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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
93/856

90階 定時報告

時間だ・・・行くか



日が落ち夜となり待ち合わせの時間が迫っていた


それでも私はなかなか部屋を出れずにいた・・・その理由は昼間に買った服のせいだ


刺激してしまったせいかムキになる店員との服選びはさながら魔物との命懸けの勝負のよう・・・負けぬとタカをくくっていたが私は激戦の末負けてしまった


買わされたのはゆったりとした胸元にヒラヒラが付いたシャツにロングスカート・・・店員には『このヒラヒラが魔法使いの炎に当たって燃えたらどうする?』と聞いたら『どんなシュチュエーションで着る気ですか!』と怒られた


しかし魔物の炎ならまだしも味方の炎で燃えるのは間抜けにも程がある・・・が、店員の迫力に押されてそんな事は言えず『ではこのスカートでは蹴りが出しにくいのだが』と別の質問をぶつけると『蹴るな!』と返された


つまり店員は争いを全く想定していない服を選んだのだ


この私に


言われてみると何が起こるか分からないので様々な事を想定していた。いつダンジョンブレイクが起きるか分からないし、ゴロツキと化した冒険者に襲われる可能性もある・・・盗賊などは言わずもがな・・・


そう考えると常に動きやすい服を着ていた方が対処出来るし都合がいい・・・だが、それは反面こういったヒラヒラなどの可愛い?無駄を一切排除する事になる


人目を引くのであればこういった無駄な部分が必要になるのだ・・・もしくは露出を増やすか、だ


露出を増やすのは避けたい・・・もし万が一露出度の高い服を着ている所をローグに見られでもしたら・・・彼は私に幻滅するやも・・・いや、もしかしたらまたあの感情を?


面白くない


そう思ってくれた真意はまだ分からないが・・・もしジェファーの言う『楽しくない不満不快』という感情ならば・・・


はっ!もう出ねば!遅れてしまう!


この服を着てからというもの慣れないせいか体が重い


なのでついつい動きを忘れ物思いにふけってしまう


急いで部屋を出て1階に降りるとダンジョンから戻って来て魔核の精算待ちの冒険者が一斉にこちらを見る


上から下までまるで品定めするような視線・・・普段は胸の部分にやたらと視線を感じるが今日は全身をジロジロと見つめてくる


おかしいのか?・・・いや、店員は試着した時に『お似合いですよ』と言ってくれた。髪型も頭の上で束ねず髪の付け根・・・腰の辺りで結んだものに・・・初めて挑戦したのだが店員曰くこの服装にはこの髪型が似合うと言っていたし・・・


迷っている暇はない


私は冒険者達の視線をかいくぐりギルドの外へ・・・そしてダンジョンへと向かった



「お待ちを!入場許可書の提示をお願いします」


いつもならそのまま通してくれるダンジョン入口に立つギルド職員が私を止めた


「?・・・少し訓練所を借りたいのだが・・・」


このギルド職員とは何度も顔を合わせたことがあるはず・・・もしかして必ず提示が必要になったのか?


「あっ!・・・申し訳ありません・・・お通り下さい」


?・・・もしかして私と気付かなかった?


いやしかし服を変えただけだし、顔には瞼にいつものアイシャドウを塗っているし・・・まあ目の下のクマを隠す為に少々化粧をしてはみたが・・・


服装が変わるだけでそこまで変わるのか?


おっと考えている暇はない。せっかく買った服を着ているのだ・・・店員も似合うと言ってくれたし堂々として本来の目的である『ローグに見せる』を達成しなくては


そう言えばなぜ集まるのだったか・・・確か能力云々と言っていた気はしたが・・・あまり覚えていない


もしかして既に来ているかも・・・緊張しながら少し扉を開けると中から声が聞こえてきた



「へぇーローグさんとトロールに。俺らが初めてトロールに挑んだ時を思い出すなぁ・・・まあ俺らの時はサラ姐さんに手伝ってもらったけど・・・危なくなってサラ姐さんに助けてもらって・・・」


ケンの声・・・懐かしいな。あの時は惜しくも負けそうになり私が助力したんだっけ・・・


「そうなんすね!俺達もやられそうになって組合長が・・・今まで謎でしたけどめちゃくちゃ強くてビックリしちゃいましたよ!」


私も見たかったその場面・・・強いのは知ってはいるが最近ローグの勇姿を見れていないし・・・


「そうなんだ。俺らは結構長い付き合いだと思うけど戦ってる姿は見た事ないんだよな・・・」


ん?そう言えば私も・・・いつも助けてもらっているけど直接戦っている姿は見ていないような・・・


「そうなんですか?凄かったですよ!トロールの棍棒を空魔陣であっさり受け止めたり、あのぶっとい足を簡単に剣で切断して最後は剣気一閃で首を刎ねて・・・動きも速いし何でも出来るって感じでした!」


空魔陣?剣技?・・・確かにローグは剣を常に携帯しているが・・・


「それはおかしいわね。ローグさんは魔法使いのはずだけど・・・」


「え?そうなんですか?てっきり俺は近接アタッカーとタンカーの能力持ちかと・・・」


マホの言う通りだ・・・私は魔法を使う場面を見たしローグが以前死んでしまった冒険者に回復魔法をかけたと言っていたし・・・


「サラ・・・そこで何をしている?」


「ヒャッ!・・・・・・ローグ?」


振り返るとそこにはローグが立っていた


「入らないのか?」


「あ・・・ケン達とジケット達が話をしていたのでつい・・・」


い、今がチャンスじゃない?


