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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
851/856

300年後へようこそ 41

完全に観客が居なくなった会場の舞台の上で激しい戦闘が行われていた


ロウニールとバク率いる羅漢拳は舞台を埋め尽くす程の兵士達と拮抗を保っていた


しかしまるで綱渡り・・・少しでもバランスを崩せば真っ逆さまに落ちてしまう。しかもその綱の上で全員が繋がれている状態・・・誰か一人でも落ちれば全員が道連れとなる


「右翼を上げよ!倒れた者は引きずり出し薄くなった所を埋めよ!範囲を狭め一気に叩くぞ!」


薄くなった所を集中的に叩き、逆に自陣の薄くなった所を補充し、囲い追い詰めていく


さながら軍と軍の衝突のような状態に羅漢拳の門下生達は疲弊しロウニール達は徐々に追い詰められていった


「チッ・・・あの指揮官の野郎・・・」


「このままではジリ貧じゃ!何か策はないのか!」


「あるわけねえだろ!」


あるにはある・・・が、ロウニールはその手を使う訳にはいかなかった


「・・・クソッ・・・魔力を使うイコールロウニール・ローグ・ハーベスなんて考えるんじゃなかった・・・魔力が使えればこんな奴らなんか・・・」


魔力が使えなければ『ゲート』も『言霊』も使えない。『ゲート』が使えれば仲間を呼び出せるしそもそも『言霊』を使えればほとんどの兵士を跪かせる事が出来るだろう


しかし魔力を使わないのはロウニール本人がサーラの名に誓って決めた事・・・それを反故にする気はロウニールにはなかった


「せめてもう少し戦力があれば・・・」


一般の観客席はガラガラだが武術家達のいる観客席にはかなりの人数がまだ残っていた


この戦いの行く末を見守る傍観者に徹しているがもし彼らが味方してくれたなら・・・そう考えたがロウニールは首を振る


「羅漢拳はともかく彼らにゃ参戦する義理はないしな・・・しかも国に逆らってまで加勢してくれるような奴なんて・・・ん?」


舞台を埋め尽くす兵士達の一番奥・・・舞台の壁際で異変が起きる


「・・・僕に・・・触るなっ!!」


「うわ・・・人ってあんなに飛ぶもんなんだな・・・」


突然の叫びと共に兵士数人が宙を舞いその光景をボンヤリと眺めて呟いた


「あれは・・・ロンか?」


「みたいですね。俺に倒されてどこに行ったのかと思ってましたが・・・」


ロウニールに倒され気絶していたロン。目が覚めると壁際に追いやられ目の前には兵士達がひしめき合っていた


一体何が起きたのか分からずキョロキョロしていると1人の兵士がそれに気付きロンに状況を説明した


説明した兵士はこう考えていたのかもしれない『御前試合優勝者のロンが協力してくれればロウニールを簡単に制圧出来る』と


しかし説明を聞いたロンは真逆の行動に出る


『協力して頂けますか?』とポンと肩に手を乗せてきた兵士諸共周辺の兵士達を吹き飛ばす


「てか何やってんだアイツ・・・向こうの味方するならまだしもコッチの味方する義理はないだろうに・・・」


「分かってないのう・・・武術家とはそういうもんじゃ。一度でも拳を交わえば仲間意識が芽生え・・・」



「僕がロウニールを倒すんだ!邪魔をするならぶっ飛ばしますよ!!」



「・・・バク爺さん?」


「・・・良いライバルに恵まれたのう・・・」


「殴り合ったらみんな友達ちゃうんかい・・・まあいいアイツが俺と再戦したいって言うなら兵士達は邪魔者だしな・・・それに・・・」



「チッ!ロンに続け!」


傍観者に徹していた武勁門が動き出す


観客席から次々と飛び降りロンの周りを囲む武勁門の門下生達・・・すると兵士達は今までとは逆に敵に挟まれる形となった


「ぬうぅ!武勁門め!!まさか彼奴等まで・・・」


指揮官がその状況を見て歯噛みする


乱戦はこれまで以上に混沌を極めるのは当然であり圧倒的な戦力差だったはずが陰りを見せる


武術界の一、二を争う流派が全門下生でないにしろ参戦したのだ・・・しかも舞台は広いとはいえ兵を投入するにも限りがある


敗北の二文字が指揮官の頭に浮かんだその時、轟音と共に土煙が舞う


「っ!?・・・まさか・・・そんな・・・殿!?」


指揮官が驚き叫ぶと土煙の中から巨体を揺らし出て来たのはラズン王国国王ジブラ


「面白ぇ事になってんじゃねえか・・・なあロウニ」


「・・・やっとお出ましか・・・もう少し早く出て来ると思ってたんだがな」


兵士達はジブラの為に道を開けその中をノシノシと歩くジブラ


そこに・・・


「邪魔をするならお前からだ!」


そう叫び飛び掛るロン・・・しかしジブラはチラリとそれを見ると裏拳でロンを殴り飛ばした


「ガキが・・・体術で挑むならもっと鍛えて来い」


吹き飛ばされたロンに駆け寄る武勁門の門下生達だったがロンは完全に気を失ってしまっていた


圧倒的武力・・・それを目の当たりにしロウニールの味方をする者達は疎か兵士達まで驚き動きを止める・・・ただ1人を除いて


