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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
86/856

83階 ドラゴニュート

僕の強さはダンジョンの拡張と共に上がって行く。ダンジョンの拡張の中には創る魔物も含まれている


これまで上級魔物は創った事がなく、今回創れば初となりダンコ曰くそれにより僕の強さは一段階上がるらしい


ただし問題がある


魔物は上の級になるほど知能が高くなり、管理が難しくなる


知能が高くなると会話も可能になり、感情も豊かになる・・・が、その分不平不満を持ったりするらしく命令に背く魔物も出て来るとか


そうならない為にも常に気を配り魔物よりも強くなくてはならない。舐められたらダンジョンブレイク待ったなしだから・・・


《いい?比較的大人しくて弱い魔物を創る・・・そうね・・・『ドラゴニュート』なんてどう?》


「え?ドラゴニュートってあのドラゴニュート!?」


人喰いダンジョン40階のボス『ドラゴニュート』


後1年くらいで倒すべき魔物・・・そのドラゴニュートを僕が・・・創る?


《そうよ。今のロウなら創造可能よ。まあドラゴニュートは上級下位だしね》


「・・・つまりそれって僕はもうドラゴニュートよりも強いって事?」


《創りたてのドラゴニュートよりは辛うじて・・・互角には戦えるかな?まっ、力の使い方次第だけどね》


「曖昧だなぁ・・・」


《アナタはサラに何を習ってるの?力の使い方でしょ?宝の持ち腐れって言葉知ってる?》


「うっ・・・」


《確かにアナタは才能もあるし他の人間より強くなる可能性は十分にある・・・けど、これまでの戦闘経験の乏しさから力の使い方がイマイチなのよね・・・簡単に言うと引き出しが足りない》


「引き出し?」


《そう・・・ロウは全ての能力を使えるでしょ?なら他の人間よりかなり優位な状況なの。普通の人間がパーティーを組んで足りない部分を補っているのに対してアナタは1人で十分・・・つまりどんな局面でも対応出来る力がある・・・なのに引き出しが少ない為に上手くそれを活用出来てないわけ。分かる?》


「もっと魔法や魔技を使いこなせと?」


《人間の前ではそれは無理でしょうけどソロで戦う場合は使える力を総動員しないと・・・相手の弱点をつく・・・基本でしょ?》


サラさんは武闘家で近接アタッカーだけど風牙龍扇で遠距離攻撃も補ってる・・・だからソロでも活躍出来るんだ


僕はと言えばエモーンズでは武闘家、カルオスでは魔法剣士って事になってるから使いたくても使えない


「そっか・・・もし僕が自分の力を十二分に発揮出来れば勝てるけど、武闘家や魔法剣士の僕では力不足・・・」


《そうなるわね。サラには武闘家としての実力は引き上げてもらってる・・・それでも実力の半分も出せてないわ。魔法剣士なんて自己流なだけあって四分の一にも満たないんじゃない?今のままだと1年後に勝てるとは思えないわね》


「そ、それはマズイ・・・どうすれば・・・」


《ひとつはドラゴニュートに挑む時のパーティーメンバーに期待する・・・まあ、1人は決まってるから残りの2人か3人に期待ってところね。如何にロウの足りない部分を補えるパーティーメンバーか・・・》


「それって運次第って事でしょ?・・・ひとつはって事はまだあるの?」


《ええ・・・もうひとつは魔法剣士のアナタがドラゴニュートに勝てるようになる事・・・ただこれも運の要素が強いけどね》


「どうして?」


《言ったでしょ?人喰いダンジョンにいるドラゴニュートが経験を積んでいたら?たとえここでドラゴニュートを倒せるようになっても向こうのドラゴニュートの強さが分からなければ結局運次第・・・無謀な冒険者が少ない事を祈るしかないの》


