第四十五話 また会える
それから俺と美和さんは頻繁に会うことになった。いや、正しく言えば会うことになってしまっていた。
彼女の能力『赤い糸』は自分が好きになった対象と運命的に出会ってしまう能力。俺はそれにかかり、二分の一くらいの確率で美和さんに出会ってしまう。まさか家までとなりなのは驚いた。
ラミ「いや、私もここまで能力が効いたのは初めてかな。偶然が必然に感じるくらい出会ってしまうことは今までもあったけど家まで同じってのは…」
ジゲル「調整できたらいいんだけどね」
調整できない能力でここまで無害なものはほかにない気がする。
ジゲル「てか…この能力ってさ」
ラミ「ん?」
ジゲル「美和さんが…」
ラミ「ラミでいーよ。もう会って結構経つでしょ」
別に会いたくてあってるわけではないのだが
ジゲル「じゃあ…ラミが好意を持たなくなったら解除されるんじゃないの?この能力って」
俺はフッたはずなんだが
ラミ「だってまだ私ジゲル君の事好きだもん」
ジゲル「…さいですか」
最初のほうはまだ遠慮をお互い感じていたが今じゃ週8、9、10…数えられないくらいにはあっているからかなりうちとけてしまった。一回人助け中に出会ってしまったときは本当に困った。そのあとの質問攻めが。
ラミ「あーあ…ジゲル君は全然私のこと好きになってくれないからなぁ…」
ジゲル「俺は贅沢なんだよ」
ラミ「かわいくないって?」
ジゲル「…なんでもないです」
不思議なことに退屈には感じなかった。なんなら話していて楽しい。気づいたときにはいつまた出会えるか考えてしまっている。…人助けももうできないな…。どこでも出会ってしまうんだ。いつか危険に合わせてしまう
それから俺は人助けをやめた。暇だったので学校にも行ってみた。
ラミ「あ!やっほー。学校来たんだね!」
もう同じ学校くらいじゃ驚かない。同じクラス、隣の席はさすがに信じれなかったが。
かなり俺自身、変わってきたと思う。自分でそう思うくらいにはだ。
両親は昔とは違い安心した表情をすることが多かった。それがなんだかうれしかった。
昔の自分からは思えない事だ。
そして1年。ラミと付き合うことになった。こんなにも俺を待ってくれてこんなにも思ってくれるなら答えるべきだろう。俺から告白した時にはラミはうれしいより驚きが勝ったみたいだ
ラミ「私自分の能力が『赤い糸』で初めてよかったと思ったよ」
そんなことを言っていた気がする。
そんな幸せな日常が続いて半年、「あること」は起きた
俺たちは一緒に学校から帰っていた
ラミ「ふぁーぁあ…ねむ」
ジゲル「昨日夜までゲームするからだよ」
ラミ「一緒にやってたのになんでジゲル君はそんな元気なのぉ…」
ジゲル「俺は昼寝てるからね」
ラミ「なるほど…。ん?いや!学校じゃん!?」
ジゲル「ははは。だって眠いんだもん」
ラミ「それなーぁ…」
他愛のない会話。殺伐とした日常が、まるで何もなかったかのように平和だ。
…平和だった。
ーーーーーーーーーーーーーー
仁道「おい!ジゲル!聞こえているか!」
先輩の大声で気が付いた。昔のことを思い出していたのか…
ジゲル「すみま…せん…」
仁道「ジゲル…」
周りを見ると先輩の能力によって生まれた壁で囲まれていた。
能力『鉄くらいの壁を作り出す』ものだ
仁道「お前まだ昔を…」
ジゲル「…僕は…」
顔が上がらない。外からはルースとフードの声が聞こえてくる
ルース「兄さん、続けててね。私の分身がラッシュ兄さん助けに行ってるから」
フード「わ、わかるが、ルースよ。僕も疲れるんだ…。わかるだろ?」
ルース「………え?ごめん分身に集中してた」
フード「くっ…がんばれ」
ルース「おす」
風は止んでいないようだ。たびたび斬撃が飛んでくる音がする。まだ外に出ないほうがよさそうか?