「一撃で仕留めるなよ・・・仮にも御前試合優勝者だぞ?」


「俺にしてみりゃ御前試合なんぞお遊戯会と一緒よ・・・見せてやろうぜ?本当の戦いってやつを」


「断る・・・って言ったら?」


「俺がこのまま指揮しててめえらを殲滅させる・・・ってのはどうだ?」


「・・・ハア・・・結局こうなるか・・・別に止める気はなかったんだけどな・・・お前が何を企んでいたとしても」


「・・・ロウニてめえ・・・」


「一般人の俺には関係なかった・・・たとえお前が対魔銃部隊を作ったとしてもな」


「・・・」


「ロウ殿どういうことじゃ・・・武勁門は確かに魔銃に対抗する為に生まれた武術・・・しかしそれはあくまでも自国を守る為に・・・」


「んなわけないだろ?爺さん。ラズン王国をよく知る爺さんなら分かりそうなもんだけどな・・・とぼけてるのか?」


「・・・戦争・・・」


「その通り。ジブラはよっぽど平和な世が嫌いらしい・・・いやジブラじゃなく歴代のラズン王国国王か・・・随分と昔から計画を立てていたみたいだからな。何世代にも渡って」


「ほう・・・興味深いのう・・・そんな気配を少しも見せなかったが・・・」


「本当に気付かなかったのか?武勁門も・・・この御前試合も戦争の為に用意されたものだ。御前試合は武勁門を含めた流派の品定め・・・戦争の尖兵にでも使おうと思ってたんじゃないか?」


「ほう・・・しかしお主がなぜそれを?」


「ちょっとした知り合いがいてね・・・武勁門を調べてたら出るわ出るわ・・・武勁門の当主がお喋りなお陰で色々と知る事が出来たってわけだ」


武勁門を訪れ調査していたベルフェゴール達3人は武勁門当主ゼクウを尋問し情報を得た


武勁門が魔銃に対抗する為に生まれた武術であるがそれはあくまで自衛の為ではなく攻める為のものだったこと


各国への視察を繰り返し地形や魔道具について調べていたこと


御前試合の試合会場の設備はその魔道具の調査の過程で得た知識を応用したものであり軍師ベシスが持っていた魔筒も魔銃を調べ改良したものであった


「武勁門はロンという天才が現れた事により歴代最強となった・・・だからコイツはとうとう踏み切ったんだ・・・戦争を始める準備をし始めたんだよ。で、武勁門に各流派を巡らせ引き抜きしまくった・・・対魔銃部隊は多ければ多い程いいしな。けどその途中で予想だにしなかった事が起こる・・・『魔銃禁止』・・・期せずして対魔銃部隊の増強をしなくて良くなったわけだ」


「・・・一門ではなくただ単純に増強が狙いじゃったのか・・・」


「そそ・・・まあジブラ達戦争を起こそうとしている連中にとっては『魔銃禁止』は好機以外のなにものでもない。いつでも戦争を起こせる状態だった・・・けど二つほど問題を抱えていた」


「問題?」


「一つは武勁門が割れたんだ・・・バカ殿の言われた通りに戦争の準備をする当主派と戦争に反対するロン派に、な」


「ほう・・・」


「バカ殿の言葉に盲目的に従っていた当主は非情だった・・・使える者とそうでない者に分けて差別し全く使えない者は容赦なく切り捨てた。武勁門に階級制度があるって知ってるか?」


「うむ・・・噂程度じゃがそのような話は聞いた事があるのう」


「1級が精鋭、2級が平凡、3級が奴隷らしい・・・幻の4級なんてものもあるがそこに落ちたらすぐ死んでしまうらしいから存在していると言っていいのやら・・・」


「なかなか胸糞悪い話じゃのう・・・それで?」


「とある正義感の強い少年が3級も許せなかったが4級なんて以ての外と立ち上がったらしくてな・・・密かに4級落ちした人達を匿っていたらしい。けど薄々勘づいていた当主が御前試合を機に街に残って大捜索をしていたらしい・・・まっ、見つけたのは俺の仲間だけどね」


「なるほどのう・・・良き仲間を持っておる・・・それでその当主は今どうしておるのじゃ?」


「ああ・・・悪さ出来ないように拘束している・・・多分」


「多分?」


「死んでたら拘束って言わないだろ?」


「・・・なるほどのう」


「ご老人同士の長話は終わったか?こちとら盛り上がっているところを気を使って待っててやってるんだぞ?老い先短い同士の世間話はその辺にしてそろそろ俺の相手をしてくれや」


ジブラが暇そうに小指で耳の穴をほじり取れた耳垢を息を吹きかけ飛びしながら言うとロウニールは前二一歩進み出る


「さっきの提案はまだ有効か?」


「提案?・・・ああ、本当の戦いを見せようぜってやつか・・・もちろんだ。これ以上グダグダやってたら客もシラケて帰っちまうってもんだ。そう思わねえか?ロウニ」


「知らん・・・が、グダグダはその通りだな。無駄に犠牲出すよりは大将戦で決着をつけた方がスッキリするし分かりやすい・・・決着をつけようぜジブラ」


「・・・とりあえずお前はあれだ・・・この勝負で俺が勝ったら俺を『殿』と呼べ」


「いいだろう・・・じゃあ俺が勝ったら俺の事をウベベビッチョと呼べ」


「笑えねえな」


「笑えよ」


「笑えぬぞロウ殿」



・・・最終決戦が今始まる──────


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