300年後へようこそ 2
ベルの部下のウェンディの調査結果はかなり有益なものだった
しかしまさかそんな条件とは・・・彼女は強い人が好みなのか?
それと気になることも言っていたな・・・『ダンジョンで名を上げる』か・・・単純に名声が目的なのか?それとも名声で得られる何かが目的?・・・うーむ・・・分からん
とにかく明後日の夜に行きつけのバーに行き勝負を挑めばそれでサーラは・・・でもそれでいいのか?300年待ったサラの転生先であるサーラ・・・その彼女との馴れ初めが勝負って・・・しかも彼女の貞操を賭けた勝負・・・色気もへったくれもないな
「マスター何かお悩み事でも?」
「スラコか・・・俺はいつでも悩める男なのだよ・・・彼女・・・サーラはダンジョンでどんな感じ?」
「今時では珍しい素手での戦いを主にしております。マナも使っておりますが慣れてはいない様子でした」
ダンジョン司令室・・・ここで物思いにふけているとダンジョンのほとんどを任せているスラコが話し掛けてきた
スラコはスラミの後任のスライムであり俺の眷族・・・サラの転生体を待つ為に門番をしていた俺の代わりにダンジョンを経営していたのはこのスラコとシャドウセンジュの後任であるシャドウのシャジュだ
ほとんどの権限を与えているから魔物を創るのはもちろんダンジョンを隅々まで視る事が出来る
「サーラといる他の連中は?」
「今時の冒険者ですね。魔銃を使い魔物を倒す・・・あの様子では自らを鍛えていないでしょう・・・魔銃がなければ1階すら攻略は難しいかと」
「確かに今時だな」
魔銃の普及により剣などの武器で戦う文化は廃れた。もちろん素手で戦うことも魔法すらも廃れ今では魔銃が主流となっている
まあそりゃそうだよな・・・鍛えなくても引き金さえ引けば魔物が倒せるんだから・・・普及させた張本人が言うのもなんだがつまらない時代になったもんだ
にしても変な組み合わせだな・・・魔銃使い達の中に1人素手で戦うサーラ・・・魔銃は基本的に魔物と離れて攻撃する・・・その中で魔物に接近する仲間がいたとしたらやりにくいと思うのだが・・・
昔も確かに近距離アタッカーと遠距離アタッカーの魔法使いや弓を使う冒険者が同じパーティーにいた。けど役割分担があり近距離と遠距離が混在していても問題ない・・・むしろ両方とも必要であった
でも魔銃の場合はそうでもない・・・魔法よりも速く弓のように矢の制限なく撃てる・・・しかも魔銃もかなり改良され連射の出来る魔銃や破壊力重視の魔銃など様々ある
熱を持つのは相変わらずだけどそれもかなり改良されているらしい
つまり魔銃さえあれば安全に素早く魔物に対処出来るはず・・・なんだよな・・・
「マスター」
「ん?」
「いっその事サーラ様以外を排除しサーラ様を拘束してはどうでしょうか?お望みなら触手で捕らえてそのままマスターが美味しく頂くという手段も御座いますし」
「おい・・・てか触手って・・・」
言われて想像してしまう
サーラが触手に両手両足を拘束されもう一本の触手が・・・
「ダメだ!ダメだからな!」
そんな強引な手を使うつもりは一切ない。普通に恋愛して付き合って結婚・・・でもその『普通』が難しいんだよな・・・てかサーラが『負けたら抱かれる』って公言しているなら下手に時間をかけると他の男に・・・それならいっそ・・・いや、いかんいかん!そんな関係になる為に300年待った訳じゃない。また清い交際をする為に雨の日も風の日も門番をしながら待ったんだ・・・再び出会う日を心待ちにして・・・
「そうですか。てっきり繁殖出来ればよいのかと・・・」
「繁殖言うな」
スラコの生々しい表現にツッコミを入れ、彼女達がダンジョンに入った際には余程のことがない限り手出ししないよう伝えて外に出た
ダンジョンを出て様変わりした街を練り歩く
