第六話 戦闘訓練(Ⅲ)
ガザル「俺の能力…『無限力』ってのは知ってるよな?」
クロ「ああ、無限に力が出せるんじゃないのか?」
俺の昔の仲間もそんな力を持っていたが十分チートだった。あれが能力じゃなかったからまだよかったのかもしれないが…。能力だったら本でどう強化されるかわからないからな…
ガザル「能力判断師に聞いたんだ。確かに俺の能力は『無限力』で間違いないんだが…どうにも本質が出せないんだ」
クロ「というと?」
ガザル「まぁちょっと見ていてくれ」
そう言ってガザルは壁に向き合う。これ名前とかないのかな…
さっき俺が1レベル破壊したからレベルは11だ
ガザル「ふっ!」
バシッ!といい音はしたが割れない。
クロ「それって能力使っているのか?」
ガザル「あぁ…。俺は能力を発動させている。実際使っているときは力も強くなるんだが…無限、というわけじゃないんだ」
クロ「なるほど…」
要するに能力を扱いきれてないんだな。そんな人は数えられないほどいる。誰もが自分の能力を最初から使いこなせるわけじゃないのだ。俺だって最初は空飛ぶのに一苦労した。だからそこまで思いつめなくてもいいと思うのだが…
ガザル「俺の能力、「無限」なんてついてるから期待されてしまって…」
まぁそうだろうな。これが強くない能力だったらまだ悩まなくてもいいのだろうが…期待ってのは時に邪魔になる。だがその能力が自分の能力なんだとしたらその自分の能力に向き合っていかなければいけない。一生をともにするのだから。
クロ「そうだなぁ…」
こればっかりはコツをつかめとしか言えない。感覚が似た能力は俺は持っていないし…。強いて言えば『意思』の能力か?
二人合わせて頭を抱えているとライが来た
ライ「どうしたの?お二人さん?」
クロ「言ってもいいのか?」
ガザル「この際解決するなら何でもいい…」
そうして俺はライに話した
ライ「え、あ、そうだったの?私、「今年の能力に『無限』がある!?」って喜んでたのに…」
クロ「なぜ喜ぶ…」
ライ「戦ってみたいじゃん」
クロ「野蛮…」
ライ「なんだって?」
クロ「何でもないです」
手に雷まとわせるの怖すぎるだろ
ライ「にしても使えないのは仕方がないとして…まずはそのプレッシャーを何とかしなきゃねぇ…。幸か不幸か〈特級レベル〉だもんね…」
クロ「特級れべる?」
そういうとガザルが「え?」みたいな顔をした。…あれか、一般常識ってやつだったか
クロ「い、いや、そういうレベルだったのかってびっくりしただけだ」
ガザル「そ、そうか?」
なんとか腑に落ちないようだが納得してくれたみたいでよかった
ライ「ま、まぁ知ってるだろうが一応説明しておくと…」
ライ先生…!!神!!
ライ「能力が多すぎるから魔法政府が能力をクラス分けしたんだ。
下から、〈5級〉から〈1級〉、そして特級、伝説級だな。」
クロ「で、伝説級っている…のですか?」
いつもの感じで話してしまうところだった…いやもう手遅れか
ライ「おう。最初の魔法使いさんの『炎』や無類の最強能力と言われていた『闇』とかな。」
勝手に俺の能力が最強クラスに決められている…なんかライトノベルの題名みたいな文できちゃったよ
ガザル「伝説級の人たちは…プレッシャーとかかんじなかったんですかね…」
ライが俺のほうを見てきたが俺が答えられるわけないだろ…今はクロなんだ、ユラじゃない
ライ「まぁ私の『雷』も〈特級〉だけどさ、そんな気に病むことないさ」
ガザル「それは先生が使いこなせるからでしょ?…言い方悪く感じるかもしれませんが他人事で考えるなら別にいいですよ…」
そんな若者の重い言葉を同じく若…いライ先生はひょろっとした顔で
ライ「いや、私まだ使いこなせてないよ?」
ガザル「…え?いや…でもあんなに…」
ライ「神様お得意の雷をちっぽけな人間が扱うんだからそんな簡単に使いこなせるわけないでしょ。アレは努力のたまものだし、今もたまに暴発するよ」
能力は努力からできる。それは紛れもない事実だろう。80年もあって極められたかわからないほどだ。
能力に限界はない。あるのかもしれないが俺が決めることではないことは確かだろう
ライ「まぁ明日か数十年後かはわからないけどいずれは使いこなせるさ。だって無視したくてもできないものだからね」
ガザル「そうか…そうですね、先生…すいませんでした…さっきは生意気なこと言って…」
ライ「いいさ、大人は子供の重い攻撃や責任を受け止めるのが仕事だからね」
クロ「ライ先生かっこいいっすね」
ライ「だろ?」
変なポーズで同意してくる。ライはたまに本気でムカつくが…めちゃくちゃいいやつだ
グガーーーーー!!
