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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
824/856

300年後へようこそ 14

『サーラダンジョン』


私の名が付けられたそのダンジョンは他のダンジョンと違うらしい


入ったら分かると言うので実際に入ってみると広い部屋となっておりその部屋の中央に誰かが立っていた


これってもしかして・・・ボス部屋?


〘聞こえる?サーラ〙


「・・・一体どこから・・・」


〘ダンジョンの司令室から話してる。基本俺は魔物を配置する事に専念するけど何かあったら呼んでくれればすぐに駆けつけるよ〙


「・・・そう・・・で、これってボス部屋みたいなもの?」


〘うん、そんな感じ。1階1部屋となっていてその階のボスを倒すと次の階に進める・・・最下層は100階だから1日1階下りただけじゃ間に合わないから気を付けてね〙


「1日1階って・・・私の事舐めてる?」


〘舐めたいけど舐めてないよ。それだけ難しいってこと・・・ちなみに今目の前にいる魔物はドラゴニュート・・・通常のダンジョンなら50階くらいのボスをしている魔物だ〙


「ご・・・50階!?」


〘それに加えてそのドラゴニュートは他のドラゴニュートより少し強い・・・なので本来の能力であるドラゴンへの変身は禁止しているから安心してね。あと・・・1階は勝たなくてもいい・・・ドラゴニュートに認められればそれで・・・まあ倒せるなら倒しちゃってもいいけどね〙


「・・・やっぱり舐めてるでしょ?」


〘舐めてないって・・・戦えば分かるよ・・・最後に・・・魔物に虚実は効かないから気を付けてね・・・じゃあ〙


「ちょ・・・ハア・・・いいわ・・・やってやろうじゃない・・・1日で100階まで行って吠え面かかせてあげるわ!──────」





・・・なんて思った日もありました


1日目を終えた私はロウが用意してくれた仮説ハウスに戻るとふかふかのベッドにダイブする


結局・・・1階は越えられなかった


少し強い?冗談じゃないわ・・・何なのよあの魔物は!


まるで父と・・・ううん、それ以上の使い手と戦っている感じ・・・全力を出しても子供扱いされるし攻撃は容赦ないし・・・もう散々・・・


「どうだった?」


声がして僅かに顔を起こして見ると彼が仮説ハウスの玄関に立っていた


「『どうだった』ですって?・・・どうだったも何も・・・ちょっとバランス調整おかしいんじゃない?1階でこれだと先が思いやられるわ・・・100階なんてとても・・・」


「だから1階は倒さなくていいって言ったろ?多分倒せるとしたら3ヶ月後くらいじゃない?」


「・・・だったら・・・」


「1階で流華門の技が通用ない相手にどう戦うか見たかったんだ・・・それにサーラ自身にも感じて欲しかった・・・自分より強い相手と戦った時の感覚を、ね」


「・・・あなたの時で充分感じたわよ・・・」


「そう?俺と戦った時と本当に同じ?」


「それは・・・」


ロウと戦った時と同じかどうかと聞かれると少し・・・いや、だいぶ違うような気がする


「まっ、とにかく肌で感じてくれ・・・それより・・・マッサージでもしようか?」


「・・・遠慮しとくわ」


「・・・」


そんな悲しい顔しても知らない!


『肌で感じる』か・・・彼を信じてやるしかないわね──────




2日目、3日目を終えて何も変わらない・・・ただドラゴニュートにボコボコにされるだけ・・・唯一の救いは怪我をしてもすぐにロウが回復してくれるから戦っていられるけどもし回復がなければ私はここで死んでいただろう・・・1時間も保たずに


「ハア・・・ハア・・・ハア・・・」


怪我は治っても体力は戻らない・・・それに気力も・・・1日目より2日目の方がダメな気がする・・・そして3日目の今日はもう・・・


《我に勝ちたいか?》


「・・・喋れたのね?・・・喋れないのかと思ったわ」


《我に勝ちたいか?》


「・・・ええ・・・当たり前じゃない」


《ならばなぜ考えぬのだ?》


「考える?」


《通用せぬと分かっているのになぜ同じ事を繰り返すのだ?本当に勝ちたいと思っているのか?》


「・・・」


強くならなきゃいけない・・・その思いが焦りとなって余裕がなくなっていた


相手に言われて気付くなんて・・・私は今まで漠然と戦っていただけ・・・稽古みたいなもんだし負けてもいいや・・・とは思ってないけど負けても悔しくなかったし絶対に勝つって気持ちで戦ってなかった・・・そんなんで強くなれる訳ないのに・・・


