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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
95/856

92階 いざ歓楽街へ

「本当に良かったのかな・・・みんなに話しちゃって・・・」


訓練所での話が終わり僕は司令室に戻り1人呟いた


《なんで?》


「いやだってほら・・・さっきの話にも出てたけど知らなければ迷わず自分に合った能力を伸ばせる訳でしょ?選択肢が増えれば迷いが生じるってことも・・・」


《そこまでは知らないわよ。もう選択出来る歳なんだし自分で何とかするでしょ?》


「それはそうだけど・・・あっ、そう言えば・・・」


《なに?》


「自分で説明してて気付いたけど・・・ダンコって最初僕には全適性があるって言ってたよね?でも得意不得意で言うとそれっておかしくない?」


《・・・》


「でさ・・・みんなに話してて気付いたんだけど・・・実は小さい頃にみんなはマナを使って得意不得意を知る事が出来たけど・・・マナを使えない僕はそれが出来なかった・・・で、普通ならその小さい頃に得意と知った能力を鍛えるから職業として活躍出来る・・・なんて考えたりしてみたんだけど・・・どうかな?」


《・・・さあ?》


「実は知ってたな?よくも全適性なんて嘘をついて・・・」


《わ、悪かったわよ!確かに人間は成長すると共に得意不得意の差がどんどん広がっていく・・・だから幼い時に身に着けておけばより強くなれる・・・けどほら!ロウは才能あるからどんどん全ての能力が上がって・・・同期の人間なんかより強くなったでしょ?》


「それはダンコ・・・僕が強くなったんじゃなくてダンジョンが拡張され強くなったんじゃないの?」


《あ、アナタは私でしょ!?つまりダンジョンが拡張されて強くなったとしてもアナタが強くなったのと変わりないわ!》


「・・・まあいいや・・・なんか誤魔化されてる気もしないでもないけど・・・」


実際小さい時に得意能力を見つけてた方が成長は早いんだろうな・・・けど今更言っても遅いし仕方ないか・・・そう言えばもう一つ気になる事がある


「ねえダンコ」


《なによ!》


「なぜ怒る・・・ほらペギーちゃんって小さい頃ダンよりも天才って言われてたんだ。魔法使いの才能があるって・・・でも大きくなるにつれて伸び悩んで・・・それって原因はなに?」


《あら?サラに鞍替えしたんじゃなかったの?》


「おい!」


《ハイハイ怒らない怒らない・・・簡単な話しよ。限界が来た・・・それだけ》


「限界って・・・そんなに早くに?」


《元々低かったんでしょうね。それが早熟のあまり早々に限界に到達してしまった・・・まあ、長年鍛えてて限界が浅かった・・・ってなるよりはマシじゃない?》


うっ・・・そうなのかな?でも・・・そうなのかも・・・


《あー、それと一つ間違って教えてた事があるわよ?》


「え?うそ!?」


《成長速度は全て一緒じゃないわ。才能あるなしでかなり違うわよ》


「・・・あれ?でも昨日ダンコは全部同じように成長するって・・・」


()()()の場合はね。他の人間は知らないわ》


マジか・・・後でみんなに言っておかないと・・・


「って、僕が同じなのって全部才能ないからじゃ・・・」


《否定はしないわ》


開き直った!くっ・・・やはり僕は・・・


いや、今は僕の事よりペギーちゃんの事だ。つまり今の話も加味するとペギーちゃんは変化の才能があったけど限界値は低かった・・・だから早くに限界に到達してしまったって事か・・・才能があると限界値も高いイメージだったけど違うんだな


もしかしたらペギーちゃんとダンジョンに行けるかも・・・とか考えてたけど無理そうだ・・・まあ元々エモーンズのダンジョンには行けないし諦めよう


《それにしてもあの別の組合はほっといていいの?私としてはマナを貢いでくれれば組合なんてどうでも良いのだけど・・・争うならダンジョン内でやってよね》


争うつもりはサラサラないけど・・・確かに不気味だよな


最初は新しい組合が出来たんだぁって簡単に考えてたけど人数はもしかしたら向こうの方が既に上かも・・・それでいてBランクにCランク3人か・・・戦力的にも向こうが上っぽいよな


