第八話 白くて赤い囚人
学校である調べものをして俺は家(職場)に帰ってくると受付で言い争っている事態に会ってしまった。受付のギャラルさんに何やら一方的に意見を言っているのが能力者使いランキング5位の酒詩バルというやつらしい。
ケルト「あいつに近づくのは危ない。おとなしく見ていたほうがいいぞ」
ユラ「『空間支配』ねぇ…」
一応聞いたことはある。酒詩バル。年齢はメクルやケルトと変わらないらしいがだいぶ子供のような見た目の男だ。身長が低いのと発言が幼いからだろうか。能力『空間支配』は酒詩バルを中心とした一定範囲を文字通り支配、つまりその空間は酒詩バルの独壇場ということだろう。近づいたら一発アウトという最強にも近い能力が5位。その上の4人はどんな能力なんだ…。てか誰が決めたんだ?
仕方なくこちらに救いの視線を送っているギャラルさんを助けず、その場を去ろうとした。ごめんギャラルさん。
そうして渋々歩いていると俺の向かう方向から見たことのある人達が歩いてきた
アルパ「おう!ユラじゃねぇか!久しぶりだな。冬は会わなかったんだったか?」
クロン「私に聞かれても困るが。だがまぁ私もユラに会うのは久しぶりだな」
まさかの三大チームリーダーの二人だった。
ユラ「久しぶりです。二人が一緒にいるところ初めて見ましたよ」
アルパ「リーダー同士が会うのは珍しいからな。今日はちょうど俺達暇だったんだ」
クロン「暇、ではないがな。時間ができただけだ」
クロンさんとアルパさんは仲がいいらしい。
ケルト「ちょ、アルパさん!いいところに!」
アルパ「ん?ケルトじゃねぇか。どうし…あー…なるほど」
クロン「確かに…私たちじゃなきゃ止められないか」
そうだギャラルさん。驚いて忘れてしまっていた。この二人なら助けられる
アルパさんは酒詩バルに近づいていった
アルパ「おい!バル坊!騒がしいぞ!」
バル「あ、アルパさん!?いや…その…はい、すみません…」
アルパさんに顔が上がらない人が多いとは思っていたが酒詩まで上がらないとは。貫禄も実力もあるからだろうか
ギャラル「アルパリーダー。助かりました」
アルパ「いいってことよ!…で、バル坊何しに来たんだ?魔警に用事か?」
クロン「というかあなた魔監獄の管理どうしたんですか」
魔監獄?俺がその単語がわからないと気づいてくれたのかケルトが教えてくれた
ケルト「魔監獄はその名の通り監獄だ。主に能力で悪さをしたやつ専門のな。その監獄を作ったのはうちの隊長、ウルウ隊長だが管理、指揮をしてるのは酒詩バル。俺と同い年だが…中々すごいやつだ。悔しいがな」
ユラ「ケルトも十分すごいぞ」
ケルト「…ありがとよ」
ほんとにお世辞でもなんでもなくケルトなかなかすごいのである。最近知ったのだが魔警の中でも二番目に強い剣使いらしい。一番はレイさんだ。
それに少し前めちゃくちゃ強いロボット二体に対して一人でだいぶ時間稼ぎをしていたとマゴに聞かされた。ライが一体に苦労したやつを二体止めていたんだからもっと自分の評価を上げていいと思う
バル「魔監獄の問題でウルウ隊長に話に来たんですよ。」
アルパ「問題?」
バル「はい…実は情けないことに一人脱獄させられてしまって…」
クロン「お前がか?相当な奴だな。協力者でもいたんじゃないか?」
バル「いえ…それっぽいやつもいなくて…今日の昼に脱獄されて今総出で探させているんですけど…」
アルパ「なるほど、魔警の隊員を借りに来たんだな」
バル「そうです。何人くらい動かせますか?」
アルパ「そうだな…」
何やら大事のようだが俺には関係ないだろう。さて、疲れたしねるかな!!
