第四十四話 ひきつけあう力
僕…磁川ジゲルはよく昔から「おかしなやつ」とよく言われた。何がおかしいかといえばまずはゆっくりとしたこの話し方。どうやってもゆっくりとしか話せない。あることがあってからずっとこうなのだ。
治したくても治せない。病気みたいなものだと思ってる。それに能力を使う時と使ってないときで性格が変わってしまうのも一つだろう。これもあることからだった。こんなおかしな僕でもしっかり向き合ってくれるアルパさんとカタミはありがたい存在だ。
ジゲル「仁道先輩…あとは僕がやるので…下がっていてもらっていいですよ…」
仁道「ジゲル!帰ってきていたのか!…すまない。この二体、俺たちじゃ手に負えないんだ。先輩が後輩に頼むことじゃないとは思うが…」
ジゲル「大丈夫です。僕はあの二人を倒せますが…仁道先輩のように守ることはできないので…そっちは任せます…」
仁道「あぁ…助かる。頼んだ」
そう言って先輩はその場を少し離れてくれた。仁道先輩は僕がまだ研修生だったころの教育係だった。
能力にしか取り柄のなかった僕は親に勧められて魔法警察で働くことに決めたのだ。懐かしいなぁ…
ルース「フード兄さん、なんか強そうなやつが来たぞ」
多分ルースってやつかな。女性のように見えるがやっぱり普通とは違う。爪がびっくりするぐらい長い
対してもう一人は…
フード「はん!ルースよ。僕たちが組んで「強そう」なんて概念ないのだよ!」
なんか語彙力の乏しそうなイケメンだ。こっちがフード。風を操るんだったかな
ジゲル「…はじめまして、ジゲルです」
ルース「これはこれは…ども、ルースです」
フード「おい!きっちり挨拶を返すんじゃない!えらい!」
ルース「ありがとう…」
なんなんだこの二人。ふざけているんだろうか。ふざけているんだったらそんな気持ちで人を傷つけたのだろうか。だったら許せない
ルース「てかフード兄さん…もうよくない?ロイヤル兄さんは程よく足止めしておけとしか言ってないし…肝心のコンちゃんは行っちゃったし…」
フード「ルースよ、ここで僕らがコン以外が誰も行かないようにしなきゃいけないのを忘れたのか?」
ルース「さっきもう一人行かせたじゃん…」
フード「あんなもの例外だ!」
どうしようかな…このままじゃ時間が…。すぐにコンのもとにはいってあげたいし…
ルース「じゃあやるならやろうよ…」
フード「それもそうだな!よし!行くぞ!ジゲルとやら!」
なんか話はまとまったらしく攻撃をしてきた。フードは一気に僕に近づいてきて、ルースはなんだか力をためている。
フード「くらえ!僕の風を受けきってみろ!」
フードの手のひらからどんどん風の斬撃が飛んでくる。
ジゲル「さて、やってやろうか?」
それぞれの斬撃に磁力を与え、地面に近づけさせ、消す。
このくらいなら全然制御可能だ
ジゲル「S極、付与」
フードに付与し、次に地面に
ジゲル「N極、付与」
Nを付与する。すると…
フード「ごげふっ!?」
フードが勢いよく地面にたたきつけられた。
僕の能力は属性に近いものだが、違うらしい。付与しかできないのだから。
磁力のエネルギーとか、本を手に入れたら実体化できると思うんだけどな
ジゲル「こんなもんか?」
激しく、何度も地面にたたきつける
ルース「ちょ…やりすぎで…」
分身しようとしているのかもしれないが、わざわざ相手の技を出させてあげるほど、俺は甘くない
自分の頭に手を置き…
ジゲル「加速」
脳に磁力を与えるとどうなるか。普通なら少し脳が活性化する。…が、俺の場合それは常にだ。だからこんな人格になる。さらに与えるとどうなるか。脳がさらに活性化し、行動すべてに影響を与えだす。
ジゲル「寝てな」
俺は磁力+強化された身体で一気に背後に回り、蹴り飛ばす。
ルース「ごは…ッ!?」
ジゲル「ま、こんなもんか」
いつもこれで片付いてしまう。ほんとにつまらない…。そうして俺は能力を解除しようとして敵のに背を向けて歩き出した。
仁道「あぶない!!」
俺は先輩に押されていた
ジゲル「…先輩!?」
ルース「くそ…兄さん!」
フード「あいよ!」
とてつもない勢いの風が俺たちを襲った
仁道「おおおぉ!!」
仁道さんが壁を作り出してくれたおかげでそこまで被害はなかったが…
ジゲル「先輩…!ケガが…」
さっき僕をかばったせいで背中に攻撃を受けてしまっていた。だめだ!こんなんだから僕は…
昔の…あることについて思い出してしまった
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女の子「や…やめて…!」
不良「ぐへへへへ…そうはいかないぜ?お嬢ちゃん」
じりじりと不良は女の子に近づいていく。まだこの時代は完璧に魔警が作動しているわけではなかった時代。こんなことはよくあった。助ける力はあっても、勇気はない。そんな世界だった。