面倒な事にならなきゃいいけど──────





「スカット・・・お前はどうしていつもそうなんだ?」


マホ達にボコボコにされて気を失っていたスカットが目を覚ますとケンが呆れながら声をかける


起き上がり周りを見渡すとケン以外誰も居ない・・・その事実にホッとした後で急に寂しくなり頭を垂れる


「だってよぉ・・・てかおかしいのは俺じゃなくてお前らだろ!なんだお前ら修行僧か!?禁欲でも強いられてるのか!?」


「なんだよ急に・・・そんな事言ってると全ての修行僧を敵に回すぞ?」


「知るかボケ!・・・ハア・・・エロ友が欲しい・・・こんなダンジョン馬鹿じゃなくてエロを語り合える友が・・・」


「誰がダンジョン馬鹿だ!俺だって・・・」


「俺だって?」


「・・・そういう事を考えたりするさ・・・」


「そういう事って?」


「だから!女の子とイチャイチャしたいとかそういう事だよ!」


「なら行こう!」


「え?どこに?」


「決まってんだろ・・・歓楽街だよ歓楽街!」


「ばっ・・・お前本気か?」


「ったりめえよ!幸いな事に今はマホとヒーラが居ねえ・・・ここで行かなきゃいつ行くって話よ」


居ないのはお前のせいなのだが・・・という言葉を出さずにケンは冷静になり考える


興味はある・・・だが行ったことを知られればマホとヒーラに何を言われるか分かったものではない・・・下手すれば何日か口を聞いてくれなくなるかも・・・


「・・・ビビってんのか?」


「ちがっ・・・」


「いいんだぜ?お前が黙っててくれれば俺は1人でも行ってくる・・・なんかこう・・・今日は掴めそうな気がするんだ・・・何かが」


「意味が分からん・・・てか、1人でも行く、か・・・」


スカットはお調子者・・・1人にすると何をしでかすか分からない・・・となると監視が必要・・・どうせ行くなら今が絶好のチャンス・・・


「早くしろよ・・・もう俺は行くぜ?夜は待っちゃくれねえからな」


「待て・・・俺も行く・・・」


こうしてケンとスカットは歓楽街に行くことに



冒険者は命懸けでダンジョンに挑む


命を懸けている分、やはり実入りも大きく、ケン達エモーンズダンジョンが入れるようになった当初からいた初期組はその恩恵を多分に受けていた。なので贅沢しなければ1ヶ月以上何もしなくても暮らせるだけの貯えがある


冒険者の多くはダンジョンから帰って来ると稼いだお金を使い込む。生きて帰れた事の開放感からかストレス発散なのか


だがケンとスカットには監視の目がついている


マホとヒーラ・・・その2人の監視の目は非常に厳しいものだった


しかも散々『歓楽街なんて行く人の気が知れないわ』などと話している場面に何度も遭遇していた


しかし今・・・2人に監視の目はついていない


スカットは羽が生え、ケンは彼女らの代わりにスカットを監視するという名目を得ている


2人の足取りは非常に軽かった


ダンジョンから離れた場所にあるにも関わらずあっという間に到着・・・何度か前を通った事がある・・・が、立ち止まった事は1度もない。その歓楽街の入口に2人の男が仁王立ちし煌びやかな世界を呆然と見つめていた


