばったんだよ?私も。まぁユラほどじゃないかもしれないけどさ」
ユラ「魔警作ったのは真だったのか?」
真「うん。初代魔警隊長は私だよ。楽しかったなぁ…。私とアルパ、ギャラルとシデラ、クロンで作ったんだ。さすがに私一人じゃ作れないからね。作ったのは30年前。アルパとシデラは当時警察の中でも早くに能力が現れて使いこなした天才組。ギャラルとクロンは能力で裏の世界の顔をしてた悪い人だったけどそうゆう力も欲しかったからね。頑張って倒した。」
ユラ「倒したって…真が?」
真「まさか。私はまだそのころ能力もないただの人だったからね?倒したのは私の旦那。」
ユラ「まぁ…隊長がいるならりゃそうか」
真「うん。私の旦那の事知ってる?」
ユラ「知らん」
真「まぁそうだよね。すごい人なんだよ?ユラより強いかも」
そして真はこの先戦うことになるであろう現最強の名を口に出す
真「能力ランキング1位、御手洗 ソウシ。今じゃ最高数能力5つ持ちの最強能力者だよ」
情報のオンパレード