ジゲル「そうはいくんだなーこれが」
俺はすぐさま不良の取り巻きたちをくっつけて身動きができない姿にして…
ジゲル「とう!」
膝蹴りを不良の頭にぶつけてやった。
不良「うう…」
ジゲル「さ!行くよ、おじょーさん」
女の子「え…あ…はい!」
これがこの子との出会いだった。当時自分が周りとはおかしいと気づき、冷たい目で見られ学校にも行かなくなった頃の事。どうせ何もすることはないのだからせっかくだし人助けをしようとしていたころだった。残念ながらこの時代はこんな輩がよくいたが、僕にとっては好都合だった。『磁力』は最初は不便な能力だったがうまく反発、引き寄せることができるとまるで無敵になったように感じた。攻撃不能、相手は防御不能。刃物なんかも近づきさせなきゃ別に問題なかった。
ジゲル「大丈夫かな?けがは?」
フレンドリーに。俺が守っていることの一つ。安心させるためだ。
ラミ「あ…ありがとうございます。私は美和ラミです…。あなたは…?」
ジゲル「これは失礼!俺は磁川ジゲル。けががなくてよかった、美和さん。それじゃ」
助けて、あまりかかわらず去る。時には声をかけてきて俺とかかわりを持とうとしてくるやつがいるがそんな時はうまくかわす。人と関わりすぎない。これも俺が守っていることだ。関わりは問題に早変わり。
当たり前のことだ。
ラミ「あ、あの!」
どうやらこの子もそのタイプ。基本的に男女関係なく声をかけてくることがあるか女の子のことが多い。
もてちゃって困るなー。ほんと。さて、さっさと終わらせるかな
ジゲル「んー!ごめん!俺もう…」
ラミ「す…好きです!一目ぼれしました!」
そして次の瞬間にはその子は抱き着いてきていた…と思えば
ジゲル「おぉ…!?」
俺は何やら赤い糸に巻き付けられれしまった。とはいえ動ける。すぐに赤い糸は見えなくなってしまった
ラミ「あ…す、すみません…」
ちょっといろいろなことが起きすぎて混乱してしまった。
好意を持ち近づいてくる女の子ももちろんいた。でもこんなにストレートな子は初めてだ
ジゲル「えーと…今のは…」
ラミ「あ、あの糸は…その…私の能力で…」
話を聞いてみるとそこまで問題はなさそうだった。美和さんの能力、『赤い糸』は好きになった人と運命的にどこでも、いつでも出会ってしまうらしい。能力自体は女の子からしたら大歓迎な能力な気もするが…美和さんはこの能力に困っているらしく…。
とにかく立ち話もあれだから自販機で飲み物を買って近くの公園のベンチに座った。夏の暑さはもう懐かしく、涼しくなっている。
ジゲル「まぁ確かに…好きになった瞬間にその人に赤い糸がまとわりついたらプライバシーも何もないね…」
どうやら制御ができないらしく、今まで好意を持った人ができては赤い糸がまとわりつきまともな恋愛はできなかったらしい。年齢を聞いてみると16歳。青春真っ盛りじゃないか。…ってか同い年!?
ラミ「えーと…磁川さんは?」
ジゲル「能力は言えないかなー」
みんな俺の能力を気にする。知ってどうするんだ。対策でもする気か?
ラミ「いや、年齢」
ジゲル「え…?…16ですけど…」
ラミ「なんだ!私と同じじゃん!大人びた感じがあるから年上かと…」
能力にはてんで興味なさそうだった。さっきから話していると調子が狂う。
でも、なんだか話が合う。会話をしていて楽しいと思ったのは初めてだった
ラミ「わ!もうこんな時間」
つい話し込んでしまい、気づいたら1時間たってしまっていた。
ジゲル「じゃ、もう俺はいこうかな」
ラミ「あ…その…えっと…」
なんだかもじもじしてる。
ジゲル「トイレ?あっちだよ」
ラミ「違うから!?」
少し意地悪をした。まぁ言いたいことはわかってる
ジゲル「残念ながら返事は「NO」だよ。ごめんね。」
話が合う、楽しい。そんな理由で今の日常を崩す気はない。それに危ないことにこの子を巻き込みたくないしな
ラミ「そ…そっか…。そうだよね。まだ会って半日もたってないもんね…」
美和さんは落ち込み、後ろを向いた
ジゲル「じゃ、そうゆうことだから。じゃあね」
これでいい。これでいいんだ。何もなかった。
ラミ「あきらめてませんから!」
歩き出した俺の背中に声が刺さる。なぜか痛い
ラミ「私の能力!舐めないでくださいね!」
…ごめんね。さっき能力っぽいのは磁力で外しちゃった。体から反発させるなんて簡単だ。
そうして俺たちはもう二度と会わないと思っていた。
ジゲル「はーぁ…今日はあんまり人助けできなかったなぁ…」
なぜか満足している心に、脳でうそをつく。
その時、かちゃん、と音が隣からした。
見てみると…
ジゲル「うそ…」
ラミ「ははは…家となりなんだね…」
この子能力…侮れない…
なんかジゲルの過去編入っちゃった…