「ごめんなさい・・・舐めていたのは私の方だった・・・私は貴方を・・・倒す!」


《うむ。通ってよし》


「・・・え?」


《マスターが我を最初に置いたのはその気持ちを引き出す為だ。マスター相手ではその気持ちに到達するのは無理だろう・・・次元が違い過ぎるからな》


「・・・なによそれ・・・」


《だが良い経験になったはずだ。自らの技が通じない相手と何度も戦う経験などそうはない・・・生きるか死ぬかの勝負なら尚更だ。負けたら・・・死ぬのだからな》


「・・・そうね」


《勝負とは必ず強い者が勝つとは限らぬ・・・それを忘れるな。ちなみに我を1階に置いた理由はもうひとつある》


「もうひとつ?」


《マスターの準備が間に合わなかったからだ》


「・・・」


〘おいドラゴニュート!バラすな!〙


「なるほどね・・・貴方で足止めさせてその間に準備する・・・やってくれるじゃない・・・ロウ」


〘・・・もっともらいしこと言っておけと言ったのに・・・バレたら仕方ない・・・2階からは徐々に強さが上がっていく・・・だから進めば進むほど強くなれるはず・・・多分〙


「・・・肌で感じろって結局何だったの?」


〘もっともらしい事を言えばバレないかなーっと・・・〙


「・・・」


〘で、でもドラゴニュートが言ったのはその通りだよ!?『絶対に勝つ』って気持ちが強さを覆す事がある・・・俺がそうだったし・・・〙


「気持ちでドラゴニュートに勝てたと思う?」


〘それは無理〙


「・・・」


〘と、とにかく1階突破おめでとう!!さあ張り切って行こう!〙


ちょっと・・・いえ、かなり不安になってきたわ・・・本当に私強くなれるのかしら──────




1階を突破してからは順調に進んだ


巨大なサイクロプスや大勢のスケルトンナイト・・・楽ではなかったけど何とか進む事が出来た


進んでいると何となく分かってきたのは流華門の弱さだ。魔物には虚実は通じない・・・花びらは無視するし華も弱ければそのまま突っ込んで来る


通用しているのは受け流しの技術だけ・・・でもそれだけだと攻撃に転じた時に相手にダメージを与えられない


だから考える


父や門下生と手合わせした時はただ技術を競い合っている感覚、それ以外の相手ではロウ以外には負けた事がなかったから気付かなかった・・・こんなにも流華門は未熟な流派だったなんて・・・


でも・・・未熟って事は強くなる可能性があるってこと・・・弱いなら強くなればいい・・・私も・・・流華門も


「ハア・・・ハア・・・」


魔物を倒し次の階へ・・・今は何階なのか分からなくなってきた


もう半分くらいきた?それともまだ・・・


フラフラになりながら次の階へ下りるとそこには1階にいたドラゴニュートみたいな人間に近い魔物がいた


「・・・ドラゴニュートみたいに話せるのかしら?」


これまで人間型の魔物はドラゴニュートだけだったから同じように話せるのかと何気に聞いてみると・・・


「あん?なんだそのドラゴ何とかって」


「え?」


あれ?・・・魔物じゃなくて・・・本当に人間?


