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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
854/856

300年後へようこそ 44

〘な、なんだァ!?殿の体から突然光が迸り・・・当然あの光の正体は気だとは思いますがあのような気の形は見た事がありません!ギザギザで触れるもの全て切り裂くような形はまるでノコギリを彷彿とさせます!!〙


〘・・・雷・・・〙


〘雷・・・そ、そうです!雷!!天から降る雷を殿が纏っている!!そうですね!!マクス将軍!〙


〘はい・・・私も一度しか見た事がありません・・・殿が雷を纏う姿は。他の者が見様見真似でやろうとしましたが結果は・・・全身がズタズタに引き裂かれ危うく死にかけたと聞いています〙


〘え?私の認識が間違っているのでしょうか・・・確か自らの気で自らが傷付く事はないと・・・〙


〘その認識で間違っていません。ですがあれは『雷』なのです。人の作り出したものではなくあくまで自然の『雷』・・・だからこそ自らも傷付けだからこそ威力が高くなる・・・そういう事です〙


〘・・・なんとなくですが分かりました・・・とにかく自然の雷を作り出した、と。しかしでしたら殿はなぜ平気なのですか?〙


〘本人は体質と言っていましたが詳しくは・・・ただ過去に雷を操る奥方を召した殿がおられたとかおられないとか・・・その影響かもしれません〙


〘なるほど・・・詳しい理由は分かりませんが殿は特異体質で平気だと言うことですね?〙


〘はい。今の殿は触れるものを全て傷付ける天災そのもの・・・もはや彼に勝ち目はないでしょう〙


「・・・なんだか雑音が聞こえるな」


「気にするな時期に聞こえなくなる」


ジブラはニヤリと笑うとロウニールの前から消えた。咄嗟に気配を追い背後にいる事を察知し振り向くが・・・


「遅せぇ」


「ぐっ・・・がっ・・・」


ジブラの拳がロウニールの腹部にめり込む。それと同時に痺れのような激痛が全身を駆け巡る


「痺れるだろ?そのまま寝とけ・・・っ!」


このまま倒れる事はないにしても反撃などする力は残ってはないと踏んでいたジブラだったがその予想に反してロウニールは反撃に打って出た


力ない蹴りだがそれでもジブラは距離を取り間合いから外れると頬を伝う汗を拭う


「化け物が・・・一般人でもそれほどかよ・・・」


「・・・くそったれ・・・逃げるなよ・・・」


「逃げる?違うな・・・準備だよ・・・てめえを殺る為のとっておきを放つ為のな」


ジブラが拳を握ると雷がより一層激しさを増す


そして大きく拳を引くと離れて立つロウニールに向けて拳を突き出した


「『金・剛・雷・霆・拳』!!」


拳を象られたマナが雷を帯び一直線にロウニールへと伸びていく


「・・・強いじゃないか・・・ジブラ」


負け惜しみではなく心からの賞賛


先程の一撃で身動きの取れないロウニールは苦笑いをしながらジブラの放った『金剛雷霆拳』に飲み込まれた


「っ!!ロウ!!」


サーラの叫び声が会場に木霊する


他の観客達はジブラのその技に息を飲み畏怖し言葉を失っていた


「・・・塵も残らねえと思ったんだがな・・・」


拳を突き出したままのジブラが呟くと技の余韻が消え去りロウニールが姿を現す・・・が


〘た、倒れた!倒れました!!殿の技を食らい前のめりに倒れたロウニール!!ピクリとも・・・ピクリとも動きません!!これは・・・この勝負!!我らが王!天の守ジブラ国王陛下の勝利です!!!〙


