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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
90/856

87階 ありえないほど・・・

翌朝、冒険者ギルドに訪れた僕を見てざわめく


もうすっかりお馴染みになったつもりだったけど昨日来たばかりの冒険者も多いみたいだし仮面とマント姿は慣れてもそりゃあ驚くか


「サラに用事があって2階に行く」


「・・・ご勝手にどうぞ」


うっ・・・相変わらずローグに冷たいペギーちゃん。ぷいっとそっぽを向いて答えた


素っ気なく対応されて肩を落とし、重い足を引きずって階段を上がりサラさんの部屋の前に辿り着いた


すると急に蘇る言葉『ありえないほどハレンチ』


胸が高鳴るのを必死に抑え、ビッシリとかいた汗をそのままに拳を握りドアを2度叩いた


「・・・はい」


居る!


もう着てるのか?


着てないとおかしいか・・・さすがに生着替えは無理だろうし・・・


「入っても?」


「・・・どうぞ」


『どうぞ』だと!?


いや、普通に返事しただけだ落ち着け


しかし『どうぞ』という事は準備が出来ているという事・・・つまりありえないほどハレンチ状態である事を示す・・・いいのか?本当にこのドアを開けて・・・いいのだろうか!


「・・・?」


あまりに開けない僕を中に居るサラさんが不審がっている気がする・・・そうだ・・・僕はローグ・・・ダンジョンの守護者・・・こんな事では負けない!


「開けるぞ」


一応宣言してからドアを開ける


仮面の下はどんな顔をしているのだろうか・・・自分でも分からない


ドアをゆっくりと開け、仮面に空いた二つの穴から部屋を覗き込むと部屋の中央にサラさんは立っていた


「・・・」


部屋の空気が張り詰める


まるでボス部屋にでも入ったような緊張感・・・思わず構えそうになるのを必死に堪え、僕はサラさんの姿を凝視した


両肩から布が垂れ下がり山を越えて合流するとベルトの役目をしているであろう紐で動かないよう固定されている


正面から見て分かる・・・脇はフリーだ


なんだこれは・・・大きいタオルを肩からかけて腰で縛っただけみたいな服・・・これが流行りなのか?横から素肌が丸見えじゃないか・・・


しかもサラさんは・・・その・・・胸が大きいから・・・横乳が・・・谷間も凄いが横乳が溢れそうに・・・はっ!?まさかこれこそが出ていないか心配な部分では!?・・・確かに横から見たら出てしまっていると言っても過言ではない。いや、むしろ出ている


ふと思った・・・これ、歩くと色々不味くないか?


だって揺れるよね?揺れたらほら・・・ねえ?


「・・・えっと・・・どう?です・・・か?」


『どう?』と言われましても!


『出ていない』って答えればいいのか?それとも似合っているかどうか聞いてるのか?『むしろ出ている』どうぞ答えたらどう反応するのだろう・・・『だよね』って返されないことだけは分かるけど・・・


サラさんに見ている姿を見られるのが恥ずかしくなり視線を落とす・・・が、そこにもトラップが


み、短い


ダンジョンに潜る時や僕との訓練の時に着ている服は動きやすいように太もも部分まで切れ目が入っている。なのでたまに覗かせる太ももを拝むことはあるのだけど・・・これはもうスカートと言って良いのだろうか・・・下着を申し訳ない程度に隠すただの布・・・そう本来の役目など知ったこっちゃないと言わんばかりの短い布が巻きついているだけだ


足を上げたりしたらもう・・・履く意味あるのか?


「あっ!その・・・足は太いのであまり見られると・・・」


全然アリです!むしろ好物です!


いや、何を考えているんだ僕は・・・僕はローグだ・・・エローグじゃない!


「・・・少し露出が多いな・・・」


「そ、そうですよね・・・さすがにこれを着て勧誘なんか・・・」


勧誘されたら即入ります!


「そうだな。その格好を見て入る者は色々と勘違いしてしまうかも知れないな」


「・・・勘違い・・・とは?」


えっ?難問きた・・・勘違い・・・そう・・・僕の思った勘違いとは『もしかして誘ってんのか?』みたいなやつだ。その格好を見て欲情して・・・


でもローグがそう思うって事はつまりアレだ・・・ローグも欲情しているからそう思ったのでは?って思われかねない・・・このダンジョンの守護者たるローグが、だ


それはまずい・・・非常にまずい


何がまずいか分からないがまずい


どう答えるのが正解なんだ?


僕はローグ・・・僕はローグ・・・


「・・・組合の勧誘をする者がそんなチャラチャラした格好をしていたら組合自体もチャラチャラしていると勘違いされるだろう?組合『ダンジョンナイト』は命懸けでダンジョンに挑む冒険者を支援するのが目的・・・勘違いされると困・・・る」


何とかローグっぽい事を言おうと必死に考えながら言葉を出すとサラさんの様子が変・・・部屋の真ん中でプルプルと震えていた。あっ、髪型はダンジョンに行く時と同じお団子だ。今気付いた


「そう・・・ですよね・・・着替えます・・・」


「ああ・・・って!?」


いきなり首の後ろに手を回したと思ったら服がはだけ・・・咄嗟に後ろを向いて回避したけどもしそのまま見ていたら・・・


「・・・あー、少し部屋を出ておく・・・着替え終わったら教えてくれ」


「・・・はい・・・」


素早くドアを開けて体を滑り込ませる


部屋の外に出ると安堵感からか体中の力が抜け思わずドアに寄りかかった


やってしまった・・・か?