突然、遠くから何かの叫び声が聞こえてくる
ライ「ん…?」
叫び声のほうを見てみると…
クマのような怪物がいた。今にもクラスのやつらを襲いそうだ
タク「な…なんだこいつ!!?」
テンス「おいタク!逃げんぞ!」
ケイキ「え…ちょ…なに?」
タカナ「なんだコイツ…?」
フミ「タカナちゃん反応がタクと同じだよ!早く逃げなきゃ…
怪物の大きな手はフミを覆うようにとてつもない速度で襲った…が、うちの先生の速度には勝てないようだ
ライ「ほいっと…早く逃げて!あとほかの職員さん呼んできて」
フミ「は…はい!」
大体のやつがもう離れている、まだ逃げ遅れてる人もいるがドラのやつが助けていた。勇気あるな…。その中でただ一人の生徒はその怪物に向き合っていた。それが「本業」だからだ
聖花「ライちゃん、今は私が上司だからね」
ライ「はいはい…聖花さん、行きましょう」
そうして二人は怪物のほうを向いた
ライ「体が大きいと当てやすいよ?」
ライは雷を槍状にしてその化け物に投げる
ライ「【雷撃】イカズチ」
ライの放った攻撃はその化け物を貫く。威力は絶大。化け物が倒れた先に聖花がいた
聖花「私から来といてあれだけど…離れて」
聖花は手のひらを倒れてきている化け物に向け
聖花「カウンター」
はじき返した。化け物は倒れていた方向とは逆方向に倒れる。
ライ「聖花さん!危ないじゃないですか!」
聖花「コントロールできないからしゃあない」
ライ「うぅ…」
どうやら終わったようだ。やっぱ強いなあの二人は…
ライ「さて、これなんだったんでしょう?誰かの能力でしょうか?」
聖花「わかんない。まぁ魔警の研究チームに運ばせるよ。あの人たち運搬のスペシャリストだからね」
聖花は電話を取り出し、研究チームに電話をかけた
ライ「じゃ、みんなは教室戻るよー。ごめんね。怖い思いさせて」
タク「いや、聖花さんもライ先生もいるから全然安心してましたよ!」
テンス「嘘つけ、不安そうに見てたくせに」
タク「あ、お前能力使ったな!?」
フミ「私の目から見てもわかったわよ…」
さすがに魔警隊を目指しているだけあって肝の座ったやつらがおおいな…
そうして俺も帰ろうとすると…
ルカ「ねぇ…」
クロ「ん?」
羽咲ルカに肩をつつかれた。なんだろう?
別に接点はなかったはずだが…
ルカ「あっち」
と、聖花のほうを指さした。その方向を見てみると…
化け物が立ち上がろうとしていた。まずい…!
聖花は気づいていないようだった。背を向けてるのもあるが通話で聞こえにくいのか!?
やばいもう攻撃体制にはいっている。今からライに伝えても…!聖花の場所からもう離れてしまったから声も届きにくい…仕方ない、俺が…!
俺は地面に手を付け、能力を発動させる。
化け物「グガァ!?」
化け物の下から岩を突き出し、化け物の顔を打ち付けた。遠いからわからないが聖花が戸惑っているのはわかる。助けれたか…。化け物はもう動いていない。
間に合った…にしても…
周りをみるともう羽咲はいなかった。ほかの人と教室に向かっている。
なぜわかったんだ?未来を見たかのような…
羽咲の能力は回復じゃ…?
謎は深まるが…なんにせよ、聖花を助けられたからよかったか…?