いやでもコンが…。ダメだ決められない…。最近こういった闘いがなかったからかか完全に思考がネガティヴになっている…ダメだ、僕はもう…
仁道「磁川ジゲル!」
突然の大声にびっくりした。
ジゲル「は、はい」
仁道「外国に行ってへこんじまったみたいだな。お前は教えてくれなかったがよく自分の調子を取り戻すために何か思い出してたろ。あれはなんだったんだ?」
先輩の話で思い出した
そうだ…あの子が…
ーーーーーーーーーーーー
一緒に帰ったあの日。ぼく…俺たちは大きな事件に出くわしてしまった。
「移動系能力暴走事件」
一年たちやっと魔警が機能し始めて市民からの信用を得たころに会った大事件。
ある一人の能力者が暴走した。能力の暴走。それは珍しいことだった。負荷に負荷をかけた能力の使用をしたことによって起こる暴走。俺たちはそれに出くわしてしまった。
これが炎や水だったりしたら俺が守ってやれたのに…
ジゲル「ラミ!ラミ!はあっ・・はあっ・・・」
ラミ「はは…ジゲル君、汗すごいよ?」
ジゲル「そりゃ…お前!!」
ラミの下半身はなくなってしまった。血が止まらない。突然何の音もなく、だ。
移動系の能力者が暴走したのだ。そんなもん、防ぎようがない
ジゲル「くそっ…ラミ…!」
自分の無力さを強く感じる
ラミ「あー…こりゃおしまいだねぇ…でもまぁ…いっかな」
ジゲル「よくないだろ!俺の能力じゃ…助けられない…」
ラミが自分の能力を恨んだように、今度は俺の番だ
ラミ「いーんだよ…だって今まで運が良すぎたんだもん…」
ジゲル「どういうことだよ?」
ラミ「だって…ジゲル君…に会えて、好きになってもらった。もー十分だ…よ…ゴフッ…」
ラミは吐血した
ラミ「ジゲル君。そんな悲しそうな顔しないでよ…」
俺は泣きはしなかった。俺が守っていることの一つ。人前で泣かない
ラミ「…大…丈夫だよ。また…会えるからさ…。忘れたの?私の能力…」
ジゲル「…だからって…」
ラミ「赤い糸で結ばれてるんだから大丈夫…大好きだったよ…じげる…く…」
そうしてラミは呼吸をやめた。そのあとの自分は覚えていない
とにかく走り回って、暴走した能力者を見つけて、ぶっとばした。
魔警の人に褒められたらしいんだが全く覚えていない。
あの事件で亡くなったのはラミ含め3人。
「僕」がそれから不登校になるのに時間はかからなかった。
…あんなにも、泣きたくなったのは初めてだった
…あんなにも、後悔したことは初めてだった
…あんなにも…自分を恨んだのは初めてだった
ーーーーーーーーーーーー
もう後悔しちゃいけないな。あの子に顔向けられないや
ジゲル「先輩、すみません。心配かけました」
仁道「おう…壁、解除するぞ」
壁がなくなり、光が差し込んでくる。
フード「はぁ…やっと…でてきたな…」
ルース「兄さんお疲れ。あとは私がやる」
そういってルードは「俺」に向かってきた。もう気は抜かない。もう後悔はしない。
ジゲル「電磁浮遊」
俺は飛び上がる
ルース「上にあがってどうするのさ…?」
ジゲル「こうすんだよ」
重力+磁力+一般魔法
これにより俺の一撃は…とてつもない威力を誇る
ジゲル「磁殺」
ルード「ぐほぉっ!?」
ルードを叩きのめし、深く、大きな穴が開いた。
フード「ひっ…」
俺はフードのほうをにらむ
フード「わ、悪かった。な?もう、やめるから…」
ジゲル「じゃあな」
反発の力をためにためる
ジゲル「極磁破」
フード「ぐわぁーーーー!???」
多分カタミのほうに飛んでったかな
仁道「やっと調子取り戻しやがったな?」
ジゲル「ははは、ま、すぐ戻っちゃうんですけどね」
仁道「ったく…戦いのときだけ昔に戻るクセなんなんだよ」
顔が二面あるなんて…磁石みたいでいいと思うんだけどな
どうせ書くならもっとちゃんと書きたかった!ごめん!ジゲル!