そうだった・・・ここで倒せるようになっても人喰いダンジョンのドラゴニュートがその強さだとは限らない・・・いや、確実に強いはずだ・・・


「ドラゴニュートを創ってダンジョンに配置せず、訓練所で戦い続ければ・・・ドラゴニュートも強くなり僕も・・・」


《そう上手く行けばいいけどね》


「と言うと?」


《アナタは誰かに閉じ込められて戦わされて最後に死ぬ運命だと知ったらどう思う?》


「そんなもんどうにかして逃げ出して・・・あっ」


《ドラゴニュートは上級・・・賢いのよ。創る際の命令をただ遂行するだけじゃない。感情を持ち思考する魔物なの。もし何も命令を与えずに訓練相手にしていたら、いずれ起きてしまうわ》


「・・・ダンジョンブレイク・・・」


《そそ・・・『ダンジョンを守れ』や『侵入者を排除せよ』なんて命令は魔物にとっては至極当然の命令だから何も疑問に思わない・・・けど『訓練の相手をしろ』とかだと疑問に思う可能性は大ね》


あう・・・ダンジョンブレイクは絶対に起こしちゃダメだ・・・となるとドラゴニュートは諦めるしか・・・あれ?


「ドラゴニュートを眷族にするのはどう?スラミみたいに・・・そうすればダンジョンブレイクは起きないでしょ?」


《数年後くらいは眷族化出来るかも知らないけど今の時点では無理ね。平気で拒否するわ・・・実力が足りないって言ってね。それにもし出来たとしてもイヤよ・・・ただでさえスラミにマナを奪われているのに上級なんて・・・マナの無駄遣いよ!》


当初から眷族はスラミ以外増やすなって言われてたし無理か・・・そうするとどうする事も出来ないぞ・・・あれ?でも・・・


「だったらなんでダンコはドラゴニュートを創ろうって言ってきたの?もしかして普通に配置する為?」


《そうよ・・・まあ、配置は配置だけど普通のじゃないけどね》


「どういうこと?」


《訓練の相手をしろって命令だと不満は持ってもさっき言ったように通常の命令だと不満は持たない・・・ここまで言えば分かる?》


「・・・何となく・・・」


《嘘おっしゃい・・・ハア・・・アナタダンジョンマスターでしょ?・・・まあいいわ。別に守る場所が冒険者の通る場所じゃなくてもいいのよ。例えばここだったり訓練所だったり倉庫だったり・・・》


「あっ!そうか・・・独立した部屋・・・誰も通らない場所を守らせれば不満は出ない・・・そこに僕だけ行けば良いのか!」


《そういう事。あとはバレないように扉やら次の階に続く階段なんかも作った方がいいわね。魔物はダンジョンの作りまで把握出来ないから見た目だけでも大丈夫と思うけど念の為、ね》


「なるほど・・・それならダンジョンブレイクは起きない・・・もし起きたとしても地上には出られない・・・何せ繋がってないのだから・・・」


《ただ確実に上手くいくとは言えないわ。来る人間はロウだけ・・・それに不満や疑問を持つ可能性もあるし・・・まあ今ロウが言ったように地上に出れないのは間違いないけどね》


なんだてっきりダメなのかと思った・・・それならすぐにでも・・・


《あー、それと忘れてない?》


「何を?」


《ドラゴニュートが何処に居たのか》


「忘れる訳ないだろ?人喰いダンジョンの40階に居るって・・・」


《そう・・・()()()ダンジョンよ》


「・・・まさか・・・そう言えばゲイルさんが言ってたっけ・・・ダズーさん以外は食べられ・・・」


《そういう事。ドラゴニュートは人を食べる・・・部屋を守ろうとしているドラゴニュートと訓練をしようとしているアナタ・・・アナタがドラゴニュートを倒せれば何も問題はないけど、負けたら・・・》


