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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
88/856

85階 ブラックパンサー

エモーンズ『ブラックパンサー』拠点


殆どの組合はその規模が大きくなってから拠点となる建物を購入または建設する。が、『ブラックパンサー』は設立してすぐに拠点となる建物を建てた


三階建ての立派な建物は建設当初周囲から冷やかな視線を浴びていた



既にエモーンズには組合『ダンジョンナイト』が存在している。新規の組合など長続きしない



それが周囲の反応だった


当然建物は無駄になると誰もが思っていたが『ブラックパンサー』は予想に反してその勢力を拡大し『ダンジョンナイト』と同規模になるまでに成長する



「組合長他3人の組合設立メンバーが3階で幹部候補が2階・・・その他大勢が1階ってか」


『ブラックパンサー』組合員ケン


1階の雑居部屋と化したフロアに雑然と置かれた椅子に座り卓を囲みながら他の冒険者を眺めながら呟く


「その他大勢で十分。幹部なんて面倒だしね」


『ブラックパンサー』組合員マホ


「けどよぉ、得られる情報は多いんじゃねえか?その幹部ってやつになれば」


『ブラックパンサー』組合員スカット


「ですから何度言えば・・・無理して情報を得なくてもいいと言われてるでしょう?」


『ブラックパンサー』組合員ヒーラ


4人が『ブラックパンサー』の組合員となり3日、特に何も無く得られた情報など皆無であった


突然サラから『ブラックパンサー』に移籍してくれと言われた時は『ダンジョンナイト』をクビになったと思い青ざめたがその真意を聞いて二つ返事で承諾した



『ブラックパンサー』に所属し調べてくれ



それがサラからの依頼


ただ危険を冒してまで調べたりせず、組合員として気付いた事を後で教えてくれればいいとの事だった


「サラ姐さんも分かってねえよなぁ・・・『そのまま移籍してもいいぞ?』なんて・・・んな事する訳ねえのにさぁ」


「あら?そう?誰かさんは満更ではないって感じよ?」


「え!?誰?誰?」


「ここの組合長を見る目が危ない人って感じですよね。自覚はないみたいですが」


「ニーニャも気になるなぁ。一体誰の事かなぁ?」


「っ!組合長!?」


『ブラックパンサー』組合長であるニーニャがスカットに背中から抱きつき顔をひょっこりと出して言うとケンが驚き叫び1階で屯していた者達の注目を浴びる


「組合長だ」「ニーニャ様!」「今日もまた一段と・・・」「アイツ・・・羨ましい・・・」


ニーニャの登場にざわめく者達


鬱蒼とした雰囲気のフロアに花が咲いたように色めき立つ


「今日はお休みかなぁ?もし理由があって行かないのならニーニャが手伝ってもいいよぉ?」


「実はメンバーが1人休んでて!」「ひ、暇してたんでもし良ければ!」「お、俺とパーティーを組んで下さい!」


「俺らも空いてるから気軽に言え」


「あ・・・」


ニーニャの言葉に殺到する者達も階段近くから声をかけた人物を見て一斉に引いてしまう


『ブラックパンサー』設立メンバーの1人、へガン・ガイアス


非常に珍しい盾を持たないタンカー


己の肉体でのみ魔物の攻撃を防ぎパーティーを守るその肉体は見る者からすると非常に頼もしくもあり恐ろしくもある


「カッカッ、相変わらず不人気だなへガン。みんな引いてるぜ?」


『ブラックパンサー』設立メンバーの1人、オード・シュラス


魔法使いではなく奇術師を名乗る後衛アタッカー


魔法を使うのではなく巧みに操る技は敵だけでなく味方すらも騙してしまうほど


「それを言ったらオード・・・お主もなかなかの嫌われっぷりだがな。女性冒険者には助っ人を頼まれるが男性冒険者には頼まれんではないか」


『ブラックパンサー』設立メンバーの1人、ブル・エーガイス


肉弾戦と回復魔法を駆使するいわゆるモンク


前衛アタッカーをこなしつつ回復も出来る彼はニーニャに次いで助っ人を頼まれる回数は2位・・・だが、1位のニーニャとはかなりの差がある


「ほらほらぁ喧嘩しないのぉ!別に誰がついて行ったって結果は変わらないんだからみんなも必要だったら気軽に言ってねっ」


『ブラックパンサー』設立メンバーにして組合長、ニーニャ・ブロッサム


背中に背負った2本の剣を巧みに使う双剣士


見た目も仕草も子供っぽく、後ろから見ると剣が歩いているようにも見えるその容姿とは裏腹にダンジョンでは魔物を瞬殺してしまう機敏な動きに美麗な剣技に共に入った冒険者を男性女性に限らず魅了してしまう