俺は颯爽と自分の部屋に向かった
ケルト「おい、ユラ。手伝わないのか?」
ケルトに引き止められた。
ユラ「今本ないし…使えるの岩と炎がちょっとだけだぞ?何もできないって」
ケルト「持ってくればいいじゃないか」
ユラ「んや、隊長に厳重に預かってもらってるからそんな高頻度で取り出させてもらうのもあれかなぁと。それにリーダー二人いるし大丈夫だろ」
ケルト「まぁ…そうか。クロンさんがいるしな」
ユラ「だろ?じゃあほら、解散解散!」
ケルトは納得していない顔で去っていった。
俺だって疲れるんだよ!いちいち事件に関わってられっか!
やっとのこと俺は自分の部屋に着いた。今日は色々逃げてきたがたまにはゆるしてほしい。
すみませんと別に誰かに向けたわけでもなく心の中でつぶやき、部屋のドアを開ける。
夕飯は…うんまぁカップラーメンあったろ。
中に入ると何やら風が吹いていた。窓開けて行ったっけ?
まず窓を見たがその前にあるものに目が吸い込まれていった。
服が血まみれ、きれいな長い白い髪の女の子が倒れていた。
すぐさま回復させようとしたが服の模様を見て止まった。牢獄で囚人が着るような…黒と白のシマシマの服だった。
ユラ「…まぁ…死なれても困るし…こーゆーファッションかもしれないし…」
さらりと現実逃避しながらも回復の一般魔法を使う。別に本はいらないが…植物の能力がないから割と疲れる。
ユラ「ふぅ…さて、どうすっかな」
見た感じこの血は返り血だ。ケガもなくなはないがそこまで重症ではなかった。
???「んむ…」
目が覚めたのか可愛らしい声を出してその女の子は起きた。ほんとにこんなかわいい子が?
見た目に反する世の中だ、警戒は解かないようにしよう
ユラ「…お、おはよう」
まだ眠気眼だったので声をかけてみた。すると俺を見た瞬間ぱっと大きな目を見開いて壁際まで寄っていった。
???「だ、誰!?…ここは!?」
ユラ「俺はユラ、ここ魔警」
???「ま、魔警かぁ…ヤタちゃんに任せたの失敗だったかな…」
なにやらぶつぶつ言っているがこっちとしてはさっさと自分のおうちに帰ってもらいたい
ユラ「じゃ、酒詩バルさん呼ぶから待ってて」
???「ちょ、ちょっと待ってくれませんか!…というかバル看守長きてるんですか?」
ユラ「来てるけど」
???「…まぁ魔警ですもんね、ここ…はぁ、ここまで来てしくじっちゃった…」
なんか焦ってはいるんだろうがかなりまったりしたやつだな…。
ユラ「なぁ」
???「はい?どうしましたか?…あぁ、この期に及んで逃げませんよ」
ユラ「いや、違う。お前名前は?」
???「え…?えーと…祇而下遊佐ですけど…」
ユラ「…すこし興味が沸いた。捕まる時間が変わるだけだ。少し話さないか?」
遊佐「ま、まぁいいですけど…。私一応囚人なんですけど…怖かったりしないんですか?」
ユラ「別に。まぁいったん風呂入って来い。服は貸す」
遊佐「え、えぇ…?いや、また戻るんですし…」
ユラ「服一番小さいやつでいいか?」
遊佐「…はい…」
しぶしぶという感じで遊佐は風呂に言った。
なぜ俺が引き止めたか。
80年も生きていればわかる。能力なんてなくとも。
あの子は何かするようなタイプじゃない。多分…
ユラ「能力に問題がある…とみた。」
それなら助けてやりたい。もうここまで来たら乗り掛かった舟だ。やってやろう。
…それに俺はいまだに白髪の女の子が好きらしい。
つくづく自分の情けなさが身に染みるなぁ…
…いつの間に学校編がこんなになってしまったんだ…
んまぁ番外編とでも思ってください…ちゃんと路線は戻すので・・・