「食われる!?訓練どころじゃない!!」


《そうなのよね・・・食われた部分は戻らないし・・・相手が訓練と思って手加減してくれれば安心なんだけど・・・》


「!だったら部屋に閉じ込めて『訓練の相手をしろ』って命令すれば・・・」


《・・・ダンジョンブレイクは魔物の家出と言ったわよね?じゃあなぜ家出するか・・・ダンジョンコアの命令に逆らうからよ。つまり『訓練の相手をしろ』と命令したところで不満を持ったドラゴニュートは恐らくアナタを・・・》


ヒェッ・・・食い殺されるなんて怖すぎる・・・


「なんだよ!じゃあどうしようもないじゃないか!てか、ドラゴニュートが人喰いなんておかしいだろ?だってドラゴニュートって竜人族って事だろ?ぶっちゃけ共食いじゃ・・・」


《竜人族ゆえよ・・・》


「え?」


《竜人族・・・つまり竜と人間を掛け合わせた魔物・・・さて、ここで問題・・・竜・・・つまりドラゴンはランクで言うと?》


問題?


えっと・・・魔物リストは下に行くにつれて強くなるんだよな・・・リストでドラゴンは一番下ら辺に・・・つまり・・・


「上級上位?」


《正解。では次の問題です。その上位のドラゴンと人間を掛け合わせたドラゴニュートのランクは?》


「上級下位・・・」


《大正解!・・・つまりドラゴニュートは人間と掛け合わせた事により弱くなったの。可哀想に・・・普通は掛け合わせると強くなるのにね・・・もちろんドラゴニュートもその辺の不満を持っているわ。なぜドラゴンよりも弱いのか、と・・・で、ドラゴニュートが思い付いた方法が・・・》


「人間を・・・食べる?」


《大大正解!!ドラゴニュートは弱くなった原因・・・つまり人間を強くすればドラゴンを超えられると考えているわ。なので人間を食べてドラゴンを超えようとしているの》


「ど、どこが賢い魔物なんだよ!食べて強くなれるわけないだろ!?」


《あながちそう言えないのよね・・・食べれば相手のマナを取り込む事が出来るし・・・ほら、道具に能力を持ったマナを吹き込むとその能力が道具に宿るでしょ?》


そう言われると・・・そっか・・・それでドラゴニュートは人間を・・・


「ダメだ・・・無理無理・・・食べられるかもと思ったら急に怖くなってきた・・・」


《まあそうでしょうね。でも1年後には挑むのでしょ?そのドラゴニュートに・・・しかも経験を積んで強くなっている相手に》


・・・今からでもキャンセル出来ないかな・・・無理かな・・・無理だよな・・・


《安心して・・・何もいきなり魔法剣士で挑む必要はないでしょ?》


「・・・と言うと?」


《さっきも言ったように力はロウの方が上・・・ならまずはドラゴニュートに勝てるよう全ての力を使うの・・・で、それから余裕が出てきたら魔法剣士として倒せばいいわ》


「そんなに上手くいく?」


《・・・はっきり言って自信はないけど・・・最悪マスターとして処理すれば・・・》


それはヤダな・・・何となく


でもイザとなったらそうしないと食べられ・・・


「ダンコ・・・すぐに創ろうと思ったけど少し後にしよう・・・僕が全ての力を思う存分使えて・・・ドラゴニュートを通じて倒せるようになるまで・・・」


《それなら尚更創っておいた方がいいわよ?アナタの力の上昇にも繋がるし・・・ドラゴニュートは部屋を用意してここを守れと言っておけば不満は持たないって言ったでしょ?深い階層なら人間がほとんど来ないなんてザラだし》


そっか・・・よし、まずはドラゴニュートの部屋を作ってそれから・・・ドラゴニュートを創った後で訓練だな


全ての力を使う・・・前に初めて人と戦った・・・ラウルだっけ?あの時は使えるから使ったって感じだけど今度はもっと上手く使えるように・・・



1年後のドラゴニュートとの戦い・・・そして僕がもっと強くなる為に・・・


僕は僕の創ったドラゴニュートを超えてやる──────

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