第一話 第三章 開幕
あれから5か月。特にこの魔法があふれる世の中に目立った変化は見当たらなかった。せいぜい能力に階級が付いたりしたぐらいである。逆にそんな数か月でいろいろ変わるほうが困るというものだ。
聖花「さてと…。私もついに4年生とやらか…」
私こと聖花…。あれまてよ。私って名前言ってなくね。いまさらながら別に誰かに向けるわけでもなく自己紹介
私は聖花リネ。私の所属するチーム名が「聖花チーム」だからあんまり名前で呼ばれることがない。聖花、で定着しているのだ。なんなら私自身たまに名前を忘れる。
私は魔警のチームのリーダーをやっていると同時にこの魔学校の生徒だ。
史上最速のチームリーダー当時はめちゃくちゃだったな…。緊張とうれしさがごった返していた。
私がなったのは9歳だったかな。…待ってもう9年たってる!?
時の流れは残酷だな…。このままじゃすぐおばさんだ…
今私が向かっている魔学校は6年制だ。16歳から23歳まで、ということだ。基本魔学校を卒業したらそのまま魔法警備隊、通称「魔警」に入隊することになる。なぜ6年も長々やるかというと魔警の研修も含めてだからだ。16から18はフツーに高校生ライフを送り、そのあとは個人の自由である。そのまま魔警を目指してもいいしやめてほかの職につくのも良い。私にとっちゃ選択権なんてないのだが。
だってもう魔警入ってるし。てかもう行く必要もないのだが。
聖花「そーゆー訳にもいかなくなっちゃったからなぁ…」
予定では私はもう魔学校を卒業して魔警一筋になるはずだったのだが最近合ったある一つの大事件によりもう一年は魔学校にいなきゃいけなくなってしまったのだ。
その事件とは…
ユラ「ん?聖花か。おはよう」
聖花「うわっ…びっくりした」
ユラ「うわって…傷つく…」
この人はユラ。大昔の魔法使いの戦いで生き残った伝説の能力者…とは言ったもののそんな感じは全くないこの雰囲気はたまにその肩書を忘れさせる
ユラ「にしても学校か…80年ぶりだぜ」
聖花「ユラ君って頭良いの?」
ユラ「時間って残酷だよな…」
なんも覚えてないんだなこれ。
ただ今回、このユラ君も私と同様学校に勉強しに来ているわけではない。
半年とちょっと前に起きた「国消滅事件」。
ある日、一夜にして一つの国が消滅したのだ。謎の男女二人組によって。
その二人組がなんとうちの魔学校にいると私の部下が導きだしたのだ。
あの子基本さぼりがちだけどちゃんと実績残すからな…。私もさぼりたい
聖花「ユラ君、ちゃんと魔学校に入学する理由…」
ユラ「待った。俺はもう今日からユラじゃないんだった」
聖花「そだったね。えーと…」
ユラ「大河クロ、だったか。」
このユラ君。頭は悪いらしいが能力を鍛える魔学校では首席並みの強さを持っている。そんな人がいたら不審に思われてしまう、ということで偽名を使い全く違う人として過ごすことになったのだ。
見た目まで。
ユラ「よっ…と」
聖花「おぉ…」
ユラ君が炎にまとわれたと思ったらそこにはパッとしない男の子がいた。
ユラ「こんな感じか?」
聖花「いいね。その惹かれない感じがいい」
ユラ「ほめてる?」
さっき言った「国消滅事件」を起こした二人組の女のほうにはユラくんの姿が見られてしまっている。
逃げられてしまったら私たちは打つ手ないので慎重にやっていかなければいけない。
聖花「ついたよ、ユ…クロくん」
クロ「ユ●クロ?」
ーーーーーーーーー
ガラガラ、と教室の扉を開けるともう半分くらいは椅子に座ったり友達と雑談していた。いちいち入ってきた顔も知らないやつを確認するほどの興味はないのか2,3人が見てきただけで何事もなく俺は自分の席に座った。
クロ「ふぅ…」
目立ってはいけないのでこれでいい。周りを見渡し、ターゲットがいないか確認する。見た感じいないようだ。ふと雑談をしてるやつらのほうを見る。なぜ初日からあんな打ち解けた感じなんだ?
今時の若い子は積極性があるのだろうか…
よく観察するとイケメン、またかわいい女の子の周りに1,2人くらいが集まっていた。結局顔か。
次の瞬間には、結局顔、というのが裏付けされることが起きた。
聖花「どうも」
カラカラとドアが開いて聖花が入ってきた。その瞬間ところどころから「キャー」とか「うわっ!」とか聞こえてくる。文面だとなんか嫌がられている感じがあるかそんなことは一切なく尊敬のまなざし、黄色い歓声が飛び交っている。…文面ってなんだ
聖花「おはようございます。皆さんよろしくお願いしますね」
集まってきた人たちに丁寧に言葉を返す。さっき俺と話していた時がうそのように優等生を演じている。
今回の男女二人を見つける作戦…エルと名前も知らないもう一人を探すのは俺だけではない。聖花にも協力してもらうことになったのだ。当の本人は俺と学校生活を送るのが本命らしいが潜入捜査みたいなもんなんだから会話とかしないと思うのだが。
聖花「隣ですね。聖花と申します。短い間かもしれませんがよろしくお願いします」
クロ「おう…」
思ったんだがなぁ…。なぜ席となりなんだ。最初は50音順とかじゃないの!?…まてよ。見た感じ50音順だな…。…俺の名前決めたのこいつだっけ。
ふと聖花を見るとにっこりとした顔が帰ってきた。
コイツ…やりやがったな…。なぜかどんな手を使ってでも俺との学校生活をエンジョイしたいらしい。
まぁ席が近いのはいろいろ楽だが…。
俺のさみしい誰もいない席と、人に囲まれた聖花の席が並ぶ。何てきれいな対比なんだ。
そんなことを考えてたら前の子が振り返って話しかけてきた
???「すごいね…聖花さん。」
クロ「元生徒会長だからな」
ツル「そんな人とおんなじクラスなんて…うれしいな。…あ、ごめん。私の名前言ってなかったね。私は木京ツル。よろしくね!」
クロ「俺はユ…クロだ。大河クロ。よろしく」
ツル「うん!大河くんね!覚えた!」
クロ「そりゃどうも」
こんな感じで初対面の人と話していくのか…結構きついな。その後もツルと話していると聖花がこっちをにらんできている気がする。…いいだろ会話くらい…
しばらくして担任らしき人が入ってきた。いつの間にかクラスメイトは全員そろっていた
築地「はいはい。席に着けよーお前ら。えー…今年お前ら4-1を担当する築地ロムだ。びしびしやっていくぞ。お前らももう大人だからな。」
めちゃくちゃやる気なさそうな男の人だな。…ただ隙はない。強いのは確かだな
築地「よし。じゃあ自己紹介でもするか。知ってるやつもいるかもしれないが初心は大切だ。…まずは私からやろう。…えー名前はさっき言ったな。39歳…好きなものは食う、寝る、あと女だ。よろしく」
三大欲求の塊みたいなやつだな
???「不安だわ!」
元気な奴が突っ込んだ。あーゆーキャラがいないと学校は成り立たない。
築地「うるせ。じゃ俺もやったんだ。お前らもやれ」
そうして自己紹介が始まっていった。
ここは注意しなきゃな…もしかしたらエルともう一人がいるかもしれない…
聖花の名前は忘れていたわけじゃない…ですハイ