中に入ればケン達が居るし2人っきりのチャンスなんて滅多にないしこの格好をどう思うか聞くには今が・・・


「あ、あの・・・ロー」「サラ姐さん!それにローグさん!来てたんッスね!」


ケン~・・・相変わらず間が悪いと言うか何と言うか・・・本当に・・・


「どうやら揃っているようだな。では中で話そう」


「はい!って何の話か知らないッスけど・・・ジケットにローグさんから話があるらしいって聞いただけで・・・あれ?サラ姐さんその格好・・・」


「ケン!話は後だ!まずは中に入って現状報告!その後ローグの話が先だろ!」


「えっ、あ・・・はあ」


ふぅ危ない・・・ここでケンに品評されてはローグが後々言いにくくなってしまう。下手したら『ケンと同じだ』みたいな意見で終わってしまいそうだし・・・出来ればローグの口から聞きたい


・・・と、思ったがどうやらその願いは叶わぬようだ


ローグと共に中に入ると私の姿を見て皆があれやこれやと言い始める


大半は『似合ってる』『綺麗』などの褒め言葉・・・だが肝心のローグからは一言も・・・


「んん!私だって普段着くらい着る!それよりもケン・・・『ブラックパンサー』はどうなのだ?」


「え?ここで話しても?」


ジケット達をチラリと見て話してもいいか聞いてくるケン・・・だがローグが気にかけているパーティーに思えるしジケット達はエモーンズ出身者・・・話しても問題はないだろう


「構わない。それでどうなのだ実際」


「はい・・・特に今のところ目立った動きはありませんね。勧誘も強引な感じではなく入った奴のニーズに合った感じっぽいッス。『ダンジョンナイト』はどうしても高ランクがサラ姐さんだけなんで人手が足りないってのと・・・その・・・『ブラックパンサー』の組合長のニーニャが愛想がいいって言うか・・・好みが分かれる感じなので・・・」


おおよそジェファーが言った通りか。サポート面の充実に色気・・・あの服を常時着ているというのはとても信じ難いが・・・


「なるほど・・・他に気付いた点は?」


「それが・・・組合の拠点が3階建てなんッスけど2階が幹部候補の部屋で3階が設立メンバーの部屋になってて・・・俺らただの組合員は1階が待機所になってんッスよね・・・だからほとんど上の連中とは話が出来なくて・・・」


設立メンバー・・・確かニーニャは私がAランクに上がった後ですぐにCランクからBランクになった・・・フリップが片方だけに肩入れしているように見られるのを嫌ってそうしたと言ったが、ニーニャ以外のメンバーも確かCランク・・・高ランクの冒険者は圧倒的に『ブラックパンサー』が多い事になるな


しかし幹部候補か・・・助っ人面で充実していて更に向上心を煽るにはいい手だ。地位が上がれば上に上がれる・・・ニーニャ目的で入った者にとっては是が非でも上に上がりたいと思わせる事が出来るだろう・・・ただどうやって幹部になるかは不明だが・・・


「その幹部候補になるには?」


「それが・・・不明ッス。何人か幹部候補に選ばれて2階にいるんッスけど・・・」


明確にしないのは謎だな。頑張る方向性が定まらない・・・幹部候補になった者に聞くのが手っ取り早いが・・・


「俺らの誰かが幹部候補になればそれも分かると思うんッスけどね・・・残念ながら声はかけてもらってないッス」


「いや、そこまでする必要は無い。が、もう少し『ブラックパンサー』に所属していてもらっていいか?」


「はい!別に何の問題もないッス!」


「危険だと思ったらすぐに逃げろ・・・何もなければいいが・・・」


「少しいいか?」


ローグが会話に入って来たと思ったら私とケンに何かを投げて渡す。これは・・・もしかして・・・


「サラは使い方を知っていると思うが・・・ケンは初めてだったな」


「なんッスかこの石・・・」


「通信道具・・・マナを流せば対になる道具と繋がり声が届く。使い方はサラに聞くといい」


あっ・・・ローグは危険があったらすぐに私に知らせられるように通信道具を・・・


事情があってあまり表に出て来れないローグはケン達を心配して貴重な通信道具を用意してくれたというのに私は自分の事(ローグの事)ばかり・・・


「サラ?」


「あ、はい!ケン・・・後で使い方を教えよう・・・危険と感じたら迷わず私に連絡を・・・必ず助けに行く」


「はいッス!」


「なのであまり単独行動はしないように。持つのは誰でも構わないが離れていては何かあっても知らせる事が出来ないからな」


「そうッスね・・・肝に銘じておきます!」


何があってもこれで私に連絡が来る・・・それどころか離れていても定時報告も可能・・・今回のように集まると誰かに見られる危険性があるからこれはかなり助かる


さすがローグ・・・ここまで考えて・・・


「さて、では私からの話に移っても大丈夫か?」


「はい・・・確か能力・・・の話ですよね?」


「ああ・・・少しばかり混乱するかもしれないが・・・」


良かった合ってた・・・しかし混乱するとはなんだろう・・・


「君達は・・・いや、ほとんどの人間は勘違いしている・・・マナの使い方を──────」

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