「やべえ・・・ドキドキしてきた」


「俺もだ・・・だ、だけどあまり深入りはするなよ?聞くところによると奥には抜け出せない沼があるらしい」


「なんだよケンも色々研究してんじゃねえか・・・で?沼ってなんだ?本当に沼がある訳じゃねえだろ?」


「・・・その・・・名前は伏せるが・・・仮に元兵士Aさんとしよう」


「イヤに具体的だな・・・で?」


「Aさんは元々奥で護衛の仕事をしていた。けど使い物にならないとすぐに辞めさせられたのだが・・・ほんの短い間だったが護衛している時に見ちまったんだよ・・・奥で何が行われているか・・・」


「ゴクッ・・・で?何が行われてたんだ?」


「さあな・・・そこまでは聞けてないが・・・で、Aさんはどうしても奥にある場所に行きたくて冒険者となった」


「あん?なんだそりゃ」


「いいから聞け・・・冒険者となったAさんは来る日も来る日もダンジョンに潜り金を稼ぐ・・・そしてようやく奥の場所へと行ける日が来た・・・目的を達成しようやく休むのかと思いきやまたダンジョンへ・・・そしてまた奥の場所へと繰り返す日々・・・で、最後は何を思ったか単身でトロールに突っ込み・・・」


「ヒェッ」


「当然勝てる訳もなく次にボス部屋に入った冒険者が見たのは無惨に棍棒で殴り飛ばされ見る影もなくなったAさんの姿だった・・・」


「な、なんでAさんは単身トロールに?」


「前日に元同僚だった人が飲みの席で聞いたらしい・・・『なんでそこまでダンジョンに行くんだ?』って・・・そしたらAさんは『足りねえからだよ・・・もっともっと稼がねえと・・・足りねえからだ』って・・・」


「・・・つ、つまり奥の場所に行きたくて金を稼ごうとトロールに?」


スカットの問いにケンは神妙な顔で頷く


奥の場所に行くにはお金がかかる。それでも行き続けたいと思わせるほどの魅力もある・・・スカットはそういう事だと理解した


「沼・・・か・・・行ってみるしかねえな」


「おまっ・・・今の話聞いてなかったのか?」


「お前はあれか?命を懸けるほどの場所に興味がねえって言うのか?」


「いや興味はないこともないが・・・」


「かー、情けねえ!命懸けでダンジョンを探索する冒険者パーティーのリーダー様ともあろうお方が高々歓楽街の店にビビるなんざ・・・別に取って食われる訳でもねえのに何をそんなにビビる必要があるってんだ!いいか?なんで沼って表現してっか分かるか?それはなぁ・・・抜け出せない底なし沼みたいな店だからだよ!でもなぁ百戦錬磨の俺達がそんな罠にかかると思うか?20階も越えて30階も目前・・・そんな俺達が高々お色気の店一つや二つ抜け出せなくなるかってんだ!」


「いやお前は抜け出せなくなるだろ」


「だから!それを止めるのがお前の役目だろ!正直俺は自信がねえ!絶対ハマる!だからそれを止めろよ!止めてみせろよ!」


「いやじゃあ行くなよ」


「冷静になんなよ!そこは股間で語れよ!行くのか行かねえのかどっちだ!?俺は行くぞ!絶対行く!その話を聞いたら俄然行く気がMAXだぜ!」


「お前・・・道端でよくそんな風に叫べるな」


歓楽街の入口付近で叫ぶスカットをクスクス笑いながら見る者達・・・その状況が故にケンは妙に冷静になれていた


しかし荒ぶるスカットは止められない・・・周りを気にすることなく鼻息を荒くしケンを置いてズンズンと奥へと歩き出す


「お、おい!待て・・・くそっ・・・分かった俺も行くって!」


ケンはまだ不安な気持ちは拭えなかったが、かってないほど頼もしいスカットの背中を追いかけている内に何とかなるような気がしてきた


入ってやばそうなら出ればいい


そんな甘い考えもあったかもしれない


とにかく2人は沼と表現される店へと突き進むのであった──────




ちょうどその頃、おおよそ歓楽街には似つかわしくない修行僧のような出で立ちの男がケン達を見つめていた


「ふむ・・・あれは確か──────」

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