ロウニール・ローグ・ハーベスという名を捨てロウニール・ハーベスとして過ごした日々は街の外を眺めるばかりで街中に目を向けていなかったから変化に多少戸惑った
もちろん大規模な変化は見てきたが細かい変化に気付く事はなかった・・・例えばここにあった店が潰れ他の店になっているとか家の建築方法が変わったのか見た目がかなり違うとか・・・
ベルとシアの会社の建物『ビル』なんかも300年前には考えられない作りとなっている。フロアと呼ばれる階を積み重ね見上げるほど高い建物であり、階段ではなくサタン大陸から取り入れた技術を使い『エレベーター』というもので移動する
魔銃だけではなくそういった技術を取り入れたことによりかなりの発展を遂げた模様・・・犯罪率も低いらしいし昔より住みやすいのかもしれないな
でも・・・味気ないと思うのは昔を知っているからだろうか
多分俺が時代について行けてないせいだろうな・・・しばらく生活していれば慣れるだろう
さて・・・そんな事よりサーラだ
ウェンディの話では今日は休みで明日はダンジョンに行く日のはず・・・となるとバーに行って会えるのは明日となる。そこで偶然を装いサーラと会い・・・あわよくば話をして・・・まあそう上手くはいかないかもしれないから期待し過ぎるのは禁物だ
何度か顔を合わせ顔見知りになりゆくゆくは・・・けどその前にサーラを倒せるほどの強者が現れたら?・・・やはりグズグズしてはいられないか・・・いざとなったら元の名に戻り触手・・・は論外だけど多少強引に近付くのも考えないとな
それか・・・サーラに近付こうとする虫を事前に始末しとくか・・・
いや、それはあくまでも最終手段・・・触手の一歩手前だ
て言うかスラコが変なことを言うから触手が頭から離れん・・・人畜無害のそういう魔物を創造してみるか・・・男はポイってして女は捕まえて・・・うん、やめておこう
あれこれ考えている内に家に辿り着いてしまった
長年使わずに放置していたが外装は勿論内装も綺麗なままだ
《お帰りなさいませ、主様》
「話す時は魔力を込めるなと言ってあるだろ?ヴァンパイア。またダンジョンの奥深くに押し込めるぞ」
《そ、それだけはご勘弁を・・・ところでこの家に戻られたということは・・・」
「ああ・・・サラの転生先の人が現れた」
ヴァンパイア・・・フェンリルの件でアケーナのダンジョンでしばらく反省させていたが今はこの街の墓守とこの家の管理をしてもらっている
「では早速拉致して洗脳をヴォン!」
「アホか・・・何もするな大人しくしとけ」
コイツだけは本当・・・とりあえず顎を砕くくらいの強さでツッコミを入れたがそれくらいしないと本当にやりそうだもんなコイツ・・・『献上品です』とか言って洗脳されたサーラを連れて来た日にゃ仲間と言えど消滅させてしまいそうだ
「アガ・・・ア・・・アーアー・・・酷いではないですか・・・突然顎を砕くなんて・・・」
「余計なことしたらそれくらいじゃ済まないからな?とにかく今日からここに住むからお前は墓守の仕事だけしてろ」
「畏まりました。出来れば陽の高い時はこの家でなくてもよいので部屋の中にいたいのですが・・・」
「?なんでだ?」
「・・・随分と長い間ダンジョンの中に閉じ込められていたので陽の光が苦手に・・・あっ、決して主様を責めている訳では・・・」
「当たり前だ。お前の場合は自業自得・・・陽の光が苦手なら棺桶の中にでも入ってろ」
「っ!・・・それは妙案ですね・・・どこか適当な墓を暴きその中に・・・」
「おい墓守・・・ハア・・・そんなに棺桶がいいなら創ってやるから墓を暴くなバカタレ」
「ハッ!ありがたき幸せ」
棺桶を創ってやるって言っただけで『幸せ』か・・・それだけ陽の光が嫌なんだろうな
「ところで最近はどうだ?墓荒らしとか来たりするか?」
「いえ。平和なものでここ最近はめっきり・・・暇潰し程度に来てくれるとありがたいのですが・・・」