一部の男性には強さ関係なく見た目だけで熱狂的な人気を博す


「じゃ!ニーニャ達は3階に居るから本気でダンジョンに挑みたい人は来てねっ!ガンガン手伝っちゃうからねっ」


ケンから離れ手を振るニーニャ


服装は男性の視線を意識してか手を上げると横から胸が見えそうになるくらいぱっくりと開いた服を着ており、階段を上ると下着が見えそうなくらい短いスカートを履く


4人の中で一番最後尾で上がって行くニーニャを下から覗き込もうと男達が殺到するとその中にはスカットの姿も・・・


「ハア・・・男ってのはどうしてこう・・・って、ケン・・・アンタも顔真っ赤じゃん!」


「い、いや・・・これは・・・」


「・・・これはなかなか・・・簡単にはいきそうにありませんね・・・」


調査を引き受けたからにはそれなりの成果を・・・そう考えていたが思ったより難航しそうだとマホとヒーラは顔を合わせ顔を顰めた──────





ケン達は大丈夫だろうか


ローグには何もしなくていいと言われたがどうしても気になってしまい4人に頼んだが・・・功を焦り無茶をしなければいいが・・・



・・・自室で1人考える事が増えたな


それも全ては『ブラックパンサー』のせいだ


なぜ『ダンジョンナイト』があるにも関わらず組合を設立した?なぜエモーンズに?もっと大きな街なら組合も複数あるがこの街はまだまだ発展途上であり冒険者の数も少ない。ダンジョンもようやく40階を越えたばかりだ・・・組合が二つ必要とは思えん


「狭い街で二つの組合・・・同じような組合があれば衝突が起きる可能性がある・・・もしかしたらそれが狙いか?」


『ダンジョンナイト』はスタンダードな組合だ


組合員から月に固定のお金を徴収し情報や人員の割り当てで還元する


もし『ブラックパンサー』が特殊な組合・・・例えば拠点を決めない『流郎組合』や冒険者を食い物にする『闇組合』なら話は別だ


流郎組合・・・様々なダンジョンに挑戦したい冒険者が集まった組合で拠点を設けずダンジョンを転々とする組合


闇組合・・・助け合いを主とした組合とは正反対で冒険者からあらゆるものを搾り取る悪質な組合


二つの組合の特徴は拠点が存在しないこと


ただ流郎組合は移動する性質から少数精鋭となる事が多い。だから人数を増やしたりましてや拠点となる建物を建てている時点で流郎組合ではないのは確実・・・となると・・・


「ハア・・・闇組合は非公式に徒党を組む事が殆ど・・・なので『ブラックパンサー』は違うと信じたいが・・・」


これまで冒険者ギルドに公式として認められた組合は『タートル』のみ。だが『タートル』は犯罪の証拠を一切残さず、少しでも怪しまれると拠点を変えている。尻尾どころか両手足、頭すら硬い甲羅に隠してしまうさながら『タートル()』のように・・・塵も積もればと言うか少しづつ悪評が広まり今では公式の闇組合として言われているが証拠はない為冒険者ギルドも何も出来ずにいる


『ブラックパンサー』もその『タートル』のような組合だとしたら・・・


「ケン達は早めに戻すべきか・・・だがそうなると向こうに移籍した組合員達を見捨てる事になる・・・どうすればいい・・・どうすれば・・・」



『ブラックパンサー』など来なければ今頃・・・今頃何をしていた?


うーん、ローグとラブラブな買い物?・・・ないない


最近は通信の頻度も減ってきた・・・何かの口実に私から連絡するくらい・・・


そういう意味では変化をもたらした『ブラックパンサー』は役に立っているのか?奴らのせいで組合員が減ると報告の義務として通信出来るし・・・いやいや、ローグと話せるからと言って組合員が減ってる事を喜ぶ訳には・・・


「・・・ローグ・・・」


会いたいけど会えないこのもどかしさ


わざとダンジョンで危機に陥ってみようか・・・そうすればローグが助けに・・・


「・・・そんなこと出来るわけがない。もし同時に窮地にある冒険者がいたらどうするのだ・・・・・・その時、ローグはどちらを選ぶのだろう・・・私か・・・見知らぬ冒険者か・・・」


気になる・・・いや、選んでくれると信じているが試しようがない・・・いっそ聞いてみるか・・・ハア・・・聞けるわけがない・・・もし聞いて選ばれなかったらどうする?



・・・まただ・・・最近はこんなことばかり考えてしまう


忘れられるのは弟子であるロウニールと訓練している時だけ・・・その時だけは悩まずにいられる


そういえばロウニールの成長速度には驚くばかりだ


つい最近マナを使えるようになったと聞いたが、成長速度が尋常ではない為に恐らく彼の同期などあっという間に抜き去っているだろう。このまま成長すればいずれ私をも超えるほどだ


「体の使い方はまだまだだがマナの使い方は目を見張るものがある。もしロウが私と同じ装備を身に着け、私が何も装備しなければ・・・勝つのは難しいかもな・・・」


ローグに貰った身体能力強化の服に風を起こす鉄扇・・・この二つを使いこなせば私と同等かそれ以上になるだろう。それだけ貰った装備が凄いという事にもなるが・・・


「冒険者ではないのが惜しいな・・・もし冒険者なら私の・・・」


!・・・何を考えているのだ私は!


私は組合長補佐でソロ冒険者・・・たとえ同レベルの者でもパーティーは組まないつもりだったはず


もし・・・もし組むとしたらそれは・・・



コンコン


部屋にノックの音が響き渡る


もしや願いが通じたのかと胸を高鳴らせドアの前に立ち『誰?』と尋ねると『私です』と返ってくる


まあ現実などそんなものだ・・・開けると部屋の前には組合会計士のジェファーが立っていた


「・・・また組合員が減ったか?」


「サラさん・・・脱いで下さい!」


なぜ!?──────

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