何がいけなかったんだろう・・・下手な誤魔化しがバレたとか?


とにかく着替え終わったら謝ろう・・・いや、待てよ・・・何が悪かったか分からないで謝ったら逆効果か?ここは一度司令室に戻ってダンコに相談を・・・


「あっ!ダンジョンナイトだ!」


「こらっ!組合長でしょ!」


「うむ」


「あら珍しい・・・サラさんの部屋の前で何してるのかな?」


うげっ!ジケット達が2階に上がって来た


そう言えばサラさんに相談するって言ってたしそりゃあ来るよな・・・忘れてた


「ちぃーす組合長!ちょっとどいてもらえる?サラさんに用事があって・・・」


「よせ!」


ドアノブに伸びた手を掴み思わず声を張り上げる


キョトン顔して僕を見上げるジケットと一歩引くハーニア達・・・誤解だ・・・別にとって食おうって訳じゃ・・・


「・・・サラは着替え中だ。それとも覗きに来たのか?それなら・・・」


「ち、違う違う!・・・あー、びっくりした・・・喋るんだ」


喋るわ!


「組合長も焦ったりするのね。『よせ』だなんて・・・」


そりゃあ焦るわ!着替え中の女子が中に居るんだぞ!?


「フフ」


笑うなマグ!


「ふーん・・・人間っぽいところもあるのね」


人間じゃなかったらなんだって言うんだ!?



「準備出来ました」


ドアの向こうから声が聞こえた


どうやらサラさん着替え終わったらしい


さて、どうしよう・・・ジケット達の登場で考える暇も聞く暇もなかったぞ・・・・・・ええい、ままよ!


「サラ・・・君を訪ねて来た者がいるのだがその者達も入って大丈夫か?」


「?・・・はい」


よく考えるとジケット達がいて助かったかも・・・変にさっきの格好をがどうだったか突っ込まれても返答のしようがないし・・・


ドアノブに手をかけドアを開くとそこにはいつも通りのサラさんが居た


僕があげた戦闘服?に身を包み平成を装うサラさん・・・実はかなり怒ってる・・・とかはないよな・・・


「・・・・・・それで?君達は何の用だ?」


しばらく僕を見つめたサラさんは視線を動かすとジケットを見た


「あっ、すんません・・・その・・・助っ人を頼みたいと・・・」


「助っ人?・・・ああ、私の空いている時間なら私が・・・」


「え、いや・・・その・・・10階なんでサラさんが出るほどでも・・・」


「油断していると足元をすくわれるぞ?10階と言えばトロール・・・その一撃は硬い鉄の盾すら破壊する・・・ボス部屋はダメだと思っても引き返せないからな・・・用心に越したことはない」


「そうすか・・・なら・・・」


「私が行こう」


「え?」「え?」


話をしていたジケットとサラさんに割り込み僕が立候補すると2人は驚きの表情を浮かべ僕を見る


「あの・・・ローグが彼らと?」


「ああ。表立って行動出来ないからな・・・たまには組合長らしい仕事もしないと、な」


「え・・・でも10階ですよ?ローグなら目を瞑ってでも倒せるトロールですよ?」


目を瞑って倒せるか!・・・いや、倒せるな・・・むしろ目を瞑った方がよく見えるし


「『用心に越したことはない』のだろう?なかなかこういう機会もないしサラは今忙しいだろ?私の方が適任だと思うがな」


「・・・」


冒険者を勧誘しないといけないし忙しいはず・・・だけどサラさんはあまりいい顔しなかった。僕だと頼りない?・・・そんなことはないよな・・・


「・・・分かりました。君達も構わないか?」


「え、ええ!そりゃあもちろん・・・いいんすか本当に・・・」


「構わない。出来れば今日行くと助かるのだが・・・」


「今日ですか!?・・・うーん・・・ちょっと待ってください・・・」


そう言うとジケットは3人と相談を始める


準備が出来たらって昨日言ってたし今日の今日はさすがに無理かな?


4人が相談している間、僕とサラさんは手持ち無沙汰になり見つめ合う


何か言いたいことがあるようで何度か口を開きそうになるがその度に言葉が出ないようギュッと口を閉じてしまう


なんだろう・・・気になるな・・・


「・・・あの・・・必要なもんとかあります?」


「特にないな。普段通りで構わない」


「そうすか・・・なら・・・お願いします!」


良かった・・・明日とか言われたら2日連続で休んでヘクト爺さんに迷惑をかけるところだった



こうして僕はローグとしてジケット達が挑む10階ボスについて行く事になった


善は急げと張り切るジケット達について行く形で部屋を後にしようとした時、ふと気になって後ろを振り返るとそこには・・・無表情で僕を見つめるサラさんがいた


「あ、えっと・・・行ってくる」

「行ってらっしゃい」


秒で返ってくる返事が妙に怖い


いつの間にか僕は・・・サラさんの地雷を踏んでしまったようだ──────




バタンとドアが閉まり1人部屋の中


結局話があると言ってたのに何もなし・・・しかも何を着ても似合うとか言いつつ『チャラチャラした』??


何なの?


浮かれて飛び上がっていた気持ちは急降下して見事に粉砕してしまった


騙されて浮かれた私が悪いのか


調子のいい事を言って途端に下げる彼が悪いのか


一つだけ言えることは・・・



ボーッとしてて思わずその場で脱ぎ始めてしまったけど



見えてない・・・よね?──────

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