「ありがたがるな。とにかく家は空けとけよ?」
「連れ込む気満々ですな」
「自殺願望も程々にしとけ。それとも永久に棺桶に閉じ込めてやろうか?」
「即刻退去致します」
・・・よし、これで準備は万全だ。別にヴァンパイアが言うように連れ込む気なんてサラサラない・・・けど万が一・・・万が一家に来る事になった時、家の中にボロボロの服を着た赤目の男が居たら嫌だろ?・・・まあ、そういう事だ
準備が整いあれこれ考えていたらあっという間に日が過ぎ当日になった
思えば街に来た当日に会った以来だ・・・緊張して吐きそうになるのをグッと堪えて彼女が居るであろうバーに乗り込んだ
一瞬で店の中を確認するとウェンディの情報通り彼女はパーティーメンバーとは別の・・・カウンターに1人で座っていた
あくまで自然な感じで彼女のふたつ隣りのカウンターに座ると300年一口も飲んでいなかった酒を注文する
「・・・あら?貴方は・・・」
彼女の方が俺に気付いたみたいで酒を注文した俺の方を見ると声を掛けてきた・・・これは千載一遇のチャンス・・・どうやら彼女は俺の事を覚えていてくれたみたいだ
「あ・・・え・・・ども」
ちがーう!あれだけシュミレーションしただろ!
『やあ君は確か最近この街に来た冒険者だね』
とか導入は軽く気さくな感じで話す予定だったのに何が『ども』だ!
「ふふっ・・・1人?」
「え、ええ・・・まあ・・・」
ダメだ俺・・・やはり300年のブランクはデカイ・・・スラコ辺りで・・・いやシア?それともウェンディで練習しとけば良かった・・・
「・・・なら一緒に飲まない?ちょうど暇してたの」
なにぃ!?彼女の方から誘ってくれるとは!!
焦るな俺・・・ここで間違えばすべて水の泡・・・平然となおかつ紳士的に・・・
「は・・・はあ」
・・・
自分を殴ってやりたい
なんで俺はこんなヘタレなんだ?
いっそ仮面つけてダンジョンナイトになるか・・・何故か仮面をつけると恥ずかしいセリフもスラスラ言えるし・・・
「イヤならやめときましょうか?」
「い、いえ!どうぞ!」
「・・・なら隣りに移るわね」
そう言って彼女は手に持っていたグラスと共に俺の隣に移動してきた
近くに来るといい匂いが・・・はっ!物凄い勢いでこの辺の空気を吸い込んでしまっていたけど俺の鼻拡がってないよな??
「ふふっ」
「な、なにか?」
「いえ・・・門番の時はクールな感じだったのに今の慌てる姿を見たらどっちが本当の姿かなって」
「・・・仕事の時はなるべく表情を崩さないようにしていたので・・・」
「そう・・・あ、普段通りに話していいわよね?歳も近そうだし・・・ちなみにいくつ?」
「俺は・・・20歳・・・くらいかな?」
300とって付くけど
「なにそれ・・・私は19よ。名前はサーラ・・・ってあの時ギルドカード見ているから知ってるか・・・貴方の名前は?」
「・・・ロウニール・・・」
「へぇ・・・ロウニール・・・いい名前ね。ってフーリシア王国の英雄の名前と一緒か・・・」
ははっ・・・本人です。英雄なんて大層なもんでもないけどね
「私の国でも同じ名前はいないけど近い名前はいたわね・・・ロウとかロウニとか・・・」
「そ、そうなんですね・・・じゃなくてそうなんだ・・・」
「ええ。周りにはなんて?」
「・・・多いのはロウ・・・かな?」
「じゃあ私もロウって呼ぼせてもらうわね?」
「う、うん・・・ところで私の国って君・・・サーラの出身は?」
「ようやく私のことを聞いてくれた・・・私に興味ないんじゃないかと思ったわ。出身はラズン王国よ」
興味ありありです・・・てかラズン王国か・・・
顔は似てないのに仕草とか雰囲気がまんまサラのサーラ・・・なぜ転生先が彼女になったか分かるような気がする・・・それともサラの魂がそうさせているのかな?