実況の声に観客席から歓声が上がる


圧倒的勝利・・・その勝利に酔いしれる兵士達をよそにロンは自らの爪を噛み砕く


「・・・こうなったら・・・」


「ダ、ダメですロン師兄!!殺されてしまいます!!」


「だがこれで戦争は始まってしまう・・・そうなれば・・・っ!サーラさん?」


「始まらないわ・・・戦争なんて」


そう言うとロンに微笑みかける


ロンが最もこの結末を受け入れ難いサーラの微笑みに戸惑っていると事態が更に動き出す



「・・・よう死んでっか?」


倒れたロウニールに歩み寄るジブラ


声を掛けるとロウニールは僅かに顔を上げた


「自分で言うのもなんだがあの技を受けて死んでないって・・・本当頑丈な奴だ」


「・・・」


「でも動けはしないようだな・・・てめえにいま一度聞いてやる・・・俺の配下にならねえか?」


「・・・」


「そうか・・・まっ、答えは分かってたけど残念だ・・・じゃあ英雄としてじゃなく一般人として・・・天の守に唾を吐いた者として死ね」


ジブラが足を上げる


そして身動きの取れないロウニールの頭目掛けてその足を踏み下ろす


いくら頑丈とはいえ耐えられるはずもなくロウニールの頭は踏み潰されてしまう・・・はずだったがジブラの足はロウニールの頭のすぐ横の地面を踏んだ


「・・・てめえ・・・」


「勝負はついたわ・・・でしょ?殿様」


いつの間にか舞台に降りていたサーラがロウニールの前に立ちジブラの足を逸らしていた


「勝負はまだ終わっちゃいねえ・・・引っ込んでろ!!」


「ダメです!!殿!!」


観覧席にいた軍師ベシスの叫びも虚しくジブラの裏拳がサーラを吹き飛ばす。それを見た観客の歓声は止まり一瞬で会場が静まり返るとジブラは何故か声を漏らした


「・・・あ」


それは何かに気付いたと言うよりやってしまったという後悔の声


そしてジブラは恐る恐る下を見ると恐れていた事が現実になった事に気付く


「・・・ヒール・・・ちょっくらそこで待ってろバカ殿」


何事もなかったように立ち上がるロウニール


彼はスタスタと歩き出すと倒れているサーラの傍で屈み優しく彼女に手を添えた


「ヒール」


ロウニールの手が光るとその光は優しくサーラを包み込み頬に出来た痣を消し去る


そして


「・・・ロウ?」


「ごめん・・・痛かったろ?」


「ううん・・・でも・・・」


「いいんだ。約束を違えたのは向こうが先・・・だから・・・今からの俺は流華門のロウニールじゃなくロウニール・ローグ・ハーベスだ」


そう言って立ち上がると振り返りジブラを睨みつける


その体からは魔力が立ち上り会場を震えさせた


「・・・ロ、ロウニ!!やっぱりてめえ・・・そんなこったろうと思ったぜ!どうせてめえは・・・」


「俺は約束通り一般人を通したぞ?約束を違えたのはお前の方だ」


「なんだと!?約束ってなんだ!・・・俺は別にてめえと約束なんか・・・」


「『サーラに誓って』・・・それは『サーラが無事なら誓ってロウニール・ローグ・ハーベスには戻らない』って意味だ・・・そんなのも分からないのか?」


「ふ、巫山戯るな!!そんなの一言も・・・」


「嘘をつけ・・・お前は気付いたはずだ。サーラを殴り飛ばした瞬間に。だろ?」


「いやあれは・・・そ、そうだ!女を殴った事を後悔しただけで・・・」


「ハア・・・分かった分かった・・・俺が怖いならそう正直に言えばいい・・・『あなたが怖いから一般人に戻って下さい』って言えば素直に聞いてやる・・・どうする?」


「・・・てめえ・・・」


「そうその意気だ。俺を倒す為に鍛えて来たんだろ?一般人の俺じゃなくロウニール・ローグ・ハーベスを。なら出してみろよお前の全力を・・・怖がらずに、な」


「・・・」


ロウニールの挑発にジブラは再び雷を纏う


「後悔しても遅いぜ・・・これはてめえにも届く技だ!『金剛雷霆拳』!!」


「うん、それはちと痛い」


ジブラが拳を突き出すとロウニールは手のひらをうねりを上げて飛んで来る金剛雷霆拳に向けゲートを開く。すると吸い込まれるように雷を纏った拳はゲートの中に入り消えてしまう


「このっ・・・」


「誇って良いぞ?まともに返すのは面倒くさいと思う技は300年ぶりだ」


「・・・まるで返せるとでも言いたげだな」


「事実返せるからな。試してみるか?雷を纏ったマナと雷を纏った魔力・・・どっちが上かを」


ロウニールの右手に魔力が集まるとその魔力がジブラの金剛雷霆拳のように迸る。だがジブラのマナが白だとしたらロウニールのそれは黒・・・黒い雷が迸っていた


「・・・なあ・・・俺のとそれがぶつかったらヤバイと思うのは俺だけか?」


「多分この会場が吹っ飛ぶくらいの衝撃は起こるんじゃないか?だから面倒くさいんだよ・・・サーラは当然として助けないといけない人が何人かいるからな」


「・・・他の連中は?」


「死ぬだろう。確実にな」


「・・・てめえ・・・」


「コラコラ命の恩人に『てめえ』はねえだろ?『ゲートを使って下さってありがとうございますロウニール様』ハイ」


「?」


「言えよ空気読めねえ奴だな・・・死にたいのか?バカ殿」


「・・・」


「ったく本当バカ殿だよな・・・お前がサーラを叩かなければお前の勝ちだった。そうすりゃ戦争でも何でも好き勝手出来たのに・・・俺は本当に戦争を起こそうが裸で踊ろうが止めるつもりはなかった・・・俺とサーラの邪魔さえしなければな」


「裸踊りは止めろよ裸踊りは」


「・・・とにかくもう誓いは無効・・・諦めて観念しろ」


「・・・・・・・・・勝負は俺の勝ちだった・・・天を手に入れる最大の好機だった・・・いや・・・好機だ」


「諦めが肝心だぞ?」


「諦めるほど簡単な思いじゃねえんだよ!ずっと思い描いていたんだ・・・このくだらねえ世界を変えてやるって・・・だから・・・」


再びジブラの体からマナが迸る


これまで以上に激しく


「絶対に諦めねえ!!」


「ハア・・・諦めの悪さは天下一品だな・・・まあいい・・・ならかかって来い・・・その思い粉々に砕いてやる!」


ジブラは遠距離攻撃は分が悪いと思い接近戦に持ち込む


一瞬で間合いを詰めるとシンプルな突きを放つ


それは単なる突きだが一撃必殺の突き


この世の誰もを葬り去る事の出来ると確信出来る突き


だが


「受け止めるとピリピリするんだよな・・・これ」


「だったら受け止めるな!!」



この世で最も危険な殴り合いが始まった──────


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