「ヴァンパイアの旦那!この女を倒せば出してくれるんですよね?」


〘ヴァンパイアは居ないから代わりに答えてやろう・・・とりあえず倒せたら釈放してやる・・・それと次に『この女』と言ったら殺す・・・分かったな?〙


いきなり男が叫ぶとその『ヴァンパイアの旦那』ではなくロウが答える・・・てか別に『この女』と言われたくらいで殺さなくても・・・


それにしても気になるのは『釈放』という言葉の方だ。つまりこの人は・・・


「だ、誰だ!?」


〘誰かなんてどうでもいい・・・ヴァンパイアに命令してお前を連れて来た人物と思っとけ〙


「へへっ・・・そうかい・・・まあ俺としたら釈放してくれるなら誰でも構わねえ・・・もうあんな所にゃ戻りたくねえからな。にしても・・・今気付いたがこりゃたまらねぇな・・・牢屋暮らしにゃ目に毒だぜ・・・」


久しぶりに不快な視線を感じる・・・エモーンズまでの道中でよく感じていた視線・・・絡みつくようなねっとりとした・・・


「なあ・・・倒した後は・・・」


〘・・・好きにしろ〙


「へへっ・・・マジかよ・・・」


ジリジリとにじり寄る男は勝負と言うよりも卑猥な事で頭がいっぱいのようだ


ロウは何を考えているの?魔物じゃなく人間の・・・しかもこんな最低の男と戦わせるなんて・・・


「また時間稼ぎの為とかだったら許さないからね・・・まあいいわ・・・かかって来なさい」


時間稼ぎでも何でも別に構わない・・・この男は牢屋に入れられるような事をした犯罪者なのだろう・・・だから遠慮なく・・・倒させてもらう!


「そそるじゃねえか・・・その凛々しい顔をすぐにアヘ顔に変えてやるよ!」


何となく不気味な感じはするけどそこまで強くはない・・・動きも素人だし回し蹴り一発で終わるはず


足の運びも速さも素人丸出しの男に蹴りをお見舞いする・・・が、男は蹴りを側頭部に受けてもなお倒れず不気味な笑みを浮かべてみせた


「へへっ・・・いい足だ・・・」


いやらしい手つきで足に触れてくると悪寒が走りすぐに足を引っ込めた


動きはともかく丈夫さは異常ね・・・首の骨が折れてもおかしくないくらい本気で蹴ったのに・・・


「それにしても・・・痛えじゃねえかこのアマ!!」


っ!・・・目が・・・赤い!?


先程よりも俊敏な動きを見せ襲って来る男に対して体をよじり身を躱し態勢を整える


目の色もそうだが動きもどこか変だ・・・舐めて掛かると痛い目を見そう・・・


気を引き締め構えると男の攻撃に冷静に対処する


「な、なんだァ?・・・花びらが・・・」


魔物とは違い流華門の技は有効みたい・・・それなら奥義も効果的かも・・・


そうと分かれば気を練って奥義を叩き込・・・



油断はしたつもりはない


いつも通り・・・基本通りに受け流しその隙に気を練り奥義を放つつもりだった


だけど男は受け流され態勢を崩したはずなのに奇妙な動きで踏みとどまり私の腕を掴んだ


「捕まえ・・・だブッ!」


身の毛もよだつ表情で私の腕を掴み勝利を確信した男だったが突如現れたロウの蹴りで吹き飛んで行った


もし彼が現れなかったら今頃私は・・・


勝てない相手じゃなかったはず・・・実力的にはこれまで戦って来た魔物よりも数段劣る・・・なのに何故・・・


「・・・大丈夫?」


「え、ええ・・・怪我はないわ・・・けど・・・」


「けど?」


「・・・」


手が震えてる・・・多分これは・・・恐怖・・・


「て、てめえ!いきなり出て来やがって・・・よくも・・・」


男が起き上がるとロウの元に


するとロウは男を睨み一言


「『この女』でもダメなのに『このアマ』が許されるわけないだろ?」


「その声・・・お前が・・・」


「消えろ・・・『零』」


彼が男に向かって両手を交差させると男は跡形もなく・・・本当に文字通り跡形もなく消えてしまった


それを見て私は・・・心底ホッとしているはずなのに・・・手はまだ震えていた


「・・・今日は戻ろう」


彼は私の様子を見てそう告げるとゲートを開き私の震える手を取る


そうしてようやく手の震えが収まった・・・けど・・・まだ震えている・・・手ではなく心が・・・


私は・・・恐怖に支配されてしまっていた──────

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