「ラズン王国・・・遠いね・・・なんでフーリシア王国に?」
「あー、うん・・・まあくだらない理由なんだけどね・・・」
そう言って彼女は照れ笑いしながら話してくれた
ラズン王国から遠路はるばるフーリシア王国のエモーンズに来た理由はダンジョンで名声を得て父親が営む道場の門下生を増やす為なんだとか
魔銃主体の昨今、ラズン王国は頑なに魔銃の普及を拒んで来た・・・その反動か知らないけど魔銃以外の武器を持つことも恥と考え始め己の肉体のみで戦う『武術』が浸透しているらしい
だけどその『武術』も種類が多く存在し人気のある流派は門下生を多数抱えるが人気のない流派は門下生も雀の涙・・・後継者が絶え潰れる流派も多いとか
「家ももう数人しかいなくて・・・武術大会とかで優勝すれば門下生も増えると思うけどね・・・父は毎回一回戦負け・・・その度に門下生も減るもんだから参加すらしなくなって・・・」
「それでダンジョンで名声を得るのとどんな関係が?」
「うーん・・・流派の数を増やすと言うよりは武術に興味を持ってくれる人を増やすのが目的かな?他国から武術を習いに来る人なんてほとんどいないからその数を増やして・・・ついでに私が広めたとなれば家の流派も増えるかもって感じ・・・けど・・・」
「けど?」
「ダンジョンに何回か入って痛感したの・・・魔銃の方が安全に魔物を倒せるって。わざわざ何年も何十年も修行して武術を学んだとしても魔銃を買ったその日の冒険者に負けてしまう・・・だとしたらいくら名声を得たとしても習う人なんていないんじゃないかって・・・」
ふむ・・・確かに魔銃さえあれば事足りるとなればわざわざ習ったりしないかも・・・修行する時間とお金・・・それと魔銃にかかる費用を比べても・・・まあ魔銃の方を取る人がほとんどだろうな
「ダンジョンで名声を得るのも簡単じゃないし・・・『魔銃を使わず武術のみでダンジョン踏破』とかやったら効果はあると思うけど・・・もしチームで踏破しても世間は『どうせ魔銃のお陰だろ?』で終わるだろうしかと言ってソロはちょっと無理そう・・・ハア・・・」
「彼らは武術は使わないの?」
チラッと彼女の仲間の方を見て聞くと彼女は首を横に振る
「彼らはラズン王国出身じゃないわ。フーリシア王国で会ったばかりなの。たまたまギルドで声を掛けられて私がエモーンズに行くと言ったらじゃあ一緒にって・・・元々ダンジョンに興味があったみたいでね」
「ふーん・・・そうなのか・・・」
とりあえずそんな付き合いは長くなさそうで安心した
にしてもそうか・・・武術・・・確かにラズン王国は昔からちょっと特殊だったけど今も変わらずって感じだな。時代に逆行しているというか独自の文化を守っているというか・・・
「時代遅れの武術なんて捨てちまってお前も楽になれよサーラ」
・・・コイツ・・・
いつの間にかサーラの仲間が近寄って来て馴れ馴れしく俺の肩に腕を乗せ彼女に話し掛けた。今すぐこの腕をちぎってやろうかと思ったがその前にサーラが動く
「あっち行っててよバル・・・私は今彼と話しているの・・・見て分からない?」
「彼ってこの・・・うん?お前・・・あの時の門番か?なんでここに居るんだ?」
「門番が居ちゃまずいのか?」
「まずいな・・・似合わねえし店の雰囲気が台無しだ・・・とっとと帰って母ちゃんの乳でもしゃぶってろ」
なんてお下品なんでしょう・・・殺しとくか
「バル!いいからあっちに行ってて!」
「・・・サーラ・・・いい加減諦めろよ。ダンジョンに行って分かったろ?武術なんて習っても魔銃にゃ敵わない・・・習うだけ無駄なんだよ。だからお前も魔銃を買ってさ・・・俺が手取り足取り教えてやるから・・・」
「・・・」
言い返せないサーラ
心の中では否定したくとも現実は厳しい
いや・・・もしかしてサラがサーラを転生先に選んだのは・・・
「・・・じゃない」
「あん?なんだお前・・・俺は今サーラと・・・」
「武術を習うことは無駄じゃない」
「なに?・・・おいおい勘弁してくれ・・・サーラの前で格好つけたいのは分かったから・・・ちぃと黙っとけ」
「すぐに分かるよ・・・俺の言っている言葉が真実かどうか・・・すぐに、ね」
「え・・・」
俺が微笑むとサーラはポカンと口を開けたまま固まってしまった
「お前耳ついてんのか?それともついてるけど塞がってんのか?塞がってんなら俺が・・・っておい!いきなり立つんじゃねえ!」
バルと呼ばれた男は俺が立ち上がると肩透かしを食らったように転びそうになり睨みつけてきた
勝手に人の肩に腕を乗せてるからそうなるんだよ
「やる事が出来たから帰るよ・・・また」
「え・・・う、うん・・・また・・・」
「おいてめぇ待ちやがれ!でけえ口叩きやがって何様だ!・・・おい!待てって言ってんだろ!逃げんな!」
後ろで吠えてる雑魚を無視して店を出ると人気のない場所に行きゲートを使って家に戻る
そして倉庫にしている場所にゲートを開くとそこからひとつの通信石を取り出した
〘誤作動・・・ではないようですね〙
「ああ、必要だから連絡した。即位以来か?」
〘はい・・・それで・・・どのようなご要件でしょうか・・・〙
「そうビビるなよ。別に大した用事じゃない・・・明日会合を開く」
〘・・・会合・・・ですか?嫌な予感しかしないのですが・・・〙
「その予感が当たっているか知らないが会合って言ったら分かるよな?」
〘王会合・・・しかしその・・・昨日の今日で開けるようなものでは・・・〙
「欠席しても構わない・・・ただ一言付け加えてくれるだけでいい・・・『今回の王会合の主催者はロウニール・ローグ・ハーベスだ』ってな」
〘・・・畏まりました・・・ではそのように各国の王に伝えます〙
「頼んだぞ・・・えっと・・・」
〘お忘れですか?ギイノです・・・ギイノ・ナディア・フーリシア・・・一応お住まいの国の王なのですが・・・〙
「何代も見てきたんだいちいち覚えてられるか!・・・ギイノ、頼んだぞ?来させなくてもいい・・・伝えるだけ伝えろ」
〘 必ず・・・ちなみに議題は何になるのでしょうか?〙
「ん?・・・あー、この大陸の未来について?かな」
〘・・・急報で門番をお辞めになったと聞いた時から嫌な予感がしておりましたが・・・平和な世とはこれでお別れですね〙
「おい」
〘では失礼します。急ぎ報せねばなりませんので〙
「・・・あ・・・切りやがった」
あの野郎・・・人を天災みたいに言いやがって・・・まあいい。時間がないからあした文句言おう・・・さて次は・・・
〘お呼びでしょうか?〙
「シアを連れて家に来い。あー、途中でシュルガットも拾って来てくれ」
〘戦争でも起こすつもりですか?〙
「・・・お前ら俺をなんだと思ってんだ?俺はただ大陸の未来を思ってだな・・・とにかく急いで来い・・・各国の情報とか頭に入っているんだろ?」
〘当然です。この時の為にこの会社を作ったと言っても過言ではありません〙
「いや本当に戦争なんてしないからな?全く逆・・・世界の平和の為にその溜め込んだ知識を使わせてもらう・・・それと彼女の笑顔の為に」
〘畏まりました・・・その理由だけで充分です〙
世界の平和の為・・・か・・・自分で言って違和感がある・・・世界を混沌に陥れる可能性の方が高いしな
けど・・・将来的には必ず・・・多分・・・良くなるはずだ・・・うん
さあ始めようか・・・彼女の為に世界を・・・ひっくり返してやる──────